竹下雅敏氏からの情報です。
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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12月24日緊急5分メッセージ
配信元)
YouTube 22/12/26
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日本の農畜産業の危機と打開策――食料生産守ることこそ安全保障の要 東京大学大学院教授・鈴木宣弘氏の講演より
転載元)
長周新聞 22/11/28
(前略)
現場はすでに限界をこえている。これ以上の放置は許容できない。
①生産資材の高騰
一昨年に比べて肥料2倍、飼料2倍、燃料3割高といわれる生産コスト高。
②農畜産物の販売価格の低迷
コストが暴騰しても価格転嫁できない農畜産物価格の低迷。酪農では乳価の据え置き。
③副産物収入の激減
追い討ちをかける乳雄子牛など、子牛価格の暴落による副産物収入の激減。
④強制的な減産要請
在庫が余っているからといって、これ以上搾乳しても授乳しないという減産要請。酪農家は搾ってこそ所得になるのに、搾っても受けとってもらえない。
⑤乳価製品在庫処理の莫大な農家負担金
脱脂粉乳在庫の処理に北海道だけでも100億円規模の酪農家負担が重くのしかかる。
⑥輸入義務ではないのに続ける大量の乳製品輸入
「低関税で輸入すべき枠」を「最低輸入義務」といい張り、国内在庫過剰でも莫大な輸入を継続する異常事態。
⑦他国で当たり前の政策が発動されない
コスト高による赤字の補填、政府が在庫を持ち、国内外の援助に活用するという他国では当たり前の政策がない。
(中略)
すでに始まっている食料危機に対応するためには、政府が掲げる「輸出5兆円」や「デジタル農業」といった夢物語ではなく、足元で踏ん張っている生産者を支えて国内の食料を守ることが先決だ。
食料(63%輸入)、種(90%輸入)、肥料(化学肥料は100%輸入)、餌(60~80%輸入)をこれだけ海外に依存していたら、国民の命を守れない。
(中略)
現場はすでに限界をこえている。これ以上の放置は許容できない。
①生産資材の高騰
一昨年に比べて肥料2倍、飼料2倍、燃料3割高といわれる生産コスト高。
②農畜産物の販売価格の低迷
コストが暴騰しても価格転嫁できない農畜産物価格の低迷。酪農では乳価の据え置き。
③副産物収入の激減
追い討ちをかける乳雄子牛など、子牛価格の暴落による副産物収入の激減。
④強制的な減産要請
在庫が余っているからといって、これ以上搾乳しても授乳しないという減産要請。酪農家は搾ってこそ所得になるのに、搾っても受けとってもらえない。
⑤乳価製品在庫処理の莫大な農家負担金
脱脂粉乳在庫の処理に北海道だけでも100億円規模の酪農家負担が重くのしかかる。
⑥輸入義務ではないのに続ける大量の乳製品輸入
「低関税で輸入すべき枠」を「最低輸入義務」といい張り、国内在庫過剰でも莫大な輸入を継続する異常事態。
⑦他国で当たり前の政策が発動されない
コスト高による赤字の補填、政府が在庫を持ち、国内外の援助に活用するという他国では当たり前の政策がない。
(中略)
すでに始まっている食料危機に対応するためには、政府が掲げる「輸出5兆円」や「デジタル農業」といった夢物語ではなく、足元で踏ん張っている生産者を支えて国内の食料を守ることが先決だ。
食料(63%輸入)、種(90%輸入)、肥料(化学肥料は100%輸入)、餌(60~80%輸入)をこれだけ海外に依存していたら、国民の命を守れない。
(中略)
2014年のバター不足を教訓に始めた「畜産クラスター事業」で、「牛も設備も倍増させよ」という政府の方針に従って、農家は借金をして規模拡大、増産を進めてきたのに、今度は「在庫が増えたから搾るな、牛殺せ」という。二階に上げておいてハシゴを外すことであり、農家に負担させる方向が強まっている。
(中略)
米国・カナダ・EUでは設定された最低限の価格で政府が穀物・乳製品を買い上げ、国内外の援助に回す仕組みを維持している。そのうえに農家の生産費を償うように直接払いが二段構えでおこなわれている。この差はあまりにも大きい。
(中略)
逆にやっていることは、ホルスタインを1頭殺せば5万円、さらに第二次補正予算では1頭当り15万円払っていいから牛4万頭、4万頭減らすという。
今後、国際乳製品需給がさらにひっ迫することは目に見えている。価格高騰どころか、カネがあっても買えない事態がやってきているのに、「増産せよ」、「殺せ」、また「増産せよ」をくり返している。失敗から学ぼうとしていない。
農家苦しめ、膨大な輸入は継続
搾乳する酪農家
十勝農協連が公表したデータによると、北海道【表①】では、今年2月までの生産資材価格上昇で試算しても、200頭以上の専業的な大きな経営がすでに「搾れば赤字」の状態だ。それ以降の高騰を勘案すると、さらに赤字は膨らんでおり、このままでは大規模層から倒産の連鎖が広がることが現実のものになる可能性がある。
都府県【表②】では、100頭以上の経営が大赤字だ。とくに九州は、夏場と秋から春にかけての季節乳価差が大きいため、すでに全面赤字の様相を呈していると予想される。
(中略)
さらに今年、畜産大手の「神明畜産」(本社・東京)が575億円もの負債を抱えて倒産した。これが酪農家にも打撃を与えている。つまり乳牛(ホルスタイン)の肥育をしていた大きな経営が倒産したために副収入源である子牛の買い手がなくなり、市場によっては1頭110円にまで価格が暴落した。行き場のない子牛を薬で殺しているという状況まできた。
(中略)
一方で政府は、「乳製品の在庫が多い」ことを理由にさまざまな問題が起きているにもかかわらず、世界にも類のない生乳換算13・7万㌧もの乳製品輸入を今年も維持している。これは国際的には「低関税で輸入すべき枠」として決まっているもので、日本がいうような「最低輸入義務」ではない。それを「義務だ」といい張って膨大な輸入を世界で唯一続けている。米国から「お前だけは買えよ」といわれているからだ。コメの77万㌧も同じだ。
このような乳製品やコメの大量輸入がなければ、国内の在庫はすぐに捌ける。需給のアンバランスは解消する。にもかかわらず日本は他国がやるような輸入調整を一切やらず、米国にいわれた通りに入れ続けている。
しかも、いまや世界の食料需給がひっ迫し、円安効果もあって海外の乳製品の方が高くなっている。コメでも、「ミニマムアクセス米」77万㌧のうち米国から33万㌧を無理矢理買わされているが、その価格は国産の2倍だ。日本の乳製品やコメの方がすでに安くなっているのに、無理矢理輸入して、高くて使い物にならないから餌などに回してまた税金を使うという信じられない話だ。
乳製品在庫が過剰だから、国内では「牛乳搾るな、牛殺せ」といいながら、なんとこの乳製品在庫を処理するための「出口対策」を酪農家にも負担しろといって、去年は生乳1㌔当り2円、今年は2円70銭に増額し、去年は北海道だけで100億円もの負担を酪農家が拠出している。コストが倍に上がり、乳価が据え置かれ、倒産しそうだと悲鳴を上げている酪農家に莫大な拠出金を出させて、大量の輸入だけは続けるという異常な事態だ。
(中略)
こういう状況のなかで今、残念ながら酪農家さんが自ら命を絶たれることが起きている。
(中略)
農家の最低所得補償がない日本
日本がまともな政策がとれないのは、背後に米国の圧力がある。他国ならば自国の需給状況に応じて輸入量を調整するが、日本はコメの77万㌧も、乳製品の13・7万㌧(生乳換算)の輸入も「最低輸入義務」として履行し続けている。これは明文化されない米国との密約(文章に残せば国際法違反)があるからであり、自国の食料を海外の人道支援に回すことも「米国の市場を奪うもの」として米国の逆鱗に触れるからやらないのだ。
(中略)
共同販売の解体狙う規制改革推進会議
戦後の日本は、米国の余剰生産物を押しつけられ、胃袋から占領される輸入依存病に冒されてきた。それまでは大豆もトウモロコシも自給していたわけで、それさえあれば畜産・酪農も自前の資源で生産できたのだ。それが米国の余剰穀物をはかせるために変えられ、自動車を輸出するために農業を生贄にすることが、日本の経済貿易政策の基本になってきた。
畜産・酪農関係では、2018年に畜安法が改定された。酪農家は酪農協に集まって共同販売する。牛乳はみんなで集まって売らなければ秩序ある流通はできないので、共販は非常に重要な機能であり、それによって価格も流通も安定して消費者に届けられる。だから、農家が集まって共同販売をすることは、巨大な買い手(メーカー)との交渉力を対等にするために独占禁止法のカルテルにはあたらない「適用除外」とすることが正当な権利として世界の常識になっている。
それを日本だけが「共販によって農家と農協が不当な利益を得ているから、これをやめさせる」といい始めた。まず規制改革推進会議が「独禁法の適用除外をやめろ」といい始めたが、そのうち面倒くさいから公正取引委員会を政治的に使って共販をやろうとする農協をとり締まり、酪農については法律まで変えて共販を実質できないようにしてしまえという法改正をやった。このとき、さすがに義憤にかられて官邸に直談判した農水省の担当部長や課長は、制裁人事で飛ばされた。
さらに、コストが2倍になっても価格転嫁できないのは、すべての農産物が小売りやメーカーから買い叩かれる力関係にあるからだ。イオンなどの巨大小売りが「この値段で売る」といえば、逆算して農家に払う額が決まるため、はじめから農家の生産コストなど眼中にない。共同販売の力によって、コメは60㌔当り3000円、牛乳では1㌔当り16円程度、農家の手取りを押し上げているものの、それでもまだ押されている。それなのに巨大なメーカーや小売りは、「共販で不当な利益を得ているからやめさせろ」という。つまりもっと買い叩かせろということだ。
本来は、巨大小売りの「不当廉売」や「優越的地位の乱用」こそ独禁法でとり締まられなければならないのに、それは放置したまま、一番苦しんでいる農家側をさらに潰して買い叩けるようにしろというとんでもない話だ。こんな規制改革推進会議こそ潰さなければならない。
ぜひ消費者のみなさんには、私たちの足元で頑張って生産している農家を守らなければ、海外から日本を「ラストリゾート」として入ってくるホルモン剤や成長促進剤入りの食肉や乳製品、禁止農薬漬けの農産物だけとなり、自分たちの命も守れなくなるという事態についてしっかり認識共有してもらいたい。
いくら安いものがいいといっても、農家が潰れたらビジネスもなくなり、安心して食べるものもなくなる。それがまさに今直面している事態であることを噛みしめなければいけない。生産者と消費者が支え合う「強い農業」をつくっていくことが今こそ必要なのだ。
消費者も生産者とともに政府を動かす大運動を
北海道の放牧牛(釧路市)
今外からものが入ってこない、餌が高くなっているという事態に対して、どのように農家経営を守るか。そのためには消費者の理解も必要であり、政策も動かなければいけないが、できるだけ早く国内の資源を循環させる酪農畜産にもっていく必要がある。
その一つは草の利用だ。北海道の根釧地域の「マイペース酪農」の皆さんは、基本的に草を循環させるというまさに江戸時代のような農業(放牧酪農)をやっている。確かに経産牛頭数は、この地域の農協平均の半分以下(43頭)だが、資金返済後の所得は平均と変わらない。2020年の数字を見ると、放牧酪農の方が通常酪農の平均よりも返済後所得は上回っている。
(中略)
そんなことは府県では難しいといわれるが、たとえば千葉県のT牧場では、トウモロコシのかわりにコメを使っている。コメの砕き方を工夫すれば、トウモロコシのほとんどをコメに置き換えられるという技術を開発している。だから餌は、米粒、飼料用稲(WSC)、米ぬか、飼料米、みりん粕などのコメ由来のものが半分以上を占め、輸入の配合飼料は数%しかない。ここまで持って行けたら輸入飼料が高騰してもある意味ではビクともしない。このような技術を横に展開して備えていくことは有効だ。
そして何よりも、この苦境を乗り切るためには政府が抜本的に動く必要があるということをみんなでいっていかなければならない。そもそも30兆円もの補正予算はどこへ消えたのか。酪農家に牛乳1㌔当り10円の補助を、国内生産量750万㌧すべてに出しても750億円であり、予算に対して微々たる額だ。
(中略)
財務省は「そんなお金は絶対払えない」と突っぱねてくるだろうが、それが間違っていたからこそこの危機的事態になっている。安全保障強化の名の下に、F35戦闘機(147機)に6・6兆円も使い、防衛費は2倍(5兆円増額)にしてもいいというのなら、食料を守ることこそ防衛であり、武器を買う前に食料予算こそ増やすべきだ。
(中略)
現在、食料危機と深刻な農業危機が同時に到来しているが、農の価値がさらに評価される時代が来ている。今を踏ん張れば未来が拓ける。輸入に依存せず、国内資源で安全・高品質な食料供給ができる循環農業を目指す方向性は子どもたちの未来を守る最大の希望だ。
(以下略)
(中略)
米国・カナダ・EUでは設定された最低限の価格で政府が穀物・乳製品を買い上げ、国内外の援助に回す仕組みを維持している。そのうえに農家の生産費を償うように直接払いが二段構えでおこなわれている。この差はあまりにも大きい。
(中略)
逆にやっていることは、ホルスタインを1頭殺せば5万円、さらに第二次補正予算では1頭当り15万円払っていいから牛4万頭、4万頭減らすという。
今後、国際乳製品需給がさらにひっ迫することは目に見えている。価格高騰どころか、カネがあっても買えない事態がやってきているのに、「増産せよ」、「殺せ」、また「増産せよ」をくり返している。失敗から学ぼうとしていない。
農家苦しめ、膨大な輸入は継続
搾乳する酪農家
十勝農協連が公表したデータによると、北海道【表①】では、今年2月までの生産資材価格上昇で試算しても、200頭以上の専業的な大きな経営がすでに「搾れば赤字」の状態だ。それ以降の高騰を勘案すると、さらに赤字は膨らんでおり、このままでは大規模層から倒産の連鎖が広がることが現実のものになる可能性がある。
都府県【表②】では、100頭以上の経営が大赤字だ。とくに九州は、夏場と秋から春にかけての季節乳価差が大きいため、すでに全面赤字の様相を呈していると予想される。
(中略)
さらに今年、畜産大手の「神明畜産」(本社・東京)が575億円もの負債を抱えて倒産した。これが酪農家にも打撃を与えている。つまり乳牛(ホルスタイン)の肥育をしていた大きな経営が倒産したために副収入源である子牛の買い手がなくなり、市場によっては1頭110円にまで価格が暴落した。行き場のない子牛を薬で殺しているという状況まできた。
(中略)
一方で政府は、「乳製品の在庫が多い」ことを理由にさまざまな問題が起きているにもかかわらず、世界にも類のない生乳換算13・7万㌧もの乳製品輸入を今年も維持している。これは国際的には「低関税で輸入すべき枠」として決まっているもので、日本がいうような「最低輸入義務」ではない。それを「義務だ」といい張って膨大な輸入を世界で唯一続けている。米国から「お前だけは買えよ」といわれているからだ。コメの77万㌧も同じだ。
このような乳製品やコメの大量輸入がなければ、国内の在庫はすぐに捌ける。需給のアンバランスは解消する。にもかかわらず日本は他国がやるような輸入調整を一切やらず、米国にいわれた通りに入れ続けている。
しかも、いまや世界の食料需給がひっ迫し、円安効果もあって海外の乳製品の方が高くなっている。コメでも、「ミニマムアクセス米」77万㌧のうち米国から33万㌧を無理矢理買わされているが、その価格は国産の2倍だ。日本の乳製品やコメの方がすでに安くなっているのに、無理矢理輸入して、高くて使い物にならないから餌などに回してまた税金を使うという信じられない話だ。
乳製品在庫が過剰だから、国内では「牛乳搾るな、牛殺せ」といいながら、なんとこの乳製品在庫を処理するための「出口対策」を酪農家にも負担しろといって、去年は生乳1㌔当り2円、今年は2円70銭に増額し、去年は北海道だけで100億円もの負担を酪農家が拠出している。コストが倍に上がり、乳価が据え置かれ、倒産しそうだと悲鳴を上げている酪農家に莫大な拠出金を出させて、大量の輸入だけは続けるという異常な事態だ。
(中略)
こういう状況のなかで今、残念ながら酪農家さんが自ら命を絶たれることが起きている。
(中略)
農家の最低所得補償がない日本
日本がまともな政策がとれないのは、背後に米国の圧力がある。他国ならば自国の需給状況に応じて輸入量を調整するが、日本はコメの77万㌧も、乳製品の13・7万㌧(生乳換算)の輸入も「最低輸入義務」として履行し続けている。これは明文化されない米国との密約(文章に残せば国際法違反)があるからであり、自国の食料を海外の人道支援に回すことも「米国の市場を奪うもの」として米国の逆鱗に触れるからやらないのだ。
(中略)
共同販売の解体狙う規制改革推進会議
戦後の日本は、米国の余剰生産物を押しつけられ、胃袋から占領される輸入依存病に冒されてきた。それまでは大豆もトウモロコシも自給していたわけで、それさえあれば畜産・酪農も自前の資源で生産できたのだ。それが米国の余剰穀物をはかせるために変えられ、自動車を輸出するために農業を生贄にすることが、日本の経済貿易政策の基本になってきた。
畜産・酪農関係では、2018年に畜安法が改定された。酪農家は酪農協に集まって共同販売する。牛乳はみんなで集まって売らなければ秩序ある流通はできないので、共販は非常に重要な機能であり、それによって価格も流通も安定して消費者に届けられる。だから、農家が集まって共同販売をすることは、巨大な買い手(メーカー)との交渉力を対等にするために独占禁止法のカルテルにはあたらない「適用除外」とすることが正当な権利として世界の常識になっている。
それを日本だけが「共販によって農家と農協が不当な利益を得ているから、これをやめさせる」といい始めた。まず規制改革推進会議が「独禁法の適用除外をやめろ」といい始めたが、そのうち面倒くさいから公正取引委員会を政治的に使って共販をやろうとする農協をとり締まり、酪農については法律まで変えて共販を実質できないようにしてしまえという法改正をやった。このとき、さすがに義憤にかられて官邸に直談判した農水省の担当部長や課長は、制裁人事で飛ばされた。
さらに、コストが2倍になっても価格転嫁できないのは、すべての農産物が小売りやメーカーから買い叩かれる力関係にあるからだ。イオンなどの巨大小売りが「この値段で売る」といえば、逆算して農家に払う額が決まるため、はじめから農家の生産コストなど眼中にない。共同販売の力によって、コメは60㌔当り3000円、牛乳では1㌔当り16円程度、農家の手取りを押し上げているものの、それでもまだ押されている。それなのに巨大なメーカーや小売りは、「共販で不当な利益を得ているからやめさせろ」という。つまりもっと買い叩かせろということだ。
本来は、巨大小売りの「不当廉売」や「優越的地位の乱用」こそ独禁法でとり締まられなければならないのに、それは放置したまま、一番苦しんでいる農家側をさらに潰して買い叩けるようにしろというとんでもない話だ。こんな規制改革推進会議こそ潰さなければならない。
ぜひ消費者のみなさんには、私たちの足元で頑張って生産している農家を守らなければ、海外から日本を「ラストリゾート」として入ってくるホルモン剤や成長促進剤入りの食肉や乳製品、禁止農薬漬けの農産物だけとなり、自分たちの命も守れなくなるという事態についてしっかり認識共有してもらいたい。
いくら安いものがいいといっても、農家が潰れたらビジネスもなくなり、安心して食べるものもなくなる。それがまさに今直面している事態であることを噛みしめなければいけない。生産者と消費者が支え合う「強い農業」をつくっていくことが今こそ必要なのだ。
消費者も生産者とともに政府を動かす大運動を
北海道の放牧牛(釧路市)
今外からものが入ってこない、餌が高くなっているという事態に対して、どのように農家経営を守るか。そのためには消費者の理解も必要であり、政策も動かなければいけないが、できるだけ早く国内の資源を循環させる酪農畜産にもっていく必要がある。
その一つは草の利用だ。北海道の根釧地域の「マイペース酪農」の皆さんは、基本的に草を循環させるというまさに江戸時代のような農業(放牧酪農)をやっている。確かに経産牛頭数は、この地域の農協平均の半分以下(43頭)だが、資金返済後の所得は平均と変わらない。2020年の数字を見ると、放牧酪農の方が通常酪農の平均よりも返済後所得は上回っている。
(中略)
そんなことは府県では難しいといわれるが、たとえば千葉県のT牧場では、トウモロコシのかわりにコメを使っている。コメの砕き方を工夫すれば、トウモロコシのほとんどをコメに置き換えられるという技術を開発している。だから餌は、米粒、飼料用稲(WSC)、米ぬか、飼料米、みりん粕などのコメ由来のものが半分以上を占め、輸入の配合飼料は数%しかない。ここまで持って行けたら輸入飼料が高騰してもある意味ではビクともしない。このような技術を横に展開して備えていくことは有効だ。
そして何よりも、この苦境を乗り切るためには政府が抜本的に動く必要があるということをみんなでいっていかなければならない。そもそも30兆円もの補正予算はどこへ消えたのか。酪農家に牛乳1㌔当り10円の補助を、国内生産量750万㌧すべてに出しても750億円であり、予算に対して微々たる額だ。
(中略)
財務省は「そんなお金は絶対払えない」と突っぱねてくるだろうが、それが間違っていたからこそこの危機的事態になっている。安全保障強化の名の下に、F35戦闘機(147機)に6・6兆円も使い、防衛費は2倍(5兆円増額)にしてもいいというのなら、食料を守ることこそ防衛であり、武器を買う前に食料予算こそ増やすべきだ。
(中略)
現在、食料危機と深刻な農業危機が同時に到来しているが、農の価値がさらに評価される時代が来ている。今を踏ん張れば未来が拓ける。輸入に依存せず、国内資源で安全・高品質な食料供給ができる循環農業を目指す方向性は子どもたちの未来を守る最大の希望だ。
(以下略)
東京大学の鈴木宣弘教授は、“種の自給率、野菜は10%、化学肥料の自給率ほぼ0%、これらを加味すれば、実際の自給率は38%どころか、10%あるかないか、それほど我々は、もし物流が止まったら国民の命を守れない、とてもとても脆弱な薄い氷の上に生きているんだということが、今こそ認識されないといけない。…もうこの半年で酪農家さんの9割が、他の稲作農家さんもですね、含めて、物凄い勢いで日本の農業消滅が進みそうだというのが今の現実です。このような形で日本の国内農業が消滅し、食料生産が消滅していく中で、それを放置して、そして本当に台湾有事など物流が止まるような事態がですね、加速して起こったらどうなりますか。本当に日本の皆さんは餓死する、これが目の前に来ているわけですよね。一方で防衛費は5年で43兆円とか、増税してでも増やす、勇ましい議論は非常に盛んにおこなわれている…食糧を持たずに武器だけ持っても、まず兵糧攻めで戦う前に一貫の終わりなんですよね。…今一番重要なのは、食料を守る事です。…私が提唱してる「食料安全保障推進法」というような議員立法を超党派で作ってですね、それで数兆円規模の予算を財務省の枠を超えて即刻出せるようにすると、それから川田龍平先生や堤未果さんが頑張ってるですね、地域の種から守る循環型食糧需給、地域のいい種を守ってそこで頑張っている農家さんをですね、学校給食の公共調達などでしっかり支える、そのために国がしっかりと予算をつけるというですね、このローカルフード法、こういうものをですね、合わせて何とか今成立させないとですね、日本が持たない”と言っています。
鈴木宣弘教授の講演をまとめた長周新聞さんの記事で、「戦後の日本は…米国の余剰穀物をはかせるために変えられ、自動車を輸出するために農業を生贄にすることが、日本の経済貿易政策の基本になってきた。…コストが2倍になっても価格転嫁できないのは、すべての農産物が小売りやメーカーから買い叩かれる力関係にあるからだ」とあり、生産者と消費者が支え合う「強い農業」をつくっていくために「できるだけ早く国内の資源を循環させる酪農畜産にもっていく必要がある」と言っています。
本当にこの通りだと思うのですが、この際、危機を逆手にとって本当に必要とされている未来の農畜産業とはどのようなものかを、消費者も生産者も考えて行動に移すべきだと思います。
例えば私の場合、本当に素晴らしい乳製品で、“牛の幸せ”まで考慮に入れた酪農家の逸品なら、値段が2~3倍でも購入したいと思います。残念ながら、本当の意味で安全な乳製品はほとんど存在しないと思っています。ですから、私は牛乳を飲みません。
ちょっと想像してみて下さい。とても大切にされ幸せに過ごしているニワトリが産んだ卵は、狭いゲージに入れられて虐待されているニワトリの卵とは、根本的に違うものだとは思いませんか?
まず間違いなく、「波動」が異なるのです。幸せなニワトリが産んだ卵は、人を幸せにします。この基本的な原則が分からないから、今の地球はメチャメチャになっているのではないでしょうか。
こうした理想の農畜産業の実現のために、国家予算がつぎ込まれるべきだと思うのです。原発や武器など、地球を汚すものに多額の予算をつぎ込むのは、頭も心も穢れているからだとしか思えません。