ぴょんぴょんの「アルツハイマーと腸内細菌」 ~患者の便を移植したらアルツハイマーが伝染った?

 今回は、ある方から紹介していただいた、「腸内細菌を通じて、アルツハイマー病が伝染することがラットの実験で実証された」という、ニューズウィークの記事をテーマに書いてみました。
 この実験結果を見て、学校で習った「アルツハイマー病の原因はアミロイドβの蓄積である」という仮説は、すでに通用しないと思いました。その証拠に、この仮説に基づいた治療法や薬が成功するどころか、アルツハイマー患者は増える一方だからです。アルツハイマー患者の脳に沈着するアミロイドβは、「結果」であって「原因」ではない。アルツハイマーの「原因」は腸内細菌にあることに、疑いの余地がなくなりました。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「アルツハイマーと腸内細菌」 ~患者の便を移植したらアルツハイマーが伝染った?

アイルランドの研究チームのおもしろい実験


なりたくない病気はいろいろあれど、アルツハイマーにはなりたくないなあ。

とっくに脳がしぼんでるくせに、よおゆうわ。

ひどいなあ! くろちゃんだって、「この頃、物忘れがひどい」って嘆いてるくせに。

そうなんよ! たぶん、プリンターのインク切れだと思う。



今起こったことが、脳みそにプリントされたはずなのに、あれ、何も書かれてない、白紙だ、なんだっけ?・・みたいな?

なるほどねえ、脳じゃ、カセット交換てワケにいかないからなあ。

そうなのよ。今あるインクで、あとどのくらい持ちこたえるか、わからんわ。

アルツハイマーも、インク切れなんだろうか?

おそらく、プリンターそのものが故障してるんだろう。いや待てよ、プリンターだけじゃない、パソコンもやられてる可能性が大だ。

もう、全部、買い換えるしかないね。

だが、体はまだ生きてるぞ。

じゃあ、いったいどうすればいいんだろう?

プリンターもパソコンも壊れちまってからじゃ遅い。そうなる前に何とか手を打たねば。

だから、どうすればいいの?

実は、アイルランドの研究チームが、おもしろい実験をしたのよ。アルツハイマー患者69人と、認知症じゃない64人から、ウンコと血液を採取した。次に、7日間抗生物質漬けにして腸内細菌を全滅させた若いラットに、アルツハイマー患者とそうでない人のウンコ汁を3日間飲ませた。NEWSWEEK


オエ〜ッ! ウンコ汁を飲まされたラット、かわいそう!

ウンコ汁を飲まされたあげく、解剖されたラット君、次はもっと幸せな人生を歩んでくれ、ナムアミダー・・ところで、飲ませて10日後、ラットの健康診断や記憶テストを行ったところ、アルツハイマー患者のウンコ汁、いや、腸内細菌を飲ませたラットには、記憶力の著しい低下が見られた。NEWSWEEK

え?!ラットにアルツハイマーがうつった?

もっと言うと、重症アルツハイマー患者のウンコ汁を飲まされたラットほど、記憶障害が重かった。特にヤられたのは記憶と関係のある「海馬」で、神経細胞の新生や成長が減っていた。「つまり、患者の糞便移植によって、健康なラットにアルツハイマー病の症状が『伝染する』ことが示唆されました。」(NEWSWEEK

ウわー! アルツハイマーは伝染病だったんか〜!?

いったい、アルツハイマー患者の腸内細菌の何が、ラットをアルツハイマーにしたのか?と言うことで、患者の腸内細菌を分析したところ、クロストリジウム属やコプロコッカス属の細菌が大幅に減っていることがわかった。こいつらは、「酪酸(らくさん)」を産生する菌だ。

らくさん?

酪酸は、腸内細菌の代謝産物で、腸内の掃除や、腸内壁の修復作業を行っている。

腸内のメンテナンスを担当してるんだね。

一方、アルツハイマー患者の腸内細菌には、パーキンソン病など難病の発症に関係あるデスルフォビブリオ属の細菌が増えていた。酪酸が不足して、不潔でボロボロになった腸壁に、デスルフォビブリオ属の毒素が侵入して、血管を通って脳に行ったと推測される。NEWSWEEK

デスルフォビブリオ属の細菌
Wikimedia_Commons[Public Domain]

アルツハイマー患者のウンコ、めっちゃ強力やねえ。


アミロイドβは体を微生物から守る正義の味方だった


ところで、アルツハイマーの原因はアミロイドβ(ベータ)というのが常識だ。

アミロイドβって何だっけ?

「特定の構造を持つ水に溶けない繊維状のタンパク質」。(Wiki

小腸に沈着したアミロイドの顕微鏡写真

なんか、くっついたら取れにくそうな印象だね。

これまで考えられてきた、アルツハイマー発症のメカニズムはこうだ。「(アルツハイマーの)特徴は脳にタンパク質のプラークが現れることだ。このプラークはアミロイドβと呼ばれるペプチド(鎖状につながったアミノ酸)が凝集し、小さな塊になったものだ。この塊ができる理由はわからないが、これが脳内で炎症を引き起こし、やがて脳細胞を死滅させる。」(PRESIDENT Online

アミロイドβという塊が、脳に炎症を起こして、脳細胞が死んでしまう。

だが、アミロイドβが脳内で炎症を引き起こし、脳細胞を死滅させたんじゃなくて、脳内で炎症が起きた結果、アミロイドβが蓄積して、脳細胞が窒息した、とは考えられんか?

つまり、アミロイドβは「原因」じゃなくて「結果」だと言いたいんだね。

これまでは、アミロイドβさえ無くなればアルツハイマーは治ると考えられ、アミロイドβを減らす治療や薬が開発されてきた。NHKだが、アミロイドβがいっぱいあっても認知症にならない人もいる。認知症なのにアミロイドβがない人もいる。アミロイドβは、ほんまにアルツハイマーの原因なんか?

じゃあ、何で、脳という大事な場所に、アミロイドβが蓄積しちゃったの?

実は、アミロイドβは細菌などの微生物と闘う武器らしい。

アミロイドβの構造
Author:jeff brender (biophysik)[CC BY-SA]

武器? 厄介者じゃなくて?

微生物の培養液にアミロイドβを入れると、アミロイドβは微生物の周りに凝集し、微生物を無力化して息の根をとめる。マウスの脳に細菌を注入すると、アミロイドβが活性化し、細菌の周りに集まって塊を作る。そのため、アミロイドβを持つマウスは、細菌を注入されても生き残りやすいが、アミロイドβを持たないマウスは細菌によって死ぬ。(PRESIDENT Online

厄介者どころか、体を微生物から守る正義の味方だった。

アルツハイマー患者の脳には、「複数の細菌感染が認められた」(Alzhacker)と言うから、「アミロイドβは、炎症に対する脳の防御機能の一部であって、放火犯というよりは、火事場の火消しなのかもしれない」(Psychology Today)というのも、納得だ。

アミロイドβは消防士?

大切な脳が細菌感染した、大変だ、全身からアミロイドβが集められて、細菌と戦ってくれた、その結果がアミロイドβの蓄積だったんだ。


原因は腸内細菌にある


じゃあ、アミロイドβを無くす治療法とか、まったく逆じゃん。だけど、何で脳に細菌がいるの? 血液脳関門があるのに?

体の中に、血液脳関門を狂わせてしまうほどのことが、起きたんじゃないかと思う。たとえば、体中がゴミ屋敷になっていたとか。

体の清浄作用が、ゴミに対応しきれなくなった? はっ!もしかして酪酸?

おそらく、ゴミ屋敷の原因のひとつだな。

酪酸を作るのは腸内細菌、てことはやっぱり、原因は腸内細菌にあるかもしれない。

そうだな、アルツハイマー患者の腸内細菌を調べたところ、菌の多様性が乏しく、過剰に増えた菌と、著しく減少した菌があってVery well mind、増えた菌には炎症を起こす菌が多い。IDA Ireland)「アルツハイマー患者の糞便サンプルには、炎症を促進する細菌が多く含まれており、これらの変化は認知状態に直接関連していた。」(Science Foundation Ireland



火消しの酪酸は重要


血液脳関門が狂っているところに、増えすぎた炎症菌が通過してしまったら?

火消しの酪酸を作る細菌は減っているから、脳の炎症が加速する。火の手は大きくなり、アミロイドβもかけつけて消防に当たる。しかし、頭蓋骨には伸縮性がないから、脳内がアミロイドβがいっぱいになる、肝心な脳や海馬に行く血管が圧迫されちまう。

それで、大事な脳細胞、特に記憶に関係する海馬の細胞が死んじゃう。

ちなみに、アルツハイマー患者は「血中の酪酸が多いほど、脳内アミロイドβの蓄積が少ない」ことがわかっている。MEDIZZY HOURNAL

やっぱり、そうか。火消しの酪酸は重要だね。となると、アルツハイマーの予防に、酪酸ジュースを飲むといい?

ダメダメ。酪酸は胃や小腸で吸収されて、大腸にはほとんど届かないから。それより、酪酸を産生する「酪酸産生菌」を増やせばいい。「1933年、(中略)...宮入近治博士は、人の腸内細菌の研究中、腸内腐敗を強く抑制する芽胞(天然のカプセル)菌を発見、宮入菌となずけました」「酪酸菌(宮入菌)は、病原性細菌の抑制作用はもとより、酪酸やビタミン類、消化酵素などを産生することにより、様々な角度から腸の機能を正常化させます。」 (Miyarisan

なるほど! 酪酸菌を増やすのもいいアイディアだ。じゃ、酪酸菌を増やす食べ物とかあるの?

まみむのメモ」によると、「(キクイモを初めとする)キク科植物の根が炎症を抑える酪酸菌を増やす一番効果的な食品だと紹介されています。その他、ニンニク・ネギ・玉ねぎ、イヌリン、ガラクトースオリゴ糖も効果があるそうです。

キクイモ

ほお!

実は、酪酸を作る酪酸菌をはじめ、腸内細菌はなにを食って生きていると思う?

ぼくたちが食べたものでしょ?

その中でも特に、食物繊維が好物なんよ。

そうか。なんで、ぼくたちに消化できない食物繊維をもっと食べろ、と言うのかわからなかったけど、腸内細菌たちの好物だからかあ。

ところが、現代の食品は、食物繊維の食感が悪く、見栄えも悪いということで、どんどん除去されてしまっている。

つまり、おいしく食べやすくするために、食物繊維が除かれてしまうんだね。


腸内細菌の敵と、腸内細菌バランスを元に戻す方法


そういう、精製されすぎているものは避けて、より自然の食物を摂ることだ。そして、食い物と同じくらい大事なのが、腸内細菌を傷つけないこと。腸内細菌の最大の敵はなんだか、知ってるか?

抗生物質!

ピンポン♪ 「あるデータによると、抗生物質1回の摂取で、腸内細菌の数は1/10~1/100まで減り、種類については約50%まで減ってしまうというのです。」(ぺりどっと通信

はあ〜、もともと細菌を殺すのが目的だし、どうしても必要なときは短期間で切り上げるべきだね。

そして、抗がん剤も細胞毒だから当然、腸内細菌の敵だ。また、保存料、防腐剤といった食品添加物、農薬の主成分グリホサートも確実に腸内細菌に影響を与えている。ぺりどっと通信

じゃあ、壊れた腸内細菌バランスを、元に戻すにはどうすればいいの?

まずは便秘をしないこと。食物繊維の多い食事をして、適度に運動して腸を動かす。ぺりどっと通信の「腸内細菌再生はコレ!」を読め。

なになに? 発酵食品、睡眠、お腹を冷やさない、太陽光に当たるなどなど。でも、究極の方法は糞便移植だって。

糞便移植は、しかる施設を探さなくちゃいけないし、料金もそれなりにかかるが、一番手っ取り早い方法だな。近い将来、腸内細菌を調べれば、アルツハイマーになりやすいかどうか診断できるようになるだろうな。 

Author:KENPEI[CC BY-SA]

ねえねえ、ぺりどっと通信に、おもしろいことが書いてあるよ。腸内細菌はフェイクニュースが嫌いだって。「腸内細菌は、ヤマ・ニヤマ(禁戒・勧戒)でいうところの"正直"を好んでいるものと考えられます。(中略)...腸内細菌は我々の行動や考えなどもつぶさに読み取って、ヤマ・ニヤマに即した生き方をしているのかどうかを観察しているのではと想像してしまいます。」

ほお! 腸内細菌は正直者が好きなのか。

アルツハイマーにはなりたくないし・・よーし! 腸内細菌たちに居心地のいい住みかを提供するために、正しい食事や生活習慣を実行するだけじゃなく、非暴力、正直、不盗など、ヤマ・ニヤマを守って生きるぞ〜!


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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