読者の方からの情報です。
熊が大量捕獲されていますが、実際の捕獲は銃よりも罠がずっと多く、しかも鹿やイノシシ用の罠での誤捕獲が多いそうです。人身被害が捕獲の理由だとしてマスコミでは強調されますが、捕獲される場所も人里離れた奥山が多い(動画1:10:00あたりのスライド)とのこと。
振り返ると2024年1月に初めて日本熊森協会の情報を取り上げました。その後、少しずつ情報を追って「山が豊かであることが熊の被害を防止することになる。日本熊森協会は熊を守る協会ではなくて、熊が住む森の環境を守る活動をしている」ということが分かりました。熊被害をあおるマスコミ報道に流されず、人間の豊かな住環境のためにも熊を絶滅から守ろうと人々が声を上げて協力しています。
読者の方から「自然保護団体と猟友会が考える クマ問題」というシンポジウムがあったことを教えていただきました。専門的な内容かと思いながら観始めましたが、熊のいない地域にも大いに関わる切実な内容で、2回に分けて取り上げてみたいと思いました。
まのじの住む地域は近年イノシシが出没するようになり、自治会で対策を迫られています。市は補助金を出す、鳥獣対策のセンターは棲み分けの指導をする、猟友会の人は捕獲の指導をする、けれども実際に実行するのは地域住民の人、という結構ハードルの高い状況に当惑していますが、動画を見ているとクマ問題の前提に今の日本の地方の状況があると実感します。
今回は動画の前半、熊森協会会長の室谷悠子氏と、岩手県花巻市猟友会会長の藤沼弘文氏の講演をまとめてみました。熊森協会と猟友会というと、保護と銃殺という逆の立場のような印象をメディアによって与えられますが、実は猟友会のハンターの方々も間違って罠にかかってしまった熊を射殺することは望んでおらず、里山が痛んで「熊たちの食べる餌がない、本当にかわいそうなくらい餌がない」と語っておられるのが印象的でした。
読者の方から「自然保護団体と猟友会が考える クマ問題」というシンポジウムがあったことを教えていただきました。専門的な内容かと思いながら観始めましたが、熊のいない地域にも大いに関わる切実な内容で、2回に分けて取り上げてみたいと思いました。
まのじの住む地域は近年イノシシが出没するようになり、自治会で対策を迫られています。市は補助金を出す、鳥獣対策のセンターは棲み分けの指導をする、猟友会の人は捕獲の指導をする、けれども実際に実行するのは地域住民の人、という結構ハードルの高い状況に当惑していますが、動画を見ているとクマ問題の前提に今の日本の地方の状況があると実感します。
今回は動画の前半、熊森協会会長の室谷悠子氏と、岩手県花巻市猟友会会長の藤沼弘文氏の講演をまとめてみました。熊森協会と猟友会というと、保護と銃殺という逆の立場のような印象をメディアによって与えられますが、実は猟友会のハンターの方々も間違って罠にかかってしまった熊を射殺することは望んでおらず、里山が痛んで「熊たちの食べる餌がない、本当にかわいそうなくらい餌がない」と語っておられるのが印象的でした。
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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自然保護団体と猟友会が考える クマ問題➀(発表編)
配信元)
YouTube 24/11/20
① 「生息地の再生と被害対策の普及が不可欠」 室谷悠子氏(日本熊森協会会長、弁護士)
いわゆる生物多様性の整った、水源のある奥山自然林にクマは住む。日本には自然林がほとんどない。国策で自然林を人工林に変え、特に西日本は人工林率が高い。水源の森が人工林に置き換わってしまった。
人工林だと表土流出が止まらず、「緑の砂漠」(13:00)となって保水力のない山になる。湧水が減少して田畑ができなくなったり、土砂崩れが発生する。
2000年以降は、わずかに残った自然林(ミズナラやコナラ)が枯れたり、原因不明で昆虫が激減したり、明らかに自然林が劣化してきて、森がクマを養えなくなっている。このことが東北や北海道などのクマの大量出没を引き起こしていると考えられる。
さらにそれに拍車をかけて、再生可能エネルギー開発による自然林の破壊が進行している。
加えて、罠によるクマの乱獲が起こっている。シカやイノシシを捕獲する罠が急増し、それにクマがかかってしまう。クマは罠にかかりやすく、問題を起こしていないクマでも遠くから餌におびき寄せられてかかってしまう。罠にかかると多くの場合、殺処分する自治体が多い。山奥の「くくり罠」にかかってしまったクマは放獣しなければならないのに、違法な殺処分が行われる。
熊森協会は、捕獲強化よりも棲み分けの支援を提案する。人工林から自然林に戻して生息地の回復をする。静岡県の森林づくり県民税の「森の力再生事業」で人工林を計画的に伐採すると、時間はかかるが次第に自然林になる(23:20)。
しかし森づくりは本当に大変。捕獲よりも被害対策の普及に予算を取るべきだ。
クマ人身事故は多くが突発的な遭遇で発生する。その予防をすることが大事だ(27:00)。
クマ人身事故が起りやすいところは過疎地で、マンパワーがなく集落の整地ができていない。住民と熊森協会が協力して草刈り、誘引になる柿もぎ、木の伐採などの被害防止対策を実施して「人身事故ゼロ、捕殺ゼロ」を達成した。この取り組みは地域の人も喜んで、クマ対策に自発的になった。作業はのべ67人、一人に日当1万円出したとしても鳥獣対策予算で可能だ。
② 「クマ出没対応の最前線で感じるクマ絶滅の恐れ」 藤沼弘文氏(岩手県花巻市猟友会 会長)
私は58年前に猟友会に入った。今から10年前まではクマは見なかった。
東日本大震災の2、3年後からクマ出没が始まった。その背景にはイノシシの異常繁殖がある。
イノシシは基本的に姿を見せない。1頭見たら30頭はいる感覚だが、花巻では山で約100頭ほど目撃し、それらは逃げもしなかった。今はそんな状態だ。シカ、イノシシに餌を全部食べられてしまってクマが出てきた。熊が食べる餌がない、本当に可哀想なくらい餌がない。猟友会としてはシカ、イノシシの駆除をして、なんとか適正数にしたい。
テレビは必ず熊イコール事故のストーリーを作ってくる。山にはクマがいるのは当たり前だ。クマに出会って事故だと騒ぐが、不幸にして亡くなった方はなにが原因だったのかを調査している。山の中ではクマも必死に餌を探している。
先ほど、クマが罠にかかるという話があった。これは錯誤捕獲が多い。シカやイノシシの罠にクマが間違ってかかる。農水省がシカを獲るための罠の資格を指導し取らせている。クマや子どもが間違って罠にかからないように直径12センチと狩猟法で決められている。しかし守られていない。環境省の通達で直径12センチがうやむやになっているのでクマの錯誤捕獲が増えている。しかもかかった獣を必要以上に傷つけないためのストッパーを99%つけていない違法罠ばかりだ。
なぜ猟友会が錯誤捕獲を避けるのか。ハンターというのは生き物を1発で仕留める。罠にかかって動物が傷ついている場合は保護する。引き金を引く時は「ごめんな」と言って引く。
クマの絶滅を防ぎ、日本の未来の子どもたちのためにも減反政策をやめ、里山を復活させるべきだ。