安藤裕氏
はじめに
インボイス制度の導入が10月から予定されている。インボイス制度の問題点は、最近多くの有識者が指摘し、かなり理解が広がってきた。
インボイス制度とは、消費税の計算方法が一部変更になる制度変更である。その実態は「単なる増税」であり、しかも力の弱いもの、所得の少ないものを狙い撃ちにした増税だ。
しかし、インボイスの話をする前に、そもそも消費税という税金がどれほど欺瞞に満ちているかを知る必要がある。政府は消費税の本質やその使途についても国民にウソを拡散し、だまし続けている。
私は、インボイス導入をきっかけにして欺瞞に満ちた消費税の本質を多くの国民に知ってもらいたいと思い、インボイス反対の広報活動を行っている。
そもそも消費税とはどういう税か
そもそも消費税とはどういう税金なのか。
財務省のホームページによると
「消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します」(国税庁ホームページ消費税のしくみ)
と書いてあり、子ども向けの税のパンフレットでも
「消費税 商品の販売やサービスの提供にかかる税金で、消費者が負担します。」(国税庁税の学習コーナー租税教育用教材小学生用)
と記載してある。
政府からこのように教えられているので、
広く国民も「消費税は消費者が買い物をするたびに負担している。事業者はその消費税を預かって税務署に納税している」と考えている。
「商品などの価格に上乗せされた消費税と地方消費税分は、最終的に消費者が負担し、納税義務者である事業者が納めます。(消費税のしくみ)」とあるとおり、
消費税は、税の負担者と納税者が異なる「間接税」の一種であると財務省は分類している。
消費税は間接税ではない
ところで、消費税は本当に税の負担者と納税者が異なる「間接税」なのだろうか。
消費税法の条文では税の負担者や納税義務者は
下記のとおり規定されている。
第四条 国内において事業者が行つた資産の譲渡等
(中略) には、この法律により、消費税を課する。
第五条 事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等
(中略) につき、この法律により、消費税を納める義務がある。
法律を読む限り、税の負担者は事業者であり納税義務者も事業者である。消費税法の条文には、消費者が納税義務者であるとは書いていない。
そもそも消費税法には、消費者という言葉自体が出てこないのだ。
これを同じく間接税と分類されている入湯税と比較してみよう。
入湯税は温泉に入る時に課税される税金である。入湯税の規定は下記のようになっている。
地方税法第七百一条 鉱泉浴場所在の市町村は、
(中略) 鉱泉浴場における入湯に対し、入湯客に入湯税を課するものとする。
地方税法第七百一条の三 入湯税の徴収については、特別徴収の方法によらなければならない。
(特別徴収とは、役所に代わって事業者が税を徴収することをいう。役所の徴税事務を事業者が代行するのだ。)
この条文を見ても明らかな通り、入湯税は税の負担者は入湯客であり、納税義務者は事業者。つまり間接税である。
しかし、消費税は法律を読むと直接税であるとしか読み取れない。
消費税は事業者の行う課税資産の譲渡等(要するに売上)に課税され、事業者が納税義務を負う。負担者は消費者であるとは一言も書いていないのだ。
宅配ドライバーのほとんどの方が個人事業主、フリーランスだそうです。軽貨物ユニオンによると、売り上げからガソリン代、保険代、駐車場代、修理代などの経費を引くと所得は年間約200万円、これに10月からのインボイスが始まると、緩和措置の3年間は10万円の増税、その後は25万円の増税になるそうです。25万円の増税は、半月タダ働きに相当するそうです。契約更新を条件にインボイスを強制されているようです。
森永卓郎先生の動画5:35あたりから「(政府の進めてきた)自由な働き方改革のゴールはどこにあるかというと、いつでもクビにできる社会にしましょ、ということ。」「岸田総理はそれをゴールまで持って行こうとしていると私は思いますよ。」「同じ仕事をしていて正規と非正規では時給が2倍違う国は私ひとっつも知らないです、日本以外。」
不安定な環境に置かれ、インボイスという増税で廃業にまで追いやられる個人事業主の、その象徴のようなドライバーさん達です。このままだと、2023年までに物流は3割以上ストップすると言われています。
企業にとっても、個人事業主にとってもデメリットしかない「インボイス制度」を協力してやめさせることが、国民にとって一番の解決策ではないですか。まだ潰せる。