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小学校前のキンダーとプリスクール
ボストン生活も落ち着いてきたので孫の幼稚園を探すことにしました。
娘の住んでいるボストンは5歳からkindergarten(小学校に入る前の準備としての幼稚園)が始まります。小学校に併設されていて、アルファベットや数字などを遊びながら教えてもらったり、集団でお話を聞くなど学校に慣れるための1年間です。このキンダーから高校までが義務教育なので無料です。
でも、孫は4歳なので、それ以前のpreschool(プリスクール)を探しました。日本でいう保育園のようなものですが私立なので保育料が高い!!日本のように週6日、朝7時から夕方6時まで預かってもらったら月25万円以上かかります。全額自己負担です。とりあえず孫は近くの園に週2日間、午前中だけ通うことにしました。そして週1日だけ近くの森の幼稚園に親子で通うことにしました。ここは娘が小児科医として顧問アドバイザーになったので無料です。(このご縁は別の機会に書きます)
でも、私の中で疑問が出てきました。こんなに保育料が高いならよほどの高給取りでなければ預けて働けません。アメリカのお母さんたちは実際にこんなに高い保育料を払って仕事復帰しているのでしょうか?
調べてみるとアメリカは12週間の育休が取れるのですが無給です!!女性の社会進出が進んでいる国なのにびっくりしました。だから産後3か月くらいから働き始める人が多いとのこと!シングルマザーなどは収入が絶たれるので産後2週間から働かなければ食べていけないとも聞きました。産後の母体の回復や赤ちゃんの育ちための大切な時期であることを考えると胸が苦しくなります。
その上、保育料が高いので仕事の時だけ個人的に学生の安いベビーシッターを雇っている人もいるようです。お金がある人はナニーという子育て専門の家政婦さんを雇っています。そういえば公園や図書館で明らかにお母さんじゃない人が子どものお世話をしているのをよく見かけました。
子どもらしく育つ環境が整っているアメリカ
そして子どもが小学生になっても、必ず保護者が2時半に迎えに行かなければいけません。学校に迎えに行ってくれて、様々なアクティビティを体験させてくれるアフタースクールが人気です。市によって違いますがこれは少し補助が出るようです。それでも結構高い!
現実、私が孫を送り迎えしながら見た限り親がちゃんと迎えに来ていました。ほとんどのお母さんは短時間の仕事を選んでいるか専業主婦でボランティアをしているようでした。学校も親のボランティアを当てにしているところが多く、教材準備、図書係、校庭の花壇の手入れ、添削などを手伝ってもらっていました。
逆に自分の子どもと一緒にお世話ができるベビーシッターの仕事をしている人もいました。又、教職の資格を持っているお母さんは学校に講師の登録をしていて、先生が急にお休みになった時に教えに行くそうです。
これらは私が38年前にカナダで子育てをしている時の状況とあまり変わっていません。トロント大学のアパートに住んでいましたがアパートの1階にナーサリーがあって専属の先生は1人。あとは親が交代で見守りをしていました。自分の子どもと一緒にナーサリーに行き、交代で大学に通ったり、病院や図書館などの施設でボランティア活動をしていました。
当時、日本ではまだ専業主婦が子育てしながら社会参加をするという意識はありませんでした。26歳の私は、親同志が助け合いながら自分も学んだり、教育文化活動などのボランティアをする姿に大いに刺激を受けたものです。その後カナダはそういうお母さんの意識が高まって子育て先進国になっていきます。
その基盤には文化も宗教も違う海外移住者が50%以上というお国柄があります。「すべての子どもが幸せに、安心して彼ら彼女らの持つ本当の潜在能力を引きだすこと」を目的にした子育て施策と「子ども家族センター」ができたのです。産前産後のフォロー、州の保険に入ればお産も無料、父親の育休、子育てスキルを学ぶ場が用意されました。子どもの育ちを主役にした子育て支援です。
さて、もう一つ疑問が出てきました。アメリカの子育て支援は最悪でも、子ども達が楽しそうにしているのは何故でしょう?日本の子ども達より幸せそうなのです。
確実に言えることは、日本よりアメリカの親の方が子どものそばにいるし、夫婦で子育てしています。その上、アメリカは徹底した個人主義の国で、仕事より家族や夫婦などのプライベートな時間を大切にします。だから子育てしながら働いている人への配慮はかなりのものです。週休2日が徹底して残業はほとんどありません。仕事帰りに立ち寄る夜の街もなく、さっさと帰ります。時差出勤も多く、お父さんが子どもを送って出勤するのは当たり前。
子どもの病気で急に休むのもOK。「お互い様、お大事にね」という言葉とともに休ませてくれます。やるべきことをしていれば個人の都合に寛容な職場です。
日本は仕事が優先なので子どもの病気で休む場合、「勝手!迷惑!」など周りからの冷たい視線を感じながら肩身の狭い思いをして休まなければいけません。というより、休みたいと申し出る前に「個人の都合で休むのはわがまま」と自分で身を引いています。そしてそれを解決するために子どもが病気でも預けられる病児保育制度が親の要望で作られました。それって子どもの犠牲のもとに成り立っている制度ではないでしょうか?
そして、アメリカの父親は家に帰ったら、当たり前のように料理を作り、子どものお世話をします。子育ては二人でするものという認識が定着しています。子どもの誕生会やバーベキューなどの行事はお父さんの係でお母さんは招待した人とおしゃべりするというのが普通のようです。
躾も夫婦でします。体罰は厳しく罰せられますので子どもを怒っている姿はあまり見ません。逆に人前でも褒めすぎるくらい褒めるし、子どもの意見を聞きます。子どもも一人前の顔をして答えています(笑)
その上、子ども達は学校でも褒められてばかりです。宿題や塾がないので自由です。学校が終わっても校庭で遊びます。孫の学校でも子どもが遊ぶ傍らで迎えに来たお母さん同士も楽しそうにおしゃべりをしていました。おかげで娘も友達が増えていきました。日本にいる時よりずっと友達を作りやすい環境です。
先生も授業が終わると生徒たちと同じ時間に帰りますが、特にお姉ちゃんの先生は赤ちゃんがいるのでさっさと帰りますし、ちょっとしたことで休みます。その時は予備の先生が待機しているので問題ないようです。
そもそも担任の先生は学年専属の先生です。だからその学年の勉強に関してはベテラン。そして1年間のカリキュラムを熟知していて、それをいつどんな方法で教えるかも任されています。ある意味自分のやるべき事はしているので休むことへの罪悪感はないようです。周りも何も言いません。
ある日、お姉ちゃんのクラスの役員から連絡がきて「明日はTeacher’s Dayだから先生の好きな赤色の洋服を着て、先生の名前のアルファベットを使って先生に感謝する言葉を書いてきてください」と言われました。孫はワクワクしながら一生懸命に言葉を考えて赤いパジャマを着て行きました。
ところがその特別の日に先生がお休みしたのです!がっかりしたのですが、何と帰り道で担任の先生にばったり会ったら「あら~、あなたも私の好きな色を着てくれたのねえ。今日は学校に行こうと思ったら家の食洗器が壊れて修理の人が来てくれることになったから休んだのよ~」とニコニコしながら言われました。まあ!そんなことで急に休むの?!と思いましたが、先生はいつも楽しそうです。時々学校に赤ちゃんを連れてきたりします。
それに比べて日本の先生は綿密に決められたカリキュラムに支配されていて、子どもをその計画に従わせようと頑張ります。休みの日はもちろん毎日たくさん宿題が出されるのは授業を補い自習を身に着けさせるため。親もそれに同調して子どもの要求を無視して規則や勉強を強いるので学びたい気持ちが削がれていきます。「教育虐待」という言葉も生まれてきました。
そういう意味で、アメリカは育休が短くて無給、保育料が高い、学校が早く終わる、子どもの休みが長いなど働く親のための支援は最悪だけど、結果的に親や先生、周りの大人がいつもそばにいて褒めてくれる。学校も自由で自分の意見を言えるから居心地がいい。宿題もない。学校以外の文化スポーツ活動の機会が多い・・・というように子どもらしく育つ環境が整っているのです。現に子ども達は日本より無邪気で幼稚で自信にあふれているという印象です。
アメリカでお世話になっている友人の子どもさんが毎年夏休みを利用して日本の小学校に編入するらしいのですが、先生はいつも怒っているし、宿題が多いし、友達が意地悪するので行きたくないと言い始めたそうです。
でも、一方で自分の本当の両親と同居している子どもは60%というアメリカの家族。シングルの家庭も激増しています。一概にそれが悪いわけではありませんが家族の崩壊、貧困と教育格差が広がっています。アメリカは個人主義の国。個人の自由の裏には自己責任があり、それは弱者ほど負の連鎖で重くのしかかり、子ども達が翻弄されていきます。
棚機姫小妙(タナバタヒメコタヱ)様
国を問わず、子ども達が幸せな社会が実現しますように!
アメリカも日本もそうだけど、本当に子どもの幸せを本気で考えている国ってあるのかな?と苦笑いの私。
でも、まずは足元の家族が幸せでありますように!子どもはそれが一番幸せなのです。