国会論議を経ずに閣議決定で「洋上風力発電法」が成立:電力の安定供給を妨げ、電気料金を上げ、健康被害を引き起こし、環境破壊を生む 〜 笑うのは政府お墨付きの参入企業だけ

 国会でまともな審議ができないのにどんどん強行採決してしまう安倍政権は、ついに国会論議抜き、閣議決定だけで法律を制定してしまいました。今年の3月に閣議決定されたこの法律案は、7月で一旦廃案になったものの、この秋の臨時国会でまたしても息を吹き返し閣議決定の後、いつの間にか参院を通過していたようです。
 そのゾンビ法案は、海上で風車を回して発電する「洋上風力発電」を促進する法律です。国がお墨付きを与えた事業者に、促進区域への30年の占有を認めるもので、従来の条例の3〜5年の占有期間から大幅に事業計画しやすくするだけでなく、洋上風力発電を進めるのに邪魔な地元自治体や漁業者などの反対を封じ込めるものとなります。
今国会提出の水産改革法案により、漁業者から漁業権を奪った場合、利益優先の再エネ企業の草刈り場に拍車がかかりそうです。
 風力、太陽光、バイオマスなど再生可能エネルギーは国策として、FITという固定価格買取制度を設け、参入企業は高い価格での電気の買取を保証されています。この高い買取価格を維持するのは、国民の電気料金にこっそり含まれる賦課金で、現在1家族1000円〜2000円ですが今後どんどん上がる可能性があります。
 しかも発電量は多ければ良しというものではなく、電力の発電量が使用量よりも増えると大規模停電を引き起こすため、常に同量になるよう火力発電での調整が必要だそうです。ところが風力発電は、風速が弱くても強くても発電ができないという不安定な供給電源のため調整に不向で、送電を停止して対応するなど、もはや無くても良い扱いです。しかも低周波音の健康被害は明らかになり、欧州では環境破壊が深刻で次々廃止が決定しています。
 そんな海外の在庫処分を日本が押し付けられて、一体誰が笑っているのか?
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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洋上風発整備促進法が成立しました
転載元)
 先日、こういう↓驚くべきニュースが入りました

洋上風力発電法が成立 2018年12月1日05時00分
 海上で風車を回して発電する「洋上風力発電」の整備を促進する法律が30日、参院本会議で可決、成立した。国が促進区域を指定し、公募で選んだ事業者に最長30年の占有を認める。地元の自治体や漁業者、海運会社などの利害を調整しやすくするため、協議会を設けるなどとする内容だ。(以下略)

 …国が、洋上風発建設、しかも大規模マリコン・事業者に直接、「お墨付き」を与える制度を作ったという意味です。
マリコン(Wikipedia)〜ゼネコンの中でも特に海洋関係の土木工事・港湾施設・建築の建設工事を中心とする建設業者のことをいい、埋立・浚渫、護岸・防波堤、海底工事、橋梁基礎工事、海底トンネル工事など海洋土木工事全般および港湾施設の建築工事を請負う。(編集部)

この短い記事だけでも、この事業はさまざまな環境法に違反することは明らかで、深刻な影響をもたらすことがわかりすが、実は私は初めて聞きました。風発関係の団体は、この件を議論していたのだろうか…あまりに不可解なので、検索したら、
なんとこの法律、最初から「閣議決定」で制定することが決まっており、3月には法律案が閣議決定されていました。実質的には国会論議がないということだから、国民はこんな法律ができたなんてことを知るはずはありません。・・・だから誰も騒がなかったんだ。
 3月の時点で法律名も決まっています。「海洋再生エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」と。
(中略)
 はっきり言えば、これは、海外事業者を含む巨大マリコンに便宜をはかるための法整備です。国策事業として、建設にはまちがいなく多額の税金がつぎ込まれるはずで、下手すると、ただでさえ高い日本の電気料金もヨーロッパや南オーストラリア並みに倍増しかねません
問題は、これらの施設建設には、前代未聞の大規模な海洋環境の破壊が伴うこと。しかもCO2削減には何の役にも立たず、逆に機械製作、運搬、建設の過程で膨大なCO2を発生させること。さらに、「30年後」、あるいはそれよりずっと早く、膨大な風発産業廃棄物が発生すること。同法案はこれらの問題を完全スルーしています

 ところがこの法律案は、7月の時点で「審議未了」、いったん廃案となっていましたhttp://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DC842E.htm

 それが秋の臨時国会に再提案され、再び閣議決定された後、議会でもすんなり通過したようです…その間の経過は検索しても出て来ない。
(中略)
誤解している人もいるでしょうが、日本の産業界が求めているのはCO2削減ではなく、利益です
彼らは「ヨーロッパでは4000基以上の洋上風発があるのに、日本はまだ6基、しかも試験中」であることに大きな不満を持ち、日本での洋上風発を阻止している条件(漁業権、住民の自治権、環境保護への主張)をとっぱらおうとしているわけです。特に漁民の権利が狙われている
(以下略)



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自然エネルギーの草刈り場と化す関門地域 ビジネスのために脅かされる暮らし
転載元)
(前略)
 これら再生可能エネルギーに参入してくる企業の多くは、地域住民に電気を安定的に供給するという公的な目的からやっているのではない

安倍政府は2030年度の電源構成に占める再生エネの比率を22~24%とし、風力や太陽光、バイオマスに参入する企業を増やすためにFIT(固定価格買取制度)で20年間、その電気を高い価格で電力会社に買いとらせることを保証している。その国策の下で各企業が再生エネ・ビジネスにわれ先にと乗り込んできているのが実態だ。
(中略)
 これが風力発電になると、太陽光に輪をかけてひどい事態が生まれるということを専門家は指摘している。
風力発電は風速12~14㍍という、傘がさしにくく歩きづらいほどの風が吹くとき、はじめて効率よく発電する(定格出力)。風速3㍍以下のそよ風程度では風車が回っていても発電はできないし、砂埃が立つ風速6~7㍍でも定格出力の8分の1程度。一方、風速25㍍以上の暴風になると自動停止し、羽は破損しないよう風に平行に向きを変える。それ以上の強い風では、台風20号で淡路島の風車が倒壊したが、そのようなことも起こりうる。風がなくても、吹きすぎてもダメというきわめて不安定な電源であり、需要にあわせて発電量を調節することができない

 北海道の地震で道内がブラックアウトになったときも、風力は役に立たなかった。(中略)地震で主力の火力発電所がダウンしたさいに、同時に真っ先に解列(送電線から外されること)されるのが風力や太陽光だった。

 こうした緊急時に限らず、風力が多い北海道電力や東北電力は、風の強い日は火力の出力を下げるのではなく、風力からの送電を停止して対応している。風力は頻繁に変動するので、それにあわせて火力の出力を上げ下げするとよけいに燃料を食うからだ

大停電辞さぬ反社会性

 ようするに再生エネは、今のままでは電気の安定供給に役立たない。むしろ不安定供給をつくり出している。
役に立たないが、その電気を売ればFITの仕組みによって電力会社に高く買ってもらえる構造のなかで参入企業が後を絶たない
。それはもうけのためにはブラックアウトになってもかまわないという反社会性をあらわしている。FITでは、太陽光について1㌔㍗アワーあたり40円から20円に引き下げる動き(来年4月1日に稼働していない事業者対象)がある一方、洋上風力は同36円、バイオマスは一般木材バイオマスが同21~24円、間伐材由来の木質バイオマスが同32~40円と高い設定にしている。

 そしてこの高い買取価格を維持するために、すべての国民から「再生可能エネルギー促進賦課金」を毎月の電気料金の中に含めて徴収している。それはFITができてから上がり続け、現在一家族で毎月約1000~2000円である。洋上風力の乱立する欧州の例を見ると、今後桁違いに高くなることは容易に想像できる。

 結局、FITで参入企業には20年間の利益が保証される一方、国民はその負担を押しつけられたうえ、風力発電の出す低周波音によって、めまいや頭痛、吐き気、不眠などで20年間も苦しまなければならず、漁場も破壊されて生活の糧を奪われる事態に見舞われようとしている。しかも欧州では、環境規制が強化されて風力はすでに頭打ちになり、風力の資材があまりにあまって、その在庫処理を日本が押しつけられている関係にほかならない。
(以下略)

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