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ダイレクトデモクラシーで市民はここまで社会を動かせる!!
エノ・シュミット氏
ドイツ人のシュミット氏は、スイスに住み、国民投票のシステムを知るにつけ”ドイツは民主主義が無い国だ!”と実感します。国民投票で決められたことについて、自分たちでつくって決めたことだから"守る!"という意識の違いに気づきます。たとえば歩道を自転車で走ってはいけないと決められたことも、ドイツではそうした一方的に決められたことを守る人はいませんが、スイスでは自分たちでつくって決めたことだからとちゃんと守ります。
そしてシュミット氏は、史上初となるベーシックインカムの国民投票を実現します。結果としてベーシックインカムの発議は通りませんでしたが、これをきっかけに世界的な議論が巻き起こり、各地で導入の機運が高まることとなり、 アーティストでもあるシュミット氏のつくったベーシックインカムを紹介するムービーは20か国、200万人に視聴されました。
「国民投票は、その議案について対話することが大切です。一方的な結果を与えられるだけでは意味がありません。自分で考えて、決断することが大事であり、結果としてその議案が通らなくても、ハッピールーザー(幸福な敗者)なのです」
ブルーノ・カウフマン氏
スイス人のカウフマン氏はスイスを離れスウェーデンに住んでいます。スイスの国民投票は海外に暮らしていても投票ができます。海外から投票する人は70万人いるそうです。そうした中で、スウェーデンでは国民投票のシステムが無く、実情に沿っていない改変すべき法律等を変えたいと国民がおもっても、国民発議の場がないという実態を痛感します。そこでカウフマン氏は市議会議員となり、スウェーデンの人々にスイスのダイレクトデモクラシーを紹介しました。そしてついには、スウェーデンにおいて国民投票の道が開かれることとなったのです。
そして現在、ダイレクトデモクラシーの伝道師として、ダイレクトデモクラシーを様々な国に紹介しています。今もダイレクトデモクラシーを紹介して20ヶ国を廻る200日のワールドツアーを行っている最中とのことです。世界のダイレクトデモクラシーの運動をつなぐグローバル・フォーラムも主催しています。
「国民投票は、すぐに結果を出すということが目的ではありません。紆余曲折しながら少しずつでも正しい方向に進んでいるということが大切です。」
「国のルールとは、国民がつくっていくものです。ダイレクトデモクラシーは、話し合いで解決していくという有効なツールであり、国民の願いを叶えるための国民参加のインフラです。もしこの国民主権が無いとしたならば、闘って勝ち取るべきものです。」
今回、カウフマン氏が著し世界各国語に翻訳されている『現代のダイレクトデモクラシーへのグローバル・パスポート』の日本語版も完成しました。(手のひら大で50ページ)
各国におけるダイレクトデモクラシー事情
◯スイスのダイレクトデモクラシー
・スイスでは、国民投票が自治体、州、連邦といった様々なレベルで年に4回行われます。
・国民は、議案を連邦政府に提出してから18カ月以内に、人口の1%、10万人の署名を集めれば、憲法改正の国民投票を発議(イニシャチブ)することができます。
・1891年以来、国民投票はおよそ250回行われ、100回ほど憲法が改正されています。
・法律は、国民が直接判断できるように、誰にでもわかるやさしい言葉で書かれています。
・メディア・マスコミの役割は、国民が適切な判断ができるように、議案の情報を伝えることです。政治家個人の行動や人間性、ましてやスキャンダルが話題になることは、ほとんどありません。
・スイスは1人あたりのGDPが世界2位で貧困率も失業率も低く、「ハイジの国」というイメージを超えた、世界でもっとも先進的で豊かな国の一つなのです。
◯イタリア”五つ星運動”におけるダイレクトデモクラシー
・五つ星運動は、スイスのダイレクトデモクラシーを手本として目指しています。
・メディアは五つ星運動を「ポピュリズム(大衆迎合主義)」と揶揄しますが、国民からかけ離れて腐敗の一途をたどる既存政党に政治を任せるな!とうったえる”五つ星運動”をグローバリズムにどっぷり漬かったメディアが好意的に取り上げるわけがありません。五つ星運動は、ダイレクトデモクラシーを成し得た時点で、その意義を果たしたということで解散するとしています。
◯スウェーデンのダイレクトデモクラシー
・カウフマン氏の尽力もあり、スウェーデンでは2011年から国民投票が行われています。
・すでに150回の国民投票が実施されています。
◯韓国のダイレクトデモクラシー
・韓国の大統領は、憲法に直接民主条項を入れたいといっています。
◯台湾のダイレクトデモクラシー
・カウフマン氏が台湾にダイレクトデモクラシーを紹介して15年になります。
・台湾の憲法には直接民主条項が盛り込まれているが、実施法がなかった。でも、ついこの間の2018年1月にそれができて、イニシアチブが始まりました。ある部分、スイスより進んでいるとのこと。
・そして、すでに15個の議案が国民投票にかけられました。原発とか食の安全とか。
・台湾では人口の3%の署名で市民イニシャチブ(発議)となり国民投票にかけられます。
※台湾ではダイレクトデモクラシーが紹介されてから国民投票に至るまで15年かかったという話を受けて、ある方が「日本は15年よりもっと早く実現できればいいのですが・・・」と発言されました。
それに対してカウフマン氏は、「時間は大事ではありません。結果として、15年より短いかもしれないし、長いかもしれない。しかし大切なのは、その国の事情に沿った形で、ダイレクトデモクラシーの方向へと進むように市民が対話を重ねることです。そして正しい方向へ一歩一歩着実に歩むことが大切なので、時間にとらわれないで下さい」と。
それに対してカウフマン氏は、「時間は大事ではありません。結果として、15年より短いかもしれないし、長いかもしれない。しかし大切なのは、その国の事情に沿った形で、ダイレクトデモクラシーの方向へと進むように市民が対話を重ねることです。そして正しい方向へ一歩一歩着実に歩むことが大切なので、時間にとらわれないで下さい」と。
スイスがダイレクトデモクラシーの国であるということは、五つ星運動のリカルド・フラカーロ氏の話で知ってはいましたが、今回お二人の話をいろいろとうかがい、とても感嘆しました。
世界にはダイレクトデモクラシーをすでに実施している国、今まさに取り入れようとしている国など、すでに多くの国がいろいろな試みで民主主義を先行させているのです。
スイスをみてみると、スイス国民は10万人の署名を集めることで、憲法改正の国民投票を発議することができます。そして行政は国民が下した決定に従わなければならないので、制度上、民意を無視して政府が横暴な政策を推し進めることができません。一見、当たり前な民主主義の話のようですが、今の日本が直面しているのはまさにこの「民意を無視して政府が横暴な政策を推し進めている」ことだ!と思い知らされます。
また、台湾が今や最先端の直接民主社会になっているという話は初耳で驚きました。台湾の総統が、世界最先端の直接民主法を導入して、あっと言う間に台湾は最先端の直接民主社会になったとのことです。今年の一月に直接民主条項の実施法ができて、すでに15ものイニシャチブ(発議)がレファレンダム(国民投票)にかけられたそうです。政治のトップがまともだと、まともな社会になるということがわかる心強い話です。
シュミット氏は語ります。
「ダイレクトデモクラシーで投票するということは、白黒を決める闘いではありません。普通の人たちから生まれたアイデアを公衆の議論にして、新しい規則を憲法の中に盛り込み、社会に新しい意義をつくりだして皆で深めていくのが民主主義です。社会に属する人たちのアイデアで社会を発展させる、これがスイスの民主主義のプロセスです。政府じゃなく市民が本当に主権者なのです。」
まさしく民主主義の姿です。日本が属国であろうとも、権力を私物化する政権がなかなか退陣しなくとも、そして国民が腐敗したメディアにいかに洗脳されていようとも、現時点を出発点として、ダイレクトデモクラシーへの道筋を開き、国民が日本丸を操舵する未来へと向かうことはできるはずです。もう現政権による改憲はありえないでしょうから、本来の、直接民主条項を憲法に反映させるような話をしてもらいたいものです。
カウフマン氏は語ります。
「スイスやスウェーデンを参考にするのもよいですが、今年から国民投票が始まった台湾を見ていればおもしろいはずです。どう変わっていくのか!わかるからです。そして"どうしてできない?"を"どうやったらできるか!"に切り換えることです。サポートする人はいます。私たちもそうです。」
イタリアにて五つ星運動が第1党となり、そしてこのタイミングでダイレクトデモクラシーの伝道師が来日されたのは、"国民が主権者"であることへの"目覚めの合図"ともおもわれます。