有機フッ素化合物「PFAS」が2026年4月から環境省「水質基準」に格上げ、その基準値の参考評価を決定するPFASワーキンググループがPFASの毒性を指摘する文献を大量不採用

読者の方からの情報です。
 2024/6/27時事ブログで有機フッ素化合物「PFAS」を取り上げました。その後も全国で「暫定目標値である1リットル当たり50ナノグラム」を超える検出が報じられています。
米環境保護庁(EPA)は、2022年にPFOSとPFOAの毒性をより重く捉え、飲料水として生涯摂取し続けてもよい濃度を引き下げました。それまでの合計1リットル当たり70ナノグラム以下を、PFOSを同0・02以下、PFOAを同0・004以下としました。
これに対して日本の環境省は、従来の暫定目標値である1リットル当たり50ナノグラムのままです。この決定には内閣府食品安全委員会(食安委)が設置したPFASワーキンググループ(WG)の「評価書」が参考にされていました。その評価書では「健康影響がないと推定される1日当たりの量である耐容1日摂取量(TDI)」を、「PFOSとPFOAで体重1キロ当たり各20ナノグラム」とされています。暫定目標値と違う基準を持ってきて、嫌味のようにややこしい。
 2026年4月から環境省は、水道水に含まれる有機フッ素化合物(PFAS)の濃度を従来の暫定目標値から「水質基準」に格上げします。そうなると基準値を超えた場合、水道事業者には罰則を含む義務が課せられます。そしてその基準値は、食安委の設置したPFASワーキンググループ(WG)の評価書が参考にされるわけです。
 そのWGの評価が問題になっています。WGは、専門家が選定した257件の参考文献のうち、PFASが健康に悪影響を与えることを指摘する122件の最重要文献を含む190件を恣意的に不採用にしていました。その結果「TDIの数値に疑義が生じる」可能性が指摘されています。「専門家が信頼性を客観的に判断して選んだ文献が説明もなく大量に不採用」にされ、その選定過程が不透明なことについてWGは適切な回答をしていません。
 内閣府が意図的に選んだ人々が政府の要求に応じた結論を出して責任の所在をウヤムヤにするスキーム、それがWGなのかも。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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配信元)


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PFASの摂取許容量、「最重要」文献を大量不採用にして決めていた 政府の専門家会議 識者が結論に疑義
引用元)
 発がん性の疑われる有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)の摂取許容量の評価を示した際、内閣府食品安全委員会(食安委)が、参照文献のうち専門家が「最重要」と位置づけた文献を大量に不採用にして結論を出していたことが、関係者への取材で分かった。文献の事前選定に関わった専門家は「評価の結論が変わった可能性がある」とし、リスクが過小評価された可能性もある。食安委は「恣意(しい)的に文献を取捨選択したわけではない」とする。
(中略)
 CERIの作業部会で文献選定に参加した群馬大の鯉淵典之教授は「専門家が信頼性を客観的に判断して選んだ文献が説明もなく大量に不採用になったことには納得がいかない。食安委は不採用の根拠を示すべきだ」と批判。その上で「PFASの健康影響の評価は、複数の研究を総合的に判断している。これだけ不採用になれば、TDIの数値に疑義が生じる」と指摘する。
 結局、WGは昨年、PFOSとPFOAで体重1キロ当たり各20ナノグラムとするTDIを示す評価書案を決定。欧州食品安全機関と比べると60倍以上の緩さで、パブリックコメント(意見公募)では批判が相次いだが、食安委は反映せず、基準を正式決定した。
(以下略)

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