僕は東京で発酵デパートメントという食材店をやっています。今年に入ってから、今までのように仕入れられないものが急激に増えて危機感を覚えてます。値上げとかそういう話じゃなく「原料がない」「資材や設備がない」「つくる人がいない」要因が重なり、仕入れられない。これは米だけじゃないんです。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 10, 2025
例えば海の問題。秋田はハタハタ漁が壊滅的で、しょっつるがつくれないと連絡がありました。岐阜では暑すぎてアユのなれずしが崩れてしまったとも。宮崎では海の生態系が変わって海藻が取れず、むかでのりが取り扱えません。各地の郷土ずしも魚が取れずに苦労しています。これは今年だけの話じゃない。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 10, 2025
もっと身近な食材でもそう。 僕たちのお店では地域のメーカーのものを多く扱っていますが、乾麺は一回あたりこれくらいしか出せない、漬物は一回あたりこれくらい、と上限が出てきています。つくる人が高齢のご家族だけだとこうなる。こういうものほど人気なので負担かけてごめんね、という気持ち。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 10, 2025
資材や設備の問題も厳しい。お酒や調味料を入れるビンも、メーカーが廃業したりラインの廃止で新しく作られないものが出てきました。レトロで可愛い一合便のお酒もそのうち見られなくなります。工場の機会が壊れても修理が難しいとか、農業や漁業だけじゃなく食を支える産業全体が限界に近づいている。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 10, 2025
食における「環境」とは自然環境のことだけではありません。働く人の持続性もそうだし、各地域で育んできた産業の仕組みもそうです。原料がない、つくる人がない、資材や設備がない。食のこと、ものづくりのこと、地方のことを長いあいだ軽視してきた結果が今年、2025年に出てしまったのです。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 10, 2025
それで来年以降どうなるのか?発酵食品店の視点から見てみましょう。まず味噌などの調味料がめちゃ値上がりします。1.5倍から倍くらいになるかもしれません。しかも国産原料を使う地方のメーカーほど値上げ幅が激しくなります。「こだわりのお味噌」は贅沢品になるかもしれません(たぶんなる)。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 10, 2025
お米の問題を一番強く受けるのが日本酒。グレードの高い特定名称酒ほど影響を受けます。これも1.5倍くらいになりそう。嗜好品なので個人で飲むぶんはギリギリ許容できるかもしれません。問題は飲食店。おそらく日本酒一杯の値段を2倍とかににしないと経営が成り立たない。外食で日本酒飲むのは贅沢に。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 10, 2025
新しい日本酒に触れるのは居酒屋さんや日本酒バーなので、ここの経営が立ち行かなくなると小売にも影響が出て(とりわけ地方の酒蔵)、これまでなんとか維持してきた日本酒の多様性がピンチになります。しかし来年起こるこの事態を防ぐ手立ては正直ないと思います。つらい
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 10, 2025
この状況を受けて、蔵が自分で米をつくるようになるかもしれません。しかしそれで解決、というわけではなく日本の農業の構造的問題、スケールしづらい、働く人がいない問題に向き合わざるを得ず、変数が増えて経営を難しくします。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 10, 2025
お味噌や日本酒、漬け物のような伝統食は海外から調達できません。もし国内で作れなくなったら、いくらお金を積んでも手に入らなくなります。今起こっているのは値上げの問題「ではない」のです。そうではなく自分たちの伝統を失い、選択肢がなくなる危機なのです。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 10, 2025
酒でも味噌でも大手メーカーは比較的値上げせずに来年を迎えられるかもしれません。ミニマムアクセス米をはじめ安価な原料を優先的に手に入れやすいからです。しかしそれも長くは続かない。自国の原料の選択肢がなくなれば、仕入れ価格が自分たちでコントロールできない外部に依存せざるをえないから。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 11, 2025
日々の生活が苦しいなかで安価な輸入食材が増えるのはありがたい、けれどもその裏で自分たちの選択肢がなくなっていくことは認識したほうがいい。このスレッドを見てくれているみんながやるべきことは、選択肢を増やす日々の行動。来年から「終わらない日常」の延長では生きられない。覚悟して動いてこ
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 11, 2025
ではどうしたらいいのだろう?
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 11, 2025
手前みそな話ですが、発酵デパートメントで扱っている醸造蔵や農家さんを応援してほしい。それぞれの地域のそれぞれの持場で頑張っている人たちがたくさんいます。僕たちのお店で買わなくてもいいので、選択肢を増やす行動を自分のできるぶんだけしていって欲しいです。 https://t.co/R4ClMOxLhS
僕たちだけじゃない、日本全国に地域のこと、ものづくりのことについて真剣に取り組むお店があります。自分の家に近いそういうお店を見つけて、そこの活動も支えてほしいと思います。なにとぞよろしく...!
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 11, 2025
これは発酵食品店やってると感じます。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 11, 2025
良い調味料買っても食費全体の割合は小さい。みんなまず良い醤油とお味噌をげっとしよう https://t.co/0n6N3HH8Qh
社会の底が抜ける時は一瞬で、2025年はその分水嶺だと思う。世界全体のマクロなことでなくて日本の話。社会の分断がどうこうという概念の話でなくて、衣食住に関わる実際の話として、これまでの延長で日々の暮らしを考えられるのは今年で終わりかもしれぬ。
— 小倉ヒラク | Hiraku Ogura (@o_hiraku) June 9, 2025
これまで当然のように獲れていた魚たちや海の幸が消え、各地の郷土ずしが作れない。作る人の高齢化で商品が少なくなる。定番だった入れ物もメーカーの廃業やラインの廃止でこれまでのように出来なくなる。これまで地域の産業だった仕組みを軽視して来た結果が、2025年の今、露呈したと語られます。
まのじの住む地方も海の幸、山の幸に恵まれたところですが、「今年は獲れない」「名人が高齢でもうすぐやめる」「今年は味が悪い」など、ハラハラするような話を幾度となく聞きました。
小倉さんが来年以降の予想をされていました。「まず味噌などの調味料がめちゃ値上がりします。1.5倍から倍くらいになるかもしれません。しかも国産原料を使う地方のメーカーほど値上げ幅が激しくなります。『こだわりのお味噌』は贅沢品になるかもしれません(たぶんなる)」が〜〜ん。
米不足の影響を一番強く受けるのが日本酒で、その結果、飲食店での日本酒一杯の値段は2倍程度になり、また日本酒の多様性も失われそうです。蔵元が独自に米作りに取り組むケースは人手不足の問題があります。「お味噌や日本酒、漬け物のような伝統食は海外から調達できません。もし国内で作れなくなったら、いくらお金を積んでも手に入らなくなります。今起こっているのは値上げの問題『ではない』のです。そうではなく自分たちの伝統を失い、選択肢がなくなる危機なのです。」
「ではどうしたらいいのだろう?」小倉さんは「それぞれの地域のそれぞれの持場で頑張っている醸造家さんや農家さんを応援してほしい」「日本全国に地域のこと、ものづくりのことについて真剣に取り組むお店があります。自分の家に近いそういうお店を見つけて、そこの活動も支えてほしい」と提案されていました。具体的には、少し高価でも「まず良い醤油とお味噌をげっとしよう」と。
国民が安心して良い食材を求めるには、そして日本の大事な食文化が守られるには、やはり政治を動かすことが一番早いと思う、まのじであった。