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ぴょんぴょんの「アルツハイマーと腸内細菌」 ~患者の便を移植したらアルツハイマーが伝染った?
アイルランドの研究チームのおもしろい実験
実は、アイルランドの研究チームが、おもしろい実験をしたのよ。アルツハイマー患者69人と、認知症じゃない64人から、ウンコと血液を採取した。次に、7日間抗生物質漬けにして腸内細菌を全滅させた若いラットに、アルツハイマー患者とそうでない人のウンコ汁を3日間飲ませた。(NEWSWEEK)
ウンコ汁を飲まされたあげく、解剖されたラット君、次はもっと幸せな人生を歩んでくれ、ナムアミダー・・ところで、飲ませて10日後、ラットの健康診断や記憶テストを行ったところ、アルツハイマー患者のウンコ汁、いや、腸内細菌を飲ませたラットには、記憶力の著しい低下が見られた。(NEWSWEEK)
もっと言うと、重症アルツハイマー患者のウンコ汁を飲まされたラットほど、記憶障害が重かった。特にヤられたのは記憶と関係のある「海馬」で、神経細胞の新生や成長が減っていた。「つまり、患者の糞便移植によって、健康なラットにアルツハイマー病の症状が『伝染する』ことが示唆されました。」(NEWSWEEK)
いったい、アルツハイマー患者の腸内細菌の何が、ラットをアルツハイマーにしたのか?と言うことで、患者の腸内細菌を分析したところ、クロストリジウム属やコプロコッカス属の細菌が大幅に減っていることがわかった。こいつらは、「酪酸(らくさん)」を産生する菌だ。
一方、アルツハイマー患者の腸内細菌には、パーキンソン病など難病の発症に関係あるデスルフォビブリオ属の細菌が増えていた。酪酸が不足して、不潔でボロボロになった腸壁に、デスルフォビブリオ属の毒素が侵入して、血管を通って脳に行ったと推測される。(NEWSWEEK)
デスルフォビブリオ属の細菌
Wikimedia_Commons[Public Domain]
アミロイドβは体を微生物から守る正義の味方だった
小腸に沈着したアミロイドの顕微鏡写真
Author:Michael Feldman, MD, PhD[CC BY]
これまで考えられてきた、アルツハイマー発症のメカニズムはこうだ。「(アルツハイマーの)特徴は脳にタンパク質のプラークが現れることだ。このプラークはアミロイドβと呼ばれるペプチド(鎖状につながったアミノ酸)が凝集し、小さな塊になったものだ。この塊ができる理由はわからないが、これが脳内で炎症を引き起こし、やがて脳細胞を死滅させる。」(PRESIDENT Online)
これまでは、アミロイドβさえ無くなればアルツハイマーは治ると考えられ、アミロイドβを減らす治療や薬が開発されてきた。(NHK)だが、アミロイドβがいっぱいあっても認知症にならない人もいる。認知症なのにアミロイドβがない人もいる。アミロイドβは、ほんまにアルツハイマーの原因なんか?
アミロイドβの構造
Author:jeff brender (biophysik)[CC BY-SA]
微生物の培養液にアミロイドβを入れると、アミロイドβは微生物の周りに凝集し、微生物を無力化して息の根をとめる。マウスの脳に細菌を注入すると、アミロイドβが活性化し、細菌の周りに集まって塊を作る。そのため、アミロイドβを持つマウスは、細菌を注入されても生き残りやすいが、アミロイドβを持たないマウスは細菌によって死ぬ。(PRESIDENT Online)
アルツハイマー患者の脳には、「複数の細菌感染が認められた」(Alzhacker)と言うから、「アミロイドβは、炎症に対する脳の防御機能の一部であって、放火犯というよりは、火事場の火消しなのかもしれない」(Psychology Today)というのも、納得だ。
原因は腸内細菌にある
そうだな、アルツハイマー患者の腸内細菌を調べたところ、菌の多様性が乏しく、過剰に増えた菌と、著しく減少した菌があって(Very well mind)、増えた菌には炎症を起こす菌が多い。(IDA Ireland)「アルツハイマー患者の糞便サンプルには、炎症を促進する細菌が多く含まれており、これらの変化は認知状態に直接関連していた。」(Science Foundation Ireland)
火消しの酪酸は重要
火消しの酪酸を作る細菌は減っているから、脳の炎症が加速する。火の手は大きくなり、アミロイドβもかけつけて消防に当たる。しかし、頭蓋骨には伸縮性がないから、脳内がアミロイドβがいっぱいになる、肝心な脳や海馬に行く血管が圧迫されちまう。
ダメダメ。酪酸は胃や小腸で吸収されて、大腸にはほとんど届かないから。それより、酪酸を産生する「酪酸産生菌」を増やせばいい。「1933年、(中略)...宮入近治博士は、人の腸内細菌の研究中、腸内腐敗を強く抑制する芽胞(天然のカプセル)菌を発見、宮入菌となずけました」「酪酸菌(宮入菌)は、病原性細菌の抑制作用はもとより、酪酸やビタミン類、消化酵素などを産生することにより、様々な角度から腸の機能を正常化させます。」 (Miyarisan)
「まみむのメモ」によると、「(キクイモを初めとする)キク科植物の根が炎症を抑える酪酸菌を増やす一番効果的な食品だと紹介されています。その他、ニンニク・ネギ・玉ねぎ、イヌリン、ガラクトースオリゴ糖も効果があるそうです。」
キクイモ
腸内細菌の敵と、腸内細菌バランスを元に戻す方法
ねえねえ、ぺりどっと通信に、おもしろいことが書いてあるよ。腸内細菌はフェイクニュースが嫌いだって。「腸内細菌は、ヤマ・ニヤマ(禁戒・勧戒)でいうところの"正直"を好んでいるものと考えられます。(中略)...腸内細菌は我々の行動や考えなどもつぶさに読み取って、ヤマ・ニヤマに即した生き方をしているのかどうかを観察しているのではと想像してしまいます。」
この実験結果を見て、学校で習った「アルツハイマー病の原因はアミロイドβの蓄積である」という仮説は、すでに通用しないと思いました。その証拠に、この仮説に基づいた治療法や薬が成功するどころか、アルツハイマー患者は増える一方だからです。アルツハイマー患者の脳に沈着するアミロイドβは、「結果」であって「原因」ではない。アルツハイマーの「原因」は腸内細菌にあることに、疑いの余地がなくなりました。