ままぴよ日記 57 「コロナ禍での子育て、頼りは除菌グッズとネット情報?」

 30代後半、40代の新米ママが増えました。出産前まで仕事をバリバリしていたママ達です。
 「コロナ禍でできることは、ネットで情報を集めて発達や学力に効果があるという知育玩具を与えること。そして積極的に効率よくトレーニングしてより良い子に育てようと思います」と話してくれました。

 「なぜ?どんな人になってほしいの?」と聞いたら「自分の考えをはっきり言える人になってほしいから」と答えてくれました。「え?じゃあ、知育玩具を与えてトレーニングしたらそうなるの?」と聞いてしまいました。

 意地悪な言い方をしたなあ~と反省したのですが「赤ちゃんは何をしたいのかな?赤ちゃんの言いたいことを探ろう」というワークをしたばかりだったので思わず聞いてしまったのです。他のママ達も「そんな事、深く考えたことなかった」と不安げです。

 「答えはすぐには出ないよ。子どもに合わせて考え続けよう。一人ひとり違うから」と言ったら安心してくれました。
 そして、みんなで赤ちゃんに「ママはわからない事ばかりです。どうぞよろしくお願いします」と言って笑いました。

追伸:スーパー台風10号が我が家に向かって近づいています。これを書きながらも落ち着きません。最大瞬間風速80メートル?もうどこに逃げてもお手上げです。ブルーシート、養生テープ、ベニヤ板、水を買い求めて量販店は大渋滞。この記事が掲載される頃には覚悟を決めていると思います。4日の時事ブログに掲載された自分の体に聞く検知方法とぺりどっとさんが以前の記事で書いてくださっていた三脈の法で24時間の生存を確認しながら、神様に祈り続けます。皆様のご無事も祈ります。
(かんなまま)
————————————————————————

新生児を持つママ達のセミナーの開催


新型コロナウイルスの感染を避けるために子育て広場の行事もキャンセル続きでしたが、子育て中のママ達に支援の手が全く届かなくなるのも問題なので少しずつ再開することにしました。

まず第一子の新生児を持つママ達のセミナーを始めました。参加人数を半分にして時間も短縮しました。マスク着用、お互いの距離を取り、換気をしながらの開催です。こんな時期だからこそママ同士で話したいことがあるだろうし、私達も伝えたいことがあるのでプログラムの内容も吟味しました。口コミの勧誘が難しく、申し込んでも赤ちゃんを外出させることをためらって断念するケースも見られましたが、すぐに定員が埋まってキャンセル待ちも出ました。

今回のセミナーは緊急事態宣言の頃に出産した人が対象で、お産の時はもちろん、パートナーの面会も制限されていたママ達です。退院しても移動の制限があったので里帰りもできず、実家のお母さんも手伝いに来られなくて孤立無援で頑張っています。

「他の赤ちゃんに初めて出会えました」と嬉しそうなママ。でも、「最近寝返りができるようになったのですが、夜中に寝返りされたら心配なので寝返り防止のために2リットル入りのペットボトルに水を入れて赤ちゃんの両側を囲っています。それでも乗り越えるようになったのでどうしたらいいですか?」と心配顔です。「赤ちゃんが自力で寝てくれるようにネントレ(ほっといて眠るトレーニング)しているのですが、うまくいきません」と、赤ちゃんにはトレーニングが必要だと思っているようです。


なぜそう思うのか聞いてみると、どちらもネットに書いてあったとの事。「うつぶせになったら窒息する」「目を離せない。心配で眠れない、家事ができない」などなど赤ちゃんがどんな存在なのかも知らずに孤軍奮闘しているのです。

特に第1子を出産したばかりのママ達は人との交流が閉ざされて頼りはネットです。子育てが激変しているのを感じます。母乳をやってもすぐに泣くし、体重がどのくらい増えているのか不安だから母乳を断念するケースも増えました。

抱き方もあっという間に縦抱きが主流になりました。首の座っていない赤ちゃんにとって頭を支えるのはとても負担です。でもおしゃれな縦抱き用の抱っこベルト発売されるようになって、自分の手で横抱きにしているママを見なくなりました。



いいも悪いも最初に出会った情報はその後の子育てに大きな影響を与えます。人と交流しながら見よう見真似で我が子と触れ合い、感じ合い、わかり合うことではぐくんでいく子育てと、宣伝やネットの情報に合わせていく子育ては主役が違います。このまま無責任なネットの情報だけで子育てが進んでいったら怖いと思いました。

抱っこしながら寝てしまった赤ちゃんを下ろす時もごろりと置くので赤ちゃんが目を覚まして泣きます。相手の身になったらこんな置き方はしないと思うのですが、赤ちゃんの立場に立った想像ができないママが増えました。ひとつひとつ仕草で伝えなければいけないのを痛感します。

最後までママの肌が赤ちゃんから離れないようにママの体ごと布団に近づけながら赤ちゃんと呼吸を合わせて気を残しつつ・・・赤ちゃんがフッと力を抜いてから離れる技は達人の域。これは誰から教えらえたわけではなく、赤ちゃんの安心を探りながら会得したものですが、その発想がないママにとって「これは腹筋を使うからお腹が早く元に戻るのよ」という効果をアピールしながら教えるとやる気を出してくれます。以前はエクササイズをしなくてもこういうことで体が戻ったものです。


腱鞘炎や腰を痛めるママも多く、整骨院に通っているという話をよく聞くようになりました。抱き方の基本の基を知らない。抱くための背筋力がないのかもしれません。

その代わり電子母子手帳が増えて、赤ちゃんの記録はもちろん子育て情報が配信されるようになりました。体温、ミルクの量やおしっこの回数、便の回数を記録するアプリが大流行で画面をみながら量や回数をチェックしています。

いちいち検温しなくても抱いた時にいつもより熱いことがわかります。おっぱいも欲しい時にあげます。おしっこもおむつを外しているなら回数を把握できるけれど、何の意味があるのでしょうか?益々赤ちゃんを見るというより数字で判断するようになってしまいます。

そして何をするにも消毒が激しくなりました。離乳食を食べさせたりする時も布巾は消えました。テーブルに置いていても使いません。携帯の除菌シートで何でも拭きます。除菌しすぎて手がカサカサになっています。なんでもお口に持っていく赤ちゃん。おもちゃも赤ちゃんのおてても除菌じょきん!。大切な腸内細菌まで殺してしまいます。


コロナ禍での子育て広場の存在


コロナ禍の子育て。スタッフは赤ちゃんを抱いてはいけないという広場も多いようです。子育ては肌と肌のふれあいがとても大事だと言い続けていないと一瞬で子育ての文化が変わっていくような気がします。

現実、ウイルス感染が怖いので子育て広場に行くのをためらっているママも多いようです。そしてもう一つ、ためらう理由が浮かび上がってきました。「上の子が悪いので迷惑をかけるかもしれませんが来ていいですか?」という問い合わせが増えたのです。

実際、家の中で騒いで困らせる子どもが増えたようです。どこにも行けないのでエネルギーが溜まって騒いだり走ったりするのでしょう。親にとっては家に居ても大変、外出しても周りに迷惑をかけるので大変。子育て広場に来ても気を遣うママ達。いつも謝ってばかりで気が休まりません。

「そのための広場ですよ、いらっしゃい」というと涙がぽろり。多分、マンションなどで下の階の人に気を使って暮らしているのでしょう。子どもを叱ってばかり。子どもはますます言うことを聞かなくなるし、怒ってばかりの自分も嫌になる・・・というパターンです。

来てみると、確かに落ち着きません。赤ちゃんがいても走り回ったり、棚に登って飛び降りたり・・・。加減がわからないようです。他の来場者に危害が及ぶので支援者によってはそんなママ達や子どもをブラックリストに載せて排除しようとします。でも、そんな親子ほど支援が必要なのです。

私達の広場のように庭が併設されていると「赤ちゃんを預かってあげるからママと外で遊んでおいで」と言ってあげられます。子どもは喜んで外に出ます。でも何をしていいのかわかりません。「虫を捕まえたら?」と言ったら「捕まえて!」。「アミを使ったら?」と促したら「アミを取ってきて!」「手でバッタを捕まえたら?」「嫌だ」…という調子。

遊んだことがないのです。でもママと2人で楽しかったのでしょう。さっそくアミとかごを買ってもらったようです。次の日、嬉しそうにやってきました。そしてブンブン振り回していたら捕れた!自分で捕まえたのです。それからは夢中で外遊びをするようになりました。いつの間にか部屋で走ったり飛び降りたりすることはなくなりました。ママの笑顔も戻りました。周りのママ達も「うちの子もそうだったのよ」と共感して見守り合う関係ができてきました。


外遊びは子どもにとって最高の遊び場です。未知の世界が広がり、不思議なものにあふれています。土、水、泥、葉っぱ、虫・・・好奇心を満たし、多様性を学び、達成感を味合わせてくれます。自らの5感が育ちます。自分で決めてチャレンジすることばかりです。失敗もします。でも、自分で決めた事で失敗したら本当の学びになります。

問題児とされていた子ども達の情緒がみるみる安定していく様子を見ていると、いかに今の生活が子どもの成長を邪魔しているのかがわかります。


自然遊びは子どもの育つ過程に必須


ボストンやオーストラリアに住んでいる孫たちもしかりです。日本より身近に自然があり、小動物達と出会えるのでコロナ禍にあっても幸せそうにしています。教えていないのに虫を大事そうに扱って話しかけています。お姉ちゃんとケンカしたり弟をいじめたりしていたお兄ちゃんは図鑑を持ち歩いて生物博士気取りです。今では面倒見のいい先生になって何でも弟に教えています。人間の力だけでは育てられない世界観です。子どもの育つ過程に自然遊びは必須です。そういう環境がなければ意識して作る必要があります。


日本でも自然遊びを幼児教育や保育に取り入れ始めた自治体が出てきました。特定の子どもが特定の園やプレーパークで体験するのではなく、すべての子ども達に体験させたいというコンセプトです。

長野県では子育て先進県を実現するために信州型自然保育認定制度をスタートさせました。「信州やまほいくの郷」という愛称で長野県が独自に自然保育を推奨して支援するための認定制度です。

全ての保育園、幼稚園、子ども園、無認可の園が対象です。特化型と普及型があり、特化型は1週間で15時間以上屋外の体験活動をすること。2年以上の自然体験の指導経験がある常勤の保育者が半数いる事。更に安全管理の講習を受けた常勤の保育者がいる事が条件です。普及型は1週間で5時間以上の屋外体験活動をすることが条件です。
https://www.shizenhoiku.jp/nintei/

外遊びは怪我が付き物。責任を問われるし、そんなリスクは犯したくないという園も多い事でしょう。子育てには自然遊びが大切だという方針の下、県が支援者の育成も含めて全面バックアップしてくれる制度です。

外遊びは教育でも保育でもないと反対していた園長先生方も、子どもが自然の中で自発的にやりたいことを見つけ、創造性と社会性を学んでいる姿を見て方向を転換し始めたそうです。子どもが落ち着き、今では長野県下210園が認定を受けているとの事。

そして、子育て先進県を目指していたらそれに関心のある人が集まってきます。自然豊かな長野県への移住者が増えているそうです。今やリモートワークの時代です。どこで子育てをするのか?どこで暮らしたいか?選べる時代になってきました。

Author:Koichi_Hayakawa[CC BY]
長野県 戸隠・鏡池の紅葉

それと同時にトップの意識も変わります。県知事、県下の市長、教育長も子育ての大切さを理解して今後の学校教育にも反映させたいと思い始めたようです。前回紹介した新しい形の幼・小・中学校、風越学園も長野県です。

ちなみに「森と自然の育ちと学び自治体ネットワーク」も2018年に長野県、鳥取県、広島県の知事が発起人になって始まりました。最近では196自治体(16県、103市町村)が参加して森と自然を活用した保育・幼児教育の質の向上、環境充実等についての情報共有と研究を進めながら自然保育の全国への普及推進を目指しているようです。
https://www.facebook.com/moritoshizen/

全ての子ども達がその恩恵を受ける日が来ますように!


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
かんなままの子育て万華鏡はこちら



Comments are closed.