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まみむのメモ(55)〈食べられる野草図鑑・冬〉
スイカズラ・ニンドウ(忍冬)
時期 | 常緑で春新芽が出て花が咲き、秋に実がつく。 |
場所・環境 | 日本全国(北海道の南部・本州・四国・九州)のほか、朝鮮半島・中国など東アジア一帯に分布し、各地の平地から山野の林縁や道ばたによく見られる。品種改良された園芸品種も多く、庭や垣根にも植えられる。欧米では観賞用に栽培される。夏季に乾燥しない場所で、日当たりの良い場所を好むが、耐日陰性もある。 スイカズラ属には180種あり、日本には20種ばかりあるが、多くは低木である。蔓性のものとしてはハマニンドウ L. affinis とキダチニンドウ L. hypoglauca がある。いずれも分布が限られ、より南部に生育するものである。 |
花 | 花期は5〜7月で、葉腋(葉と茎とのまたになった部分)から花が2個ずつ並んで咲き、夕方から甘い香りが漂う。つぼみは薄紅色、咲咲き始めの花は白色や薄紅色をしているが、受粉するなどして徐々に黄色くなる。そのため、一つの枝に白い花と黄色い花が同居することが珍しくない。花弁は細い筒状で、漏斗形の花冠の長さは3〜4 cm、先の方は上下2枚の唇状に分かれ、上唇はさらに浅く4裂し、下唇はへら状である。花冠の筒部に、甘い蜜がある。雄しべは5個で長く突き出しており、雌しべの花柱は1個で長く突き出て、受粉前の柱頭は丸く緑色である。花の基部には、葉のような苞がつく。 |
葉 | 葉は対生。葉身は長さ3〜7cm、幅1〜3cmの長楕円形。縁は全縁で、先端はあまり尖らず、基部は切形または広いくさび形。表面は毛が少なく、裏面は多毛。冬になると内側に巻く。 葉形は変異が多く、まれに粗く羽裂する葉もある。葉柄は3〜7mm、開出毛が密生する。 |
実 | 果実は液果。直径5〜6mmの球形で、2個ずつ並んでつく。9〜12月に黒く熟す。種子は暗褐色で、長さ約3mmの広楕円形。 |
根 | 一箇所から何本もつるが出る部分の分枝根と、つる性の地下茎が伸び、節根がヒゲ状にのびる。地上を這うつるからも節根を下ろし、勢い良く広がる。 |
見分けるポイント | 花には芳香があり「官能的」とも「爽やか」とも表現される。花も茎の腋に2つずつ並んで咲き、片方が白色で、もう片方は黄色の場合が多い。このために、金銀花(きんぎんか)という名前でも呼ばれている。また、冬でも茎の先の葉が落葉せずに残っている様子から、忍冬(にんどう)という名もある。 |
間違えやすい毒草 | なし |
生え方 | 常緑または半常緑のつる性低木。 木質のつるで、茎は分岐しながら長く伸びて他の植物に絡みつき、他のつる性植物と比べて穏やかに繁茂してゆき、長さは10メートルほどにもなる。若い茎は細くても丈夫で、毛が密生し灰赤褐色をしているが、2年以降の茎は太くなるとつるの髄は中空になり、樹皮は縦に細く裂けて剥がれて灰褐色を帯びる。つるは右巻きに巻きつく。 |
学名 | Lonicera japonica |
科名・属名 | スイカズラ科・スイカズラ属 |
採取方法 | 棒状の蕾は、金銀花という生薬。金銀花にする花は、春の開花前のつぼみが良く、棍棒状のものを採取して天日乾燥させる。 茎葉は、忍冬・忍冬藤(にんどうとう)という生薬で、秋から冬にかけて、または、花期から盛夏までに葉のついたまま茎を採取し、きざんで天日で乾燥させる。 食用には、花、新芽や若葉をいただく。 |
あく抜き | 下茹(塩茹)でして水にさらす。 |
調理法 | 新芽や若葉を摘み取って、軽く茹でたあと水にさらし、お浸しや和え物、油炒めなどに。花と若葉に好みでナツメ、ナッツなどを刻んで混ぜてかき揚げ天ぷらに。花はそのまま酢の物にもできる。 茎葉は2〜3cm程度に刻み、天日乾燥し、香ばしい香りがたつまでとろ火で炒ってお茶に。または3〜4日ほど陰干ししてから乾煎りしてもお茶にできる。花は別に乾燥し、湯のみに入れて、その上に茎葉のお茶を注ぐ。花を麹で作った甘酒に入れる等、色々アレンジして香りを楽しむ。 |
他の利用方法 | 染料。香水、精油、アロマオイル。 |
効能 | スイカズラ(以下、忍冬)は、揮発油(リナロールやジャスモンなど)、タンニン、ルテオリンやイノシトール、苦味配糖体、フラボノイドの成分を含む。 忍冬は、皮膚病の特効薬、不老長寿にも良いとされ、鎮徑(ちんけい:痙攣を鎮める)、利尿、緩下、止瀉(ししゃく:下痢止め)抗炎症、抗菌作用があって、解熱、解毒、発熱、血痢、伝染性肝炎、化膿性疾患、ヘルペス,子宮内膜症、神経痛、リューマチなどの関節筋骨の疼痛に有効。1日量、忍冬10~20グラムに0.5リットルの水を加えて、煎じながら約半量まで煮詰めたものをこして、1日3回食間に服用する。腫物や痔には濃煎液を服用し、外用にも。 金銀花も忍冬と同様な効き目があり、忍冬よりも抗菌作用は強いと言われる。解熱効果も茎葉より優れているとされ、中国では良く用いられる。 解熱、解毒薬、風邪の初期の発熱には、1日量金銀花10~15グラムに水0.5リットルを加え、約半量まで煎じて3回に分けて食間に服用する。また、軽度の胃潰瘍の予防効果もあるといわれ、 金銀花10~15グラムを1日量として水0.5リットルを加えて煎じて、約半量まで煮詰めて、3回に分けて食間に服用する。金銀花の煎じ液でうがいをすると、口内炎、歯槽膿漏、扁桃腺炎に有効とされている。 金銀花を酒に浸し、少し温めた後、約1ヶ月間置く。または、煎液に麹を入れて発酵させて忍冬酒を作る。あるいは、2〜3倍量の焼酎を入れて半年以上(お好みで砂糖を入れると1ヶ月以上)の熟成で、美しい、淡黄色の忍冬酒ができる。特有の甘い香りはすばらしいものがある。実を少々入れると紫色のお酒になり、色と香りが楽しめる。忍冬酒はひょうそ(指の化膿性炎症)、その他の皮膚病に効果があり、不老長寿薬となる。また、みりんに浸漬けてもよい。 忍冬や金銀花を浴剤にする。腰痛、打ち身、神経痛、リュウマチや痔の痛み、湿疹、あせも、ただれに用いる。また、皮膚を美しくして、美容にも大変よいとされている。忍冬50~100グラム程度を木綿の袋に入れて、鍋であらかじめ煎じておき、その煎じ液を袋とともに風呂に入れて入浴する。 |
その他 | 和名スイカズラの名は「吸い葛」の意で、細長い花筒の奥に蜜があり、古くは子どもが好んで花を口にくわえて甘い蜜を吸うことが行なわれたことにちなむ。砂糖の無い頃の日本では、砂糖の代わりとして用いられていた。スイカズラの英名ジャパニーズ・ハニーサックル(Japanese honeysuckle)も、花筒をちぎって蜜(honey)を吸う(suck)ところから生まれた名前であるといわれる。花が少ない場所では、できるだけ虫たちが蜜を吸った後の花をいただく。 |
参照サイト・文献 |
ウィキペディア イー薬草・ドット・コム 松江の花図鑑 LOVEGREEN 熊本大学薬草園 大地の薬箱 食べる薬草事典 村上光太郎著 / 農山魚村文化協会 |
関連記事 | なし |
ジャノヒゲ(蛇の髭)・リュウノヒゲ(龍の髭)
時期 | 常緑の多年草。夏に花が咲き、冬に実がつく。 |
場所・環境 | 日本では北海道から九州まで、東アジアからフィリピンの森林に広く分布する。丘陵地の林縁や林内、山野の樹木下、野原に自生する。また、人家で栽培される。 高い浸水及び冠水への耐性があり、根が水に浸された状況や水中などでも生存が可能である。 |
花 | 花期は7〜8月。葉の間から葉よりは短い花茎を出して、花茎の上部に紫色の総状花序をつくる。花被(花冠と萼の区別がなく花弁の総称)は6、雄しべは6で、淡紫色あるいは白色の小さい花を数個つける。花茎の先が曲がって、花が下向きに咲き、花径は7〜8 mm、花被片は楕円形。 |
葉 | 葉は根生し、長さ10〜20cm、幅2〜3mmの細長い線状で、多数叢生し、葉縁は全縁でそり返る。 |
実 | 子房は種子を1個含む。種子は球形で、成熟前に子房から露出し、深い青色に熟す。 果実状の青い花被の中に半透明の硬い種があり、ハズミ玉といって石の上などに落とすと弾む。 |
根 | 短い根茎からたくさんのヒゲ根がのび、根のところどころに、米つぶ状に肥大した栄養分を蓄える塊根(かいこん)がある。 |
見分けるポイント | 塊根ができるものには、ジャノヒゲ属とよく似たヤブランの仲間がある。ヤブランは花が上向きに咲き、種子が黒色なので区別できる。 ジャノヒゲの葉の幅は2~3ミリと狭く、ヤブランは1センチあるので葉の幅でも区別ができる。また、葉の幅が4〜6ミリで厚みもあるオオバジャノヒゲが山地に自生している。 |
間違えやすい毒草 | なし |
生え方 | 匍匐茎(ほふくけい)を出してふえ、群生することが多い。 |
学名 | Ophiopogon japonicus |
科名・属名 | キジカクシ科・ジャノヒゲ属 |
採取方法 | 根の肥大したところを栽培したものは5~6月、一般の自生したものは秋から春先にかけ、地上部分が活動を始めない頃に採取する。 ジャノヒゲは、塊根(かいこん)だけをとり、残りはそのまま植えておけば、また、翌年には塊根を採取できるために、家庭での観賞をかねて薬草も採取できるすぐれた薬草のひとつ。 冬に青い実を採取する。 |
あく抜き | なし |
調理法 | 塊根をしばらく水につけ、泥をよく洗い落として、さっと茹でる。熱いうちに赤梅酢とみりんを同量合わせた液に漬ける。味噌漬けでも良い。 |
他の利用方法 | ハズミ玉を子供の遊びに、竹鉄砲の玉にする。 青い実は冬鳥の餌になる。 |
効能 | 塊根を麦門冬(ばくもんどう)といい、サポニン、多糖類などの成分が含まれている。古くから漢方の要薬にされていて、滋養、強壮、咳止め、たんきり、解熱、利尿、催乳剤として、かぜ、ぜんそく、百日ぜき、気管支カタル、声のかすれ、糖尿病、心臓病、リューマチなどに用いられている。 塊根部分をよく水洗いして、一度天日で半乾燥してから、半日程水につけて柔らかくなったところで、中心部の芯を抜き、再び天日で十分乾燥させる。これを丸麦(まるばく)といい、良品。芯を抜かないで、そのまま乾燥した長麦(ちょうばく)も効き目は変わらない。ヤブランから採れる塊根を大葉麦門冬(たいようばくもんどう)といい、ジャノヒゲから採れる塊根を、麦門冬といい区別する。 麦門冬を1日10〜20g煎じる。または、きざんだもの1日量6~12グラムに水0.5リットルを加えて、煎じながら約半量まで煮詰めたものをこして、3回に分けて食間に服用する。常用すれば老化防止になる。麦門冬湯は、こみ上げてくるような激しい咳や、痰が非常に粘っこく出づらい時に、麦門冬10グラム、半夏(はんげ・カラスビシャク)と粳米(こうべい・玄米)を各5グラム、大棗(たいそう・ナツメ)3グラム、人参、甘草(かんぞう・カンゾウ)を各2グラムを混ぜ合わせ、水0.6リットルで約半量まで煎じ、布でこして1日3回食間に服用する。とくに、大病後で非常に体力が衰弱した場合や、老人などで、せきが出てたんの切れが悪く、のどが詰まる場合に用いると効きめがある。 滋養強壮には、麦門冬と同量のハチミツを加えて、水0.5リットルを、煎じながら約半量まで煮詰めたものをこして、3回に分けて食間に服用する。麦門冬が隠れるくらいの焼酎に約1年漬けて作った麦門冬酒は血液の循環を良くし、疲労回復、鎮咳剤となる。麦門冬を煎じて作った液に麹を加えて発酵させて作ったお酒や、麦門冬をミキサーにかけてから煮たものに麹を加えて作ったお酒はさらに効果が高く、血流改善、疲労回復になる。 火傷には麦門冬の煎液で湿布すると良い。暑気あたり、嘔吐には、果実を1〜2粒つぶし、蜜を加えて煎じたものを服用すれば効果がある。 |
その他 | 名の由来ははじめは、リュウノヒゲ(龍のひげ)であったという。 能面の翁(おきな)の髭(ひげ・あごひげ)から、尉(じょう・翁の面)の髭(ひげ)が転訛(てんか)して、リュウノヒゲ、ジョウノヒゲ、ジャノヒゲになったという。 |
参照サイト・文献 |
ウィキペディア イー薬草・ドット・コム 松江の花図鑑 大地の薬箱 食べる薬草事典 村上光太郎著 / 農山魚村文化協会 |
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ジャノヒゲの実
イタチ
野ばらの赤い実
植物からすると鳥が実を食べて糞とともに種を拡散してくれます。