ぴょんぴょんの「少年Aの物語(3)」 ~真犯人は「子ども」で「物書き志望」

 前回は、遺体の所見と照らし合わせて、少年Aの供述がおかしいことを指摘しました。Aの供述通りに金ノコギリで切断していたら、滑らかな断面にはならないこと。校門に置かれた頭部の頭髪がびっしょり濡れていたこと。殺されて3日は経っているのに、食べたものがまるごと胃に残っていたこと。これらから、淳君は殺された後に冷凍され、電気ノコギリで切断されたことが推察されました。
 今回は、その他の矛盾から浮かび上がる、犯人像を考えます。
 尚、少年Aの書いたとされる挑戦状2通、犯行メモ、「懲役13年」は、ここで読めます。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「少年Aの物語(3)」 ~真犯人は「子ども」で「物書き志望」

「とんでも」犯人説


でもさ、仮に、少年Aが犯人じゃないとしたら、いったい誰がやったんだろう?

元警察のOBという意見もある。犯人が警察の手口をよく知っていること、挑戦状から警察への強い恨みがあったことから、グリコ・森永事件のように、犯人グループに元警察のOBがいたと言う。(神戸事件を読む180p)

へええ、グリコ・森永事件て、警察OBが関係してたの?

そのようだな。かと思えば、ロスチャイルドのしわざという説もある。

ロスチャイルド〜?!

なんでも、少年Aの父親は川崎重工の潜水艦の電気技師で、新しく開発した対艦ミサイルの機密を握っており、それを要求したロスチャイルドをAの父親が断ったために、CIAが事件を起こした、とか?(大摩邇

う〜ん、まさに陰謀論の臭い。



事件の6つのポイント


まあ、こういう「とんでも」は置いといて、なかなか鋭い記事を見つけた。「酒鬼薔薇聖斗は少年Aではない…と思う。」。24年前の事件当時に書かれたもので、元記事は消えているが、全文が阿修羅に魚拓されている。

うわあ、すごい力作だ。全文、目を通すだけでも大変そう。

ならば、ここから6つのポイントをピックアップしてみよう。

1 2月・3月の連続児童殺傷事件は、少年Aの犯行なのか?
2 事件当日、複数の人から目撃された「黒ポリ袋を持った不審な中年男性」とは?
3 挑戦状と少年Aの作文の文字を比較した結論
4 挑戦状から見る真犯人は「子ども」で「物書き志望」
5 少年Aに不利な証言をした元同級生
6 「懲役13年」は少年Aが書いたものなのか?


1 2月・3月の連続児童殺傷事件は、少年Aの犯行なのか?

少年Aは、5月の淳君事件だけじゃなく、2月、3月に起きた連続通り魔事件も、自分がやったと供述している。

どんな事件?

2月の事件(1997年2月10日)は小学6年生の女の子(当時12歳)が、左後頭部をショックレスハンマーで殴打され、1週間のケガをした。同じ時刻、同じ場所で、別の小学6年生の女の子(当時12歳)も、同様に右後頭部を殴打された。

2件とも、A君がやったってこと?

わからんが、2点ほど疑問がある。被害者は凶器を「黒いゴムのような棒状のもの」と言い、教育委員会の報告書では「鉄パイプのようなもの」となっている。さらにもう1点、Aはそのハンマーを、近所の雑貨店で万引きしたと言っているが、店がショックレスハンマーを置き始めたのは事件の1年後(1998年)。事件当時は、その店ではまだ売られていなかったと言う。阿修羅

やっぱ、A君の供述はウソか。 

3月の事件(1997年3月16日)は小学4年生の女の子(当時10歳)が、頭部を八角げんのうで殴打され、その1週間後に亡くなった。同日の同時刻、小学3年生の女の子(当時9歳)が、刃渡り約13センチのくり小刀で腹部を刺されて、14日間のケガをした。

頭を叩かれた子は、亡くなってるんだね。

しかし、捜査では、被害者の頭の傷から見て凶器は「金属バット」、犯人は「左利き」とされた。腹部を刺したのも「左利き」と見られた。なのにAは右利きだった。阿修羅

え〜?! おかしい〜!!


2 事件当日、複数の人から目撃された「黒ポリ袋を持った不審な中年男性」とは?

淳君の頭部が、中学校正門前に置かれた前後、身長170センチくらいで30〜40代と見られる男性が、学校の周囲をウロついていたのを、何人もが目撃している。この男は、黒いポリ袋を持っていたり、繁みにしゃがんでいたり、道路の真ん中を歩いていたそうだ。また事件当日、正門前に乗り入れるように停められた黒いブルーバードも、何人かに目撃されている。(阿修羅

Author:KishujiRapid[CC BY-SA]

犯人は、正門前まで車で来て、首を入れた黒いポリ袋を持ってウロウロしてた?

いや、目撃されたのは犯人じゃなかった。

近所の住民が、取材中の記者に耳打ちしてきた。「男児の遺体が遺棄されていた現場近くで、目撃された黒いポリ袋を持った不審な男性がおったやろう。あれは中学の先生やで」(略)「少年は先生を恨み、ネコの首を正門に置く時などは予告しとったんや。今回も少年が何らかの予告をしていたので、先生は先回りをして少年を捜し回ったということや」。
阿修羅

えー?? 中学校の先生だったの?!

事件の数日前、正門前に猫の死骸が置かれる事件があった。そしてその日も予告があったので、先生らが見張っていたらしい。

黒いポリ袋は、見つけた死骸を入れるためだったのか。


また、事件当日の朝、中学校正門付近で、不審な車が何度も目撃されているが、これも見張りの先生の車と考えられる。実際、当日6時半、正門前に乗り入れた車が目撃されていて、運転席側に立った男性が、門を開けるでもなく不審な様子だったと言う。実はこの人、首の第一発見者の管理員らしい。いつものように正門前に車を停め、鍵を開けようとしたら首を見つけたので、急いで職員室に走って110番通報をした。その時間は警察の記録と合致している。(阿修羅

なんだ、そういうことか。それにしても犯人は、先生たちがウロウロしている中で、よく首を置けたもんだね。

置いただけじゃなくて、何度も移動させている。

目撃された人の中に、犯人もいたかもね。

ところがだ、不審人物の目撃情報は多々あれど、「少年」はいない。どころか、Aにはアリバイがある。

へえ?!

目撃情報から見て、正門に首が置かれたのは5:00〜5:30amと推定される。しかし、Aの家族は毎朝6時にそろって朝ごはんを食べるので、その時間の外出は不可。よって供述書では、Aは真夜中の1:00〜3:00amに2階の窓から抜け出して、首を置きに行ったことになっている。

現場検証に合わせて、供述が作文されているんだね。


3 挑戦状と少年Aの作文の文字を比較した結論


淳君の口にくわえさせた第一挑戦状と、神戸新聞社に送られた第二挑戦状。これら2通の挑戦状を、少年Aの逮捕前に筆跡鑑定したのが、筆跡鑑定学の第一人者と呼ばれる魚住和晃教授だ。教授によると、「書き慣れていない人間の文字ですよ。(略)一文字、一文字、考えて書かれている。(略)この文章はうなるところはあるが、しかし、素人が悦にいってる感じがする。若い男ですよ。(略)暗く、ほっそりとした、二十代の子や。」(阿修羅

暗く、ほっそりとした二十代の子?

実際、警察の筆跡鑑定結果でも、「Aの筆跡か否かを判断することは困難」だった。

となると、誰があんな怪文を書いたんだろう?


4 挑戦状から見る真犯人は「子ども」で「物書き志望」

ところで、酒鬼薔薇聖斗は少年Aではない…と思う。」のスレ主は、挑戦状を書いた真犯人は「子ども」、しかもAの同級生だと考えている。

へええ?!

まずは、2通の挑戦状から指紋がまったく見つからなかったこと。


「犯行の準備段階から実行に移すまで手袋をはめるか、ふき取るなどして指紋が残らないようにしたとみられ、犯人の周到さが改めて浮き彫りとなった」(産経Web97.6.4)
(中略)...まず頭部に添えられていた紙片(第一挑戦状)だが、2枚ともワープロ用の感熱紙であることがわかっている。(神戸事件を読む158p)

そういえばワープロの感熱紙って、今はあまり見かけないね。

あの頃は、よく使われていたんだろう。そして犯人は、感熱紙には指紋がつきにくいことを知っていた。ところが、少年Aはそんなこと知らないから、挑戦状は「スケッチブックの紙」に書いたと供述している(神戸事件を読む165p)。

同様の状況は、封筒の封をしていた赤いテープにもみられる。当初、「封筒の口は赤いビニールテープで留められていた」(神戸新聞97.6.6朝刊)と報じられたが、その後の調べで、「一般にはあまり使われない赤色の『製本用テープ』だった」ことがわかっている。(神戸事件を読む160〜161p)

「製本用テープ」?

背表紙の、ホッチキスで留めた部分を補強するテープだよ。実は「製本用テープ」の接着面も指紋が残りにくいと言う。A家の家宅捜索では、幅1.5cmのビニールテープが押収されていて、Aも「封筒の封は、家にあった赤色のビニールテープ」と供述しているが、もしそうなら、指紋がつき放題のはず。(神戸事件を読む165p)。

A君は、指紋のこととか心配してなかったみたいだね。

・・にしては、Aの指紋はどこからも出てこない。警察はおかしいと思わなかったんか?

でもさ、「製本用テープ」を持ってる人、あんまりいないよね。

犯人は、やはり文学系の新人賞などに応募したり、あるいは応募はしないまでも、印字した紙を束ねて自分なりの作品集などを作っていたんではないかと思います。阿修羅

なるほど!! 書くことが好きな人。となると、犯人像が見えてきたよ。事件当時に、ワープロ用感熱紙、製本用赤テープ、そしてワープロか、パソコンとプリンタを持っていた人。阿修羅

しかしAの家からは、製本テープ、ワープロ、感熱紙は見つかっていない。しかも、Aは物書き志向じゃない。

物書き志向じゃないって、どうしてわかるの?

体癖だよ。Aの体癖のうち、一つは前に言ったように、ノンビーで空想癖の6種だ。

もう一つは? 物書き志向なら、上下の1種か2種があるはず。

ところが、Aは上下じゃない。彼は、豊かな性エネルギーを創造に使うことで、職人肌の粘り強い仕事ができ、霊感や直感に恵まれているが、下手するとジキルとハイドになる9種の可能性が高い。

9種かあ〜! たしかにA君、「バモイドオキ神」のような怪しい存在と交流してたみたいだし、そいつらに憑依されてた感じもするよね。

「酒鬼薔薇聖斗」のマーク
Wikimedia_Commons[Public Domain]


5 少年Aに不利な証言をした元同級生

スレ主が疑っているのは、Aの元同級生Y。と言うのも、Yの証言がなければ、警察はAに目星をつけることはなかったからだ。「兵庫県警は元同級生の証言を唯一絶対の根拠に、容疑者を少年に絞り込み、強引に自供に追い込んでいったのだ(神戸事件を読む55p)。」

元同級生のY君? どんな子?

中学3年のYとAは、中学入学以来の付き合いだ。両親から見たYは、「おとなしい、いい子」「すごく明るい感じで、Aの親友とばかり私たちは思っていました」(「少年A」この子を生んで‥217p)。ところが、正門前に首が置かれた日(1997年5月24日)の11日前(5月13日)、AはYを殴って、歯を折るなどひどいケガを負わせた。翌日、学校に呼ばれたAの父親はこう書いている。

Aは肩をガタガタ震わせ泣いていました。その友達とAは昔から仲が良く、私も知っている子でした。それなのにAは「自分の悪口を言ったアイツが憎く、仕返ししてやったんや」と泣きながら言い、怒りで手がつけられない感じでした。「お前、あの子と友達と違うんか。」その後は、何を聞いてもAは一言も喋らず、ただ泣くばかりでした。(「少年A」この子を生んで‥118p)

どんな悪口を言われたんだろう?

「身体障害者を陰でいじめている」「猫を殺している」と言いふらしたそうだ。たしかにAは、その数年前、知的障害のある淳君を殴ったことがあるし、猫も殺したらしい。父親は、その時のAの目が虚ろで様子がヘンだったので、学校をしばらく休ませることにしたと言う(「少年A」この子を生んで‥129p)。そして、Aが学校を休んでいる間に、淳君の事件が起きたんだ。

なんか、つながってるみたいだ。 

そこら辺をまとめてみよう。

5月13日 AがYを殴った。
5月22日 Yが転校した。
5月24日 淳君が行方不明になった。
5月27日 淳君の頭部が中学校正門前に置かれ、遺体はタンク山で発見された。
6月 4日 神戸新聞社に第二挑戦状が送られた。
6月 7日 警察が、Yを呼んで聞き取り調査をした。YがAに不利な証言をする。
6月28日 任意同行を求められたAは自白し、逮捕される。


で、Y君は警察にどんなことを話したの?

Aから直接聞いた話として、「人を切り刻んだりすると気分が良い、人を傷つけてみたい」「自分以外の人間が、皆野菜に見えてしまう、野菜を切り刻んだり、野菜をつぶしても、悲しむ人間なんか、誰もいない、だから野菜には、何をしてもいい」。3月の通り魔事件についても、「俺がやった、酒飲んでいたから、覚えてないが、80%俺がやった」。また、Yは、「今までのA君との交際の中で感じることですが、A君なら(淳君事件を)やりかねない、と思っています」と証言した(神戸事件を読む56p)。 

殴られた恨みがあるから、五分五分で聞かないといけないね。

ところが、兵庫県警はYの証言に飛びつく。そしてAの逮捕に向け、まっしぐらにつっ走った。だが、3週間経っても証拠が上がらない。期待した筆跡鑑定も「挑戦状の筆跡がAによって書かれたと断定することは難しい」という結果。そこで、「筆跡鑑定で挑戦状とAの筆跡は一致した」とウソついて、Aを自白に追い込む作戦に出た。

焦ってたんだね。

実はY、Aに不利な決定打をもう一本打っていた。「Aから渡された作文をパソコンで清書し、プリントアウトした」という文章、「懲役13年」。こいつが警察に提出されたことで、Aはさらに追い込まれた。


6「懲役13年」は少年Aが書いたものなのか?

Yの調書には、こう書かれている。

A君が、自分なりに考えて作ってきた「懲役13年」と題する、レポート用紙一枚の文書を僕が、使っているパソコンで、清書してやったことがありました。(略)僕が(A君から)暴行を受けた5月13日、一枚だけを、プリントアウトして、フロッピーは壊してごみ箱に捨ててしまいました。プリントアウトした、懲役13年、と題した文章一枚は、両親に渡し、A君の怖さを訴えたのでした。今、この文書の内容を出来るだけ正確に思い出して紙に書いてみました(6月7日警察調書/真相―神戸市小学生惨殺遺棄事件)
そのパソコンで打ち出した文章を一枚だけ持っていましたので、この度警察に提出しました。(7月12日検察調書/真相―神戸市小学生惨殺遺棄事件)
阿修羅

「出来るだけ正確に思い出して紙に書いてみました」って、こんな長くて小難しい文章、よく覚えてたね?

しかも、Aの書いた原本は見つかっていない。

A少年が同級生に打たせたというワープロの文章の中には、例えばニーチェの「善悪の彼岸」とか、それからダンテの「神曲」からの引用なんかがある。(中略)...ところが、そのダンテの「神曲」の翻訳として引用されている文章は、(中略)...寿岳文章さんという(中略)...非常に有名な学者の訳で、(中略)...最も権威のある翻訳なんです。ところが古い本なもんですから、いま新本屋へいったってまずない。(神戸酒鬼薔薇事件にこだわる理由86〜87p)

ということは、A君は古本屋にしかない本の文章を引用したことになる? やっぱ、書いた人は文学オタクだね。


A君にとってY君という存在


では、AにとってYはどんな存在だったのか? 医療少年院にいた時、Aはこんな告白している。「同級生」と一緒に、あるクラスの女の子を殺害して、それで有名になる計画を練り、Aが「友人」にパソコンで脅迫状を作らせて、女の子を脅したと阿修羅)。

うわあ! その「同級生」「友人」はY君だね。Y君は、A君の秘密を守ってくれる、頼もしい悪友だったんだ。だからA君は、Y君に裏切られたことで暴力を振るった。そうなると、Y君はA君への復讐を考えてもおかしくない。一緒に計画した淳君事件を、実際に起こしてA君に罪を着せたのかもしれない。

スレ主が言いたいのはそれだ。だが、疑問もある。たしかに、Yは文章もうまくて、挑戦状もスラスラ書いたかもしれないが、殺人やって頭部を切断できたのか?

たしかに。遺体を冷凍して、首を電気ノコギリで切るまではできたとしても、Y君には運転免許がない。


そこ、致命的だろ?

となると、共犯者がいたんじゃない? 秘密を共有できる誰か?

う〜ん、わからん。つうか、おれが一番わからんのは、Aが一度も冤罪を訴えていないことだ。なんでだ?

やっぱA君は、淳君事件の主演じゃなくても、脚本・演出には携わっていたかもしれないよ。

(つづく)

Writer

ぴょんぴょんDr.

ぴょんぴょん

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)


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