注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
削除された、たった一つのリツイートに対して損害賠償請求の訴えが起こされた
この訴訟は、2017年10月に橋下氏と維新議員の丸山穂高氏とがツイッター上でやりとりをし、それに関する第三者のツイートを、岩上氏が単純にリツイートした、そのことだけに対して、2017年12月27日に突然、橋下氏からの名誉毀損による損害賠償請求の訴状が届いたものでした。
事前に一切の抗議もなく、コミュニケーションもなく、突如100万円を請求された典型的なスラップ訴訟でした。
相手方へのダメージが目的のスラップ訴訟
スラップ訴訟では、かつて「元祖恫喝的訴訟」と言われた、武富士によるジャーナリスト寺澤有氏への名誉毀損裁判や、DHCによる弁護士澤藤統一郎氏への名誉毀損裁判が注目されましたが、寺澤氏によると、それがどんなに理不尽な訴えであっても「受けて立つだけで大変な時間と金、そして精神的コストがかかり、訴えられただけで持ち出しを強いられる」という苦痛を伴うもので、また職業として訴訟に携わっている弁護士の澤藤氏でさえ「ある日突然の高額請求の提訴は衝撃が大きかった」と述べておられます。スラップ訴訟の特徴は、何よりもこの大きな心理的衝撃の効果にあり、訴えられた側は、この衝撃故に思い悩むことになると言います。原告側にすれば、提訴しただけでほぼ目的を果たし、勝敗は関係ないのでしょう。
日本にはアメリカのように、権力や財力のある強者が弱者に対して恫喝し、威圧し、経済的、肉体的、精神的に疲弊させる目的で乱発する訴訟を禁ずる「反スラップ法」が無く、このような訴訟を防ぐ手立てがありません。
今回のスラップ訴訟の意義
IWJの岩上氏に襲いかかったこの訴訟は「すでに削除されたたったひとつのリツイート」に対する異常かつ理不尽なもので、それを容認する日本の法制度の欠陥を明らかにし、同時にSNS上の言論の自由への侵害を警告するものになります。
別の言い方をすれば、このようなスラップ訴訟を認めてしまうと、ただリツイートしただけで高額の請求をされるリスクが生じ、SNS上の自由な意見表明や批評を萎縮させてしまいます。
岩上氏側は、2018年の記者会見で「これは訴権の濫用、言論の自由に対する挑戦だ」と表明しています。
第6回口頭弁論の内容は
IWJの報告と岩上氏ご自身のツイートによると、27日の口頭弁論は、橋下氏が主張する内容をはっきりと覆すものだったようです。
橋下氏の「府職員へのパワハラなどしていない」という主張に対しては、元大阪府職員の具体的な証言で反論し、橋下氏の「府の戦略会議について岩上氏は取材不足」という主張に対しては、これまでの周到な取材について説明し、逆に府の戦略会議議事録の内容から、橋下氏の陳述が誤っており、結果的に知事の独断を裏付けるものとなったようです。文字どおり「自分の嘘と無責任は棚に上げ、弱い立場の部下に責任転嫁し続け、あげくに私(岩上氏)を黙らせるべくスラップ訴訟である。」
タフな岩上氏ですが、これまで刻々伝えられた情報では、さすがにこの裁判で身心ともに大変なダメージを受けられ、またIWJの運営以外でのしかかる金銭的な負担にも苦慮しておられるそうです。しかも、ツイートによると「今の裁判長に、そうした名判決は期待できそうにありません。」とあり、判事は明らかに橋下氏側に加担した態度だったようです。
言論弾圧はすぐそこに
まだまだ判決は先になりますが、この訴訟がひとり岩上氏に関わるものでないことは明らかで、物言う市民の代表として法廷に立っておられるように感じます。
福島瑞穂議員のスピーチに「DV政権」という言葉がありましたが、スラップ訴訟もそうした志向の雛型のようです。言論萎縮と司法の偏向を跳ね返す結果が出ることを期待し、「連帯」の気持ちで注視したいと思います。
ところで、先ほど言及したジャーナリストの寺澤氏を訴えた武富士側の代理人弁護士は、大阪のダブル選挙の渦中にある、現大阪市長の吉村洋文氏だったそうです。橋下氏や吉村氏にとって、法は人を守るためにあるのか、有利に利用するためにあるのか、政治のツールに過ぎないのか、それを判断するのは私たちの責務かもしれません。
◇<岩上側の証人、大石晃子氏が証言台へ! 橋下府政下の職員の苦しさを切実に伝える>
午前の証人尋問では、橋下府知事時代の大阪府庁における過酷な職場環境を身をもって体験した、元大阪府職員の大石晃子氏が、被告/反訴原告の岩上側の証人として、証言台に立ちました。
公害対策部門で働いた経験を持つ大石氏の証言は、橋下府政の「行政改革」で府職員にノルマを課し、安易に数値化して勤務業績を評価したことの問題点を端的に指摘しました。重要だったのは、大石氏の言葉が、そうした職場環境におかれた府職員の苦しさを切実に伝えるものであったことです。
また、大石氏は長時間労働・サービス残業の問題、その背景としてのパワーハラスメント問題の是正に向けた活動をしてこられました。
橋下氏は、自身の府政改革に批判的な職員に対してもパワハラをするようなことはなかったし、告発するようなこともなかったことをことさらに強調しています。しかし大石氏は、橋下氏がマスコミへの圧倒的な影響力を有していたこと、および府庁の人事権を持ち普段から分限免職(公務員の懲戒以外の解雇)をちらつかせる橋下氏に対し、府の職員が抗議の意思を表明することの難しさを語りました。大石氏は、反対尋問で原告の橋下氏自ら質問するような場面でも毅然とした話しぶりを貫きました。
(以下略)
口頭弁論と報告集会を終えて、弁護士さんとスタッフも交えて、慰労のお食事会。それも終えて、ホテルへ戻る。これから日刊ガイド。明日のトップ記事はもちろん、本日の第六回口頭弁論で、橋下氏と私が両者とも当事者尋問。その場で、橋下氏の嘘を吹っ飛ばすスクープ爆弾をドッカーン!と炸裂させた。
— 岩上安身 (@iwakamiyasumi) 2019年3月27日
戦略会議は、知事を含む府の幹部による機関決定だから、ラインに沿って組織下部へと流れてゆく。その指示をきかなかった現場の職員がいた。それが「絶対に許せない」と橋下は激しく叱責し、その結果、部下をかばい生真面目な参事が責任を被って死を選んだ。それが、これまでのストーリーだった。 https://t.co/8HZDOsU854
— 岩上安身 (@iwakamiyasumi) 2019年3月27日
裁判長の制止を、「ごめんなさい!」と両手を合わせて謝りつつ、橋下を問い詰めた。こちらは、大阪府に、社名を名乗り、取材目的であることも伝えた上で、直接取材し、「戦略会議も部長会議も訪台の方針決定のために開かれなかった」と正式な回答を得ている。 https://t.co/Mzkn6OxLny
— 岩上安身 (@iwakamiyasumi) 2019年3月27日
中国と台湾を両天秤にかけた「両建て」外交を「成功」させて、自分の名前を上げようと橋下は有頂天だったが、現場はたまったものではない。その中に、そもそもこれは台湾からの招待なので、台湾の経済大臣(部長)との面会を断るわけにもいかないと考えた部下がいたらしく、現場でトラブルとなった。 https://t.co/6cZI91SqjY
— 岩上安身 (@iwakamiyasumi) 2019年3月27日
今の裁判長にそうした名判決は期待できそうにありません。傍聴していたならば、橋下側とわたくし側に対して、態度がまったく違うのがよく見て取れたことでしょう。でも、橋下を完勝させるような判決は、ただでは書かせません。 https://t.co/b38ApjAJrM
— 岩上安身 (@iwakamiyasumi) 2019年3月27日
3月27日に大阪地裁で第6回口頭弁論が行われ、岩上氏と橋下氏が直接対峙しました。
この裁判は、岩上氏、橋下氏だけの問題ではない、様々な社会的、政治的な影響を及ぼすものと思われます。
これまでの経緯と、今回の口頭弁論をまとめてみました。