[櫻井ジャーナル]米国人ジャーナリストを斬首したISの背後に米国やサウジが存在していることを忘れてはならない

竹下雅敏氏からの情報です。
 メディアはISIS(イスラム国)をイスラム教徒であると言うように誘導することで、イスラム教のイメージを低下させたいようですが、この記事にもあるように、ISISはイスラム教徒ではありません。イスラムを偽装するテロ集団だと見る方が適切でしょう。アメリカ、サウジアラビア、イスラエルが破壊したアフガニスタン、リビアなどから、傭兵としてこのような殺人集団を作り出し、自分たちの政治的目的の道具にしている様子が、明快に説明されています。
 私の感覚では、宗教の発生の順序に従って、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と時代が下るほど、宗教的には寛容になっていくように思えます。イスラム教徒の人たちとは、話せばわかると思うのですが、キリスト教徒になると困難を感じ始め、ユダヤ教徒に話が通ずるとは思えないのです。日本人には“選ばれた民”という意識がありません。しかし様々な宗教や宗教団体は、この選ばれた民、あるいは選ばれた集団を自称することによって、特別な存在であることを宣言します。これを止めない限り、地球に平和は来ないということだろうと思います。
 陰謀を目論む者たちは、イスラム教を狂信的で危険な集団であると人々にイメージさせ、最終的にはテロとの戦いに於いて、殲滅の対象として位置付けたいのだろうと思います。
この連中は、敵を一掃してしまえば平和が来ると考えるほど、単純な人たちなのだろうと思いますが、敵を殲滅すれば、次は仲間割れが起こって、誰が王になるかという戦いをまた始めます。彼らは、滅ぼすべきは自分の心の中にある悪しき欲望であるということには気づかないようです。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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米国人ジャーナリストを斬首したISの背後に米国やサウジが存在していることを忘れてはならない
転載元)
2012年11月22日にシリアの北西部でISに拉致され、行方がわからなくなっていたフォトジャーナリストのジェームズ・フォーリーが8月19日、IS(イスラム国。ISIS、ISIL、IEILとも表記)に首を切られたと伝えられている。アメリカがISに対する空爆を始めたことに対する報復だと主張しているが、シリアへの空爆を誘うことが本当の目的ではないかという声も聞こえる。

フォーリーが拉致された2012年といえば、ISの主要メンバーがヨルダン北部に設置された秘密基地でアメリカのCIAや特殊部隊から訓練を受けたと言われている年。当時はどうだったか不明だが、現在、ISの戦闘員を雇っているのはサウジアラビアのアブドゥル・ラーマン・アル・ファイサル王子。ノウリ・アル・マリキは今年3月、ISへ資金がサウジアラビアやカタールから流れていると批判しているが、これは事実だと見られている。アメリカやサウジアラビアが反対すれば、殺せなかっただろう。

調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュがニューヨーカー誌の2007年3月5日号に書いた記事によると、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟はその時点でシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を開始していた。アル・カイダ系の武装集団AQIを中心にISが編成されたのは2006年のことだ。

ところで、ベトナム戦争のとき、アメリカは正規軍と情報機関/特殊部隊が別々の指揮系統で戦っていた。リンドン・ジョンソン大統領の腹心でNSC(国家安全保障会議)に所属していたロバート・コマーは1967年5月にサイゴン(現在のホーチミン)へ入り、ベトナム軍事支援司令部(MACV)とCIA共同で極秘のプログラムICEXを始動させた。その年のうちにフェニックスへ名称が変更される。

当初、このプロジェクトは情報の収集が目的だったというが、海軍の特殊部隊SEALなどから隊員を引き抜き、殺人部隊も編成される。反米色が濃いと見なされた地域の農民を殺害、共同体を破壊していく。殺人部隊として1967年7月にPRUが組織されるが、そのメンバーは殺人やレイプ、窃盗、暴行などで投獄されていた囚人たちが中心だった。このPRUの役割を中東/北アフリカではアル・カイダが、またウクライナではネオ・ナチが担っている。

後に議会の調査で
フェニックス・プログラムを含む秘密の工作や組織の存在が発覚、その後は「民営化」が進む。形式上、工作を民間企業に行わせ、発覚したときに責任が政府機関へ及ばないようにしたわけだ。その後、民営化は軍隊にも及び、戦争ビジネスが急成長する。

その一方、1970年代の終わりから80年代にかけて「イスラム系」の戦闘部隊が編成され、その中からアル・カイダが生まれる。ただ、このアル・カイダは戦闘集団ではなく、ロビン・クック元英外相も言っているように、CIAに雇われて訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル(データベース)だ。

2003年にアメリカはイラクを先制攻撃、さらにリビアやシリアなどの体制を武力で倒そうとしている。その結果、中東/北アフリカは戦乱で経済が破綻、カネを稼ごうとすれば傭兵になるしかない。そうした人びとを雇って体制転覆プロジェクトを推進しているのがアメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3国同盟。ISの戦闘員として新たに雇われた人数は6月だけで6300名に達するという。ISが銀行を押さえ、石油を売って儲けていると言うが、やはりサウジアラビアの存在は大きい。

このISはフォーリーを殺しただけではない。女性や子どもを含む多くの非戦闘員を殺害し、若い女性を「短期間の結婚」と称してレイプ、つまり慰安婦にしている。イスラムとは無縁の存在だ。むしろ、CIAの「テロ部門」がベトナム戦争で組織したPRUに似ている。フォーリーの残虐な殺され方に目を奪われると、問題の本質を見誤るだろう。

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