注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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種子法廃止が導く危険な未来
転載元より抜粋)
長周新聞 2017/5/10
北朝鮮へのアメリカの軍事挑発や森友学園騒動の陰に隠れるようにして、安倍政府は国民が納得のいく論議もしないまま密かに今国会で「主要農作物種子法」(種子法)の廃止を強行した。(中略)
「種子法」は1952年に制定された。都道府県にコメ、麦、大豆など主要な穀物の原種の生産と普及を義務づけ、優良な種子の品質を確保し安定供給する役割をはたすことを目的とした。(中略) 戦後の食料難のなかから立ち上がり国民の食料自給に向けた農業者らの奮闘努力もあり、60年代には食料の約70~80%を自給することができるようになった。とくに主食であるコメは100%の国内自給を達成したが、これも「種子法」の存在が大きな役割をはたした。(中略)
現場は、同法律にもとづいて育種をし、種子の価格や品質を維持してきた。ところが法律の廃止で公的機関が優良品種を生産者に届ける責任がなくなる。(中略)日本ではコメ・麦・大豆は種子法によって安定供給が担保・維持され、生産、普及されてきた。
(中略)安倍政府は種子法廃止ありきで突き進み、廃止後のコメなどの種子開発や生産、管理についてどうするのかの論議も検討もなく、むろん現場への説明もしていないという無謀さである。
その背景として、専門家はアメリカのモンサント社の狙いを指摘している。(中略) 種子法の廃止で、専門家は日本もアメリカのように「公的育種、種子事業が将来的に国内大手、巨大多国籍企業の種子ビジネスに置きかわる恐れがある。種子をモンサントなど多国籍企業が狙っている」と指摘している。
すでにモンサント社は2011年に日本政府に対して同社の一代限りの種子を使って、日本の農場でも遺伝子組み換え作物を栽培させろ、という要望をつきつけてきている。
(中略)世界で栽培される遺伝子組み換え作物の9割は、モンサント社の技術によるものだといわれている。(中略) これらの遺伝子組み換え食品の特徴は除草剤耐性(全体の71%)、そして殺虫性(28%)である。モンサント社が開発した遺伝子組み換え作物に、ラウンドアップ耐性という性質のあるものがある。これは、ラウンドアップというモンサント社の農薬(除草剤)に抵抗力を持たせたものである。また、殺虫性とは作物自体に殺虫能力をもたせたもので、その作物を害虫がかじると死んでしまう。
モンサントのいい分は、使用する農薬(除草剤)の種類と回数を減らすことができ、人件費等のコストダウンが可能になるというものであった。しかし、実際には除草剤の使用量は逆に増えた。それは除草剤をかけてもなかなか枯れない雑草が新たに出現して、年年急速に広まっているからである。(中略)除草剤耐性の遺伝子組み換えで雑草にも除草剤耐性がついてしまい、除草剤が効かなくなったように、害虫抵抗性遺伝子組み換えの場合でも効かない害虫が出現している。
(中略)アメリカで生産されている大豆の約八五%は、モンサント社の除草剤「ラウンドアップ」に耐えられるよう遺伝子操作を施したものである。モンサント社が遺伝子操作して開発した遺伝子組み換え食品は、モンサント社がつくる除草剤にだけ効果があるので農家はモンサント社の除草剤を使う以外に選択肢はない。ラウンドアップは、モンサント社がつくった遺伝子組み換え農作物以外の草をすべて枯らしてしまう強力な除草剤=農薬である。その強力な農薬が散布された農作物の安全性についても世界的な問題になっている。
そして農薬という毒性とともに、遺伝子組み換えという未知のリスクが問題になっている。(中略) 操作された遺伝子が何をもたらすか不明なまま、その遺伝子が自然の中で広まっているのが現状である。
いったんつくられてしまった遺伝子組み換え作物は自然界の中で従来の作物とも交配をくり返していく。もし、いったん遺伝子組み換えトウモロコシを植えてしまえば、従来のトウモロコシにもその遺伝子組み換えのDNAを持った花粉がついて、交配していき、それ以前のトウモロコシとは違ったものになり、自然の生態系を破壊していく危険性が高い。(中略)
(中略)モンサント社と農家が交わす契約の規定によると、同社が販売する種から採れた遺伝子組み換え作物の種を、農家が翌シーズン用に保存することは契約違反にあたる。だから農家は、毎年毎年モンサント社から種子を買わなければならない。昔から続いてきた伝統的な農業の慣行は許されない。
(中略)すでに世界の6大遺伝子組み換え多国籍企業は世界の種子市場の約70%を握っている。同時に自由貿易交渉などを通じて、農民が種子を保存して、翌年にそれで耕作する長年おこなってきた伝統的農業を禁止し、種子企業から種子を買わなければならないとする法律の制定を多くの国に強いている。古来から続く農の営みを断ち切り、一部の多国籍企業の利益に変えていくことで社会全体が根底から変えられていくことに警鐘が鳴らされている。
遺伝子組み換え企業は、遺伝子組み換え作物こそが世界の飢餓を救うものだと宣伝している。だが現実には、遺伝子組み換え作物では飢餓を救うことはできない。遺伝子組み換えは高額な農薬や化学肥料を必要とする農業であるため、世界のすべての農民が実施することは不可能だからである。
実際に遺伝子組み換えが導入された地域では、土地の集中が生まれ、多くの小農民が土地を失い、飢餓人口がつくり出されている。遺伝子組み換えの導入により、大型機械を使って大規模農業ができる農業になる。小数の資本力を持った農家は利益を得るが、多くの農民は土地を失い、失業者の群れに投げ込まれる。
TPP(環太平洋経済連携協定)の批准を日本の安倍政府は12カ国中唯一強行したが、TPPをめぐる論議のなかで、アメリカのモンサント社など多国籍企業の狙いはすでにNAFTA(北米自由貿易協定、1991年締結、94年発効)で実証されていると指摘されてきた。
NAFTAはメキシコの農業に巨大な影響を与え、メキシコのいわば命の食とでもいうべきトウモロコシ生産を壊滅的に破壊した。(中略)1991年のNAFTA締結前には100%の自給率を誇っていたメキシコ国産トウモロコシは、2005年には67%にまで落ち込んだ。
アメリカからの輸入トウモロコシが激増し、さらにトルティーヤを加工・販売するアメリカ資本の食品企業が参入した。
地域に密着していた従来の中小のトルティーヤの店はことごとく潰れ、メキシコのトウモロコシ農家は壊滅した。
NAFTA発効前は年間約20万㌧に過ぎなかったメキシコのトウモロコシ輸入量は、20年後には約950万㌧に増加。その9割近くが米国産の遺伝子組み換えトウモロコシである。米国でこれによって潤ったのはモンサント社のようなグローバル大企業のみだった。
(中略)また、綿花の一大産地のインドでは2000年代初頭に「遺伝子組み換えワタ」の栽培が始まった。「害虫に強く収量が増える」として、今やインドのワタの栽培面積の九割を占めている。ところが、この種子や農薬の購入に多額の借金を抱えた農民があいついで自殺している。
(中略)いったん遺伝子組み換えワタの栽培が定着すると、農家は在来種の栽培に戻ることが極めて困難になる。それは、遺伝子組み換えワタ種子の供給元が現地の種苗会社を買収して、遺伝子組み換えワタとそれに適した農薬だけを扱うようになったからだ。
(中略) モンサント社の関連会社が販売する遺伝子組み換えワタの種子の価格は、在来種よりも25%高い。しかも州によっては遺伝子組み換えワタの種子しか買うことができない。干ばつや耐性害虫の出現、収量の低下も起こり、収量が伸びずに販売価格も低迷するなか、農家は借金の返済ができなくなっていく。インド国家犯罪記録局の調査では、自殺する農家は02年から10年間で17万人にのぼるとされている。借金の帳消し目的が大半と見られている。
モンサント社は米国市場を席巻した後、隣国のメキシコを次の標的とし、その後中南米をはじめアジアなど世界各国に拡大していった。そしてTPPによってEUとともに最後の閉鎖市場となっている日本を狙ってきた。(中略)2010年10月には、日本企業である住友化学が、モンサント社と遺伝子組み換え製品において強い提携関係に入った。このGMO種子の世界支配が完了すれば、種子と農薬という農業の必須資材はモンサント社とカーギルによって事実上握られることになってしまう。わずか1社、ないしはそれと強い提携関係にある数社が世界農業を裏で支配することになる。
(中略)安倍政府の種子法廃止は、こうした一握りの巨大多国籍企業が日本の農業、とくに主食であるコメや麦、大豆など主要穀物をも牛耳ることを容認するものである。食料生産は危機に瀕し、食料自給は崩壊し、胃袋を丸ごとアメリカの多国籍企業に差し出す売国政策にほかならない。
編注)画像はシャンティ・フーラが挿入したものです。
自然の摂理に反する遺伝子組み換え
「種子法」は1952年に制定された。都道府県にコメ、麦、大豆など主要な穀物の原種の生産と普及を義務づけ、優良な種子の品質を確保し安定供給する役割をはたすことを目的とした。(中略) 戦後の食料難のなかから立ち上がり国民の食料自給に向けた農業者らの奮闘努力もあり、60年代には食料の約70~80%を自給することができるようになった。とくに主食であるコメは100%の国内自給を達成したが、これも「種子法」の存在が大きな役割をはたした。(中略)
現場は、同法律にもとづいて育種をし、種子の価格や品質を維持してきた。ところが法律の廃止で公的機関が優良品種を生産者に届ける責任がなくなる。(中略)日本ではコメ・麦・大豆は種子法によって安定供給が担保・維持され、生産、普及されてきた。
(中略)安倍政府は種子法廃止ありきで突き進み、廃止後のコメなどの種子開発や生産、管理についてどうするのかの論議も検討もなく、むろん現場への説明もしていないという無謀さである。
その背景として、専門家はアメリカのモンサント社の狙いを指摘している。(中略) 種子法の廃止で、専門家は日本もアメリカのように「公的育種、種子事業が将来的に国内大手、巨大多国籍企業の種子ビジネスに置きかわる恐れがある。種子をモンサントなど多国籍企業が狙っている」と指摘している。
すでにモンサント社は2011年に日本政府に対して同社の一代限りの種子を使って、日本の農場でも遺伝子組み換え作物を栽培させろ、という要望をつきつけてきている。
遺伝子組み換え作物 予測のつかない危険性
(中略)世界で栽培される遺伝子組み換え作物の9割は、モンサント社の技術によるものだといわれている。(中略) これらの遺伝子組み換え食品の特徴は除草剤耐性(全体の71%)、そして殺虫性(28%)である。モンサント社が開発した遺伝子組み換え作物に、ラウンドアップ耐性という性質のあるものがある。これは、ラウンドアップというモンサント社の農薬(除草剤)に抵抗力を持たせたものである。また、殺虫性とは作物自体に殺虫能力をもたせたもので、その作物を害虫がかじると死んでしまう。
モンサントのいい分は、使用する農薬(除草剤)の種類と回数を減らすことができ、人件費等のコストダウンが可能になるというものであった。しかし、実際には除草剤の使用量は逆に増えた。それは除草剤をかけてもなかなか枯れない雑草が新たに出現して、年年急速に広まっているからである。(中略)除草剤耐性の遺伝子組み換えで雑草にも除草剤耐性がついてしまい、除草剤が効かなくなったように、害虫抵抗性遺伝子組み換えの場合でも効かない害虫が出現している。
(中略)アメリカで生産されている大豆の約八五%は、モンサント社の除草剤「ラウンドアップ」に耐えられるよう遺伝子操作を施したものである。モンサント社が遺伝子操作して開発した遺伝子組み換え食品は、モンサント社がつくる除草剤にだけ効果があるので農家はモンサント社の除草剤を使う以外に選択肢はない。ラウンドアップは、モンサント社がつくった遺伝子組み換え農作物以外の草をすべて枯らしてしまう強力な除草剤=農薬である。その強力な農薬が散布された農作物の安全性についても世界的な問題になっている。
そして農薬という毒性とともに、遺伝子組み換えという未知のリスクが問題になっている。(中略) 操作された遺伝子が何をもたらすか不明なまま、その遺伝子が自然の中で広まっているのが現状である。
いったんつくられてしまった遺伝子組み換え作物は自然界の中で従来の作物とも交配をくり返していく。もし、いったん遺伝子組み換えトウモロコシを植えてしまえば、従来のトウモロコシにもその遺伝子組み換えのDNAを持った花粉がついて、交配していき、それ以前のトウモロコシとは違ったものになり、自然の生態系を破壊していく危険性が高い。(中略)
GM作物栽培を要求 種子買わなければ提訴
(中略)モンサント社と農家が交わす契約の規定によると、同社が販売する種から採れた遺伝子組み換え作物の種を、農家が翌シーズン用に保存することは契約違反にあたる。だから農家は、毎年毎年モンサント社から種子を買わなければならない。昔から続いてきた伝統的な農業の慣行は許されない。
(中略)すでに世界の6大遺伝子組み換え多国籍企業は世界の種子市場の約70%を握っている。同時に自由貿易交渉などを通じて、農民が種子を保存して、翌年にそれで耕作する長年おこなってきた伝統的農業を禁止し、種子企業から種子を買わなければならないとする法律の制定を多くの国に強いている。古来から続く農の営みを断ち切り、一部の多国籍企業の利益に変えていくことで社会全体が根底から変えられていくことに警鐘が鳴らされている。
遺伝子組み換え企業は、遺伝子組み換え作物こそが世界の飢餓を救うものだと宣伝している。だが現実には、遺伝子組み換え作物では飢餓を救うことはできない。遺伝子組み換えは高額な農薬や化学肥料を必要とする農業であるため、世界のすべての農民が実施することは不可能だからである。
実際に遺伝子組み換えが導入された地域では、土地の集中が生まれ、多くの小農民が土地を失い、飢餓人口がつくり出されている。遺伝子組み換えの導入により、大型機械を使って大規模農業ができる農業になる。小数の資本力を持った農家は利益を得るが、多くの農民は土地を失い、失業者の群れに投げ込まれる。
自殺する農民が急増 メキシコやインドでは
TPP(環太平洋経済連携協定)の批准を日本の安倍政府は12カ国中唯一強行したが、TPPをめぐる論議のなかで、アメリカのモンサント社など多国籍企業の狙いはすでにNAFTA(北米自由貿易協定、1991年締結、94年発効)で実証されていると指摘されてきた。
NAFTAはメキシコの農業に巨大な影響を与え、メキシコのいわば命の食とでもいうべきトウモロコシ生産を壊滅的に破壊した。(中略)1991年のNAFTA締結前には100%の自給率を誇っていたメキシコ国産トウモロコシは、2005年には67%にまで落ち込んだ。
アメリカからの輸入トウモロコシが激増し、さらにトルティーヤを加工・販売するアメリカ資本の食品企業が参入した。
地域に密着していた従来の中小のトルティーヤの店はことごとく潰れ、メキシコのトウモロコシ農家は壊滅した。
NAFTA発効前は年間約20万㌧に過ぎなかったメキシコのトウモロコシ輸入量は、20年後には約950万㌧に増加。その9割近くが米国産の遺伝子組み換えトウモロコシである。米国でこれによって潤ったのはモンサント社のようなグローバル大企業のみだった。
(中略)また、綿花の一大産地のインドでは2000年代初頭に「遺伝子組み換えワタ」の栽培が始まった。「害虫に強く収量が増える」として、今やインドのワタの栽培面積の九割を占めている。ところが、この種子や農薬の購入に多額の借金を抱えた農民があいついで自殺している。
(中略)いったん遺伝子組み換えワタの栽培が定着すると、農家は在来種の栽培に戻ることが極めて困難になる。それは、遺伝子組み換えワタ種子の供給元が現地の種苗会社を買収して、遺伝子組み換えワタとそれに適した農薬だけを扱うようになったからだ。
(中略) モンサント社の関連会社が販売する遺伝子組み換えワタの種子の価格は、在来種よりも25%高い。しかも州によっては遺伝子組み換えワタの種子しか買うことができない。干ばつや耐性害虫の出現、収量の低下も起こり、収量が伸びずに販売価格も低迷するなか、農家は借金の返済ができなくなっていく。インド国家犯罪記録局の調査では、自殺する農家は02年から10年間で17万人にのぼるとされている。借金の帳消し目的が大半と見られている。
モンサント社は米国市場を席巻した後、隣国のメキシコを次の標的とし、その後中南米をはじめアジアなど世界各国に拡大していった。そしてTPPによってEUとともに最後の閉鎖市場となっている日本を狙ってきた。(中略)2010年10月には、日本企業である住友化学が、モンサント社と遺伝子組み換え製品において強い提携関係に入った。このGMO種子の世界支配が完了すれば、種子と農薬という農業の必須資材はモンサント社とカーギルによって事実上握られることになってしまう。わずか1社、ないしはそれと強い提携関係にある数社が世界農業を裏で支配することになる。
(中略)安倍政府の種子法廃止は、こうした一握りの巨大多国籍企業が日本の農業、とくに主食であるコメや麦、大豆など主要穀物をも牛耳ることを容認するものである。食料生産は危機に瀕し、食料自給は崩壊し、胃袋を丸ごとアメリカの多国籍企業に差し出す売国政策にほかならない。
編注)画像はシャンティ・フーラが挿入したものです。
元記事はかなりの長文なので、読みやすいよう大幅に圧縮させて頂きました。今回は種子法廃止の危険性がとても分かりやすく書かれています。これは日本に住む全ての人々の身に降りかかる重大な問題であるため、是非一読されて事の本質を理解して頂ければと思います。
記事の中で、遺伝子組み換え作物によって農民が苦しめられていることに触れられています。これついては、こちらの動画「失敗の十年―GMコーンに騙された農民たち」を強くお勧めします。騙された農民達による証言からは、彼らの味わってきた苦しみがありありと伝わってきます。
モンサントのHPを開くと、そこには"倫理的行動"、"持続可能な農業"、"人権重視"、"安全と健康に配慮"といった言葉が記されています。一体どんな面がコレを書いたのでしょうか。よくもまあこんな嘘八百を堂々と・・心理学的には非常に興味深い研究対象かもしれません。嘘つき大会を開けば、我らがあべぴょんと中々いい勝負が出来そうです。