注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
————————————————————————
おすすめ映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』
転載元)
街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋 18/4/27
韓国で1200万人の観客を動員した昨年最大のヒットとなった『タクシー運転手 約束は海を越えて』が先週から日本でも上映されている。
光州事件の実話に基づいた映画だ。
映画comの注目作品で上位20位に入っていて、名画座系ではない、大手が配給しているにも拘わらず、全国で14館しか上映していない。
経験上、韓国映画で日本で上映された作品は優れたものが多い。
韓国で大人の4人の1人という1200万人もの観客動員を達成し、アカデミー賞の韓国作品の代表として出品される映画が、日本中でたった14館しか上映していない、それも上映回数が減り、まもなく終演しそうだというのはあまりにも不自然で、何らかの圧力や忖度を感じさせる。
(中略)
韓国が厳しい軍事独裁政権が支配する国だったことを肌感覚で知る日本国民は、今では半数を切るかもしれない。
1980年5月の光州事件は、軍事独裁政権が最も激しく自国民に対して牙をむいた韓国現代史上最大の悲劇とされる事件だ。
自国の軍隊が政府批判の声を上げる自国民を殺害していく。
戒厳令下、光州市の交通・情報を遮断して行われた苛烈な軍事弾圧によって光州市民の声は圧殺されていく。
1人のドイツ公共放送の記者がこの包囲の中で取材した結果が、全世界に発信されて、光州事件が世界に知られるようになった。
(中略)
韓国国民は、自らの力で軍事独裁政権を倒した記憶がある。
その記憶の最も暗い闇を象徴するのが光州事件だ。
そこから民主化を成し遂げたという記憶が、朴槿恵政権を倒した国民的うねりを巻き起こしたのだろう。
文在寅自身がこうかたっている。
「文在寅政府は光州民主化運動の延長線上に立っています。」
(以下略)
光州事件の実話に基づいた映画だ。
映画comの注目作品で上位20位に入っていて、名画座系ではない、大手が配給しているにも拘わらず、全国で14館しか上映していない。
経験上、韓国映画で日本で上映された作品は優れたものが多い。
韓国で大人の4人の1人という1200万人もの観客動員を達成し、アカデミー賞の韓国作品の代表として出品される映画が、日本中でたった14館しか上映していない、それも上映回数が減り、まもなく終演しそうだというのはあまりにも不自然で、何らかの圧力や忖度を感じさせる。
(中略)
韓国が厳しい軍事独裁政権が支配する国だったことを肌感覚で知る日本国民は、今では半数を切るかもしれない。
1980年5月の光州事件は、軍事独裁政権が最も激しく自国民に対して牙をむいた韓国現代史上最大の悲劇とされる事件だ。
自国の軍隊が政府批判の声を上げる自国民を殺害していく。
戒厳令下、光州市の交通・情報を遮断して行われた苛烈な軍事弾圧によって光州市民の声は圧殺されていく。
1人のドイツ公共放送の記者がこの包囲の中で取材した結果が、全世界に発信されて、光州事件が世界に知られるようになった。
(中略)
韓国国民は、自らの力で軍事独裁政権を倒した記憶がある。
その記憶の最も暗い闇を象徴するのが光州事件だ。
そこから民主化を成し遂げたという記憶が、朴槿恵政権を倒した国民的うねりを巻き起こしたのだろう。
文在寅自身がこうかたっている。
「文在寅政府は光州民主化運動の延長線上に立っています。」
(以下略)
————————————————————————
2017年韓国No.1大ヒット!『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』 本予告
配信元)
————————————————————————
まのじレポート
韓国映画は魅せる
マチ弁さんも書いておられるように、韓国映画は見応えのあるものが多く、好き嫌いはあれど金返せと思うような作品に当たることはなかったように思います。
韓国映画が政府の振興政策を受けて成長したことはよく知られています。もちろん政治に伴う検閲の歴史もありますが、娯楽性を失うことなく社会的な、政治的な、あるいは芸術性の高い作品をこれまで多く生み出し、演技力の確かな俳優陣が韓国映画を文化に高めてきました。
1980年以降、チョン・ドファン(全斗煥)大統領の元、映画の自由化が進められ、いわゆる「エロ映画」が急増しましたが、その裏には「光州事件」の殺戮から国民の目をそらす目的があったという指摘があります。
今回その「光州事件」の実話を元にした映画、しかも、マチ弁さんご推薦ということで、観ておくべき作品だろうと出かけました。
知らなかった光州事件
1980年に起きた「光州事件」。当時学生でしたが、このニュースについては「韓国は軍事政権だから恐いな」というくらいの認識で、自分には何ら関係なく安穏と暮らしていました。
パク・クネ(朴槿恵)大統領の父親、パク・チョンヒ(朴正煕)大統領暗殺の後、実権を掌握したチョン・ドファン大統領は、文民政権移行を求める市民を鎮圧するため戒厳令を敷きました。それに対し、当時の韓国全土で学生や労働者の激しいデモが起こりますが、中でも逮捕されたキム・デジュン(金大中)出身地の全羅南道の抗議デモは激しいものでした。光州はその道庁所在地、いわば中心です。
鎮圧部隊と市民との衝突はどんどんエスカレートし、市民への一斉射撃に対して、市民側はバスやタクシーを倒してバリケードを築き、武器庫を奪取して武装して対抗したとあります。このため戒厳軍は一時市外に後退し、光州市の道路、電話など通信を遮断し、包囲しました。
そうして「奴らは俺たちを皆殺しにする気だ!」というセリフに象徴される事態になっていきます。
「タクシー運転手」
演技派の層の厚い韓国俳優ですが、主演がベテラン、ソン・ガンホでまずは安心。
男やもめマンソプは、タクシー運転手をしながら可愛い一人娘を育てています。
しかし貧しい。
娘が大家の息子にいじめられ、怒鳴り込んでも、逆に家賃滞納を怒鳴られ、スゴスゴと退却する羽目になります。玄関にある娘の靴はかかとが潰れている。
「かかとを踏まずに履かなきゃダメじゃないか!」と叱ると、娘は「だって小さいんだもん。」
ここで、あ、娘さんはお父さんに気を遣って我慢しているんだ、と悲しい気持ちになります。
小さなテーブルで用意された夕餉を食べるマンソプが、うまい!というと、娘は「大家さんがくれた」とポソッと返事をします。さっき、家賃払えと散々怒鳴っていた大家の妻もマンソプの家を気遣い、激しい物言いとは裏腹に、そっと手を差し伸べていました。
何とかお金が欲しいマンソプ。
タクシー仲間のウワサ話の中で、うまい稼ぎ口を知ります。
「通行禁止時間までに外国人を光州に連れて行ったら10万ウォン」
街中でデモ行進にぶつかると、営業妨害だよとイライラし、親のスネかじって大学まで行って、デモなんかやってないで勉強しろ!と呟くマンソプが、何も知らないまま封鎖された光州で見たものは、政府に逆らう「暴徒」でもなく、正義の「軍」でもなかったのでした。
やむにやまれぬ思い
日本での楽な取材に飽き足らないドイツ人記者ピーターは、野心的にスクープのチャンスを狙い韓国入りします。お金に物を言わせて何とか光州に入り、次々と衝撃的な状況を目撃するうちに、やがて、取材は仕事を離れ、人々の祈りを受け止めるものに変わっていきます。
マンソプ達が光州で出会った大学生ジェシクは、歌謡祭に出るのが夢の、今どきのヒョロンとした学生。自身の危険を知ってもなお「このことを世界に伝えて」と叫びます。当時、私とたいして年の違わなかった普通の男子がボロ布のように殴られても、怯まずに命がけで守りたかったのは自由だった。
そしてマンソプ。安全な時間に光州を逃れ、ソウルに帰ることができたのに、待っている娘に可愛いピンクの靴も買ったのに、Uターンすれば無事ではソウルに戻れないかもしれないのに、身を裂くようにしてハンドルを切る。
ドイツ人記者ピーター、デモに集った人々、市民に協力した人々、そして運転手マンソプも皆、楽に安全に何も知らぬことにして生きていくことができたのです。なのに、やむにやまれぬ思いに突き動かされました。そしてその思いは、多くの血を流しながらも大きなうねりとなり、後の韓国の大統領直接選挙を求める大規模な民主化運動へと繋がりました。
日本は?
「タクシー運転手」は上演館が少ないせいか、劇場は一杯で、チケットは最後の3枚の一つでした。
エンドロールの時には、周りにぎっしり座った人達からすすり泣きが聞こえていました。けれど私は泣けませんでした。むしろ恐ろしくて涙と鼻水が凍ってしまったのかもしれません。
作中、通信が遮断され、輪転機が止められ、地元の報道が「抹殺される」恐ろしさと、その中で揺らぐ人々もしっかりと描かれています。
軍は、法に照らして武力を用いません。無差別に老人でも子供でも自国民に対して銃を向けます。
韓国は、これほどの多大な犠牲を教訓に今のムン・ジェイン(文在寅)大統領を選びました。
日本は?
これまで数年かけて、民主主義の外堀を埋めるような法案を次々可決してしまった日本は大丈夫なのか?
もしも、ある日突然、平穏な日常に戒厳令が敷かれた時に、血を流さずに声を上げることができるのか?
この映画で描かれた世界には、ケンカしながらも他人のことを放っておけない、ついつい親身に世話をしてしまう庶民が居ました。「自己責任」がまかり通る今の日本で、隣人のために痛みを引き受ける人がどれほどいるのだろうか?
あるいは、この映画が私のような安穏な日本人に一石を投じてくれるかもしれない、そう思いながら、凍るような気持ちで席を立ちました。
————————————————————————
■「いのちの語らい」終了のお知らせ■
スタートしたばかりで非常に残念ですが、執筆者多忙のため、 「いのちの語らい」は前回をもって終了とさせていただきます。
光州事件の実話を基にした韓国映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」という作品です。
マチ弁さんによると、韓国で昨年最大のヒットとなった映画で大手配給にもかかわらず、日本での上映館はたった14館のみ、しかもじきに終了しそうな気配とのこと。これ自体が不自然で事件だとの言葉を受けて「観なきゃ!」と思い立ちました。