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ぴょんぴょんの「狙われる農業」 ~日本にウクライナの後を追わせる「食料・農業・農村基本法改正案」
「食料・農業・農村基本法改正案」とはどんな法案なのか
問題は、現行の「食料・農業・農村基本法」を改正した、「食料・農業・農村基本法改正案」だ。どんな法案なのか、2023年12月27日農水省が公表した、「食料・農業・農村基本法の改正の方向性について」を参考にしてみよう。
わかった、なるべく噛み砕いて説明する。そもそも「食料・農業・農村基本法」とはなんぞや? 農林水産省の説明によればこんな感じ。全国民が良質な食料を合理的な価格で入手できるようにするのは、国の責務だ。それを果たすために1999年、「食料・農業・農村基本法」が施行された。この法では「国内農業生産の増大と、輸入・備蓄を組み合わせることによって、食料の安定的な供給を確保する」としている。
改正前からの文言だからな。じゃ、何を改正したいのか? 今言ったように、これまでは「食料の安定的な供給を確保する」のが目的だった。しかし凶作や、輸入が止まるなどの〈不測の事態〉が生じたら、どうする? そんな時でも、最低限の食料を確保する準備が必要だ。だから、〈不測の事態〉でも、国が食料安全保障を守れるように、「食料・農業・農村基本法」を改正したよってんだ。
食品輸出企業に尻を叩かれた経団連が、経産省の尻を叩き、農水省に書かせたとしか思えねえ。かと思えば、輸入に関してもおかしなことを言っている。安定的な食料輸入の確保のために、「輸入相手国への投資の促進」とか。
おかしいだろ? これは、日米合同委員会の臭いがプンプンする。さて、お次は「3.人口減少下における生産水準の維持・発展と地域コミュニティの維持」の(2)「農業法人の経営基盤の強化」。そのための施策に「人材派遣、スマート技術等を活用した支援など、農業経営の支援を行う事業者の活動の促進」とある。
竹中平蔵
Author:内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 内閣府地方創生推進事務局[CC BY]
思考停止な政府に辟易する農家
まったくひどい話だ。だが、国会で演説してみろ。「ウクライナ戦争、イスラエルのガザ侵攻、能登地震などをかんがみますに、日本も〈不測の事態〉に備えて食料安全保障を整えねばなりません。」これで、この改正案も一発で通っちまうよ。実際の農家は、この苦々しい現実をどう思っているのか? 「うむ農園自然栽培チャンネル」の高橋ひであき氏は「お先真っ暗」と言う。
去年5月時点の改正案は「多種多様な農家が経営できるように支援する」と書かれていたのに、今見ると「有事の際に増産をかけられるように、政府の権限を強化する」「農産品の輸入元の国への投資を促進しよう」になってることに、高橋氏は驚いている。「もう、馬鹿にしてんのかって話ですよね。今まで散々半年間くらいかけて、昨年の5月の中間取りまとめの内容は、どこに行ったんだという話。」(YouTube)
さらに言う。ヤバイのは、自民党がこれ以外の関連法案「食料供給困難事態対策法案」「農業振興地域整備法などの改正案(農振法、農地法、農業経営祈願強化促進法の束ね法案)」「スマート農業技術活用促進法案」と抱き合わせで、一括審議しようと言い出したと。高橋氏「非常に議論を避けて通そうとしている、ということが透けて見えるわけですね。」(YouTube)
その中でも大きな問題が、「農地法の出資比率」の改悪だと言う。「法人が農地を持つためには農地法で縛りがあって、農業をやっている方が半分出資して、後の出資する方は(全体の)半分以下じゃないといけないよ、っていう法律なんです。で、これが、3分の2に規制緩和しようと言ってるんですね。例えば食品関係の会社ですとか、種苗会社ですとか、農業関連の会社であれば、3分の2の出資をできると。これ、実質半分以上の株式を持ってますと、経営権は過半数を持っている企業のものになりますので、そこで雇われている、3分の1を出資した農業者に関しては、口出しはできたとしても、決済権は3分の2を持っている会社になる、ということになるわけですね。」(YouTube 12:21〜)
社員と言うより、小作人になり下がるのよ。法人以外に3分の2の出資ができるのは、過去5年以上やってきた認定農業者。1億円以上の融資が無利子、無担保、さらに補助金、助成金も受けられる認定農業者には大規模農家が多い。つまり、出資比率3分の1から3分の2への改定は、中小農家を切り捨てて、大規模農家や法人を優位にするのがねらいだ。
戦争になる前のウクライナと同じ構図
高橋氏「どっかで見たことあるんです、おんなじような構造をね。何かというとウクライナですね。ウクライナは戦争に入る前に、企業体が農地を取得できるように、法改正をしてる真只中だったんですよ。」(YouTube)
ウクライナの農地はチェルノーゼムと呼ばれる肥沃な土地で、ソ連崩壊後、私有化された農地は国民に配分されたが、その後の混乱で財閥に独占され、農民のほとんどは土地を借りて農業をやってきた。だが、2008年の世界的な穀物価格高騰で、ウクライナは農地争奪戦のターゲットになり、外国企業が大型機械を導入して、大規模農業を行っているのが現状だ。(広島経済大学)
だが現実は、ウクライナの農地の売買は禁止されている。そこでIMFは、ウクライナへの融資条件として、農地の自由売買を許可するようウクライナ政府に迫った。ウクライナ国民の80%以上は反対したが、ついに2020年4月、ウクライナ人またはウクライナ法人に限って農地売買ができる「農地市場法案」に、ゼレンスキーは署名した。(JETRO)
ブラックロックとバンガードがウクライナの農地の60%を購入
— タマホイ🎶🍃🗻🧷 (@Tamama0306) May 7, 2023
2014年にウクライナは世界銀行(IMF)から170億ドルを借り、その見返りとして外国人による農業地購入の禁止を解除しなければならなかった pic.twitter.com/H5rgBNQfUx
日本は確実にウクライナの後を追っている
ウクライナを食い物にしているブラックロック。
— masaya[09マニフェスト再び] (@tomaruseiya) October 6, 2023
次の標的は日本か?
↓
岸田文雄首相、世界の機関投資家と夕食会 ブラックロックCEOら - 日本経済新聞 https://t.co/QWBDHjWdvr https://t.co/QWBDHjWdvr
高橋氏「こういう危険性があるにもかかわらず、農業の経営権を企業体に渡す。個人から企業へと言う流れで、お先真っ暗ですね。ふざけんなよ、これを行っているのは誰か、内閣、経済界、グローバリズムを踏襲している企業たち、そっちを向いて政治をしている岸田首相。日本国民が豊かに幸せに生きていけることを考えていない。」(YouTube)
世界中の農家が世界経済フォーラムに反対!
日本だけじゃない、ヨーロッパも大変なことになっている。2023年末、ドイツ政府は突然に、32年間免除してきたトラクター車両税、ディーゼル燃料にかかるエネルギー税の優遇を、2024年から廃止すると発表した。ドイツ農民連盟は直ちに立ち上がり、約1700台の大型トラクターでベルリンの主要道路を封鎖。1月4日ドイツ政府は譲歩案を示したが、農民連盟は元に戻せと抗議中だ。(長周新聞)
トラクター抗議の先輩、オランダもがんばっている。2030年までに窒素排出量を50%削減するために1万1200軒の農家を廃業にすると宣告され、廃業するなら補償をやるが二度と復帰しないと約束させられ、それでも立ち退かないと強制的に土地を没収されるオランダ。オランダ農家もトラクターで主要道路を封鎖し、高速道路に家畜の糞尿を撒き散らした。(長周新聞)
世界経済フォーラムと言えば、1月15日のダボス会議で、バイエル社CEOのビル・アンダーソンが「コメの生産はメタンの最大の発生源の一つであり、温室効果ガスの排出という点ではCO2の何倍も有害」などと、のたまったそうだ。(長周新聞)
ビル・アンダーソン
Author:World Economic Forum[CC BY]
最後に、農業の現場にいる高橋氏のことばで締めくくろう。「自分たちの意志で、自分たちの生活が成り立たせられないような仕組みに、日本国は今、どんどん変わろうとしているんですよ。そして、農業界は狙われている、間違いなく、ということなんですね。」(YouTube)
泣けてくるのぉ
— himuro (@himuro398) February 16, 2024
農家に罰金を科すウルトラバカ政権🇯🇵
農家への支援を惜しまないプーチン🇷🇺 pic.twitter.com/8L2sn5LRLo
農水省が作ったたたき台に、経産省、食品企業、日米合同委員会、世界経済フォーラム、そして竹中平蔵氏が、好き勝手に希望を盛り込んだような法案になっています。