*まるっと◎なんくるないさぁ~* あい∞ん在宅看取り介護1

 いつも時事ブログに可愛らしい挿絵を提供して下さる、あい∞んさんが、先頃お父様を見送られました。病気の発覚、手術をされた後の在宅での看護、そして在宅での看取りを経験されたそうです。
 日本もいよいよ高齢化社会に入り、身近な方の看取りは珍しいことではなくなりました。そして、やがて来る自分自身の最期のことも考える時、にわかに「在宅」というキーワードが現れます。
 「在宅」での最期はご本人にとっても家族にとっても理想的なように思えます。実際はどうだろう? あい∞んさんの体験やお気持ちはどうだったのだろう? 様々なケースがある中で、あい∞んさんに当時のお話を伺うことにしました。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

————————————————————————
あい∞ん在宅看取り介護1

Q.あい∞んさん、さっそくですがお父様の闘病はどのようにして始まったのですか?

 病気が見つかったきっかけは、排便の具合に変調があったことでした。
平成28年3月頃のことです。
検査の結果「直腸癌」と診断され、手術をして腫瘍を取り除く事になりました。診断の説明があった時、私は同伴していなかったので、診断の内容がよく分からず、父と母に「手術する以外の方法は無いのか聞いてみた方がいいよ。手術した後で困った事になった場合は取り返しつかなくなるだろうから…」と伝えてはみましたが。。。。

結局、両親の意思で、平成28年3月8日に入院し、翌日に手術。
87歳での大きな手術だったし、薬に対する耐性が弱い体質だということが過去の手術の経験から分かっていたので「麻酔から戻ってこれるかな」など、とても心配でしたが、その手術は無事に乗り越えることができ、終わった時はひと安心でした。

手術は無事に終わりました


 けれども、手術の後の父は可哀想な様子でした。
やっぱり大きな開腹手術でダメージが大きかったらしくて、、、発熱が続き、認知機能も急激に低下して、食事や会話もうまくできなくなっていました。

食事の際にお膳を前にぼぉ。。。としたり、お箸が解らずメガネで食べようとしたり、、、



何よりも、直腸付近を大きく切除した為、人工肛門(ストーマ)となり、排尿が不調になってしまった(膀胱の残尿が多かった)ことは問題でした。
泌尿器科の先生からは「尿の袋をつける手術」を勧められましたが、、、
一度手術を受けると再び袋を取り外す事は出来ないとの事。その他の方法をお訊きしたところ、一日三度、残尿をカテーテルで尿瓶に出す方法もあるとの事でした。

何としても尿の袋までさせたく無かった私は「退院したら私がカテーテルで残尿を出しますので、手術しなくて大丈夫です。」とお断りしたのでした
その後、ゆっくりと父は回復へと向かい、認知機能も戻り、4月20日に無事退院して自宅へと戻ることとなりました。

ストーマ用装具


Q.大変な手術でしたね。あい∞んさんは、どうして「尿の袋をつけさせたくなかった」と思われましたか?

 手術後の入院中に外科の主治医の先生から、父の身体の状態について初めてお聞きしたのですが、手術をする時点で、確かステージ4を越していたと記憶しています。
『患部は全部完全には取り除けていなくて、余命も一年あるかは解らないです。』と仰った。。。。『それだったら何も大きな手術をして人工肛門にしなくても、他に選択肢もあったんじゃないの?!』と、いろいろと腹立たしく思ってしまった記憶があります。最初に、手術に不安を感じたことが当たってしまったように思いました。

尿の袋の手術も、父のためになるというよりも、治療上は当然こうするもの、と一方的に宣言されて冷たく感じました。ストーマの他に尿の袋と、2つも装着することがとても自然なこととは思えませんでした。


Q.お父様を守るような気持ちで、カテーテルを選ばれたのですが、あい∞んさんはお世話は自分でやれる!というお気持ちでしたか

家は自営業で、母は家業で忙しい身なので、私が父のことを頑張らないと…と思いました。家には、両親の他は、私と愛犬だけ、別世帯で進学した娘や私の兄家族は居ますが、現実的に介護ができるのは私だけでした。

退院が決まると、帰宅してから必要になる様々な準備や手続きに追われて、けっこう忙しかったです。訪問看護を受けるための手続きや、ストーマの取り扱い方や、残尿をとる為のカテーテルの取り扱い方など学んだりしました。

訪問看護のための手続きについては、手術をした病院内に「在宅ケア科」という部門があって、在宅へのいろんな相談を受け付けていました。
看護師さんと相談する中で、家のお風呂の状態を確認され、洗い場がタイルで滑りやすい、湯船は石で出来ていて深いので、手すりや風呂用の頑丈な椅子が必要だということが分かりました。それならば、と、必要な福祉用品の割引きが受けられ、しかも看護師さんの訪問が受けられる介護保険に入ると安心だと勧められました。

ケアマネさんの確認の結果、父親の身体の状況は「要介護2」となりました。
退院後は、月一回の主治医の診察とは別に、週一回月曜日に、手術をした病院の看護師さんが自宅に訪問看護に来て下さることになりました。


説明しよう!
【地域包括ケアシステムと地域包括支援センター】とは?

 あい∞んさんのお話の中に、「訪問看護」「在宅ケア」「ケアマネさん」という言葉が出てきます。介護者が身近にいないと、これらの言葉やシステムには馴染みがなく、よく分かりませんね。ここで少し調べてみました。


「地域包括ケアシステム」とは、
 団塊の世代が75歳以上になる2025年以降は、国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれています。
国の見解では、少子高齢化とともに税収が減少する一方、医療介護の社会保障費が予想以上の速さで増大してゆくため、介護保険や医療保険などの公費だけで高齢社会を支えるのは無理だと見積もっています。

そこで国は、医療と介護を病院などの施設で行うものから、在宅で行うものへと切り替え、

「高齢者になっても住み慣れた地域で、自立した生活を最期まで送ることができるように、必要な医療、介護、福祉サービスなどを一体的に提供し、すべての世代で支え・支えられるまちづくりをする」

という「地域包括ケアシステム」に切り替えてきました。


つまり財政上の理由から在宅医療を推進してきた背景があります。これまで、社会福祉は「自助・互助・共助・公助」の4つをバランスよく組み合わせるものとされてきましたが、今後は「互助」と「自助」の役割を一層高めようとする考え方が「地域包括ケアシステム」と言えます。
有り体に言えば、家族や地域で助け合ってください、ということでしょう。

けれども公費削減という負の側面ばかりではなく、運用次第では、住民が主体的に参加し、自由に意見を出し、個々のケースに応じて主体的に高齢者を支えるものになる可能性もあると言われています。

「地域包括支援センター」とは、
高齢者の生活に対して必要な援助・支援を総合的に行う相談窓口
です。

保健師・社会福祉士・主任ケアマネージャーといった専門職が配置されており、専門知識を持った職員が、高齢者が住み慣れた地域で生活できるように様々な相談に応じます。介護保険の申請窓口も担っています。
「ケアマネさん」は、ケアマネージャーさんの略ですね。


設置主体は市町村ですが、自治体から委託される形で、社会福祉法人や企業など様々なケースが見られます。
あい∞んさんの場合は、手術をされた病院内に併設されていたケースのようです。幸いご本人はあまり意識せずにサービスを受けられる事になったようですが、こうした支援サービスがあることを知らずに、介護を任された人が途方にくれることもあるそうです。
また、この分野もニーズに見合うだけの人手が不足しているという問題があります。

地域包括支援センターは、大まかに以下の業務を行っています。

〔総合相談〕
高齢者やその家族、近隣に暮らす方の介護に関する相談や心配ごと、生活に関することなどの相談。必要に応じて訪問も。

〔権利擁護〕
悪質な訪問販売や高齢者虐待の防止など、人権や財産を守るために、高齢者やその家族を支援。

〔介護予防ケアマネジメント〕
介護保険で「要支援1」「要支援2」と認定された方の介護予防ケアプランを作成。
介護状態になることを予防するためのサービスの紹介。

〔包括的・継続的ケアマネジメント〕
高齢者の方がより暮らしやすい地域にするため、さまざまな機関とのネットワークづくりをする。
医療、保険、介護分野の専門家や地域住民で、その地域に暮らす高齢者などの課題解決に取り組んだり、調整。具体的には、話し合いの場、地域ケア会議の開催など。


さて、あい∞んさんのお父様は「要介護2」と判定されたようです。
高齢者が介護サービスを受けるためには、住まいのある市区町村から介護保険の認定を受ける必要があります。
認定は介護を必要とするレベルによって7段階に分けられ、要介護度の低い方から「要支援1」「要支援2」、それから「要介護1」〜「要介護5」の段階となっていて、要介護度の高い方がより手厚いサポートを受けられるようになります。

このうち「要支援1、2」は、2015年の改正介護保険法によって介護保険の適用範囲から外れ、市区町村のサービスへと切り替わることになってしまいました。

【介護認定までの流れ】
① 地域包括支援センターに連絡を入れる
 ↓
② 要介護認定の申請をする。
 ↓
③ ケアマネジャーの訪問調査を受ける
 ↓
④ 申請結果を受け取って、居宅介護支援事業所へ連絡
 (要支援1〜2の方は、地域包括支援センターへ)
 ↓
⑤ ケアプランの作成
 ↓
⑥ サービス事業者との契約

「要介護」に相当する状態は、日常的に誰かの介助が必要で、家族やケアする人が疲弊してしまう可能性が高いです。「要介護」の認定を受けると「デイサービス」と言われる通所介護、訪問介護、特別養護老人ホームなどを利用する入居・住居系介護、「ショートステイ」と言われる短期滞在型介護などのサービスが利用できるようになります。
あい∞んさんの場合は、訪問介護を利用されたのですね。




「なんくるないさー」は、挫けずに正しく歩むべく努力すれば、いつか良い日が来る、という意味だそうです。生きている中で沢山の色々な事が起こるし、沢山挫折もするけど、「まるっ」と今を受け入れて、「なんくるないさぁ~」を心の杖にして生きれたなら良いな~♪
(あい∞ん)


Comments are closed.