ぴょんぴょんの「少年Aの物語(1)」 ~小さくて痩せっぽちでおとなしい、ノンビー君

 「神戸連続児童殺傷事件」別名「酒鬼薔薇事件」とは、1997年5月27日早朝、中学校の校門前で、数日前から行方不明になっていた子ども(11歳)の生首が発見された事件です。犯人はその中学に通う3年生(14歳)の少年だったことで、日本中が震撼しました。
 それから7年、逮捕された「少年A」は刑期を終えて2004年に社会復帰しており、2015年には「絶歌」という手記を出版して、再び社会を驚かせました。
 気持ち悪い事件ですが、ネットでは少年Aの冤罪が噂され、冤罪を訴える本も数多く出版されています。
 ただ、冤罪を確かめたくても、少年Aの供述調書などの資料は膨大で、すべてに目を通すのは大変です。そこで、ネットで気になった記事と数冊の本から、真実を探ってみたいと思います。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「少年Aの物語(1)」 ~小さくて痩せっぽちでおとなしい、ノンビー君

事件の概要


あの事件から、もう25年になるな。

ぼくはリアルタイムで知らないけどね。

ショックで、謎の多い事件だったなあ。

でも、犯人はとっくの昔に逮捕されてるのに、なんで、今ごろ話題にするの?

冤罪かもしれないって言うんだよ。

へえ? これも冤罪? どんな事件だったか知りたくなってきた。

よし! それじゃ、ウィキペディアを参考に、おさらいしてみよう。

第一の事件
1997年2月10日 4:00pm頃、神戸市の路上で、小学生の女児2人がショックレスハンマーで殴られ、1人が重傷を負った。
第二の事件
3月16日 0:25pm頃、公園で、小学4年生の女児が頭を金づちで殴られ、3月23日に脳挫傷で亡くなった。 その直後(0:35pm頃)、別の小学3年生の女児が腹部を刃渡り13センチの小刀で刺され、2週間のケガを負った。
第三の事件
5月24日 11歳男児(淳君)が行方不明になる。
5月27日 早朝、神戸市の友が丘中学校正門で発見された男児の頭部は、行方不明だった淳君の頭部だった。彼の口には、「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」による「さあゲームの始まりです 愚鈍な警察諸君 ボクを止めてみたまえ ボクは殺しが愉快でたまらない 人の死が見たくて見たくてしょうがない 汚い野菜共には死の制裁を 積年の大怨に流血の裁きを SHOOLL KILL 学校殺死の酒鬼薔薇」という、犯行声明文が挟まれていた。
6月4日 神戸新聞社に、「酒鬼薔薇聖斗」からの第二の犯行声明文が郵送された。
6月28日 警察は14歳の中学生「少年A」に任意同行を求め、事情聴取で犯行を自供したため、殺人及び死体遺棄の容疑で逮捕した。自供により第1の事件、第2の事件も少年Aの犯行とされた。

Author:KishujiRapid[CC BY-SA]


少年が少年を殺したんだね?! しかも、切った首を学校の校門前に置いたって?

それも、自分が通っていた中学の。犯行声明のオマケつきで。

にしても、少年Aは、ずいぶんあっさり自供しちゃったんだね。

警察に騙されたそうだよ。少年Aは現場で目撃されていない。さらに現場に少年Aの指紋もない。何の証拠も見つからない中、唯一の頼りの筆跡鑑定書も空振り。「(犯人と少年Aの筆跡は)同一人の筆跡か否かを判断することは困難」だった。ところが、少年Aを取調べた警察官は、あたかも筆跡鑑定で、声明文と少年Aの筆跡が一致しているように説明した。「この声明文が君が書いた字であることは分かっている。素人にも分かる」と。「結局、そのように責め立てられて、少年は泣きながら自白することになるが、・・違法もしくは不当な手段で得られた自白である・・(神戸事件を読む30〜31p)。」

うわあ、ズルい!

警察じゃ、こういうことは日常茶飯事なんだろうよ。


不自然な供述内容と証拠物件


ところで少年Aってどんな子なの? 被害者の子は?

『少年A』この子を生んで‥」によれば、Aは3人兄弟の長男。みんな年子で一つ違い。父親はサラリーマン、母親は専業主婦。ニュータウンの一戸建てに住んでいた。被害者の子は「淳君」。少年Aの一番下の弟と同級生で友だちだった。少年Aの家に遊びに来たこともある。ちょっと知的障害があり、カメが好きな男の子だった。

年子の3人兄弟の長男かあ。母親の愛情が不足しがちで、問題児になりやすいかもしれない。

5月24日 1:40pm、淳君は祖父の家に行くと言って自宅を出た。たまたま淳君と会った少年Aは、「向こうの山にカメがいたよ。一緒に見に行こう」と、「タンク山」と呼ばれる高台に淳君を誘い出し、山頂手前のケーブルテレビ施設の入り口で、淳君を絞殺した。

ケーブルテレビの施設(撤去され現在は更地)
Author:山井書店[CC BY]

たまたま会っただけで殺しちゃったの? なんか、唐突すぎない?

ここからも、不自然なことばかりだ。たとえば絞殺の手順とか。

少年Aは、指紋が付かないように【手袋】をしたあと、淳君の真後ろから右腕を首に巻き付け、首を締め上げた。淳君は泣き叫び、手をバタバタさせた。Aは淳君を前に倒して、覆い被って首を絞め上げた。それでもなかなか死ななかったため、今度は淳君を仰向けにして、腹の上に馬乗りになって【両手で】首を締め付けた。ナイフで殺害しようと思ったが【ナイフを忘れた】ことに気付く。石で撲殺しようと思ったが、石は土に埋まっていて動かせない。そこでAは、首を締めている右手はそのまま、【左手】で運動靴の紐を取り外し、その紐を首にかけて、しばらく締め続けたところで、淳君の呼吸音が止まった。

へえ? 器用な子だねえ。手袋してる左手で、靴紐を取り外すって難しくない? 手袋をしてたら、両手だって時間がかかると思うけど。左利きだったの?

右利きだよ。さらに「神戸事件を読む」には、こんなエピソードがある。

その日、少年Aは友人と、午後4時にレンタルビデオ店で待ち合わせをしていた。待ち合わせをしていた友人は、Aは自転車で来たが30分くらい遅れたと証言している。その際、Aはさやのある長めのナイフを、ポケットから出したり引っ込めたりしていたと、友人は証言している(「神戸事件を読む」76p)。

A君、ナイフ、持ってたじゃん!

おかしいだろ? だが、その直前のAはこんな心理状態だった。

なかなか死なないので腹を立てたが、同時に淳君を殺していること自体を楽しんでいた。また、淳君が死んだ時、Aは、「淳君が自分だけのものになった」という満足感でいっぱいになり、「その満足感はそれまで僕が人を殺した時のことを考えて、得られるであろうと思っていた満足感よりも、もっと素晴らしいものでした」「ハンマーで殴った女の子は死んだということを知ったが、この時は一瞬のことであり、大した満足感は感じなかった。しかし、淳君の場合は、殺すのに時間がかかったので、それだけ満足感が得られた」 と話した。

イジョー!!

そして、ここが重要なポイントだ。

じつは淳君は「右手一本」で首を締められ、殺されているのである。「犯人が淳君の首を、右手だけで締めて窒息死させていたことが(略)遺体の解剖結果で分かった」〈毎日新聞〉(神戸事件を読む79p)

なんだって?! A君は、【両手で】締めたって言ったよね。それにしても、右手一本で締め殺せるって、すごい腕力の持ち主だよ。

じゃあ、実際のAはどういう少年だったのか? Aの父親はこう書いている。「Aは体も小さく痩せっぽちで活発な子ではない。どちらかというとおとなしい目立たない子だった。(「少年A」この子を生んで‥92p)」

ええ?

母親もこう書いている。「Aはいつもおとなしく、いつもフニャッとして人の後に付いていく子でした。『アンタは本当にノンビー(のんびり)君やねえ。ちょっとトロイのとちゃう?』(「少年A」この子を生んで‥150p)」

もしかして6種体癖? 相手が小学生とは言え、痩せっぽちでノンビーの6種が、右手だけで首を締めて殺せる?

6種にそんな筋力はない。

もし、A君が6種だとしたら、空想癖もあったりしたの?

あったあった! 母親はこう話している。「孤独なAには、空想上の悪い友達 “酒鬼薔薇聖斗” “バモイドオキ神” などがたくさんいて、(「少年A」この子を生んで‥254p)」「(精神)鑑定書の中で、あの子は自分の空想で作り上げた友達を語り、その姿を描いていました。“エグリちゃん“ と名付けた身長45センチぐらいの女の子。その絵は気持ち悪くなるようなグロテスクなものでした。頭から脳がはみ出て、目玉も飛び出している醜い顔で、(中略)...“ガルボス”という空想上の犬(絵はない)も友達で、『僕が暴力をふるうのは“ガルボス”の凶暴さのせい』と話していました(「少年A」この子を生んで‥257p)。」

この子、単なる「怪奇ファンタジー好き」と言うより、闇の世界と通じてる感じ。

Aは、現実を逃避して、空想の世界で生きることが多かったようだ。そのせいかな、Aの供述調書を読んでいると、警察に求められるままに、自分の空想ストーリーを話しているように聞こえる。

所轄の須磨警察署
Author:KishujiRapid[CC BY-SA]

供述調書はA君作の空想ってこと?

ああ、そうだ。今言ったように、淳君は右手一本で殺されている。しかも、解剖結果では、「生前の傷は2点。(中略)...防御創がないことから、いきなり一撃された傷跡である可能性が大きい」。つまり実際は、「犯人は淳君を後ろから殴って一撃で気を失わせ、首を締めて殺した」と言う。

A君の話だと、もっと手こずって、傷だらけにしてる感じだよね。

そうだ。Aの供述によると、「淳君の首を締めながら、淳君の顔や頭を両足の踵で蹴ったり、また淳君の首を締めている靴紐を左手で持ち、右手で淳君の顔を殴ったりもしました」。

それなら、もっと傷がたくさんあったはず。

そして、最も重要な証拠物件があるんだ。淳君の髪に付いていた「微量の繊維片」だ。この繊維片は、車の布製シートカバーの繊維に似ていて、「中学校の正門周辺からは同様の繊維片は見つかっておらず、捜査本部は、淳君が犯人に拉致されたあと、別の場所でなにかに強く押し付けられた際に付着したものとみている(毎日新聞97.6.11夕刊)」(神戸事件を読む80p)

と言うことは、淳君は車内で首を絞められた?

その通り! 歩いていた淳君は、後ろから一撃され、車の後部座席に連れ込まれ、頭をシートに押し付けられた状態で、犯人の右手で首を締められて殺された。

となると、殺したのはA君じゃなくなるよ。体格だって全然ムリだし、車じゃなくて自転車に乗ってたし。

車を持ってるヤツが犯人だな。

大人の共犯者がいたとか?

さあな、それも考えられるが、そこは一旦置いといて、Aの供述調書に戻ろう。

Aは、淳君の死体の発見を遅らせたいと思った。見回すと、アンテナ施設の床下が見えにくいので、そこに死体を隠そうと考えた。が、フェンスで囲まれている上に、入り口には南京錠がかかっていて入れない。Aは、南京錠を壊すための糸ノコギリと、替えの南京錠を手に入れるためにホームセンターに行き、糸ノコギリ(後に金ノコに修正)と南京錠を万引きした。そして、古い南京錠を金ノコで切ってフェンス内に入り、淳君を引きずって床下に押し込んだ。金ノコを落ち葉の下に隠し、入り口に新しい南京錠を掛け替えて山を下りた。

少年が万引きをしたとされる店のあった場所
Author:山井書店[CC BY-SA]

う〜ん、買い物に行っている間に、死体が見つかるとか考えなかったのかな?

そのタンク山という所は、ほとんど人が来ないらしい。

事件現場の「タンク山」の中腹にある貯水タンク前広場
Author:山井書店[CC BY]

それに南京錠って、金ノコくらいで切れる?

切れるらしい。が、「問題は、金ノコで実際に切断できるかどうかではなく、切断時に当然発生するはずの切り粉が周囲のどこにも見つからなかった事実ではないのか。(神戸事件を読む132p)」

え?! 切りクズが見つからなかった? 掃除機で吸った?


悪魔崇拝者のような精神状態


5月25日 いつものように起床し、淳君の首を切るために自宅を出たAは、遺体を床下から引っ張り出した。淳君はあおむけの状態で、眼は見開いていた。取調官に「男児の死体の目や顔を見ながら、その首を切るのに抵抗はなかったか」と尋ねられたが、Aは「別にありませんでした。僕が殺した死体であり、いわば僕の作品だったからです」と答えた。 Aは左手で、男児の額を押さえながら首を切った。この時「現実に人間の首を切っているんだなあと思うと、エキサイティングな気持ちになった」。Aはしばらく頭部を地面に置き、正面から鑑賞しながら「この不可思議な映像は僕が作ったのだ」という満足感に浸り射精した。

イジョーすぎる!!

Aは、眠たそうな男児の目が気に入らなかったため、小刀で男児の両目を突き刺した。さらに、2、3回ずつ両方のまぶたを切り裂き、口の方からそれぞれ両耳に向け、切り裂いた。「殺人をしている時の興奮を、あとで思い出すための記念品」を持ち帰ろうと考え、舌を切り取ろうとしたが、死後硬直のためできなかった。さらに、ビニール袋に溜まった男児の血を飲んだ。血を飲んだ理由は、「僕の血は汚れているので、純粋な子供の血を飲めば、その汚れた血が清められると思ったからです。幼い子供の命を奪って、気持ち良いと感じている自分自身に対する自己嫌悪感の現れなのです」と供述している。

悪魔崇拝者だ〜!!

実際は、一晩置いた死体から、飲むほどの血なんか出ないそうだ。

その後Aは、入角ノ池(いれずみのいけ)へ行き、首を2、3分眺めてからビニール袋にもどし、木の根本の穴の中に隠した。首の切断に使った金ノコは、向畑ノ池に投げ捨てた。

実際に警察は、その池から金ノコを発見している。

5月26日 須磨警察署が公開捜査を開始。兵庫県警・PTA・消防団合わせて150名が捜索にあたった。 Aは、昼過ぎに「首をじっくり鑑賞」するために、自転車で入角ノ池へ向かい、穴から取り出した淳君の頭部を観察し、家に持ち帰って風呂場で洗い、自分の部屋の天井裏に隠した。Aは首を洗った時も興奮して勃起し、髪の毛にクシを入れながら射精した。 どこに置こうか考えた結果、男児を殺したのは学校であって、自分じゃないから、自分が通っている友が丘中学校の正門に置こうと考えた。そこは、警察にとって一番盲点になると思ったからだ。

A君、学校を憎んでいたのかな?

勉強は嫌いだし、親も何度も学校に呼ばれてるし、そういう面はあったろうな。

その夜、警察の目を自分から逸らすため、淳君の口に手紙を咥えさせようと考え、手紙の文章を考えた。これまで読んだ本などから、本で覚えていた言葉、漫画からの引用を組み合わせて手紙を書き上げた。「その他、ほとんどの文章は、僕が頭で考えたものであり、テレビで言っているような、何か小説から引っぱり出したといったものではありません」と供述している。

Aくんて、読書家だったんだね。

いやいや、国語は常に「2」。母親も、「Aは家では漫画ばかり読んでいたので、あんな文章(神戸新聞社への挑戦状)が書ける知識はなかったはず(「少年A」この子を生んで‥266p)」。また鑑定医に、自分の好きな本を5冊あげるよう言われた時、「はてしない物語(映画「ネバーエンディング・ストーリーの原作)」、「わが闘争」の上下、「ゲーム理論の思考法」「推理脳を鍛える本」を挙げている。(「少年A」この子を生んで‥255p)

中学生で「我が闘争」を読むなんて、ませてたんだね。

それは、Aに乞われて、母親が買い与えたそうだ。

5月27日 1:00〜3:00am、Aはビニール袋に入れた淳君の頭部を補助カバンに、手紙をジーパンのポケットに入れて、両親に気付かれないよう部屋の窓から外へ出た。自転車で友が丘中学校へ向かい、正門右側の塀に男児の首を置いたが、据わりが悪かったのか落ちてしまったので、正門の鉄扉の中央に、顔を道路に向けて置き、手紙を口にくわえさせた。この時Aは「性的興奮は最高潮に達し、性器に何の刺激も与えてないのに、何回もイッてました」という。Aはのちに、その時の光景を「作品」と呼んでいる。

ド変態!

しかし、こんな目撃証言がある。

当日の5:00am、中学校の正門に来た人が、淳君の首はなかったと話している。それについてAはこう答えている。「単なる思い違いです。なぜなら僕の親は、5:00amには台所にいるので、とてもその様な時間帯に、淳君の首を持って家を出ることなど不可能です。少なくとも3:00amまででなければ、親に知られずに行動することはできない。従って、淳君の首を正門前に置いたのは、遅くとも3:00amまでだと思う

ええ? じゃあ、もしも「5:00amに首はなかった」が正しかったら? 犯人はそれ以降に置いたことになるから、5:00am以降、家から出られないA君にはアリバイがあることになる。

その通り。だが、目撃情報というのはあいまいで、証言も信頼できるかわからんし。

Aは当日のテレビで、男児の首が発見されたことを知る。(中略)...犯人はAの自宅付近以外の人物であるように報道されていたことから、ここまで上手くいったなら、自分が犯人だとは分からないだろうと思い、6月2日夜、「神戸新聞社宛ての手紙」を書いた。この声明文には、淳君の頭部に添えられていた犯行声明と同じ文書が同封されていた。

手紙の全文は、ウィキペディアで読めるぞ。

うわあ〜、こんな長いの読めない、ってゆうか、もう疲れた〜。 

なんだとー?! ここからの話がもっとも重要だというのに?

どんな話?

さらし首の切り方や、死斑の話だよ。

うわあ! そんなキモい話より、あったかいココアでも飲んでホッとしたいよー。


(つづく)


Writer

ぴょんぴょんDr.

ぴょんぴょん

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)


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