ぴょんぴょんの「カラムシの風」 ~大麻(ヘンプ)・亜麻(リネン)・苧麻(ラミー、カラムシ)の「麻」三兄弟

 秋は散歩にもってこいの季節ですね。毎日、田んぼ道を歩きながら、季節の移り変わりを感じています。そこで、必ず目にするのがカラムシです。そうです、あの偽イラクサスープに使ったカラムシです。こいつは、一旦根を張ると抜きづらくて、刈っても刈ってもあっという間に伸びて厄介です。でも、その生命力には感心します。この生命力を上手に利用することはできないか、と考えるうちに、カラムシには本来の利用法があったことを思い出しました。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「カラムシの風」 ~大麻(ヘンプ)・亜麻(リネン)・苧麻(ラミー、カラムシ)の「麻」三兄弟

エバーグリーンのたくましいヤツ


くろちゃんと散歩するのも、久しぶりだねえ。

空が高いし、空気は澄んでいる。今の季節は、気持ちがいいなあ。お、毎日お出迎えしてくれるヤツらが見えてきたぞ。

だれ?

ほら、こいつらだ。


なんだ、ただの枯れ草じゃん。

夏の間はこんな姿をしていたが、見覚えないか?


うん、あるような。もしかして、これは青汁スープでお世話になった・・。

そうだ、カラムシ君だ。

思い出した! たしか、くろちゃんが、イラクサのスープを作りたくて、同じイラクサ科のカラムシで代用したら便秘しちゃった、カラムシだ。

それそれ。

今は、幽霊みたいな姿になっちゃって。 

でもよ、毎日こいつを眺めてると、感動するのよ。草刈機で刈られても刈られても、すぐに芽を出して、いつも緑の葉を見せてくれる、エバーグリーンのたくましいヤツ。

てゆうか、しぶとくて厄介なヤツだよね。

それに、こいつは食えるしな。葉っぱは天ぷら、ピザ、スープ。茎は茹でて皮をむけば、シャキシャキのアスパラガスのような歯ごたえがある。

でも、味は、本家のイラクサに負けるってよ。

だが、こいつの使命はそこじゃない。

へえ?


ヘンプやリネンと肩を並べるような貴重なもの


カラムシは、縄文時代の遺跡から見つかってるくらい、古くから繊維として愛されてきた。正式名は「苧麻(ちょま)」。この名称は、大正時代に中国から大量輸入され、品種改良されて、こう呼ばれるようになった。(BOKEN

苧麻? てことは「麻」の一種なの?

そうだ。麻と言ってもいろいろあるが、衣料用の「麻」は、かつては「大麻(ヘンプ)」を指していた。今は「大麻」に似た「亜麻(リネン)」、カラムシの「苧麻(ラミー)」も「麻」と呼ばれている。シャリシャリで涼しい天然繊維の「麻」は、高温多湿の日本にマッチしてるのよ。

大麻草

へええ、ヘンプやリネンと肩を並べるような貴重なものが、こんな散歩道に生えてるのか。

どうだ! 厄介もののカラムシを、見直しただろ? 夏の着物で最高級ブランドの小千谷縮(おじやちじみ)や越後上布(えちごじょうふ)も、このカラムシ織りだ。

 Ojiya-chijimi, Echigo-jofu: techniques of making ramie fabric in Uonuma region, Niigata Prefecture


あの上杉謙信が、越後上布の原料として、カラムシ栽培を奨励したそうだ。上越妙高タウン情報

なのに、なんで今は、カラムシ織りが出回ってないんだろう?

この雑草を最高級品に持っていくまでには、気が遠くなるような工程があるからな。2mくらいに伸びたカラムシを、夏の暑い盛りに刈り取って、皮を向いて、繊維をほぐして干す。冬、雪で閉ざされている間に、これを水で戻して細い糸にするが、一人で一反分の糸を績むのは3カ月以上もかかる。それを熟練の職人が織って、やっと完成だ。(KOGEI JAPAN

暑い夏から、寒い冬までの重労働。大変だね。

だから、最高級品なのよ。だが、江戸時代になって、保温性にすぐれ、肌触りが良い木綿が入ってくると、手間ひまかかるカラムシ織りは、一気にすたれてしまった。iroai.jp

庶民は、安くて楽に着られるのが一番だからねえ。

今の、ポリエステルみたいにな。それの正反対を行くカラムシ織りは、国の「重要無形文化財」、「ユネスコ無形文化遺産代表リスト」に登録されてはいるが、実際、作り手はほとんどいなくて、生ける化石になっちまった。南魚沼市

なんか、寂しいねえ。

ただ、カラムシ織りにも欠点があってな。通気性、吸湿、放湿性に優れていて、汗ばんでもベトつかない、汚れが落ちやすいし、何回洗濯しても丈夫だから、夏に適しているが南魚沼市、繊維が荒くて固いので、肌をチクチク刺激するのが難点なのよ。BOKEN

皮膚が弱い人は、じかに着るのはムリかもね。かと言って最近は「綿」も信じられなくなってきたよ。低賃金労働、農薬、遺伝子組み換え、名ばかりのオーガニックコットン。


そして今や、ポリエステル王国だ。

こんな、大量生産、大量廃棄の時代、いつまで続くんだろう。

化学繊維を直接着ると、毛穴が塞がれて息苦しい。静電気も起きるし、体がリラックスできない。

やっぱ、天然繊維がいいよね。体を天然繊維にくるむだけで、治る病気もあるんじゃない?


天然繊維なら、ゴミになっても自然に帰るし、環境に負荷がないしね。

環境のためにも、健康のためにも、ポリエステルはちょっと・・。

あれ、見て! 冬も近いと言うのに、こんな所に花が。


色の少ない季節に青い花、ドキッとするほどきれいだな。


腕に覚えがある職人が自信をもって仕上げた「作品」


そう言えば、「リネン(亜麻)」の話を思い出した。

「麻」の3兄弟の一人、リネンだな。

知ってる? 山梨の小さな縫製工場の自社ブランドで、高級リネンの服だけを作ってる会社があってね。

へえ。

そこのやり方はね、フランスの高級リネン糸を日本の工場で織ってもらって、一人の縫製士が一着ずつ仕上げる。もちろん、よそより高めだけど、長く着られる良質な製品を提供しているんだ。


ほお、こだわってるな。日本の縫製工場にもそんなところがあったのか?

大企業は、人件費と生地の質を削って価格を下げる。それなら、人件費の高い日本の工場は、品質で勝負するしかない。そこで、社長さんは問いかける。安い服と高い服のちがいとは? 答えは「商品」として出すのか「作品」として出すのか、打ち出し方のちがいだと。YouTube

なるほどなあ、発展途上国で、安い賃金でこき使われる、かわいそうな人々が泣きながら縫った「商品」と、腕に覚えがある職人が自信をもって仕上げた「作品」と、どちらが着たいですか?ってことだな。

そう言われると、安物を10枚買う代わりに、「作品」が1枚欲しいよね。

大事に着れば長持ちするし、きっと波動も高いにちがいない。おれも、なるだけ「日本製」と書いてあるのを買ってる。日本の労働者にカネが回ってほしいからな。


良質のリネンが手に入らなくなる


う〜ん、でもね、外国から出稼ぎに来た、かわいそうな人が縫ってるかもしれないよ。それに、社長さんが言ったけど、プロの目から見たら日本製にも粗悪品はたくさんあるって。試しに、日本の縫製工場、約10社に縫製の依頼をしてみたら、良かったのは1社だけ。あとはすべて売れないクオリティで、むしろ、海外製の方が良かったと言ってる。(YouTube

マジかよ?! メイドインジャパンがいいと言うのは、昔の話かよ。

リネンには、防臭、抗菌、速乾性があって、繊維がストローみたいに空気を溜め込むから、ダウンみたいにあったかい。でも、あったかい空気が多くなりすぎたら排出する。だから、夏は涼しくて、冬があったかい。

それで、リネンを選んだのか。

そう。でも、社長さんは訴える。「服作りの家系に生まれて、服を作り続けるって決めたならば、最低限のことをやる。環境負荷が少ないものとか。答はリネン。だが、値段が上がりすぎて困っている。」(YouTube


 【緊急事態】服が作れなくなるかもしれません...


なんだと?! 最大のウリの良質のリネンが、手に入らなくなるだと?

そうなんだよ、10年はもたないって。天然物なので採れる量も限られている。不作もあるし、人件費、染料代、機械の部品代、配送コスト、すべて上がって今は倍。しかも、自然素材を欲しがる人は減らないから、世界中で争奪戦になってる。

かと言って、値上げもしにくいしなあ。

そうなんだよ。社長さんも悩んでる。「これを商品の価格に転換するのがめちゃくちゃ難しい」「こういう今戦いなのよ、せめぎ合いですよ、今!」「そことの戦いなんですよ、ぼくたち。」

こんなにがんばってる日本の中小企業には、生き残って欲しい。が、リネンじゃないと、ダメなのか? 栽培が制限されている「大麻」、価格が高騰しているリネンがダメでも、日本にはカラムシ君がいるぞ。

今から、カラムシはちょっと・・。

たしかに、現在カラムシを栽培している所は、人口1200人ほどの山奥の村、福島県昭和村と、沖縄県宮古島の2カ所しかない。さわかみ財団

風前の灯だけど、今も作ってるだけで、ありがたいね。

でも、カラムシなら、どこにでも生えてるし、やろうと思えばどこでも栽培できそうだ。休耕田を使ってもいい。肥料も、農薬もいらなそうだし。

でも、栽培して刈り取ったあと、糸にしたり、織ったりする人手と施設が必要だよ。

だれか、そういうのやってくれないかな? ほんとに、日本のことを考えている大企業はいないのか?大量生産、大量廃棄の真逆を行く、日本の天然繊維を育てる企業はいないのか? ポリエステルを売りまくるより、ずっと、日本のためになるんだが。

そうだね、そしていずれは、日本の代表選手「大麻」にも再登場してほしい。



Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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