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まみむのメモ(42)〈食べられる野草図鑑・春〉
~ 目次 ~
ヨモギ(蓬・艾)
時期 | 3月4月ころから新芽が伸びてくる。石垣の陰などでは冬でも青葉がみられ、夏から秋に花が咲き種ができる。 |
場所・環境 | 日本全土の山野、道路脇など繁殖力旺盛で、日当たりを好むが半日陰でも育つ。 |
花 | 9〜10月枝先に花序がつき下向きの筒状花が多数つく。頭花は直径約1.5mm、長さ3mmの長楕円状鐘型。中心部に両性花があり、まわりに雌花があってどちらも結実する。キク科には珍しい風媒花。 |
葉 | 長さ6〜12cm幅4〜8cmの羽状に深裂した楕円形の葉が互生し、表面は緑色で裏面には腺毛が密生し白っぽくなる。葉の付け根に小さな托葉があるのが一般的にみられるカズザキヨモギ。頭花の幅が2.5mmと大きなニシヨモギなど30種類以上のヨモギが日本には自生しているといわれている。 |
実 | 秋から冬にかけて長さ1.5〜1.8mmの茶色い種が総苞の中にたくさん実り、冠毛はない。種がついた枝全体が枯れる。 |
根 | 横に伸びる。 |
見分けるポイント | 葉先が尖っていて、葉裏には腺毛があり白っぽく見える。葉を少し揉むとヨモギ独特の香りがし、そのまま乾燥すると甘い香りがする。 |
間違えやすい毒草 | クサノオウ。切ると白色の汁が出てすぐに橙黄色に変わる。可愛い黄色の花をつける。匂いがしない。 |
生え方 | 多年草 |
学名 | Artemisia princeps アルテミシア属という名は、女性とその健康の女神アルテミスから名付けられた。 |
科名・属名 | キク科・ヨモギ属 キク科はもっとも進化した植物とされ、世界ではおよそ950万属2万種、日本では約70属360種のキク科植物が知られており、地球のほとんどの地域で生育が可能。 ヒマワリ、コスモス、タンポポや、レタス、ゴボウなどもキク科です。 |
採取方法 | ヨモギを食用にする場合は3〜5月くらいの10cm前後に育った新芽をいただきます。6〜7月頃の花がついていないヨモギを陰干ししたものを艾葉(がいよう)といい漢方薬に使います。根はよく洗って焼酎漬けやお茶にします。種もお茶などに使います。 |
あく抜き | 新芽はあく抜きせずそのままお茶などにします。ヨモギ餅などにする場合、重そうを入れて湯でると発色が綺麗で一般的ですが、栄養価的には塩茹での方が良いとされます。 尚、植物のアクは野菜毒であり、老化につながるという説を以前こちらの記事でご紹介されています。ただし、一般的な野菜の場合、昨今では農薬などのケミカルもアク=野菜毒には含まれているのではないかと考えます。 薬草としていただく場合は、下茹ですると薬効が失われます。乾燥させて煎じたり、生の絞り汁をいただくなどします。 また、アクはミネラルであり、植物が自己防衛しようと生み出す成分のアク・シブ・ヤニが抗菌・抗酸化・抗アレルギーから防水効果まであり、カキ・クリ・マツなどで、アトピー改善、虫刺され、喉の痛み、抗酸化、抗腫瘍、ウィルス不活化(柿渋タンニンは調べられた20種全てのウィルスを不活化)、具体的な利用方法や体験談などアクの有用性が紹介されています。 |
調理法 | 天ぷら、下ゆでして草餅や草団子に。沖縄では風邪をひいた時に雑炊にして食べるそうです。全草をお茶や焼酎漬けに。パンやクッキーにも下茹でして使います。手軽にいただけるのは下茹でして刻んで混ぜたヨモギご飯です。お好みで刻み海苔を乗せて出し醤油などで味付けを。その他汁の実や味噌炒め、お浸しなど。ちょっと変わったところではニラと一緒に生で醤油、お好みの油を加えてミキサーにかけ、バジルソース風にします。通常生葉は先端の開いていない部分をつまんで食べることができますが、他の部分は繊維が硬いので加熱します。ただし青汁は生葉をつぶして、又は水と一緒にミキサーにかけて絞って濾します。りんごジュースなどと混ぜると飲みやすくなります。野草ピザにヨモギが合います。 |
他の利用方法 | キズ薬・・・切り傷、擦り傷、打ち身などに葉っぱを数枚少し揉んでのせて、サージカルテープなどで止めます。殺菌、止血、痛み止め、皮膚組織再生にもなります。猫などのおできやキズ、おしっこが出にくくなった時にも青汁をスポイドで飲ませたり、キズにつけたりします。虫下しにもなり、天然の抗生物質といわれ、副作用がなく健康的です。実験でマラリア患者にヨモギの葉を2日間食べさせたら、89%の人に改善が見られたそうです。 ヨモギ風呂・ヨモギ蒸し・・・生葉600〜1000g又は艾葉200〜300gを煮出してお風呂に入れ、入浴剤に。水とヨモギを鍋に入れて蒸気を立たせ、その上に高めの椅子を置いて体全体もしくは下半身をピニールケープで覆い蒸気にあたります。煮汁はかゆみ止めなどにも使えます。 艾(もぐさ)・・・ツボにのせて、線香で火をつけてお灸に使う艾は、5月頃の若葉を天日で干して更に弱火で炒り、すり鉢ですり潰し腺毛を集めます。ビワの葉にのせてビワ灸、スライス生姜にのせてショウガ灸などにも。 乾燥させた葉っぱを枕や赤ちゃん布団などに。天然のハーブとして利用できます。 約400年前の火薬作りに、ヨモギを何度も発酵させて硝酸カリウムの結晶を作り、黒炭、硫黄とともに原料にしたとか。 |
効能 | クロロフィル(葉緑素)が殺菌作用、免疫のインターフェロン増強作用、血流・冷え性改善、アレルギー抑制、有害物質排出に。タンニンが抗酸化、整腸作用に。カロテン(ビタミンA)が抗酸化、がん予防、健胃、整腸に。豊富なカルシウムが精神安定作用。鉄分などのミネラル分も多く、滋養強壮、体内バランスを整える。ツヨンが生理痛や更年期障害の改善に。ただし、女性の生理機能を刺激するので、妊婦はヨモギ茶などの飲用を控えます。ヨモギ酒はぜんそくに。艾葉を1日5〜8gを0.5Lの水で半量まで煮詰め食間に服用すると、体を温め胆汁分泌促進、食欲増進、止血、冷えからくる腹痛、胸焼け、下痢、便秘、鼻血、血尿、痔などに有効。青汁は高血圧、神経痛、胃腸の弱いのに有効。また、ヨモギにはアナフィラキシーなどの炎症を引き起こす物質を防ぐ効果もあるそうです。さらに、シオネール、フラボノイド、コリン、カリオフィレンなど、抗酸化、がん予防、高血圧、コレステロール等に有効な成分も含まれています。 |
その他 | 苗や種も売っているそうですので、常備的に植えておくと良いと思います。春先は特に野菜よりもヨモギをいただいています。 |
参照サイト・文献 |
イー薬草・ドット・コム 植物名一覧 Flora of Matsue 松江の花図鑑 よもぎ研究所 【自給自足決定版!】意外とおいしい!身近な「野草」を摘んで食べてみた 健康茶の教科書/効能とランキング・目的別の選び方を解説 現代農業/2014・8/農文協 |
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[第2回] 地球の鼓動・野草便り まみむのメモ(27) まみむのメモ(28) |
フキ(蕗)・フキノトウ(蕗の薹)
時期 | フキの花であるフキノトウは、早春の野の恵みで、2月頃から顔を出す。 |
場所・環境 | 本州〜沖縄の山野や川土手などに生える。日向にも育つが、半日陰によく育ち、やや湿ったところを好む。 |
花 | フキの葉が出る前に地下茎から花茎が伸びるのがフキノトウで、雌株に咲く雌花は頭花が白っぽく高さ45cmくらいまで伸びるものもある。 雄株に咲く雄花(両性花)はやや黄色っぽく、高さ10〜25cmまで育つ。花芽は苞葉に包まれていて、開いてくると散房状についた頭花が顔を出す。糸状の花先に雄花の両性花は花粉をつけるが結実はしない。雌花の中に混じる両性花は花粉を持たない。 |
葉 | 花の茎が伸びてくる頃から、小さなフキの葉が地下茎から出てきて、4月下旬くらいには大きな葉になり幅15〜39cm。葉柄も伸びて大きいものは葉柄の長さ60cm、直径1〜1.5cmくらいになる。形は円の一部が切れ込み、ろうと状に茎につながり、雨を効率良く根元に集める。つやはなく、全体に綿毛が密生している。 |
実 | 雌花が結実して、タンポポのような綿毛を飛ばす。茶色の細長い2mmくらいの痩果をつけ、種の一つ一つに3倍くらい長さの冠毛をつけて風で運ばれる。 |
根 | 太い茎状の根が横に伸びて繁殖する。地表に出た部分が緑色に変色しワサビに似ることがある。 |
見分けるポイント | よく似たツワブキの葉は濃い緑色(新芽は黄緑色もある)で表面に光沢があり、厚みがある。 フキノトウが出るのはフキだけで、ツワブキは10月頃に花の茎が枝分かれして、黄色い4〜6cmの花を散房状につける。 |
間違えやすい毒草 | フキノトウと形が似た芽を出すハシリドコロ。 たまに山道などで見かけるハシリドコロは、食べると走り回るほど狂乱状態になるところからついた名前で猛毒。 |
生え方 | 多年草で雌雄異株。フキノトウは地下茎から直接花茎を出し、フキの葉も直接地下茎から出てくる。地下茎を伸ばして増える。 |
学名 | Petasites japonicus 日本原産で野菜として栽培もされている。 |
科名・属名 | キク科・フキ属 |
採取方法 | 早春の出たばかりの苞葉に包まれてまだ開いていないフキノトウを頂くのが一般的だが、大きく伸びたフキノトウもいただける。葉柄が伸びてくると根元から切り取って茎と葉を分けて調理する。葉が小さく柔らかいうちは、葉も茎も一緒にいただける。 |
あく抜き | フキノトウはそのまま調理し、大きくなった茎はさっと下茹でして折りフキにしながら皮をむき水にさらす。小さい葉はそのままいただきます。 |
調理法 | フキノトウは丸ごと天ぷらや味噌と一緒にホイル焼きに。三杯酢に漬けて保存食(冷蔵)にも。刻んで油少々で炒めてみりんと味噌でフキ味噌に。刻んで味噌汁などにも。小さな葉と茎も刻んでフキ味噌や醤油、(+みりん)で佃煮に。大きな葉っぱはそのまま天ぷらにすると、おせんべいのようなおやつになります。魚を包んで焼いたり、包み揚げにします。大きな茎はさっと湯がいて折り蕗にしながら皮をむいて水にさらし、煮付けます。また皮付きのまま切って醤油だけで(お好みでみりんも)弱火で煮て冷まし、翌日また煮て冷まし、もう1日か2日同じように煮てキャラブキにします。 |
他の利用方法 | 生の茎や葉の汁をブヨや蜂に刺された時につけて腫れずに治った経験があります。生まれたばかりの赤ちゃんに、すりおろした根をお湯少々でうすめてガーゼに包んで絞って飲ませると、母乳の初乳と同じように胎毒を下すといわれいて、飲まされた経験者です。おできが出来た時に、ドクダミソウ数枚の葉をフキの葉で包んで直火で焼き、柔らかくなったドクダミソウの葉をおできに貼ると、一晩でおできの芯を吸い出して治っていました。 北海道旧音別町ではアキタブキという2mにもなる大きなフキを使って和紙を漉いて商品化されているとか。また、北海道螺湾川沿いに自生するラワンブキは2〜3mにもなり北海道遺産。 |
効能 | フキノトウに多く含まれる苦味成分はアルカロイドの一種で、がん予防の成分。冬から春への体調を整える。昔から痰を切り、咳を鎮めるとして、フキノトウを干したもの5〜10gを煎じて服用。あるいは生のフキノトウを刻んで味噌汁に。または火であぶって柔らかくし、加熱しながら味噌で練っていただく。風邪、解熱、喘息、気管支炎、肺疾患、胸のつかえに効果がある。葉・根を用いても良い。干したフキノトウを火にくべてその煙を吸うと喘息などの咳に効果がある。生の葉・茎・根の絞り汁、または煎じたものを服用すれば解毒剤として魚の中毒などに。外用剤として患部に塗布すれば、打ち身、切り傷、虫さされに効果。煎じて服用すれば、苦味健胃薬として胃アトニー、胃下垂、胃痛、胃のもたれ、食欲不振、虚弱体質、腺病質、熱のある喉の腫れや痛みに効果がある。また、甘草を加えて茶代用とすれば、蓄膿症にも効果あり。痔には、葉を他の葉でくるんで火の中に入れ柔らかくなったものを患部にあてる。 |
その他 | 大きくなったフキの葉を半乾きくらいでトイレットペーパー代わりにすると、とても使い心地が良いです。 フキの名前はそのあたりからついたのかなと新説・珍説・・・。もしお店の棚からトイレットペーパーが消えた時にはご一考を(ウォシュレット後は古いタオルなどを切っても)。野山では大きめの葉っぱがオススメですが、タケニグサという毒草にはご注意を。タケニグサは切り口から橙黄色の汁がでます。 |
参照サイト・文献 | 松江の花図鑑 ウィキペディア(Wikipedia) 大地の薬箱 食べる薬草事典 村上光太郎著 / 農山魚村文化協会 |
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[第1回] 地球の鼓動・野草便り [第3回] 地球の鼓動・野草便り |
食料危機など危惧される昨今ですが、いざという時に身近に食べられる野草があることを知っておくだけで、少なからず安心感につながると思います。
竹下家からのご提案で、野草図鑑をつくることになりました。
私たちはどういう食事をすればいいのか、不健康な食品に囲まれている昨今、根本的に食を見直し、自然の恵みをどう頂くのか、野草をいただきながら考えていけたら良いですね。
さて、野草を頂くにあたり、除草剤や農薬、放射能などに気をつけるのはもちろんですが、国立公園、国定公園、都道府県立公園内での採取は基本的にできません。
また、タラやウド、ワラビ、ゼンマイ、フキノトウなど最近は出荷されている場合もありますので、地主の許可が要ります。個人所有の山の場合、不法侵入、および窃盗になります。
国や地方自治体の場合は罰則はないようです。車があまり通らない公共の道路脇や河原など、雑草扱いの野草はいただいても大丈夫だと思います。もし近所に人がおられれば、一言お聞きしておくといいと思います。
また、鳥や虫たちのために花や種は特に多いときだけいただいてください。野草も根絶やしにするのではなく、いただき方に気をつけて下さいね。