メガソーラーなど再エネ事業による地方の経済植民地化が進行している 〜 全国再エネ問題連絡会が結成、各地の反対運動を繋いで豊かな自然を守る法整備を

読者の方からの情報です。
 政府の脱炭素政策(カーボンニュートラル)によって太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーへの切り替えが各地で推進されました。脱原発への流れも加わって、日本の山肌を大規模に削って醜く覆うメガソーラーパネルが急増しました。しかし一方でそれらは土砂災害や水質汚染の原因となる危険も指摘され、さらにFIT(再エネの固定価格買取制度)認定による売電権(ID)は投資商品となるため、住民の意思を無視した再エネ事業者による強引な開発が引き起こされてもいます。現状は再エネ事業を規制する法整備がないため、自然破壊や廃棄物、有害物質の処理などは野放しでした。
痛ましい熱海の土砂災害のあった昨年、「全国再エネ問題連絡会」が結成され、今年6月には第1回全国大会があったと長周新聞が報じました。各地で個別に立ち上がる住民の反対運動を連帯し、安全な住民生活や豊かな自然を守るための法改正を実現しようという目的です。
 各地からの報告はいずれも重大な問題を伝えていました。宮城からは国と県が結託してペーパーカンパニーの事業者の違法行為を見逃していること、北海道からは地元には全く利益にもならない風力発電による健康被害や環境破壊、岩手からは市長が住民を裏切るような契約を事業者と交わし、違法行為まで行っていたこと、埼玉からは「森林文化都市宣言」をしている市で、森林伐採をともなうメガソーラー事業を住民の反対を無視して行い、その売電収入で無駄なサッカー場を作ったこと、長崎からは、手つかずの美しい自然の小さな離島に大企業の合同会社が島の4分の1にも及ぶ面積に165万枚のパネルを設置するという日本一の規模の事業を勝手に決め、島民の反対を押し切り強引に工事着工をしていること、そこではすでに外資などでIDの転売が繰り返され、事業の実現も責任の所在も不明のままで巨大な風車や大量のパネルの残骸が押し付けられていることなど、どこの地方にも起こりうる無残な成り行きです。長周新聞の元記事で各地の具体的な報告が読めます。
 いずれも行政が利権優先で無責任を決め込んでいますが、読者の方の情報では「山梨県は相当先進的な条例で規制をかけている」そうです。「山梨県は基本的に太陽光をつくらないという条例をつくった。知事はこれで民間事業者に訴えられても正面からたたかう、判例をつくるといっている」と長周新聞でも伝えています。山梨県では外資など民間事業者の経済植民地になることを拒否しています。
 ただ、こうした再エネ事業の問題に取り組む人々の多くが「原発再稼働一択」の解決策しか訴えていないことは短絡的にすぎると思われます。この点での政治利用に注意が必要なことを読者の方からも指摘いただきました。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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配信元)
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全国再エネ問題連絡会が第1回全国大会 「企業の儲けのために人や自然を脅かすな」
転載元)
 全国再エネ問題連絡会は4日、東京都世田谷区の烏山区民会館で第1回全国大会を開催した。大会には、北海道の稚内から長崎県五島列島・宇久島まで、全国各地から住民団体や個人約250人が参加した。各登壇者の発言は、再エネ事業者が政府の脱炭素政策というお墨付きを得て、地方をターゲットに法律の不備を突いた悪質な行為をくり返し、FIT(再エネの固定価格買取制度)認定による売電権(ID)が投資商品として売買され、こうした一部の人たちの利益のために住民生活や豊かな自然環境が脅かされていることを明らかにした。大会はそれに規制をかけるための法整備を国に強く求めていくこと、そのためにも地域が一丸となって住民運動を起こし、全国が横につながって大きな世論にしていくことを確認した




 全国再エネ問題連絡会は、熱海で土石流災害が起こった昨年7月に結成され、現在全国40の住民団体が参加している。これまで各省庁への陳情や与野党の国会議員に対する働きかけをおこなってきた。大会ははじめに、同連絡会の共同代表・山口雅之氏(静岡県・函南町のメガソーラーを考える会)が挨拶に立った。

 山口氏は「今、全国各地でメガソーラーや風力発電に困っている人たちが反対運動を起こしている。しかし一つの地域の活動には限界があり、この問題を根本的に解決するには国の法改正が必要だ。そこで全国の団体の多くの賛同をえて連絡会を立ち上げた。この間の私たちの運動で、与野党のなかでも現行法には不備があるという意見が広がっている。みなさんの力で法改正をおこない、社会不安のなかで反対運動をしなくていい日本を一日も早くつくっていきたい」とのべた。

 パネリストは、国の温暖化対策として再エネが進められているが、実際は森林を伐採して土砂災害を引き起こし、地域の安心安全な生活を脅かしていることを問題にした。2012年にFIT制度が始まり、風力や太陽光を発電する事業者に高い買取価格を保証したことから、そこにもうけを優先する事業者が殺到し、住民生活や環境のことをなにも考えず突き進んでいることが原因だと論議された。また、廃棄物の問題も未解決で、処理が難しいレアアースを使うのでリサイクルもできないし、有害物質もずっと残ることを指摘した。

 鈴木氏は「明治29、30年に治水三法(河川法、森林法、砂防法)が制定されたときのことを思い出すべきだ。当時、政府が森林開発を推進した結果、森林が伐採され、土石流・河川氾濫が起こり、死者が出たり田んぼや畑が土砂でおおわれた。そこで治水三法ができた。山に降った雨は地面のなかに浸透し、沢に流れ、川が十分な容量を流すことができてはじめて災害が防げる。その基本を忘れてはだめだ」とのべた。

 また、「日本には国土利用計画法という法律がある。それにもとづいて各都道府県が条例をつくることができるし、実際にこれを使って太陽光や風力を止めている。山梨県は基本的に太陽光をつくらないという条例をつくった。知事はこれで民間事業者に訴えられても正面からたたかう、判例をつくるといっている」と、地方自治体のたたかいを紹介した。

 山本氏は「事業者が地元の意見を金で買う。まともな交渉をしたら反対が出るからと、自治会の数人で検討委員会をつくらせ、彼らに印鑑を押させて、地元住民は後になって知り、手遅れになるという事例をたくさん見てきた。地域の同意をお金で買うことを絶対に許してはならない。再エネ事業に法治が生かされず、金と権力が動いている」と指摘した。

(中略)

参院選に向けて 各政党に対し態度問う

 こうした問題をどう解決していくのかをめぐって論議が深められた。

 日弁連の小島智史弁護士は、日弁連の公害環境委員会のなかにメガソーラー問題検討プロジェクトチームを立ち上げたと報告した。法律がなぜ機能していないか検証し、意見書として法改正を提言していくためだ。

 とくに森林法では住民同意のしくみがないことや悪質業者の許可取り消しの項目がないことの改正、FIT法では売電権の転売の規制をもうけること、環境アセス法では事業者に対する強制力がなく、罰則をもうけることなどを検討しているとのべた。

 続いて室谷共同代表が今後のとりくみについて発言した。室谷氏は、「そもそも現在、乱開発を止める法律がない。法律の手続きを踏めば大規模開発が進んでしまう現実がある。もちろん違法行為や脱法行為もたくさんあって、国や自治体の規制が効いていないという問題もある。しかし、だからといって再エネは絶対止められないというわけではない。地域で声を上げ、声を地域に広め、自治体や議員と一緒になって一丸として反対の声を上げたところで大規模事業をストップさせている事例がたくさんある。法改正だけでなく、乱開発を地域を挙げて止めていくということにも連絡会は力を注いでいきたい。いろんな団体の経験が集まり、それを各地が共有することで大きな力になる。開発を止めたいと思っている地域を一つももらさない。反対の意志表示をする声が各地で広がっていき、国民の総意になるまで頑張ってやりきりたい」とのべた。

 今後のとりくみとして、「6日には経産・環境・農水・国交四省庁の“再エネ導入に関する検討会”に山口共同代表が参加して意見をのべる。8日には自民党の“真の地産地消を構築する議員連盟”の総会に参加して意見をのべる。また、再エネ問題を今月の参院選の争点の一つにするよう、各政党に対する働きかけやアンケートも進めていきたい」とのべた。

 最後に大会アピールを確認して終えた。大会アピールはこう謳っている。

 「今日、地球温暖化対策の大義名分のもとに、大規模自然破壊兵器と化したメガソーラーや風力発電が、地域住民の健康やこれまでどおりの安心安全な生活を脅かしている。投資家や事業者の財産権や営業の自由ばかりが重視され、この国が持つ宝でありこれまで守り続けてきた多くの希少な資源を無残にも失い、そこに住む住民の生存権が軽視されている。外資系による巨大プロジェクトには、日本の経済安全保障にかかわる脅威が存在する。本日発表されたものはごく一部であり、すでにとり返しのつかない乱開発は全国各地でおこっている。国民が一致団結し、これらの問題を一日も早く解決しなければならない

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