今改めて問われる2000年「指南書問題」〜 記者クラブ、政治家と特殊な関係を続けるNHK政治部、メディアの事なかれ主義

読者の方からの情報です。
 2000年の森喜朗政権時代、森首相が記者会見で記者の質問をはぐらかすための「指南書」とも呼べる文書を、西日本新聞の記者が発見したというものです。これは政治ドラマのようなスリリングな展開でした。2000年5月当時、神道政治連盟の祝賀会で森さんが「日本は神の国」発言をしたところから記者会見を開く羽目になったというのを思い出しました。オリンピックでまた妖怪のように現れましたね。
 その首相に、はぐらかしのアドバイスを忖度した天下の国営放送の、当時の海老沢会長は有名です。道理で菅さんが、鋭い質問をする東京新聞の望月記者を平気で無視するわけです。西日本新聞、長周新聞、原発取材を出版した新潟日報社さんなど地方紙が光りますね。
(ニーナ)
 ニーナ様が「政治ドラマのようにスリリング」と書かれていましたが、確かに立岩陽一郎InFact編集長の取材による「指南書問題」は、政治と報道、記者クラブの根深い問題を生々しく伝えておられました。
当時、この記事を世に送り出すことがどれほど大変だったか、ゾクリとする感覚で伝わりました。日常の仕事を共にする「仲間」を裏切る形にしてしまう記者クラブという組織。この記事を出した後も記者クラブで働く中では当然「仕返し」が予想され、実際に告発した相手は、通常のメディアと比較にならない情報量を持ち、政治家との間を取り持つ権限も持つNHK政治部でした。波風を立てずに仕事をするならば、NHKに楯突くことはありえないのでしょう。西日本新聞のキャップがNHKのキャップに「指南書問題」の記事を打診した際のやり取りは、その暗部を見せつけられたようでした。このシーンだけでも書かれなかった記事、消された記事が膨大にあることがうかがえます。政治家と長期にわたって特殊な「えも言えぬ関係」を持つNHK政治部は、権力の監視どころか、権力擁護のために政治家に指南までしてしまうことが当然になっていました。「指南は問題ない、証拠を残したことが問題だ」という認識を平然と語っています。「指南書問題」では西日本新聞が記事にすることができました。しかし、他社はこの時、同じ問題を知りつつ「うちは書かない」と、記事にできませんでした。
 腐りきったメディアに失望し諦めてしまいそうになりますが、立岩氏はなお「心ある記者」に期待し、この「指南書問題」の再検証をすべきと訴えています。なぜならこの指南書の内容こそ、今に至るまでずっと利用されている「記者封じ」だからです。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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配信元)


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窮地に陥った首相に政権延命の策を指南した記者がいた 21年を経て元NHK記者らが語った「指南書問題」
引用元)
(前略)
森喜朗首相が「神の国」発言の釈明記者会見を開く前日の朝、首相官邸記者室の共同利用コピー機のそばに「明日の記者会見についての私見」と題した文書が落ちているのを見つけた。ワープロ打ちされた感熱紙。一読して、首相周辺にあてた翌日の記者会見対策用の指南書と分かった
(中略)
その後、複数の政治部OBからも、NHKの公式な発言を否定する言葉を得た。その中には、それって、政治部記者なら誰だってやるだろうと、指南書を書いた記者を擁護する言葉も聞かれた。

「ニシビ(西日本新聞)の奴ら、あれを書くかね?うちとニシビは特に仲が良かったんだ。それをあいつら、よりによってあんな記事を書いて、許さんね

こう話すNHKの政治部OBもいた。そのOBによると、NHKと「ニシビ」は記者クラブの席が背中合わせで「互いに持ちつ持たれつでやっていた」という。
(以下略)
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記者が首相に政権延命の方法を助言した「指南書問題」 21年を経て問われる政治報道の「守るべき一線」
引用元)
(前略)
NHKの政治部記者が持っている情報は凄いんですよ。他の大手メディアの3倍くらい有ると思う」
そして続けた。
でも、書かない
書かないから情報を得られるということも有るのだろう。ある新聞社の政治部OBからこんな話を聞いたことが有る。

「裏コンていうのが有るんですよ。その参加メンバーを決めるのは多くのケースでNHKの記者なんですよ」
裏コン・・・。裏の懇談ということだ。(中略)政治部取材は懇談という形式をとることが多い。(中略)誰を集めるか?メディア側からすれば、誰が参加できるか?その多くで、NHK記者が仕切っていたという。つまり、誰が参加できるかをNHKの記者が決めるということだ。それだけNHKの記者は政治家から信頼されているということだ。
(中略)
NHKは、この「指南書」を再調査すべきだろう。そして関与を認めた上で、OBが語ったように、「改めるところは改めるという総括を、組織として」行うべきだ。それができればNHK政治部は変わり、それによってNHK全体も変わるのではないか。

そしてこの問題を通じて感じるのは、問題の根深さだ。「指南書問題」が突きつける刃はNHKだけに向かっているわけではない。この問題を不透明なまま終わらせた責任の一端は官邸記者クラブにある。NHKだけではない
(以下略)

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