竹下氏からの情報提供です。
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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[英語カット版]古賀茂明氏 外国特派員協会での冒頭会見 (2015年4月16日)
転載元)
YouTube 15/4/17
文字起こしの出典: http://blogos.com/article/110230/
※一部修正したり、書き足しています。
みなさんこんにちは。今日はお招きいただきましてありがとうございます。
時間がないので、私の方からいくつかに分けてお話しさせていただきます。
日本の放送局、テレビ局というのは、政府との関係においてどのような立場にあるのか。これは国によって違いがあるので、日本の特殊な事情みたいなものをお話しさせていただければと思います。
テレビ局は政権側の管轄下、新聞雑誌も政府に対して弱い立場に
日本ではテレビ局というのは、総務省という役所の管轄下にあって、その事業をやるのには免許が必要だということです。総務省というのは内閣の一部ですから、安倍首相の意向によって動くわけです。免許を取り消したり、更新したりという権限を持ったところが監督をしているという構造になっています。ですから、例えば独立性の高い委員会とか、政府から独立したところが監督しているわけではないということを理解しておいてほしいと思います。そういう意味では新聞とはかなり性格が異なります。そういう風に非常に弱い立場にあります。
ついでに、日本の新聞や雑誌業界も、政府に対して弱い立場にあるということも申し上げたいと思います。
一つは「再販制度」という制度がありまして、価格を維持するための制度ですが、これは公正取引委員会が所管していますが、これを維持してもらえるかどうかというところで政府に対して弱い立場にあります。
もう一つは消費税との関係、今、10%への引き上げが予定されています。生活必需品に対する軽減税率をどのような品目にかけるかという議論がされていますが、新聞・雑誌業界は自分たちをその対象にしてほしいということを喫緊の課題として新聞・雑誌業界は非常に強く政府にお願いしている状態です。そういう意味で、本気で政府と戦うのは難しいという状態です。
日本から独裁が生まれることはあるのか
そういう、日本のメディアが構造的に政府との関係で少し弱い立場にあるということを背景にしても、日本は世界の中でも非常に自由な国で自由な言論が保障されている国だと思うのですが、民主主義もしっかり定着しているのですが、そこから独裁が生まれることはあるのかということをいつも考えています。それはクーデターとかではなくて、正統な手続きを踏んだ上での独裁への移行です。
第一段階
それが起こるとしたら、第一段階として、政府がマスコミに対して圧力をかける。放送法の免許というのは一つの力になりますし、圧力だけじゃなくて懐柔をする。アメとムチですが「軽減税率の対象にしますよ」といって懐柔をする。これらが第一段階としてあるのではないかと思います。
第二段階
そして、それはいつの時代にもありうることなのですが、そうした圧力や懐柔にメディアはどう反応するのか。今のメディアは闘うというよりもそういう圧力を何とかかわそうとして、本来自分が描きたいものよりも少しずつ狭めて言って、それによって政権からの圧力を回避しようとして“自粛”する傾向が見て取れます。
また、マスコミのトップが政権側にすり寄っているように見える。そして、これは幼稚なことなのですが、「自分が政治を動かしている」あるいは「政治の中枢に入っている」というような感覚を楽しんでいるようなトップが増えているんじゃないかなと思いますけども、そうすることによって現場は闘いにくくなります。
まだまだ現場には、報道には真実を伝えるだけじゃなくて、いろいろな問題を掘り下げて、権力に様々な問題があれば、問題提起する大きな役割があるのだと思っている人間がたくさんいます。
しかし、トップが権力にすり寄っているようでは、トップが自分たちを守ってくれるのか、現場はトップを信じることができなくなる。現場が、ほとんどトップを信用していないという会社が増えていると私は感じています。
第一段階が圧力と懐柔だとしたら、第二段階は権力が何もしないのにメディア側の自粛とすり寄りをしていくことだと思います。
今の第一、第二段階において、第二段階を示す一つの例として、日本民間放送労働組合連合会というという労働組合がこないだ初めて自民党の報道介入にたいして強く抗議するという声明を出しているんですね。今まで出さなかったのが個人的には不思議なぐらいなんですが。 そこで面白い表現があります。「最近、報道機関のトップや編集幹部が積極的に安倍首相とのゴルフや会食に積極的に応じる一方で、政権サイドのメディアへの高圧的な態度がめだつ。」と。
ここに書いてある事が面白いという訳ではなくて、そういう風に現場が受けとめているということなんですね。ゴルフや会食に行くこと自体はケースバイケースで、いろんなことがあると思うのですが、少なくとも現場で働いている人たちが「何でそんなことするんだ」と抗議したくなるような文脈の中で、こうしたことが行われているということが私は重要だと思っています。
第3段階
「報道ステーション」の3月27日の放送の時に話したかったのですが、いろんなつまらない口論があって、話せませんでした。一度フリップを出そうとしてひっこめた話があります。それは第3段階の話です。
そこで私が伝えたかったのは非常に重要なニュースが、今日本では報じられない、報じられても非常に小さくしか報じられない、そういうことが日本では起きています。その例を挙げようとしました。
例えば、小泉改革以来、目玉の一つであった政策金融機関の民営化という議論があります。この議論の中で、民営化する期限というのが決まっていた金融機関があります。政策投資銀行と商工中金という2つの大きな政府系金融機関。これは財務省と経産省の所管の金融機関ですが、現在国会で議論されている中では民営化の期限がなくなっています。ということは、民営化されない可能性が出てくる。
これは数年前の民主党政権下であれば一面トップで扱われたでしょうし、かつ国会でも非常に大きな議論なったはずです。しかし、非常に小さくしか扱われていない。
その他にも政府系金融機関として、先程挙げた二つに加えて、国際協力銀行、日本政策金融公庫といういずれも経産省、財務省系の機関がありますが、このトップは改革の過程で全員民間出身の方になっていました。それが安倍政権になってわずか2年ぐらいの間に4つのうち3つのポストが経産省、財務省の次官級OBのポストに変わっています。「天下り」ですね。
つまりあれだけ「天下り廃止」とか「天下り規制強化」と叫んでいたものが、一気に逆戻りしているのですが、これもほとんどマスコミにおいて問題にされることがない。この事実を伝えようと思っていました。
最終的な危機的段階
そういう重要なことが大きく報じられない理由が政権の圧力なのか、テレビ局の自粛なのかという風に思って、何人かのテレビ局の人に聞いてみたんです。そうしたら驚いたことに彼らはその重要性に気づいていないんです。これは5年前だったらありえないことです。
これは私が最終的な危機的段階だと思っています。つまり、最近では自粛していることをついに意識することすらできなくなっている。記者の一番重要な素養である問題を掘り出していく能力すら失われつつあることが私は非常に心配になりました。
そういう話をした上で、報道ステーションでは最後にガンジーの言葉を言ったわけですね。英語の原文にはあたってないので、日本語訳ですが「あなたがすることのほとんどは無意味ではあるが、それでもしなければならない。それは世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられなくするためである」。
今お話しした最後の状況というのは国民にも同じことが言えます。国民は直接圧力を受けることはありませんが、今のマスコミの状況が続けば、本当の事を知ることができなくなってくる、知らず知らずのうちに権力側の都合の良い情報で頭の中が洗脳されていくと。そうすると、自由な選挙、もっとも民主的な手続きである選挙にいくんだけれども、そこで正しい情報が与えられていないために間違った情報に基づいて選択してしまうということになる。その結果、独裁ないし、日本では独裁というのはありえないのですが、それに近い状態になってしまうのではないか。私は、そうなる前に、どこかで止まると思っていますが、そういう段階に入ってきているんだということを申し上げたいと思います。
フォーラム4というキャンペーン
以上が報道と権力についてですが、あと一つ最近変なプロパガンダが横行しているので、その誤解を解く意味で一言だけ。私が現在進めているキャンペーンがあるのですが、そのことについてお話ししたいと思います。
私は一か月ぐらい前にフォーラム4というキャンペーンを始めました。今、私を批判する中で、新しい政党を私が作るんだと。その宣伝のために報道ステーションを利用したという人がいるのですが、これは間違いです。フォーラム4というのは政党ではなく市民の活動です。
今無党派層が増えて、投票率が下がっているのですが、これは単なる無関心の増加ではないと私は思っています。むしろ関心はあるけれども選びたい政党がないという結果だと思っているんですね。
一言で申し上げますと、今のいろんな政党の政策の軸というものの一つは大きな構造改革をするかどうか。
もう一つは従来の平和主義、日本の平和ブランドをやっていくのか、安倍政権のような積極的平和主義、私は積極的軍事主義と捉えていますが、軍事力というものを中心に世界を仕切るという非常にタカ派的な考え方でいくかという、この二つの軸で構成される4つの枠の中で、今の日本の政党勢力で「改革をやるけれども、安倍政権的なタカ派ではないハト派的な政策をとる」勢力。語弊がありますが、単純化していうと、「改革はするけど戦争はしない」という勢力が存在しない。そこを目指す人がいるんだったら、手を挙げましょうというキャンペーンを始めました。今、市民の間でそういう議論していきましょう、というのが私が今やっているキャンペーンです。
独裁国家への第一段階は、政権によるメディアへの圧力と懐柔。第二段階は、メディア側の自粛と政権へのすり寄り。第三段階は、非常に重要なニュースが、報じられないこと。そして、現在日本はその最終段階で、メディアが“自粛していることをついに意識することすらできなくなっている”というところまで来ており、最終的には国民が、“権力側の都合の良い情報で頭の中が洗脳され”、選挙で間違った情報に基づき投票する事で独裁が誕生すると考えておられるようです。古賀氏は、それを肌で感じているからこそ、こうして声を上げているのだと思います。
最後に古賀氏が進めているフォーラム4というキャンペーンが紹介されています。無党派層の受け皿になるような「改革はするけど戦争はしない」という勢力を創り出して行くキャンペーンのようです。こちらから賛同できます。