ベオグラード市議会選挙のやり直し
コソボとセルビア、どうしてるかなあ?
最近の話だが、コソボではセルビア・ディナールが使えなくなるとか、なったとか?
セルビア・ディナール札
それ、困るの?
ああ、セルビア政府はコソボ・セルビア人に、セルビア・ディナールで仕送りしているからな。(
AP)
セルビア、裕福じゃないのに仕送りまでしてるんだ。
コソボ・セルビア人は、まともに生活させてもらえてないんだ。
早く、セルビア人自治区が認められたらいいのに。
それも遠い先の話になりそうだ。
実は、セルビア国内も大変なことになっている。ここでも話したが、去年12月、臨時議会選挙があった。
ヴチッチ大統領の与党「セルビア進歩党(SNS)」が勝ったね。
セルビア進歩党のロゴ
同日に行われた
ベオグラード市議会選挙も、与党が過半数を占める結果になった。だがその結果を、欧米寄りの野党連合は不正選挙のせいだと言い出した。集会を開いて抗議していた彼らは、クリスマスイブにベオグラード市庁舎に暴力的に侵入しようとしたところを、ロシアの情報で事前に待機していた警官隊に阻止された。
だけど、たかが市議会選挙でしょ? なんでそんなにアツくなるの?
ベオグラードはセルビアの首都。ベオグラード市議会議員によって選ばれる市長は、東京都知事と同じくらい、重要なポストなんだ。
ベオグラード
そうだったのか。
セルビア政府は不正選挙を否定しているが、
その後もしつこく選挙やり直しの抗議が続き、とうとう市議会選挙のやり直しをすることになった。
え! いつ?
6月だ。
あと2ヶ月しかない?!
でも、スゴくねえか?
抗議活動で政府を動かすパワー。日本にも分けてほしいよなあ、暴力はダメだけど。
セルビアは熱く、日本は冷めている。やっぱ、足して2で割るとちょうど良さそう。
だが、
今度の選挙は注目だ。セルビア史上、最も重要な選挙のひとつになるとも言われている。自国主義を貫く与党と、欧米寄りの野党連合。市民はどっちを選ぶのか?(
RT)
ドキドキ♪
ヨーロッパの一員になったつもりのクロアチア
国内だけじゃない、
セルビア政府は国外からも責められている。隣国クロアチアのグリッチ=ラドマン外相は言った。「ウクライナ紛争でEUかロシア、どっちに付くのか、立場をハッキリさせろ」「セルビアはロシアの『衛星』か?」(
RT)
グリッチ=ラドマン外相
でも、クロアチアもユーゴスラビアの一員で、かつてのお仲間でしょ?
仲間? とんでもない! 同じユーゴスラビアでも、
ヨーロッパに近くて豊かなクロアチアやスロベニアは、ずっと不満を抱えていた。と言うのも、この2国の富は、セルビアなどの貧乏国に分配されていたからだ。
そうだったんだ。
さらに第二次大戦で、クロアチアはナチス・ドイツについた。特にクロアチアの民族団体ウスタシャは、ユダヤ人だけでなくセルビア人に対しても、ナチス顔負けの拷問や虐殺を行なったのは有名。
ウスタシャのロゴ
へえ、セルビアとクロアチア、仲が悪かったんだ。
ライバルって感じかな。
クロアチアは2013年にさっさとEUに加盟して、セルビアは先を越されたし。
セルビアはコソボ問題を抱えているから、なかなかEUに入れてもらえない。
しかも2023年、クロアチアは自国通貨を捨て、ユーロに切り替えてしまった。
おお! 自国通貨を捨てたらアカン。
こんな風に、クロアチアはヨーロッパの一員になったつもりでいるが、ただのパシリよ。ヴチッチも言ってる。「(私は)彼のように、誰かの使い走りになったり、召使いになったりしたことは一度もない。」(
RT)
ヴチッチさん、西側の圧力に屈しないでほしい。
ああ、いつまで耐えられるかわからないが、
「可能な限り」自国の立場を守るとヴチッチは言っている。(
RT)
「自国の立場を守る」かあ・・日本の政治家でそんなこと言える人、いるかな?
BRICS首脳会議への招待
国内からも国外からも叩かれっぱなしで、苦労の絶えないヴチッチだが、なんと!
今年10月、ロシアのカザンで開催されるBRICS首脳会議に国賓として招待された。(
RT)
わお! プーチンからのごほうびだ。となると、セルビアはBRICSに加盟するつもり?
セルビア与党の中には、EU加盟をあきらめてBRICSに加盟しようという意見もあるらしい。
EUなんか、コソボの独立を認めろ、ロシア制裁に加われってうるさいだけで、一向に加盟させる気配がないし。
BRICSだって、 「世界がBRICSを中心とする『新しい多極世界秩序』に向かうことは間違いないでしょう。(中略)...しかし、『多極化した新世界秩序(NWO)』がどのようなものになるのかは、いまだにハッキリとはしません。」(時事ブログ) というように、別の形のNWOを目指してるかもしれない。それでも、セルビアみたいな小国にとっては、心強い味方かもしれないよ。
NATOによる不当な空爆
そうそう、肝心な3月24日の話をしなくては。
誰かのお誕生日?
ちゃうちゃう!
セルビアで3月24日と言えば、NATOの空爆が始まった1999年3月24日のことだ。今年で25周年になる。
アメリカ主体のNATOが、国連安保理の承認なしにコソボとセルビアに空爆を開始した日から、25年が経ったのか。
空爆は78日間、一日も途切れることなく、セルビアのあらゆる都市に爆弾が投下された。セルビア政府の発表によれば、
80人以上の子どもを含む2500人の市民が死亡した。(
RT)
この空爆で使われた
爆弾には、ガンを誘発する劣化ウラン弾が約3万1000発が含まれていて、セルビア人だけでなく
アルバニア人、NATOの兵士までが、今なおガンなどの健康被害に苦しんでいる。(
RT)
セルビア人の犠牲者
はあ~ アメリカの罪は大きい。
2019年ソチで行われた
ロシアとの会談でヴチッチは、NATOによる不当な空爆についてこう述べている。「プーチンがいたら、1999年にユーゴスラビアを空爆することを許さなかっただろう。」(
RT)
わかる。プーチンがいたらやらせない。
25周年を迎えた今も、その思いは変わらないか聞かれたヴチッチは「変わらない。自分だけでなく国民も同じ思いだ」と答えた。
一方プーチンは、当時のロシア事情を思い出しながら「今、それについて話すのは難しい」と言う。(
RT)
へえ、そうなんだ。「俺がいたら、そんなマネさせなかった」とか、ヒーローみたいにカッコよく言うかと思った。
プーチンは「ユーゴスラビアは深刻な内紛状態にあった。当時、ロシアとユーゴスラビアの間には、そのような関係はなかった」と答えたが、
それでも、当時のアメリカと同盟国の行動は「完全に容認できない」と述べ、ユーゴスラビアに対するNATOの攻撃を「巨大な悲劇 」と呼んだ。(
RT)
ところで、プーチンがロシアの首脳になったのはいつだっけ?
NATOの空爆が終了したのが1999年6月。プーチンがロシアの首相に任命されたのは、その直後の1999年後半のことだ。
もう少し早く首相になってたら、止めてたかもしれない。
いやいや、
プーチンはムリだったと言う。当時のロシアは、チェチェン紛争のせいで経済はズタボロ、NATOの空爆を阻止するために何もできなかったのは事実だ。モスクワのアメリカ大使館には、NATOの空爆に抗議するために連日数千人が訪れたが、抗議したり非難する以外に何もできなかったと言う。(
RT)
西側幻想を砕き、ロシアの未来を見せてくれたNATO空爆
そんなに非力だったんだ。今と違うねえ。今のロシアのなんと頼もしいことよ。いかにプーチンが、ロシアを強くたくましくしたかがわかる。
プーチンが悟ったからだな。
NATOによって破壊されるユーゴスラビアを、指をくわえて見るしかなかったロシアは気づいちまったのよ。西側諸国が、思い描いたような理想の民主主義国家なんかじゃなかったことに。
西側諸国に幻滅した?
ああ、さらに、ロシアは気づいた。
グローバルな舞台で、国際法なんか何の保証にもならんことを。かつての同士ユーゴスラビアは、西側の思いのままに破壊され、領土の一部を失い、民族浄化の犠牲になり、屈辱を受けている。なのに、これらはすべて「ルールに基づく国際秩序 」を口実に行われている。(
RT)
西側、サイテー!
さらにさらに、ロシアは気づいちゃった。自分たちは、飢えたサメだらけの水槽の中にいて、NATOにはいつでも、国際社会の承認なしに行動する用意があることに。
「西側諸国がユーゴスラビアを攻撃するためにこの口実を使うことができるのなら、ロシアに対しても同じ戦略を使うことができると考えざるを得なかった。」(
RT)
たとえば、ロシアとチェチェン共和国の紛争とか。
チェチェン?
チェチェンの位置
ざっくりの説明になるが、チェチェンはロシア連邦のカフカス地方の共和国で、多数を占める先住民族チェチェン人はイスラム教スンニ派。チェチェンはロシア連邦からの分離独立を求め、1994年以来たびたび武装蜂起し、ロシア軍が武力鎮圧する事態がくりかえされた。2009年までに戦闘は終結したが、現在も未解決である。(
世界史の窓)
チェチェンの過激派に無力化されたロシア連邦軍のBTR-80装甲車(2000年3月)
なるほど、コソボの分離独立を認めないセルビアに対して、NATOは空爆してきた。と言うことは、チェチェンの独立を認めないロシアに対して、同じことが行われてもふしぎはないと。
そうゆうこと。
NATOの空爆は、ロシアの西側幻想は吹っ飛ばしただけじゃなくて、ロシアの未来を見せてくれたんだね。
それを証明するかのように、
NATOはどんどん拡大し、ついに隣国のウクライナまで迫って来た。
NATOがロシアに同じことをしたいのが、ハッキリ見えてきた。
だから、ウクライナに侵攻せざるをえなかった。
でも、
そこに行くまでには、ロシアは軍事力を強化し、戦争になっても国内で食料やエネルギーが賄えるように、着々と準備をしていた。
ミンスク合意なんて、最初から守られることはないと踏んで、着々と戦争の準備をしてたんだね。
そのおかげで、
今のロシアは制裁なんかものともせず、逆に経済成長している。ユーゴスラビアの惨事によって、「協定や国際法では、ロシアを含むいかなる国も、外からの軍事力から守ることはできない。つまり、
どの国も、政治状況と脅威に対処する、自国の能力に頼るしかないことが明らかになった。」(
RT)
外部の脅威から主権を守るためには、自国の能力に頼るしかないなら、日本はどうだろう?
アメリカから一方的に買わされる兵器は、すべて型落ちだし、実戦に通用しないと言われている。さらに、頼りになるはずの
同盟国は、日本を最悪な方向に引っ張るばかりで、縁を切った方がマシだ。
プーチンはユーゴスラビアの教訓によって、ロシアを守ることができている。果たして日本は、歴史から教訓を学んできたかな?
アメリカに歯向かったらイタい目に合う、という教訓だけは、十分すぎるくらい学んでるようだが。
Writer
白木 るい子(ぴょんぴょん先生)
1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)
今の日本はこれまで以上に、宗主国アメリカにガッチリ肩をつかまれて、どんどん自由を奪われつつあります。
かたや、自国の自由を守るために、EUや隣国の脅しに屈せず、ロシア制裁を踏みとどまるセルビア。
こんなセルビアを見守ってきたロシアは、今年10月のBRICS首脳会議に、セルビア大統領を国賓として招待しました。
ロシアにとってセルビアは、同じスラブ民族で正教を信仰する仲間であるだけでなく、欧米の実態を教えてくれた恩師だったのです。