イスラム教シーア派の過激派民兵組織「ヒズボラ」
パレスチナの戦争、早く終わらないかなあ。
それどころか、
イランがイスラエルに弾道ミサイルで報復したぞ。
ひえ〜! イランが?
とうとう、真打ち登場ってワケだ。
これまでは、手下のヒズボラにイスラエルをちまちま攻撃させていたが。
ヒズボラ? テロ組織の?
ああ、
ヒズボラよ。アラビア語で「アッラー(神)の党」。レバノンの首都ベイルートおよび南北の高原地帯を活動拠点とする、イスラム教シーア派の過激派民兵組織。
ヒズボラの旗
シーア派・・と言われても、さっぱり?
よろしくお願いしま〜す。
7世紀ころ、ペルシャ帝国(イラン)に虐げられていたアラブ民族から、預言者ムハンマドが誕生した。
ゾロアスター教のペルシャ帝国(イラン)が、アラブ民族に滅ぼされて、しぶしぶイスラム教に改宗させられた。イランが受け入れたイスラム教が「シーア派」だ。
シーア派は、ムハンマドのお告げをチャネリングできる、アリー家の血統こそがイスラム教のリーダーと考えている。
一方、スンニ派は、ムハンマドの言葉が文字になったコーランを、完全に理解するものは誰でもイスラム教のリーダーになれると考える。
なるほど、そうゆう違いでしたかあ。
ざっくり言うと、アラブはスンニ派、イランはシーア派。 さて、ヒズボラのバックには、イランとシリアがいる。ということは?
ヒズボラはシーア派。
よくできまちた!
ヒズボラの目的は、レバノンにシーア派イスラム国家を樹立すること。そしてイスラエルを滅ぼすこと。そして、この人がヒズボラの宗教指導者、ナスラーラ師。
〈ヒズボラ書記長ハッサン・ナスラーラ: アメリカはイスラエルに何でもやらせることができる。アラブ人は、アメリカとの経済的結びつきと、イスラエルとの戦いを控える言い訳として、ユダヤ人ロビーがアメリカを支配しているという "ジョーク "を発明したのだ。(DeepL翻訳を意訳) 〉
ヒズボラが生まれた経緯
テロ組織の親玉にしては、ふつうのおじさんだ。
でもなんで、ヒズボラみたいなテロ組織ができちゃったんだろう?
話せば長くなるが、よいかの?
おねがいしまーす。
むか〜し、むかし、ある地中海沿岸に、「オリエント地域の、あらゆる民族と宗教と民俗をおさめた、美しい博物館」とも呼ばれる
レバノンがあった。ここはシリアの一部で、中東では珍しくキリスト教徒の多い地域じゃった。 (
世界史の窓 )
そう言えば、中東はキリスト教発祥の地でもあったね。
だが、よく知られるカトリック、ギリシャ正教のようなふつうのキリスト教ではない。
古来キリスト教マロン派 という。
聞いたことないなあ。
第一次大戦後、レバノンはオスマン帝国の支配から解放され、フランスの委任統治領シリア に入れられた。だが、キリスト教マロン派とイスラム教ドゥルーズ派の独立運動によって、1943年レバノンは独立。 その時レバノンは「
大レバノン 」になっていた。
え? 何が起きたの?
独立に当たって、 「フランスは、マロン人とドゥルーズ人が多かったレバノン山総督府の国境を拡大し、より多くのイスラム教徒を含むようにした。」(
Wiki )
つまり、
宗教を増やしてめんどくさくしたのよ。
着色範囲が大レバノンで、色分けは宗教分布を表す。 黒点線がオスマン帝国の行政区画である山岳レバノン・ムタサッリファテ県。
なるほど、イジワルだね。
マロン派とドゥルーズ派はレバノン寄り。イスラム教スンニ派、シーア派、ギリシャ正教は、もともとシリアから放り込まれたからシリア寄り。 (
Wiki )今もレバノンの紛争が絶えないのは、フランスの策略が大元にあるのよ。
こういう国を治めるのは難しいだろうね。
当初は人口比率から、大統領はマロン派、首相はスンニ派、国会議長はシーア派で、国会議員の割合はキリスト教:イスラム教が6:5になるように考慮した。
めんどくさ〜い。それに、いつ人口比率が変わるかわかんない。
おっしゃる通り!
1948年のイスラエル建国で、 実際それが起こった。
土地を奪われたパレスチナ難民がレバノンに押し寄せて、イスラム教の割合が増え たんだ。「このままじゃイスラム教の支配になる」と、
キリスト教徒が暴れた。
独立したのが1943年だから、5年で暴動?
さらに1958年、エジプトがシリアと統合して「アラブ連合共和国 」になると、「レバノンもアラブ連合共和国に入れろ」と、イスラム教徒が暴れた。
アラブ連合共和国の位置
みんな、不安だったんだねえ。
さらに1970年、PLO(パレスチナ解放機構)が首都ベイルートに拠点を置いたことで、
PLOが政治に首を突っ込む。するとマロン派は、パレスチナ人の乗ったバスを襲撃して虐殺。これをきっかけに始まった内戦は、1975年〜1990年の15年も続いた。 (
YouTube )
はあ~ 15年も内戦が続いたら、国はボロボロだよ。
おっしゃる通り。そのボロボロの
1982年に、イスラエルがレバノンに侵攻してきた。
なんでイスラエル?
レバノンは、イスラエルの敵であるパレスチナゲリラを匿ってるからな。だが、
イスラエル軍はレバノン南部に居座って、なかなか帰ってくれない。こんな時期に生まれたのが、ヒズボラだ。
出ました、テロ組織。
さっきも話したように、彼らは、イランやシリアの支援を受けて、「イスラエルを滅ぼす」スローガンを掲げる過激派だ。1990年にシリア軍が侵攻してイスラエルは後退。
2000年にヒズボラの攻撃で、イスラエルはようやく出て行った。
ヒズボラが、イスラエルを追い出してくれたんだ。
イスラエルとの国境地帯、
レバノン南部の住人はヒズボラに感謝している。病院や学校を作ったり、町の清掃活動をしたり、イスラエル空爆による犠牲者の遺族の面倒をみたり。ここはまるで、独立した「ヒズボラ国」で、イランの国旗が掲げられているそうだ。
レバノンの経済的没落
でもさ、本来イスラエルとの国境を守るのは、レバノン軍の役目だよね。
レバノン軍は何をしてるの?
そこが重要なポイントだ。
ヒズボラはレバノン南部の住人を助けるが、レバノン国は滅ぼそうとしている。それを説明するために、レバノンの経済的没落について話そう。 参考動画が2つある。
大爆発にハイパーインフレーション、中東のパリレバノンはなぜ没落したのか
VIDEO
これは1年前にアップされた動画で、データは少々古いかもしれないが、レバノンの窮状を知るにはわかりやすい。
語りが聞きやすいね。
【ゆっくり解説】大量の難民に大爆発…ガチで経済がヤバい中東の国レバノン
VIDEO
これはもっとくわしいけど、わかりやすい。
かつては「中東のパリ」と呼ばれ、1980年代まで中東の金融センター、中継貿易地点として、今のドバイの地位にあった
首都ベイルート。だが2018年、レバノン経済が本格的に没落し始めたとき、ドルで貯蓄した預金が引き出せなくなった。2019年、レバノン政府は国民の給与と年金を削減した。さらに政府はレバノンのライン、インターネットに課税することを決め、民衆は爆発。そして2020年3月、とうとうレバノンはデフォルト(債務不履行)した のよ。
ジェットコースターみたいにデフォルトしちゃったんだ!
さらに追い打ちをかけるように、
死者200人超、負傷者6500人以上の、ベイルートの大爆発が起きて・・。
そう言えばあったね。あれは本当にただの事故なの?
時事ブログ によると、「事故ではなく爆弾テロであるなら、ほぼ間違いなくイスラエルの仕業」「爆発物はあらかじめビルに仕掛けられていた
(中略)... もし、そうならこの事件、レバノン政府の自作自演ということになる。」
どっちなんだろう?
あの際、
小麦の備蓄倉庫も一緒に吹っ飛んじゃって、レバノンには1ヶ月分の小麦しか残らなかった。もともとレバノンは食料を輸入に頼っていて、レバノンポンドは暴落して、ハイパーインフレ になっていて。
食べものが買えない?
さらにウクライナ戦争で小麦が入らなくなって、食うものが買えないどころか無い状態。観光産業が売りだったのに、コロナでお客も来ない。生活必需品も不足する。ガソリンもない。電気も、水もない。
ないないづくし。でも、食料と石油を外国に頼っている日本は、他人事じゃないね。
さらに、治安が悪くなっても、警察や軍隊に給料が払えない。
多宗教で多宗派のレバノン政府全体が腐敗している
そっか!
だから、ヒズボラが登場したんだ。 でも、なんで、そんなとこまで落ちたの? ってゆうか、周囲は石油が出る国ばかりなのに、なんで誰も助けてくれないの?
原因はヒズボラにある。
ヒズボラは過半数に近い議席をもっているが、こいつらが反対するせいで、何年も大統領が決まらなかったり、何ヶ月も組閣できなかったりで、政治が空白状態になっていた。
ヒズボラ、レバノン南部の住人には頼りにされているのに。
ヒズボラだけじゃない、
多宗教で多宗派のレバノン政府全体が腐敗している。 国民じゃなくて、自分の派閥の存続だけを気にかけていたからな。
フランスが目論んだ通りになってしまった。
おそらく、上層部はとっくにカネを持って、海外に脱出しているだろう。だが問題はそれだけじゃない。
レバノンは、外国からの信頼も失ってしまった。 たとえば、UAE、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアからなる「
湾岸協力会議 」は、以前はレバノンを助けてくれたが。
石油を分けてくれそうだけど?
だが、彼らはレバノンにそっぽを向いた。そのワケは、
レバノンから違法な薬物、覚醒剤が密輸で入ってくるからだ。それをレバノンに言っても取り締まってくれない。結局、湾岸協力会議は、2年くらい前にレバノンとの国交を断絶した。 (
YouTube )
あ〜あ・・。
要は、政府がヒズボラに牛耳られて、ヒズボラの稼ぎである麻薬密輸に文句が言えなかったのよ。
ヒズボラは、レバノンが潰れてもいいのかな?
ヒズボラの目的は、レバノンにシーア派イスラム国家を樹立すること。イランやシリアに吸収されたいんじゃねえの?
それじゃ、キリスト教や他の宗教の人たちが迷惑だ。
だが、お先真っ暗のレバノンにも、
明るいニュースが飛び込んできた。3月26日、レバノンの暫定首相ナジーブ・ミカティが、湾岸諸国に国交回復を呼びかけ、サウジとクウェートが好意的な反応を示してくれた。ミカティは「密輸品、特に麻薬の密輸を直接的、間接的に防ぐためにあらゆる手段を講じ、すべての国境通過地点での管理を強化する」と宣言した。 (
ARAB NEWS )
ナジーブ・ミカティ
今度こそ、ヒズボラの麻薬密輸を止めて、国交を戻して、レバノンが復活しますように。
ついでに、イスラエルもどうにかしてくれ。
Writer
ぴょんぴょん
1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)
かつては「中東のパリ」と呼ばれ、今のドバイと肩を並べるような金融の中心だったレバノン、カルロス・ゴーンが逃げ込んだレバノンが、崩壊の危機にあったとは。
なんで、そんなことになってしまったのか?