かんなままさんの執筆記事第49弾です。
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かんなままの「ぴ・よ・こ・とライフ」(49)育児の知恵
自立した人間というのはどういう人間だろうか。
それは、自分の事は自分で決めることが出来る、そして決めたことで成功または失敗しても、その結果についての責任を取ることが出来る、そういう人間です。
自分の目で見て、自分の頭で考えて、自分の足で歩けるように、子どもを導かないといけません。
そうでないと、誰が生きているのかわからなくなってしまいます
それは、自分の事は自分で決めることが出来る、そして決めたことで成功または失敗しても、その結果についての責任を取ることが出来る、そういう人間です。
自分の目で見て、自分の頭で考えて、自分の足で歩けるように、子どもを導かないといけません。
そうでないと、誰が生きているのかわからなくなってしまいます
出典:「ぴ・よ・こ・と」竹下雅敏(著)
子どもの頃からの思いを叶えた娘
橋の工事が始まるまで、ポッサム個体の遺伝子を調べて基本データを作らなければいけません。ライフル銃の免許をとり、夜中にブッシュを駆け巡ってどんな遺伝子を持った種がどこに住んでいるのか?麻酔銃で眠らせて遺伝子を調べます。私は後で連れて行ってもらったのですが、ライフルとヘッドライトだけで真夜中のブッシュを1人で駆け回っていたのを知ってびっくりしました。本人は「人間の方が怖いよー」と笑っていましたが。
ところが、あと2ヶ月でレポートを出せるという時になって大事件が起きました。思いもかけなかった実験の不備が見つかったのです。今までの膨大な研究が全て無効になってしまいました。ショックです。
さすがに電話をかけてきました。気落ちした娘の声。これまでずっと頑張ってきただけに立ち直る気力を失くしていました。私は娘の気持ちが痛いほどわかりましたが「今までの研究は決して無駄じゃない。頑張っていたあなたを誇りに思うよ。でも、人間はピンチの時にどう立ち上がるかが一番大事なのよ。学ぶのは今。ピンチはチャンス!」と励ましました。ずっと後になって「あの時の言葉に救われた」と言ってくれました。
最終的に橋がかかるのに3年かかりました。この橋を渡って交配していることもわかりました。同時進行でフィールドトリップをして大学生たちに指導をしたり、傷ついた野生動物保護のボランティアもしていたようです。
日本に里帰りをしていた時に郊外のレストランで野鳥がガラス窓に激突して失神したことがありました。娘はすぐに駆け寄り、骨折していないか?呼吸はどうか等を入念にチェックして、お店から小さなダンボールを借りて布を敷き、温かく、しずかに保護していたら元気になって飛んでいったことがありました。その手際の良さに驚いたら、いつもしていることだと笑っていました。その時「私は動物を助ける仕事をする!」と言っていた幼い頃の姿が重なって「ああ、この子は自分の力で子どもの頃からの思いを叶えたんだ」と実感しました。
新しい家族に囲まれ、自分の生きる場所を見つけた娘
やがて、本格的なフィールドワークと研究を経て無事に永住権と博士号を取ることが出来ました。ポッサムの橋も各地で作られ始めました。今は大学で野生動物保護の講師をしています。スタッフにも恵まれて今年度のベストテーチャーに選ばれたとのこと。12年前に言葉がわからなくて泣いていた娘がネイティブの大学生のレポートを添削している?オフィスを持っている?夢のようです。
同時にパートナーも見つけて結婚しました。お相手はシェフなので料理が得意で助かりますが家族団欒の時間帯に仕事です。これからの生活を真剣に考えて、小学校の先生になりたいと思うようになりました。教職を目指して大学に入学しました。オーストラリアには何歳になっても面接だけで入学できる枠があるそうです。教職はハイレベルな専門性が求められるので実習を含めて5年間鍛えられます。でも、彼なら大丈夫。きっと色々な引き出しを持った、いい先生になることでしょう。
私も2人の大学を見学しましたが、とても恵まれた環境でした。自然の中に学部が点在しています。どこにでもテーブルとソファが置いてあって、学生が勉強していました。
オーストラリアは幼稚園や小学校の教育や親の働き方も違っています。パートナーのお兄さん夫婦は、お互い週に4日ずつ働いて交代で2人の姉弟を育てています。どちらかの親がいる時はプレスクールもお休みさせて、いつも子どもと一緒に過ごしていました。その時、何をするにも2歳の子でもわかるように説明して意見を求めていました。子どもも考えながら自分の意思を伝えていたのには感心しました。
料理をするときも同じところで子どもを遊ばせ、リビングの大きな窓ガラスが家族の勉強ボードになっていて水性ペンで数字の「0」の説明が子どもでもわかるように書いてありました。玄関のアプローチには子どもが拾ってきた小石や貝などのコレクションが飾られ、野生のワラビ―が遊んでいました。
お姉ちゃんの学校を見学しましたが、校舎は平屋で全ての教室が中庭に面していました。室内は広くて各教室にキッチンや遊ぶスペースがあります。1人ずつの机や大きなテーブルもあって、ほとんどグループ学習だそうです。
まず登校したら教室で遊びます。ママごと、パズル、工作何でも自由です。横になれるソファとクッションもありました。この時間は先生もゆっくり子ども達や親と話していました。好きなように遊んでから授業が始まりますが、一旦遊ぶことで自分を取り戻す効果があるようで、どの子も落ち着いていました。日本の小学校はこの「遊び」の要素がすっぽり抜けています。子どもは遊びの延長で育っていくのに・・・。
そんな新しい家族に囲まれ、自分の生きる場所を見つけた娘。
思い返せば、娘は自分の直感を信じて突っ走り、気が付いたら単身外国に渡って自力で挫折を乗り越え、好きな仕事を見つけていました。その間、私達親は何もしていない事に気が付きました。ただ信頼して背中を押し、落ち込んだ時に励ましただけです。
その娘がもうすぐ出産します。
パートナーも4人兄弟で、子ども好き。子どもが出来たら自分が主婦になると言っていたくらいですから2人で助け合って子育てするだろうと確信しています。ところが、娘から「手伝いに来てほしい」という依頼が来ました。たぶん、私が大喜びするから言ってくれたのでしょう。それを聞いた私は「留守にする夫は?仕事は?」と一瞬考えましたが、「行きたい!」と思いました。夫も「しばらく独身?嬉しいなあ!」と強がってくれています。
2ヶ月ほどオーストラリアに滞在してきます。
という事で、50話をもちまして「かんなままのぴよことライフ」を終了させていただくことにしました。長い間、私の勝手な解釈のもとでのお話しにお付き合いいただいてありがとうございました。
嬉しいことに「ぴよこと」の本も再出版されるとのこと!これからは皆さま1人ひとりの「ぴよことライフ」が愛を基調低音にして広がっていくことを願っています。