[山本理顕氏] 投資家のための再開発で街の豊かなコミュニティは破壊され「富裕層の植民地化」が進んだ / 建築を通じて協力し合えるコミュニティを作る試み

 2026/4/30時事ブログの松橋農場さんの試みは、備蓄という軸で人々が助け合える新たなコミュニティを作る活動でもありました。危機に際して個人で立ち向かうよりも、協力し合えるコミュニティの方が強く安全に立ち向かえそうです。
 プリツカー賞受賞建築家の山本理顕氏は、建築を通したコミュニティを語っておられました。
「東京は富裕層の植民地になりつつある」。そして「富裕層の植民地」の象徴的なプロジェクトとして森ビルの「六本木ヒルズ」や「表参道ヒルズ」などの開発を指摘されました。
2002年の元麻布ヒルズを始めとして、森ビルは住みやすい豊かなコミュニティのあるところを狙って建物を作っていきました。この頃、日本の金融システムやさまざまな状況が変わっていった時代で、「不動産の証券化」という手法で、デベロッパーは金利の低い時代に高い利回りで証券化して一般の人に売ることで資金調達をしました。その結果、デベロッパーは住む人ではなく、証券を買ってくれる投資家のためにビルを作るようになりました。そしてそれまで安定した価格で供給されていた付近の住宅が、このタワーひとつで周りの経済状況が一気に変わり、周りの物件もつられて値上がりしました。
「ヒルズ族」は優越感みたいなものを買い、周辺の人たちとは全く関係のない人たちが住み、地域のコミュニティが失われました。コミュニティが失われた街は最終的にはどうなるのか?
「人はコミュニティがないと生きていけない。現代でもいろんな形でコミュニティを作ろうとしている。共に助け合わないと人は住めない。その助け合い方が非常に困難になっている。」「マンションがセキュリティ、プライバシーを売りにするようになると、マンションの中で事件が起こり始めた。殺人事件、孤独死など田舎だったら絶対にあり得ないことが起こり始めた。」
 山本氏は「投資家のための街」のアンチテーゼとして、北京の「建外SOHO」、チューリッヒ国際空港、ベネズエラの住民の手による再開発、そして日本では土地の風土を生かした再開発の可能性として「コーポラティブハウス」という会員でマンションを作るというやり方を試みているそうです。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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【タワマンは廃墟化する】東京は「富裕層の植民地」/ヒルズ族が壊した「地域コミュニティ」/「200年住宅」は実現できる/新自由主義と不動産証券化の闇《プリツカー賞建築家・山本理顕》
配信元)


【要点を書き起こし】
「富裕層の植民地化」になっていく東京について。
外国人記者クラブ(FCCJ)で「富裕層の植民地」の象徴的なプロジェクトとして、「六本木ヒルズ」「表参道ヒルズ」など、〇〇ヒルズというプロジェクトを開発している森ビルという開発会社を取り上げたが、これは森ビルだけの問題でなく、三井不動産や三菱地所などのデベロッパーは全て同じ状況にある。

森ビルが何をしたかというと、「元麻布ヒルズ」が典型だったが、元々元麻布の住民にとって住みやすいコミュニティがあった。公共空間としての古いお寺や小さな商店街、緑のある豊かな場所だった
2002年に巨大なタワー、元麻布ヒルズが建った。地上29階建て「そのタワーのあまりの醜さに驚いた」(3:35)


(4:25〜)
この頃から日本の金融システムやさまざまな状況が変わっていった時代だった
その後、森ビルは「〜ヒルズ」という建物を作っていくようになった。
森ビルは、住みやすい豊かなコミュニティのあるところを狙って建物を作っていった
表参道もそう。そこには同潤会アパートという有名な集合住宅があった。それは原宿の街の象徴でもあった。そこを再開発の場所として選び、そしてその同潤会を全て壊した。

ビルを建てることで、周りのコミュニティが壊れていった

何が起こったかというと、驚くほど高い販売物件にもかかわらず、多くの人が住みたいと思った。すると周りの物件もつられて値上がりした。これまで安定した価格で供給されていた付近の住宅が、このタワーひとつで周りの経済状況が一気に変わった

その後、六本木ヒルズができた。高さが238m、延べ床面積が79万3000平米という一つの町レベルのものになった。
どこから見てもこれが映り込み、しかも建物のデザインとしては最悪なもので、これで東京の景観が完全に変わった。
このデザインは建築家のせいではない、森ビルがこれだけの容積の建築を計画して作った。六本木の街は「高い」、マンションにはヒルズ族と呼ばれるお金持ちが住み、彼らは優越感みたいなものを買った。森ビルはそういう商売をした。
金持ちの植民地のような建築を作っていって、ここに入る人たちは周辺の人たちとは全く関係のない人たちが住んでいる。これはかなり大きなインパクトを与えた。

これはデベロッパーのせいか?(10:00〜)
そのころは、そういうことを誘導するような政治的環境だった。
最初に出てきたのが「不動産の証券化」。金利の低い時代に高い利回りで証券化して一般の人に売ることで資金調達をした
これが最悪で、デベロッパーがビルを誰のために作るかというと、証券を買ってくれる人のために作るようになった
地域のためでもない、住む人のためでもない、投資家のために作ると、とにかく床面積を増やす、見てくれは良いが建物にはお金をかけない、すでにお金は集まっているからお金をかける必要がない。
あとはなるべく利益を出すだけ。なので、デベロッパーだけが悪いわけではない。

コミュニティが失われた街は最終的にはどうなるのか?(12:10〜)
人はコミュニティがないと生きていけない。現代でもいろんな形でコミュニティを作ろうとしている。共に助け合わないと人は住めない。その助け合い方が非常に困難になっている

その、困難にしているのが、今の住宅政策や森ビルのようなデベロッパーの登場だ

人はコミュニティのために住むわけではないので、例えば、六本木ヒルズの人たちは何のために住むかというと、まずはセキュリティ、プライバシー。これは外の周辺の人たちが侵入してこないことを意味する。
「外の人たちと自分たちは違うと思っている、自分の味方ではない」という作り方になっていった。

マンションがセキュリティ、プライバシーを売りにするようになると、マンションの中で事件が起こり始めた、殺人事件、孤独死など田舎だったら絶対にあり得ないことが起こり始めた。

そういうマンションが一本建つと、建物の中に住んでいる人たちのコミュニティが失われていくだけでなく、周辺にも影響を与える。

再開発へのアンチテーゼとして「地域社会圏主義」。(15:07〜)
これは単純にいうと助け合う社会だ。建築によって作ることができるのではないか。
2000年に北京に「建外SOHO」(スモールオフィス・ホームオフィス)という大規模複合施設を設計した。中国でSOHOシステムで作られた初めての住宅だった。80万平米という六本木ヒルズと同じくらいの建物を作った。
1〜3階までと地下は商業施設にした。車は地下を走らせた。住宅であると同時に、そこで商売もする。それぞれの人々の関係ができていく。
ところが北京政府は、コミュニティという自治ができていくことに賛同しなかったので、ここが最初で最後になった。

チューリッヒ国際空港を設計した時(18:43〜)
コンペでデザインを説明する際、話し合いをする相手は飛行場会社の人だけでなく、近隣の住民とも密接に交流しながら話し合った。
なぜかというと、飛行場は周辺にとって迷惑施設なので、コミュニティの人たちのための建物にすると同時に、コミュニティを作っていく建築にしたかった。経年変化のない素材で300年から400年は平気で保つ。長期的にエネルギー負荷が少なく、メンテナンス費用も少なくするためには15億円余分にかかるが、飛行場会社は100年先を見据えて「たかだか15億円くらいなら採用すべき」と承諾した
ところが日本ではそれができない。日本は単年度計算で税金がかかるので、短期で儲けて短期で税金を払う。国にとってはその方が潤う。日本は全てを短期で仕切るような国になっている。
福田内閣の時に200年住宅構想を閣議決定しているのに、それを採用しない。メンテナンスを考えると今のようなマンションなど建てられないから。しかし技術的には可能だし、十分に利潤が上がる設計はできる。

東京の再開発は「投資家のための街」、これに対して他のモデルは山本理顕氏がベネズエラで始めた開発がその先駆けになるかもしれない(24:30〜)。
すでにしっかりしたコミュニティがある場所に、自分たちの手で自分たちの建物を作る。デベロッパーへの発注者は住民、雇われて働くのも住民なので中間搾取がなく、利益は住民たちに還元される。従来とは全く違う新しい開発の仕方だ。
観光客も集まりやすい街づくりを提案している。

土地の風土を生かした再開発の可能性(31:53〜)
日本でコーポラティブハウスという会員でマンションを作るというやり方を試みている。

長続きする住まい
日本は「メンテナンスでお金儲けしている」。フラット35で借りるお金は建物本体分だけで、メンテナンス費用は入っていない。お金を借りる人は、建物代以外にその後の膨大なメンテナンス費用を払っていかなければいけない。

本来デベロッパーは、保険もメンテナンス費用も全部セットで売らなければいけない。そうすると、メンテナンスしやすい、200年長持ちする家を作るしかない。メンテナンス代がないと物件を次の世代に渡すことができる。今は35年経つと建物はボロボロになる。メンテナンスができないと手放さざるを得ない。このようにして今空き家が増えている。誰のものでもない空き家を誰が解体するのか、絶望的な状況だ。一番最初に廃墟になるのは超高層マンションだ

コミュニティは作ろうとして作れるものではない
コミュニティがなければ住めないような仕組みを作る。街全体でお金が儲かるような仕組みを作る。かつての京都や高山のように。
デベロッパーが200年住宅を作る勇気があるかどうかが問われる。デベロッパーにとっても決して損にはならないはずだ。

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