ぴょんぴょんの「(続)かてもの」 ~春になったら、どの葉で(も)良いので、若芽や若葉を摘み取って、茹でて、保存して、かて物として食べなさい

 前々回に書いた「かてもの」の口語訳が届きました。この本は自費出版らしく、アマゾンでしか買えないようです。
 この本は「かてもの」の原文プラス口語訳、注釈、植物のカラー写真と、とても親切な本になっていて、「かてもの」として利用できる、約80種の植物が取り上げられています。ただ、米沢藩の人々のために書かれた本ですから、知らない植物がほとんどでした。
 そこで、約80種の「かてもの」の中から、近所でゲットできる植物をピックアップし、まみむさんの〈食べられる野草図鑑〉も参考にして、まとめてみました。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「(続)かてもの」 ~春になったら、どの葉で(も)良いので、若芽や若葉を摘み取って、茹でて、保存して、かて物として食べなさい

身近にある食べられる野草



「かてもの」が届いたけど、ほとんどがなじみのない植物だったよ。

しかたないさ、これは、米沢藩の領民のために書かれた本だからな。

それに、各項目の説明もずいぶんザックリで。たとえば、

はすの葉
湯引き(熱湯にくぐらせて)食べます。また、かて物にして食べます。(「かてもの」24p)

ほんとだ。これじゃ、実用的じゃなさすぎる。どうだ? まみむさんの〈食べられる野草図鑑〉と並べてみたら。

それはいいアイディアだ!まみむさんの〈食べられる野草図鑑・夏(3)〉の「ハス(蓮)」によると、

葉:蓮葉飯(はすはめし)とは蓮飯(はすめし)ともいい、蓮の葉を蒸しあげ塩を加え柔らかくして細かく刻んで炊き立てのご飯と混ぜたもの。(中略)...また似たものとして蓮粥(蓮葉粥)という料理もある。



元記事には、もっと詳しく書いてあるよ。

・・・へえ、はすは、葉やレンコンだけじゃなく、実も茎もすべて食べられるのか。料理方法も書かれている。

これなら、すぐにでも実用できるね。こんな風に、ぼくたちの身近にあって、「かてもの」の本にも〈食べられる野草図鑑〉にも載っている植物をピックアップしてみよう。

よもぎの葉
★ 灰汁で茹で、かて物にして食べます。(「かてもの」67p)
☆ ヨモギを食用にする場合は3〜5月くらいの10cm前後に育った新芽をいただきます。(中略)...天ぷら、下ゆでして草餅や草団子に。沖縄では風邪をひいた時に雑炊にして食べるそうです。全草をお茶や焼酎漬けに。パンやクッキーにも下茹でして使います。手軽にいただけるのは下茹でして刻んで混ぜたヨモギご飯です。(中略)...野草ピザにヨモギが合います。〈食べられる野草図鑑・春〉


よもぎピザ、いいなあ〜!

よもぎは、どこにでも生えているし、「かてもの」の王者だね。

ただ、犬がオシッコをひっかけていない所を探すのが難しい。

ぐじな(タンポポ)
★ 茹でて食べます。また、かて物にして食べます。(「かてもの」80p)
☆ 12月〜4月頃の葉は苦味が少ないので、そのまま調理できます。それ以後は苦味がつよくなりますので、軽く塩茹でした方が美味しくいただけます。花びら、葉をサラダに、下ゆでして酢の物、和え物に。葉の炒め物、お浸し、胡麻和えなど。全草天ぷら、根のキンピラ、根を刻んで干して炒ってタンポポコーヒーに、ノンカフェインなので、妊婦や子供でも飲めます。花、葉、根のアルコール漬けたんぽぽ酒、たんぽぽ茶に。〈食べられる野草図鑑・春(3)〉


今くらいから4月までが、たんぽぽの葉っぱを採るベストシーズンなんだ。

くぞの葉(クズの葉)
★ 別名をくずの葉、ともいいます。若葉をよく茹でて、かて物にして食べます。
注釈:新葉は食用になります。おひたしや天ぷら、和えもの、炒めものにして食べられます。葉や茎は、お茶としてもいただけます。くずは、根も含めて、捨てるところがありません。草食動物の飼料としても、利用されています。(「かてもの」82p)
☆ 新芽、若葉をそのままで天ぷら、油炒めに。塩茹でして、あえもの、炒め物、煮付け、つるの硬いものは皮を剥いてサラダに。花や蕾は、熱湯にくぐらせ、甘酢、三杯酢、辛子和え、かき揚げ、塩漬けなど。塩茹でした新芽や若葉を刻んで暖かいご飯に混ぜ、30秒茹でて梅酢に漬けた花を散らしてクズの花ご飯に。〈食べられる野草図鑑・秋(1)〉


厄介者のくずのヤツめが、「根も含めて、捨てるところがありません」だったとは、ビックリだ。

根からはでんぷんが採れるし、花は砂糖と水で発酵させるとお酒になるし、さらに発酵させるとくずの香りがするお酢になる。くずの豆も煮豆になるって。

くず様、ごめんなさ〜い!

ふき
★ 葉も茎も茹でて食べます。かて物にして食べるときには、灰汁にて茹で、その後、冷水に一晩ひたしなさい。フキノトウ(つぼみ)もかて物にして食べなさい。茹でて、水にさらして置き、その後、ひと晩水にひたし、苦みを取りなさい。(「かてもの」96p)
☆ フキノトウはそのまま調理し、大きくなった茎はさっと下茹でして折りフキにしながら皮をむき水にさらす。小さい葉はそのままいただきます。フキノトウは丸ごと天ぷらや味噌と一緒にホイル焼きに。三杯酢に漬けて保存食(冷蔵)にも。刻んで油少々で炒めてみりんと味噌でフキ味噌に。刻んで味噌汁などにも。小さな葉と茎も刻んでフキ味噌や醤油、(+みりん)で佃煮に。大きな葉っぱはそのまま天ぷらにすると、おせんべいのようなおやつになります。魚を包んで焼いたり、包み揚げにします。大きな茎はさっと湯がいて折り蕗にしながら皮をむいて水にさらし、煮付けます。〈食べられる野草図鑑・春〉


うちにもツワブキがあってな。料理法を教えてもらって食ったが、まだ葉の開いていない若いツワブキの皮をむくと、手がまっ茶っ茶に染まってな。

へえ、で、おいしかった?

うまかった。

ところで、「ふき」の語源を知ってる? まみむさんは「大きくなったフキの葉を半乾きくらいでトレットペーパー代わりにすると、とても使い心地が良いです。フキの名前はそのあたりからついたのかなと新説・珍説・・・〈食べられる野草図鑑〉と書いているけど、その答えが「かてもの」の96pにあった。「『蕗(ふき)』の語源についてはいくつかありますが、そのひとつは、旅人が山野で用をたすときに、フキの大きな葉を利用して『拭く』というものでした。

やっぱ、「拭き」だったんだ。まみむさん、正解だよ。

しゃぜんそう(オオバコ)
★ 別名を、かいるは、とも呼びます。(葉を)茹でて食べます。また、かて物にして食べます。ただし粟(あわ)または、わらび粉と一緒にたべてはいけません。(「かてもの」129p)
☆ 若葉をつみ、塩茹でして柔らかくしてから、油いため、あえものなどに。また、生のまま天ぷらに。〈食べられる野草図鑑・秋(2)〉


葉はかき揚げにしたり、ふりかけにしたり、ミキサーでドロドロにしてお菓子に入れたり、全草は洗って陰干ししたら、オオバコ茶になるんだって。

かき揚げが食いたい。

すぎな
★ よく茹でて、食べます。また、かて物にして食べます。ただし、ひどい皮膚病のある人は、食べてはいけません。(「かてもの」136p)
☆ スギナは新芽のうちは柔らかく、美味しくいただけます。大きく硬くなったスギナもお茶などに使えます。根も薬用などに使います。スギナは天ぷら、乾燥葉を乾煎りし手で揉んで(すりばちですりつぶして)細かくして、ごま塩やチリメンジャコなどを混ぜてふりかけに。乾燥させてスギナ茶に。〈食べられる野草図鑑・春(3)〉


ひどい皮膚病のある人はダメ? アレルギーと関係あるのかな?


すめりひやう(スベリヒユ)
★ (葉と茎は)茹でて食べます。また、かて物にして食べます。ただし、わらび粉と一緒に食べてはいけません。(「かてもの」138p)
☆ 調理用にはなるべく開花期の柔らかい茎先を摘む。たっぷりの湯にひとつまみ塩を加えてさっと茹でて冷水にとる。生のままサラダに。蒸すまたは茹でて、お浸し・和え物(醤油味、酢味噌和えなど)、スープ、スムージー、炒め物、細かく叩いてとろろなどに。山形県では「ひょう」と呼び、茹でて芥子醤油で食べる一種の山菜として扱われており、干して保存食にもされた。(そのままでは数週間しても完全には乾燥しないが、一度沸騰水につけて吊り下げるときれいに乾燥しやすい。)また沖縄県では「ニンブトゥカー(念仏鉦)」と呼ばれ、葉物野菜の不足する夏季に重宝される。〈食べられる野草図鑑・夏(2)〉


スベリヒユは、ヒユに似ているけど、特有のぬめりがあるから「スベリヒユ」と名づけられたそうだよ。

さすが、米沢の山形県では山菜扱いなのか。ところで、「ひょう」とはどんな料理だ?


ゼンマイの煮物に似ている。

干して保存食にしておけば、いつでもこれが作れるよ。

すひかずら(スイカズラ)
★ 若葉も花も茹でて、水にさらし、かて物にして食べます。(「かてもの」139p)
☆ 新芽や若葉を摘み取って、軽く茹でたあと水にさらし、お浸しや和え物、油炒めなどに。花と若葉に好みでナツメ、ナッツなどを刻んで混ぜてかき揚げ天ぷらに。花はそのまま酢の物にもできる。茎葉は2〜3cm程度に刻み、天日乾燥し、香ばしい香りがたつまでとろ火で炒ってお茶に。または3〜4日ほど陰干ししてから乾煎りしてもお茶にできる。花は別に乾燥し、湯のみに入れて、その上に茎葉のお茶を注ぐ。〈食べられる野草図鑑・冬〉


スイカズラのお茶は、香りがいいよなあ。

さて、身の回りにあって、手に入りやすくて、「かてもの」と〈食べられる野草図鑑〉の両方に登場する植物は、ここまでだよ。

けっこうあったな。これだけあれば十分かも。


「かてもの」に書かれていたアドバイス


「かてもの」の本では、これらの各論の後に、総論として、読者の心がけや、役に立ちそうなことが書いてある。たとえば、ふだん食べ慣れない植物を食べて、消化不良にならないために、味噌と塩を一緒に食べろとか。

凶年に備える心がけ
これらの救荒食物は、医師たちが食べ方を研究し、試食したうえで公表したものですが、ためしに少しだけでも食べる場合と、衰弱した体でたくさん食べる場合とでは、体調にも変化があります。そのため、調理法については念を入れて、また味噌や塩を一緒に食べれば体にもやさしいので、必ず味噌と塩を合わせて食べるように心がけてください。(「かてもの」140p)

味噌や塩は、単なる調味料じゃなくて、消化薬のポジションなんだな。

そうだね、これに続く「味噌仕入れの法(143p)」には、ぬか味噌(漬物用じゃない)、五斗味噌、飛騨味噌、たまりみそ、とち味噌のレシピに加えて、「凶年用心囲い味噌(147p)」という、長期保存用の味噌のレシピも書かれている。

やっぱり、味噌と塩は大事だな。

「村役人共常々心を用うべき箇条(143p)」には、塩と味噌の製造や支給を、役人がちゃんと管理するようにと書かれている。また、「かて物の心懸に蒔き植え置くべき物」として、ふだんから、大根、かぶ、ごぼうの種をまいておくように、アドバイスしている。

これら(大根、かぶ、ごぼう)三種類は、今年は穀物のできが良くないと感じた年には、必ず、山や荒れ野、藪などを開墾して、(三種類の)種を蒔いておきなさい。そうすれば、その年に、かて物に使えるうえに、今年の実りが終わって種が落ちて、来年にも生えて、かて物の用を足して、その後は自然に生えるようになります。(「かてもの」147p)

大根、かぶ、ごぼう 、放って置いて、翌年もできるかな?

雑草に覆われて無理だよね。でも、米沢地方はそれほど雑草が伸びないのかも。

だとしたら、うらやましい。

さらに、今年が凶作で、来年は飢饉になると予感したら、年が明けて春が来た時、「草木のもえはたち(新芽・わかば)」を採って、茹でて、干して、備蓄しろと書いてある。

去年が凶作であったなら、今年の食物は乏しいと考えなければならないので、春になったら、どの葉で(も)良いので、若芽や若葉を摘み取って、茹でて、一人あたり7俵から8、9俵を目安に保存して、かて物として食べなさい。若芽や若葉の茹でたものは、草も木も、ほとんど毒は含まれていないといいます。しかしながら、どくだみ、とりかぶと、大せり、鬼ぜりなどは、毒が含まれていて危険なので、必ず取り除かなければなりません。(「かてもの」153p)

どの若芽も、若葉も良いけど、どくだみはダメ?

どくだみ
Author:Agnieszka Kwiecień, Nova[CC BY-SA]

注釈には、「どくだみには、毒の成分が含まれていない」と書いてあるよ。

しかし、7〜9俵も集めるのは大変だなあ。疲れそうだなあ。

昔はもっと草っぱらがあって、体力も持久力も忍耐力もあったからね。現代人は、草一つ生えていない都会に住んで、肉体労働もしていないから、とてもマネできないよね。

人類は軟弱になったよなあ。

そうそう、この本は植物だけじゃなくて、動物性タンパク質の摂り方もアドバイスしているよ。米沢は海に面していないので魚が手に入りにくいし、その頃の日本人は肉食をしないけど、「魚鳥獣肉の心がけ」には、こう書かれている。

たとえ凶年でない年でも、魚鳥獣の肉を食べなければ、人のいのちを養うことは難しいものです。(中略)...塩いわしや干しこ(小魚の干したもの)、鰊(にしん)などの類は、たとえまれにではあっても、食べてもらう心配りは大切です。(「かてもの」155p)

煮干しや、昔ながらの辛い塩鮭とか、長持ちしそうだなあ。


具体的には、乾燥いのしし肉の作り方が書いてあるよ。

野生のいのししの肉を厚さ6〜9センチ、長さ18〜21センチに切って、蒸し籠で蒸したあとで、灰を表面に塗り、縄に挟んで干し固めて、囲炉裏の上の火だなや部屋のはり梁に吊るしておけば、数十年も保存できるものです。食べる時には、灰を洗い流して、小刀で削って食べると、まるで鰹節に劣らないほど美味です。(「かてもの」156p)

数十年も?! 冷蔵庫なしで? すごいな。

囲炉裏の煙でスモークされた「いのししジャーキー」、おいしそう。でも、脂肪分を落として、虫がつかないようにするために、「よくよく蒸してから保存してください」って。


虫がついたら、アウトだからな。

と言うことで、「かてもの」の本はおしまい。ラストはこう締めくくられているよ。

以上は、凶年ではない、今の食料が豊かな年にこそ、よく心得ておくようにとの(鷹山公からの)お言葉です。今、食料が豊富にあるからといって、ゆめゆめ、油断してはなりません。(「かてもの」156p)

鷹山公からのメッセージ、とくと心得よ!


米沢藩で推奨していたウコギ


最後に、ウコギのことを話すね。ウコギは、米沢藩にとって大切な「かてもの」なんだ。上杉鷹山が米沢藩主になる前、米沢藩でウコギを推奨したのは直江兼続(なおえかねつぐ)だよ。

直江兼続
Wikimedia_Commons[Public Domain]

兜に「愛」の字を掲げた、ロマンチストの武将だな。

Author:GooGooDoll2[CC BY-SA]

いや、あの「愛」の字は、兼続の地元の愛宕神社の「愛」だって。

なんだ、つまらん。

鷹山は米沢に入る前に、本家高鍋藩の家老から、「米沢藩を立て直すには直江兼続に学べ」とアドバイスされたと言うから、ウコギのことも知ってたはず。(Wikipedia)でも、なぜか「かてもの」の本にウコギは掲載されていない。

米沢民なら誰でも知ってるから、本に書く必要なし、ってことかな。


そうだね、今でも米沢市では、多くの家がヒメウコギの生垣を育てていて、春から初夏に、摘んだ新芽を食べているそうだよ。


ふ〜む、「食糧難で生き残る自治体選手権」で優勝するのは、米沢市だな。



Writer

ぴょんぴょんDr.

ぴょんぴょん

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)


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