プラスティックを考える(後編)〜 プラスティックの処分は安全か?

 ざっと見回してもプラスティックではない商品を探す方が大変なほど、私たちの生活に入り込んだ軽くて、加工しやすく、腐りにくい物資。その恩恵を受けながら、同時に危険も指摘されてきました。
プラスティック製品の製造には「柔らかくするためや燃えにくくするためといった目的で」多くの添加剤が使われるそうです。これらの添加物が「環境ホルモン」と呼ばれ、生物を撹乱し続けます。
 さらにプラスティックの頭の痛い問題の一つが、マイクロプラスティックです。
以前に「In Deep」さんの、ペットボトルに含まれるマイクロプラスティックの記事を取り上げたことがありましたが、石油由来のプラスティックは基本的に分解されにくく、ほぼ永久的に地球上に残ります。劣化してバラバラの小さなマイクロプラスティックになり、空中でも地中でも海中でも生物に取り込まれ影響を与え続けます。化粧品や洗剤に含まれるマイクロビーズも排水を通して、海洋汚染になります。
 またプラスティックは、有害な化学物質を吸着しやすい性質があるそうです。現在は使用禁止されているようなPCBや農薬などを吸着し、高濃度化したものを魚などが誤食し、人にも取り込まれます。
これまでの公害問題を振り返ると、マイクロプラスティックの人体への悪影響が公式に認められる時は、すでに手遅れになった時でしょう。
 プラスティックの処分について、日本は焼却に舵を切り、焼却施設も増える見通しです。
日本の施設はダイオキシンが発生しないほどの高温、高機能の焼却施設だから安全という見解も見られます。
しかしプラごみによる環境破壊を追ってこられた「WONDERFUL WORLD」の山本節子氏は、ゴミ焼却による大気汚染に厳しい警鐘を鳴らしています。これまで途上国に押し付けてきた汚染と健康被害を有りのままに知った時、本当に焼却して良いと判断できるのか確答が出せません。
 山本氏は「プラごみは、埋め立てれば土壌汚染を、水に流せば水質汚染を(特にマイクロプラスチック)、そして燃やせば大気汚染をもたらし、人間にも動物にも深刻な影響をもたらすのはわかりきっていること」と述べ、プラ製品生産を早急に規制するしか手はないと結論されていました。
 一個人の取れる手段とは、、何とももどかしいことですが、やはり「使わない」ことから始まるのでしょうか。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

————————————————————————
マイクロプラスチック問題 洗顔料化粧品なども原因に
引用元)
(前略)
プラスチックそのものより、添加剤が問題です。添加剤の中の物質に、ペットボトルのふたなどに使われる『ノニルフェノール』があります。ノニルフェノールは、体内に入るとホルモンを分泌する器官に有害な影響を与える『環境ホルモン』の一種。アメリカの研究者の実験で、乳がん細胞の異常増殖を引き起こすことがわかっています。

 この物質のほかにも多くの有害な添加剤が使用されています。最近ヨーロッパで行われた調査の結果、男性の精子数が減少傾向にあると明らかにされていて、その原因の1つがプラスチックの添加剤だと疑われています」
(中略)
 石油を主原料とするプラスチックは、有害な化学物質を吸着しやすい性質がある。海水中には、現在は使用が禁止されている農薬や工業用油などの有害な化学物質が漂っていて、こうした有害な化学物質を吸着したマイクロプラスチックを、海の生物が摂取している
(中略)

「それだけではありません。洗顔料のスクラブや化粧品などに使用されるマイクロビーズも、そのまま下水道に流れていき、海に流入していきます。ポリウレタン製やメラミンフォームのスポンジやアクリルたわしも、使用するうちに削れて排水に流れていく。ポリエステルやナイロンなどの化繊の衣服を洗濯したときに発生する洗濯くずも、海のマイクロプラスチックの原因の1つです」(前出・高田教授)
(以下略)

————————————————————————
水田で使われたポリエチレン製の肥料カプセルが大量に海に流出している現実
(前略)  これは、「徐放性肥料カプセル(被覆肥料カプセル)」と言いまして、化学肥料をポリエチレンなどのプラスティックでコーティングしたものです。稲作では大量に利用されていますが、家庭菜園などでも使われています。

長年使用してきた徐放性肥料カプセルが、大量に水田の中にもたまっていて、これが田起こしされて表面に出てきて、水を張ったところに浮いている様子です。これらが水を抜いたり、雨でオーバーフローした時に川に出て、海に流出します

 生分解性の肥料カプセルも増えてはいますが、分解されない徐放性肥料カプセルは、さらに破片化が進み、目に見えないサイズとなり、マイクロプラスティック問題の一因となっていきます。環境省のレポートも出ていましたが、特に閉鎖的な水域では過去に使われていたPCBなどの有害物質を吸着して高濃度化し、それを小魚が誤食している現実も。



————————————————————————
配信元)

————————————————————————
増える自治体のプラごみ、どうする?

転載元)
(前略)
 アジアの途上国は、先進国から押し寄せるプラごみや電子ごみ(e-waste)による環境破壊、水質汚染、大気汚染に長年、苦しめられてきました。このような先進国→途上国の越境公害を防ぐため、バーゼル法(バーゼル条約)によって有害廃棄物の国境移動は原則禁じられています

しかし、先進国は、「リサイクル」を名目として、事実上有害廃棄物を途上国に処理させる戦略を展開したため、「豊かな国」の有害廃棄物は、処理コストが安く、環境法制がないに等しい途上国にどんどん流れて行ったのです。

 その増え続けるごみ処理のためとして、先進国はさらに、途上国に焼却炉を売り込み始めたことから、一般市民が反発し、各地で住民が焼却炉計画をつぶす事態となったのです。中国では、ストックホルム条約やバーゼル条約、水銀条約など汚染関連の情報を自国語で検索できるので(中国語は国連の公式言語)、「クリーン」「ダイオキシンが出ない」などというウソには騙されません。特に、子孫を大事にする中国人にとって、ダイオキシンを出すごみ焼却炉は許せない施設であり、反対運動も過激になります。
(中略)
大気汚染=殺人なのは、ロンドンのスモッグから四日市公害までよく知られた事実。これらの状況を背景に、アジア各国ではプラごみ及びプラごみ焼却への反発は高まる一方なので、今後、業界がどのような手を使おうと、アジアの国々が先進国のゴミを受け入れる可能性はありません

 したがって、事態がここまで切迫した今、日本でできるのはプラ製品の生産・流通・廃棄規制しかありません
 そこに手をつけないで、「処理施設のさらなる活用や整備」? ふざけるんじゃない。これ以上、焼却炉を増やして、日本人の健康を害する権利は行政にも事業者にもない。さっさと、プラ製品生産を規制するための手を打つしかないのです。対処が遅れれば遅れるほど事態は深刻になり、そのうち、先進国内でのババ抜きが始まることでしょう。
————————————————————————
プラごみもっと燃やせ―環境省
転載元)
 昨日の今日という感じですが、案の定、環境省はプラごみを「焼やして処理」するようです。それしか頭にない。
(中略)
 アジアの国々は、「環境汚染、健康被害」を恐れてプラごみを拒否しているというのに、日本では「燃やせ」なのは、市民の反応がないからでしょうね。
でも、プラごみは、埋め立てれば土壌汚染を、水に流せば水質汚染を(特にマイクロプラスチック)、そして燃やせば大気汚染をもたらし、人間にも動物にも深刻な影響をもたらすのはわかりきっていること。各国では、市民を巻き込んで大気汚染をなくす取り組みが実施されていますが、日本は、ね~(自虐的になるので、もう書くのもうんざりです)。
(中略)
サーマルリサイクルとは「熱利用」すればリサイクルという解釈で、これによってプラごみ焼却に伴う罪悪感やリスクなど存在しないことにしてしまったのです。その結果、国民の3分の1が何らかのアレルギーを持っているという恐ろしい事態になっていますが、その原因を追究する動きもほとんどない。

 これほど焼却処理に何の抵抗もない国だから、今回、行き場のなくなったプラごみ150万トンも、必ず焼却処理されるでしょう。各自治体はプラごみ焼却にもっと危機感を持ち、市民を教育しないと、状況はもっと悪化するはずです。
(以下略)

Comments are closed.