ままぴよ日記 129 「子連れで選挙に行くぞ!」

 幼稚園の卒業式があるため、年少組の孫はお休みです。仕事を休めないお嫁ちゃんから預かってほしいと連絡が来ました。一番小さな孫です。もう4歳。いつの間にか私達と対等におしゃべりをするようになりました。
 ビーズにひもを通しながらママのことを考えているのでしょう。「これはね、ママにプセレントするの」と嬉しそうです。「じゃあ、ばあばはママにコロッケ持って行ってあげようか」と言ったら「やすこくげんまん嘘ついたら針千本の~ます」と、小さな小指を絡ませて大声で歌い始めました。
 言葉を聞こえたとおりに発音しているのでしょう。でも、全体的な様子を統合して意味を感じ取り、適材適所で使っているからすごい!
 ばあばは、それに感動しながら、今日も遊んでもらってよかった!と思うのです。
(かんなまま)
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「やってもやっても終わらない名もなき家事」


我が町の市長選挙が始まりました。
3期務めてきた現市長が退き、3人の新しい候補者が名乗りをあげました。どなたも全く知らない人。誰に投票したらいいのかさっぱりわかりません。


ママ達に聞いても情報がないようで「子どもがいるので選挙に行かないかも~ 」と、投票所で迷惑をかける方が気になるようです。

「どうせ、誰に入れても同じ。何も変わらない」「組織で動くので結果は決まっている」「政治には関心がない」という声も聞こえてきます。


そういえば、私も赤ちゃんを育てている時は市長の名前も知らず、政治とは一番遠いところにいました。新聞もテレビも見ない生活で、家の中で「やってもやっても終わらない名もなき家事」に追われていました。

実は最近「やってもやっても終わらない名もなき家事に名前を付けたらその多さに驚いた」(梅田悟司著 サンマーク出版)という本を読んで笑ってしまいました。

「家事というのは料理、洗濯、掃除、買い物と思って育児休暇を取ったら、名もなき家事が多すぎ!!しかも終わりがない、達成感も無い、誰かに褒められることも無い。この事実に気づいてから家事に対する見方が激変しました」と書いてあります。なるほど名もなき家事に名前を付ける発想が面白い!と思いました。

例えば、片方だけの靴下にもう片方がどこに行ったか探し回る家事。新たなゴミが出て、ゴミ袋をきつく縛った事を後悔する家事。子どもが盛大に引き出したトイレットペーパーを地道に巻きなおす家事・・・。「当たり前のように家事を頑張っている方々への尊敬」「育児休暇ではなく、もはや育児労働。仕事の方が楽!」と続きます。


自然発生的な子育て社会


さて、子育ては個人の問題で政治とは関係ないと思っていた私は周りに居る子育て中のお母さん達と自然発生的に助け合いを始めました。

子どもに読み聞かせをした絵本があまりにも楽しくて絵本の貸し借りを始めました。子ども服を上手に作るママがいたので教えてもらったり、料理が上手なママの家に行って一緒にご飯を作りました。


ママ達は集まって手を動かしながらおしゃべりを楽しみ、子ども達も周りで遊んでいました。子育ての悩みが深刻になる前に皆でおしゃべりしながら共感したり解決策を見つけました。

子ども達も、学校の先生に憧れたお姉ちゃんが学校ごっこをしてくれるので小さな社会を作っていました。上の子が本を読んでくれたり、折り紙を折ったり、字や絵を描くのを教えてくれました。親の言うことは聞かないけれど小さな先生の言うことはよく聞いていました。もちろん、外遊びも当たり前でした。

仲良しの子どもを家に預かると、子ども達が喜ぶので逆に子育てが楽になりました。買い出しも助け合い、親が忙しいときは子どもを預かりました。

家から半径100メートル以内の世界でしたが、毎日の生活は豊かでした。私達専業主婦は自分の通帳も持たず、現金も生産していませんが、ある意味、子どもを育て合うための社会をうまく構築していたのです。生きる上での生活の知恵など学びも深かったと思います。


子どもの育ちが心配な経済中心の社会


でも、この40年でそんな専業主婦がいなくなり、自然発生的な子育て社会が成り立たなくなって、伝承されてきた子育て文化も途絶えました。PTAや子供会も消えそうです。我が町の子育て世帯へのアンケートで子育ての悩みを聞くと「仕事と子育ての両立が難しい」が最も多く、「自分の時間が取れない」「子どもの健康・性格・癖に悩んでいる」が続きます。

社会は女性が出産を機に退職や休職するのをマイナス要因だと捉えて、子どもを預けて社会進出すれば女性が輝くようなイメージを植え付けました。いつの間にか親も子育ては非生産的仕事だと思いこみ、行政も子育ては専門のビジネス業界に任せて、そこでもお金を産む仕組みを作ってしまいました。

親は8時間労働のフルタイム、子どもは11時間保育が標準になりました。子どもは24時間のうち10時間寝るとして、3時間しか親に会えません。逆に親は3時間の間に送り迎えして、ご飯を食べさせてお風呂に入れて、寝せる生活です。子どもの就寝時間が11時近くになっているのも気になります。

食事もじっくり作る暇がありません。「ご飯をちゃんと作ってあげたいけど、時間をお金で買います」と、冷凍ものや出来合いのものを買って済ませるようです。

そう話すのは会社に期待されてバリバリ仕事をしているママです。でも子どもの育ちも大事にしたいと思っています。仕事の責任が重くなるほど悩みが深くなります。


そもそも、経済中心の社会は人の育ちに目を向けていません。子育て文化がどんな時代でも人類の生きる源を守り続けてきたのに、いとも簡単に母親を子どもから引き離したのです。

愛しい我が子の成長をビジネス業界に任せていいのか?親と過ごすより英会話、早期教育が本当に必要なのか?アンケート結果が示すように、親は仕事と子育てで疲れはて、子どもの健康、性格、癖に悩むのです。このままでは子どもの育ちが心配です。

もはや、社会の意識改革が必要です。


そこに「愛」があるか?が大事


さて、市長選挙に話を戻しますが、どの候補者も政策の一番に子育て支援を上げています。内容を見ると「学童保育待機児童0」「給食費を無償化」「保育料無償化」「医療費無料化」と政策が並びます。

これを見ただけで子どもの育ちを経済面でしか捉えていないのがわかります。もちろん給食費、医療費、教育費の無償化は必要です。でも、それが実現したら子育てが楽になるのか?子どもが健やかに育つのか?ちょっと想像しただけでもわかるはずです。有権者も騙されてはいけません。

もっと言えば、すべての根底に愛がなければ始まりません。どんなに福祉や子育て支援が充実している国でも離婚は増え続け、家族崩壊、子どもの非行、いじめ、差別、自殺はなくならないのです。

「こども基本法」ができ、ウェルビーイング(個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること)の向上、子どもの権利を保障する、など言い始めましたが、もっと深いところで、そこに「愛」があるか?が大事なのです。でも、愛とは何か?誰もわかっていません。

ただ、それに向かうシステムを作るのは大事です。具体的には子どもが生まれる前から親になるための支援をして、我が子の成長を夫婦共にリアルタイムで学び(学びたい時に学ぶ)、親子で育ちあう環境を作ってあげたい。子どもが自由に遊び、体験できる居場所を作り、地域で見守るシステムを作ってあげたい。何かあったら気軽に相談できる専門家のネットワークを作ってあげたいのです。

行政は予算を投入してシステムを作り、現場の支援者は仕事に愛を込めるのです。

愛を知らないのに愛せるか?わからないけど相手の立場になり幸せを願うことから始めるしかないのです。


現に、我が町と縁もゆかりもないママ達が何人も「給付金は他の市町村より少ないけど、たくさんの人に支えられて子育てが楽しくなりました。ここなら幸せになれると思ったから家を建てました」と言ってくれるのです。子育てセミナーでつながったママ達です。そのママ達が、また人の役に立ちたいと愛をもって支援者になりつつあります。

私達はそんな気持ちでママ達と接して、20年かけて行政ともいい関係を築いてきました。名刺も持たない任意団体かもしれませんが、市も信頼して耳を傾けてくれるようになったのです。


市長候補者への子育てアンケート


でも、市長が変わるとどうなるのでしょうか?そもそもどの候補者も子育てに関心がないのは明らかです。このままでは市の予算配分が変わります。一緒に取り組んだ職員も異動があります。

せっかく子育ての喜びを感じ始めたママ達。自分たちの声が行政に届くと思い始めたママ達。子どものために行動をおこし始めたママ達がいるのにどうなるのでしょうか?

初めての事ですが、市長候補者に子育てについての公開アンケート届けてはどうか?と思いつきました。

市長になってからでは私たちの話を聞いてくれません。今ならむしろ子育ての現状を知りたいし、市民が何を望んでいるのかを聞きたいでしょうから、行くなら今です!

まず、ママ達に「アンケートをする?」と聞いたら「やってみたい!」と言いました。では「どんな質問をしたらいいのか?」これまでそれぞれ活動してきた子育て支援の仲間、産後ケアの仲間、プレーパークの仲間が集まって知恵を絞りました。挨拶に行くための名刺も自分たちで作りました。

話し合う中で
①市長候補者に我が町の子育て現状を知ってほしい。関心を持って欲しい。勉強してほしい。
②私たち市民が行政に提案、企画、協働して事業を作ってきたことを知って欲しい。これからもその関係を続けたい。
③公開アンケートを届けるママ自身も政治に関心を持ち、他の親世代に伝えて、自分の意思で市長を選ぶという経験をしたい。社会を変えたい。
④広く市民に情報を流すことにより、市民も子育てに関心を持ってほしい。
という気持ちが強くなっていきました。

そして、代表者3人で市長候補者に会いに行きました。

候補者は3人3様でした。行ってお話をするだけでおもしろい体験でした。話をしっかり聞いてくれる人、関心はないけど「大事です!」と言う人、自分の話ばかりする人、その人となりが見えてきます。

ママ達に「どうする?選挙に行く?」と聞いたら「ここまでやって選挙に行かないなんてあり得ない!」「しっかり自分で選んでいきます!」「友達にも伝えます!」と盛り上がっています。


そして、選挙に子どもを連れて行けばお菓子がもらえるという情報が入りました。市も親世代の投票率を上げたいのでしょう。「今までは、迷惑をかけるから子どもを連れて行けないと思っていました。お菓子がもらえるなら子どもを全員連れて行きます」と、やる気満々です。

子ども達も、親がどのようにして候補者を選んでいるのかしっかり見て欲しいと思います。

さて、少しずつ回答が寄せられています。まさに3人3様。子育ての資料を作って持って行ったので、勉強した形跡があります。その回答が公約にもなります。「施策を決める時に現場の声を聴きます」「現場の皆様と実行委員会を作ります」と書いている候補者もいました。

子ども達に「愛のある暮らし」を体験させてあげたい!雲をつかむような話ですが、まずは、子育てに喜びを持ち、この子ども達のために社会を変えたいと思う仲間を作っていきたいと思います。嬉しいことに子どもの姿に感動しながらできる社会改革です。壁にぶつかった時はそこに愛があるかを問いながらぶれないで生きて行きたいと思います。



Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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