『スロー・イズ・ビューティフル』~辻信一氏講演会~

 「スローライフ」「GNH(国民総幸福量)」などの環境=文化運動を提唱する文化人類学者の辻信一氏の講演会に参加してきました。
 E.F.シューマッハーの「スモール・イズ・ビューティフル」にヒントを得た「スロー・イズ・ビューティフル」を掲げ、スロー・スモール・シンプルの3Sを提唱する辻氏は、自然と共生する"本当の豊かさ"を、そして"幸せの経済"についてお話してくださいました。まるで、"懐かしい未来"を見せてくれるかのように。

 ある方が、「様々な問題を未解決なままにどんどん進んでしまっているグローバリゼーションの流れは本当に終焉するのでしょうか?」と質問しました。それに対して辻氏は、「わからない!というのが正直なところです。楽観的とよくいわれる私ですが、すでに取り返しのつかない事態になっているのではないか!との悲観的な側面は十分に認識しています。しかし、世界を旅してみて、ローカリゼーションに基づくような"幸せの経済"を試みている明るい兆しを世界各地でみてきた!というのも紛れもない事実なのです。証は沢山あります!」と。

 光を観ている"幸せの証人"です。
(しんしん丸)
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『スロー・イズ・ビューティフル』
1.グローバルからローカルへ


グローバリズムの波が押し寄せて、まず失われていくのが衣食住の"衣"とのことです。辻氏は毎年ブータンに行き、その変化を見てきました。そして数年前から、失われてしまった棉を栽培するお手伝いをしています。探し求めたところ、固定種の棉の種が奥地の村にて連綿と受け継がれていたのです。かつてブータンでは、娘が嫁に行く際には旦那さんとなる人に着物を織って贈り物としていたそうです。そのために親は娘の嫁入りに備えて、棉を何年にもわたって栽培していたそうです。そうした棉を栽培する風習が、まだ奥地の村で残っていたのです。そして糸を紡いだり機を織ったりする技を持った80代のお年寄りもいたのです。こうして、伝承の糸を若い人たちに何とかつなぐことができました。

2.「幸せの経済学」へ

画像の出典:ヘレナ・ノーバック=ホッジ「ラダック 懐かしい未来」山と渓谷社より

迅速なスピードで世界的に広がった近代化の波は、30年前まで外国人立入禁止地域だったヒマラヤの辺境ラダックにも押し寄せていました。西欧の消費文化はあっという間に彼らの伝統的な生活スタイルを一変させ、自然との関わりを切り離さし、人との繋がりを希薄化させることにより彼らのアイデンティティーや伝統文化の誇りまでも奪っていきました。こうした消費文化に翻弄される人々の姿をもとに、世界中の環境活動家たちがグローバリゼーションの負の側面を指摘し、本当の豊かさとは何か?を説いていきます。』(映画"幸せの経済学"より)

3.Retrofuturism(懐かしい未来)

画像:辻信一氏より提供

「レトロフューチャリズム(懐かしい未来)」

この写真は、辻氏が旅先のエストニアで出会った壁の落書きです。
レトロな未来が伝わってくるかのようです。

・ちなみに、テレ!はエストニア語の"こんにちは"です。。
4.ローカル化の時代へ

出典:2017/02/14山陽新聞、山陽時評より

京都大学こころの未来研究センターの広井良典教授は、「グローバル化の終わり」には二つの解釈があるといいます。

強い「強大・成長」志向、利潤極大化、ナショナリズムとセットになったままの「脱グローバル」・・・トランプ現象、ブレグジットなど
環境、持続可能性、格差是正、ローカルな共生を志向するローカリゼーション

今後は、後者のローカル化(ローカリゼーション)が進んでいく事態を迎えると考えています(広井氏)

・ディープステートと戦いつつも、アメリカファーストを目指しているトランプ大統領ですが、背後で指南しているキッシンジャー博士が、この後者のローカリゼーションを基とした全面ディスクロージャーを志向しているとよいのですが。

5.カール・ポランニー「経済における三つの要素」


かつて経済は社会の中に埋め込まれていた

今では経済の中に社会が飲み込まれている

問題は経済を社会の中にどう埋め込み直すか

・支配欲にまみれたものが政治や経済の中枢に居座っていると、とんでもないことになっていってしまう!ということを今、私たちは痛感しています。

6.E.F.シューマッハ「スモール・イズ・ビューティフル」


技術は「より大きく、より多く、より速く」という一方向に向かって発展します。その技術が支配的になった社会は、大きすぎる・多すぎる・速すぎるという三つの過ぎるに代表される「過剰」な社会となります。

スロー・スモール・シンプル

・スマートな、サスティナブルな、そして幸せな社会となりますね。

7.サティシュ・クマール


日本でも岐阜の石徹白(いとしろ)では、地域住民が小水力発電を建設して、地域の活性化に役立てています。消滅の危機に直面していた集落は、今や多くの若者が移り住み、その子供たちで小学校も賑わいを取り戻しつつあります。再生可能エネルギーの自治からはじまる、地域の"幸せな経済"の復興の試みの一例といえましょう。ローカルな生活に豊かさを感じる若者が増えてきているのです。

 勝手にコーヒーブレイク!?


辻氏は戸塚のお寺の敷地にてカフェもされています。


ちょうどランチに行ってみたときに、辻氏がいらっしゃったので時事ブログへの記事掲載の許可をいただきました。


辻氏が教鞭をとる大学は戸塚にあり、近場に田んぼを借りて学生と一緒にお米を栽培しているとのことです。
心を病んでいる学生がとても多いので、ともかく田んぼをやろう!とすすめているそうです。良いのか悪いのかはわからないが、そこからはじめるのが一番とおもっているとのことです。
そして収穫したら、最後に餅つきをするそうです。楽しそう!!

まさに、"世界一幸せな国"ブータンと日本をつないでいる"幸せの証人"です。


Writer

しんしん丸

2015年のシャンティ・フーラ主催の関東交流会にてお手伝いをさせていただきました。平安の花を愛でる、幸せ者の一人として。

想念と電磁波の海たる東京で、ナディーチャート風水の結界ある自宅に引きこもっています。といいながらもよく出歩く、5種です。
もちろん、いろいろと出かけるのはほぼシャンティ・フーラ絡みです。ですから出歩いてはいますが、出歩いてはいないのです・・・と、どこまでもシャンティ・フーラ的な7種です。


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