ぴょんぴょんの「イラクサのスープ」 ~同じ「いらくさ科」のカラムシは代用できるか?

 セルビアのベオグラードに住む詩人、山崎佳代子氏は、セルビア人の戦争体験を本にまとめている。その中に、「戦時下で難民となった人びとは何を食べていたのか」をテーマにした、「パンと野いちご:戦火のセルビア、食物の記憶」という本がある。この本を読んだ後、「イラクサのスープ」が印象に残った。食べ物のない山中で、人びとはイラクサを摘んでスープにし、それによって命をつないだと語られていた。
 食料が手に入らなくなって、食料の備蓄が少しづつ減り、「食べられるものをすべて食べてしまうと、次はマカロニ、麺類、ジャム類の番になった。それがすべて底をつくと、祖母は『建物の周りに萌(ママ)えているイラクサの若葉を見つけて摘んでおいで』と言った。イラクサで、本物のホウレンソウみたいなスープを作ってくれた。」(142p)
 第二次世界大戦、クロアチア独立戦争、ボスニア戦争で何度も難民になったセルビア人を救った「イラクサ」とは?
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「イラクサのスープ」 ~同じ「いらくさ科」のカラムシは代用できるか?

いろいろな効能があるイラクサ


イラクサのスープの作り方
  • イラクサの葉と茎にはトゲがあるので10分湯がく。茹で汁も捨てずに飲むと体にいい。
  • 茹でたイラクサを冷水で冷まし、水を切って絞って、みじん切りまたはブレンダーで細かく刻む。
  • 鍋に油を引き、みじん切りのニンニクを炒め、次にイラクサを炒め、水1リットルと固形スープの素を入れ強火で煮て、沸騰したら5分弱火で煮る。
  • 小麦粉大さじ1杯を少量の水、または牛乳を溶いて入れ、とろみをつける。
 食べる前に生クリーム、牛乳を入れてもいい。
(「パンと野いちご」281pを要約)

にゃんにゃん母さんも言ってるけど、「イラクサ」と聞いて連想するのはアンデルセンの「白鳥の王子」だね。
白鳥にされた11人の兄王子の魔法を解くために、お姫さまが手を血だらけにしながらトゲだらけのイラクサを摘んだお話。

「白鳥の王子」の挿絵
Wikimedia_Commons[Public Domain]

イラクサって、どんな恐ろしい植物なんや!って想像ふくらませたよな。

でも、それを食べるなんて、思いもよらなかった。

トゲトゲで摘むのも大変なのに、それを食うという発想がスゲえ。

他に何も食べるものがなくて、しかたなくじゃない?

でも、食ってみたら意外とうまかった?

「イラクサ」はいらくさ科イラクサ属。茎と葉にトゲがあって、そこから蟻酸とヒスタミンが出ているから、イタイタ草、イライラ草から「イラクサ」になったそうだ。蕁麻疹の語源の「蕁麻」とはこの草のこと。

じんましんのじんま? 聞いただけでムズムズする。

でもね、「熱湯で10分間煮るとトゲと蟻酸は消える」ことを発見した人もエラいよ。

ノーベル賞もんだな。

食べられるだけじゃない、いろいろな効能があることもわかっている。
セルビア方面のイラクサは正確には「セイヨウイラクサ」で、ラテン名はUrtica dioica。英語ではネトル(Nettle)と呼ばれている。芥子の実のような種にも栄養があるし、葉っぱはビタミンCや鉄分が豊富で、干してお茶にして飲めば、花粉症などのアレルギーにも効く。(「パンと野いちご」281p)

花粉症対策のネトルティーは、日本でも売られているな。

花粉症だけじゃないよ。リウマチ、痛風、関節炎などの炎症、さらに体の老廃物や毒素を取り除いて、血行促進もしてくれる。4leaves毒蛇に噛まれた時は、生の葉をつぶした汁をつけるといい。

すばらしい解毒剤じゃねえか!

イラクサの煎じ液は美容にもいい。顔をパックすればニキビも消え、肌を整えるし、髪につけると髪が豊かにつややかになる。RUSSIA BEYOND

イラクサだけで、企業が設立できるぞ。


世界中で食されているイラクサのスープ


そして、イラクサのスープは、世界中で食されている。

〈イラクサのスープ
一般的なイラクサ(Urtica dioica)は、何世代にもわたってアイルランドの重要な伝統食品であり、春にはスープやピューレ、ソースに無料で美味しい食材を提供していた。
続きを読む 🔗 https://wp.me/p3XCMr-iQL(DeepL翻訳)

たとえば、ヒマラヤ地方のパニール(チーズ)入りイラクサのスープ
チベット南部シッキムの、八角入りの中華風イラクサのスープ
スウェーデンのイラクサのスープ

うまそうだあ〜!

特に、イラクサとスイバのスープは、おいしくて理にかなっているよ。

何の理にかなってるんだ?

スイバはシュウ酸が多いから、取りすぎると尿管結石の原因になる。でも、カルシウム豊富なイラクサと一緒に食べると、腸内でシュウ酸とカルシウムが結合して便から排泄される。(サントリーウェルネスOnline

スイバならうちの庭にも生えてるし、イラクサとスイバのスープ、できたらいいなあ。


食料難の時に人類を救ってきた偉大な植物のひとつ


イラクサは、ホウレンソウみたいにジャンジャン使える。キッシュに入れても、餃子に入れても、ケーキに入れても、ジャムでも、ピクルスでも、天ぷらでも、お浸しでも、なんでもできる万能選手だよ。RUSSIA BEYOND

だが、なんで、うちの方じゃ見かけねえんだ?

生息地が主に東北から北海道だからね。東北で採れるのは「ミヤマイラクサ」、別名「アイコ」と言って、東北じゃ、当たり前に食べられてるんだよ。春の若芽をゆでてアク抜きし、水にさらすと蟻酸が消えて、和え物や浸し物にするとおいしい。新芽の茎は、アスパラガスみたいにシャキシャキしておいしい。


山菜のあいこ(ミヤマイラクサ)の食べ方


フキの食べ方と似てるわ。きっと、こいつも、東北の食糧難も救ってきたんだな。

そうだね、イラクサは食料難の時に人類を救ってきた偉大な植物のひとつだと思う。
なんと言っても、痩せた土地でも生えてくれるのがありがたい。種まきも、肥料やりも、水やりもしないのに、ホウレンソウ並みに栄養価が高くて、おいしい
野菜ができるってスゴくない?

無耕作、無肥料、無農薬の代表選手じゃんか。よく争奪戦にならなかったな。

きっと、チクチクしてなかったら絶滅してたかも。

自然はうまくできているな。トゲのおかげでイラクサが全滅しないですんでいる。

ほんとだね。


「イラクサ」と「カラムシ」の違い


ちなみに、日本の「ミヤマイラクサ」は、セルビアの「セイヨウイラクサ」と同じか?

違うよ。「ミヤマイラクサ」は、いらくさ科ムカゴイラクサ属で、「セイヨウイラクサ」は、いらくさ科イラクサ属。

ふうん。で、本物のイラクサってどんな草?

こんな草。

〈イラクサ[Urtica dioica]は、利尿作用と強壮作用があり、血液を浄化し、皮膚と髪のハーブである。イラクサは肝臓、肺、尿路など多くのデトックス器官をサポートする。尿路感染症を繰り返す人には、ネトルを毎日煎じて飲むことをよく勧める。(DeepL翻訳)

あ? これならうちにもいるぞ、これだろ?


伸びるのが早くて困るんだよな。根を張るから、根こそぎ抜けないし。やっかいなヤツだと思ったら、お宝だったんか?

いやいや、似てるけどトゲがないし。これは「カラムシ」だね。

カラムシ? カラということはカラの国から来たんかな?

正解! 繊維に使う目的で日本に入ってきたらしい。カラムシの繊維で作った織物は「苧麻布(ちょまふ)」と呼ばれる、滑らかで白い布になるんだって。

で、食えるのか?

う〜ん、カラムシにも薬効があるから食べられるとは思うけど。牧野和漢薬大図鑑によると、主に使われるのは根っこだね。苧麻根(チョマコン)と呼ばれて、止血、妊娠中の不正出血に効く。葉っぱは吐血、血尿、痔の腫れと痛み、急性乳腺炎。花は麻疹に効く。

カラムシを食ったヤツはいるのか?

「アイコ」の代わりにカラムシの茎を食べた人はいるよ。カラムシの新芽を「熱湯で5分ほど茹でてそのまま麺つゆにドボン。冷蔵庫で1時間ほど冷やします。皮を剥いていただきまーす……(≧〰≦)これはなかなか……!イラクサのような柔らかさや旨味の強さはないけど、茹でても消えないこの歯切れの良さ、そして加熱によりさわやかになった香りがとても魅力的です。」(野食ハンマープライス

やっぱ、イラクサには負けるのか。で、カラムシをスープにしたヤツは?

いるいる。


【カラムシ】雑草をミキサーにかけてスープを作る【イラクサのスープ】


お! これぞ、男の料理! 鍋、きったねえし・・。

味見する勇気はないね。
そう言えば、にゃんにゃん母さんも野草ピザに使ってたよ。

やっぱ、食えるんだ!

でもね、カラムシはセイヨウイラクサと同じ「いらくさ科」だけど、属が「カラムシ属」でちがうんだよ。

ガックリ・・。

スープにするとおいしいセイヨウイラクサは、「いらくさ科イラクサ属」。
そして、アイコで愛される山菜のミヤマイラクサは「いらくさ科ムカゴイラクサ属」。

だが、どう見てもそっくりだぞ?「属」なんかどうでもええ、カラムシでいいから、イラクサスープを食ってみたくなったぞ。

くろちゃん、やる気モード・・。


カラムシスープ、作ってみた


〈そして、翌日・・〉

ほい! うちの庭のカラムシだ!


今の時期は花が咲いている。

青々としてきれいだね。 

さあ、料理教室のはじまりだ〜!!まず材料は、バターと玉ねぎ、じゃがいも。おっと、約1リットルの水も忘れるなよ。


バターで玉ねぎを炒めて、しんなりしたらじゃがいもを入れて、さらに軽く炒めて水を入れる。


沸騰したら、洗ったカラムシをまるごと入れる。


10分くらい、じゃがいもが柔らかくなるまで煮ると、こんな感じ。


火から下ろして、熱いうちにミキサー、またはハンドミキサーで粉砕する。


こんな風になったら、


ザルで濾して、熱いうちに塩味を整えて、豆乳でとろみを調節する。豆乳は、苦味を和らげる役割もするので入れたほうが飲みやすい。


できあがりだ。


おおう!! きれいなグリーン! とても、あの雑草のスープとは思えない。

だろだろ? さ、飲んでみろ。

ゴクリ・・あ、わりとおいしい。

まあ、ふつうの野菜スープの味だな。

でも、後から雑草味と言うか青汁の味と言うか、苦味がジワッとくるね。でも、これも栄養だと思えばなんてことない。

意外と行けるかもな。


いつか本物の「イラクサのスープ」を飲んでみたい


〈ここから、3日後〉

しろ、おめえ、大丈夫だったか?

何が?

カラムシスープだよ。

別に、なんともなかったけど?

おれは、下痢するかと恐れていたが、その逆で、便秘になって苦労したわ。

へえ? そうだったんだ。

気のせいかと思って、もう1回飲んでみたら、やはり翌朝、固くなった。やっぱ、カラムシはイラクサとは違うのかなあ?

でも、ぼくは何も変化なかったよ。

てことは、体質か?! もしかして、ドーシャが違う?

東洋医学セミナー中級の「アーユルヴェーダ」で学んだ方法で、ドーシャを調べてみたら?

う〜ん、残念! やっぱ、カラムシはイラクサとは別物だった。いつか、本物の「イラクサのスープ」が飲みてえ〜!!



  *時事ブログで連載されていた「地球の鼓動・野草便り」の「抜群の血液浄化剤!イラクサの秘密」で、イラクサのことが詳しく取り上げられています。


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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