竹下雅敏氏からの情報です。
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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「蚊の撲滅」を目的としたブラジルでの「成虫になる前に死ぬ遺伝子操作」を施された蚊の放出実験が大失敗していたことがネイチャーの論文で発覚。遺伝子を操作された蚊たちは数世代で元通りに
転載元)
In Deep 19/9/17
ロシアの報道で、「ブラジルで行われていた、遺伝子操作により蚊を撲滅させるプロジェクトが失敗した」という内容の冒頭の報道を見つけました。
(中略)
当時、ジカ熱とデング熱、そして黄熱病やマラリアなどの、それぞれ蚊が媒介する感染症が流行していました。
特にブラジルでは、妊娠した女性が感染すると、お腹の赤ちゃんに障害が出る可能性が高いジカ熱と、高熱と痛みに苦しめられるデング熱が大変に流行していまして、これらの感染症の拡大を防ぐために、
「遺伝子操作を用いて、蚊を根絶する計画」
を実施することにしたのです。
オキシテック社(OXITEC)というイギリスにある昆虫の駆除やコントロールをおこなう企業が、遺伝子操作により、ジカやデング熱を媒介するネッタイシマカだけを撲滅させるプロジェクトをブラジルで行う実験を開始しました。
この遺伝子操作は、
「次の世代の幼虫が成虫になる前に死ぬように遺伝子を組み替えた」
もので、その蚊たちをブラジルに一斉に放出したのでした。
このような遺伝子操作ですので、計画通りなら、この蚊の子孫たちは死に絶えることになります。
(中略)
このやり方は、WHO も、世界中の企業に呼びかけていました。(中略)
(中略)
いくつかの組織が、この試みを開始し、中でも英オキシテック社は、ブラジルで大規模な「蚊撲滅実験」を実施したのでした。
実験が成功していれば、ブラジルに放出された蚊と、その子孫は、今はすべて死んでいる「はず」で、その遺伝の繰り返しの中で、ブラジルの蚊は、大幅に減少していた「はず」でした。
ところが、現実には、
「放出された蚊たちは、大繁殖を再開していた」
ことが米イェール大学の調査でわかり、その結果が、9月10日の科学誌ネイチャーに掲載された論文に記されていたのでした。
つまり、実験は失敗したわけで、それどころか、予想外の悪影響の可能性だけを残したということになりました。
論文に書かれた実験は、2013年から 2015年にかけて行われた実験で、本来なら、実験終了後には、放出された蚊の家系はすべて滅びているはずだったものが、実験終了後の 2年以内に、「繁殖状態は元に戻った」ことが調査で判明したことが記されています。
成虫になる前に死ぬように改変された遺伝子を持つ蚊たちは、数世代で、
「その遺伝子が持つ死の運命を自らで変えた」
ということになります。
生命というものは、人間による遺伝子改変で「種としての根本」がどうこうされるものではないということがよくわかる話であり、「生命とは強いなあ」と、つくづく思います。
ふと、「ジュラシックパークみたいだなあ」とも思いました。
(中略)
今回のブラジルの蚊も、遺伝子改変された後に、二世代、三世代、次の世代と「生きる道を見つけていった」のだと思われます。
皮肉な話ですが、今の地球では、「絶滅してほしくない昆虫がどんどん絶滅していって」おり、そして、この蚊たちのように、「人間が絶滅を試みている相手たちは、むしろ大繁殖していっている」という図式があります。
それと、問題としては、今回の「蚊の遺伝子に手を加えた」ことが、何か他の「反動」みたいなものと関係してこないだろうなあと思ったりします。
実際、今回ご紹介する記事でも、米イェール大学の科学者たちが、
> 蚊が以前よりも強くなる可能性
を警告しています。
そもそも、ブラジルでジカ熱とデング熱の大流行が始まったのも、オキシテック社が、ブラジルでの遺伝子操作した蚊の放出実験が終わった後からでしたからね。
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Genetically modified mosquitoes breed in Brazil
DW 2019/09/13
繁殖しないように遺伝子操作された蚊がブラジルで繁殖中
2013年から2015年までブラジルで行われた遺伝子組み換えを施した蚊の自然界への放出実験の後、それらの遺伝子組み換えされた蚊は繁殖を続けた。研究者たちの当初の想定では、放出されたすべての蚊と、その子孫はすべて死ぬはずだった。
(中略)
ブラジルの生物学者、ホセ・マリア・ガスマン・フェラーズ (José Maria Gusman Ferraz) 博士は、遺伝子工学への批判をさらに一歩進め、次のように述べている。
「遺伝子改変された蚊の放出は、何も明らかにされずに急いで行われたのです」
遺伝子工学に批判的なドイツ・ミュンヘンに本拠を置くテストバイオテック (Testbiotech)研究所は、十分な研究のない状態で、遺伝子を改変した蚊を放出する野外実験を開始したオキシテック社を非難している。
遺伝子ドライブ技術は使われていない
ブラジルでの今回の屋外試験では、科学界の論争の的となっている遺伝子ドライブ技術は使用していない。遺伝子ドライブでは、蚊は、生殖中に常に支配的な非常に断定的な遺伝子を与えられる。
厳密に隔離された研究所で遺伝子ドライブを実験する研究者たちは、最終的にこの方法を使用して蚊の集団全体を永久に根絶することを望んでいる。
しかし、このような実験で、種を永久に根絶した場合、元に戻すことはできず、したがって、これまで屋外で実際に実施されたことはない。
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ここまでです。
記事に「遺伝子ドライブ」という言葉が出てきました。
これは、今年 1月に以下の記事でご紹介したことがある「ひとつの生物種全体を、この世から消滅させることが可能」と言われている技術です。
Wikipedia では、以下のように説明されます。
遺伝子ドライブ - Wikipedia
(中略)
当時、ジカ熱とデング熱、そして黄熱病やマラリアなどの、それぞれ蚊が媒介する感染症が流行していました。
特にブラジルでは、妊娠した女性が感染すると、お腹の赤ちゃんに障害が出る可能性が高いジカ熱と、高熱と痛みに苦しめられるデング熱が大変に流行していまして、これらの感染症の拡大を防ぐために、
「遺伝子操作を用いて、蚊を根絶する計画」
を実施することにしたのです。
オキシテック社(OXITEC)というイギリスにある昆虫の駆除やコントロールをおこなう企業が、遺伝子操作により、ジカやデング熱を媒介するネッタイシマカだけを撲滅させるプロジェクトをブラジルで行う実験を開始しました。
この遺伝子操作は、
「次の世代の幼虫が成虫になる前に死ぬように遺伝子を組み替えた」
もので、その蚊たちをブラジルに一斉に放出したのでした。
このような遺伝子操作ですので、計画通りなら、この蚊の子孫たちは死に絶えることになります。
(中略)
このやり方は、WHO も、世界中の企業に呼びかけていました。(中略)
(中略)
いくつかの組織が、この試みを開始し、中でも英オキシテック社は、ブラジルで大規模な「蚊撲滅実験」を実施したのでした。
実験が成功していれば、ブラジルに放出された蚊と、その子孫は、今はすべて死んでいる「はず」で、その遺伝の繰り返しの中で、ブラジルの蚊は、大幅に減少していた「はず」でした。
ところが、現実には、
「放出された蚊たちは、大繁殖を再開していた」
ことが米イェール大学の調査でわかり、その結果が、9月10日の科学誌ネイチャーに掲載された論文に記されていたのでした。
つまり、実験は失敗したわけで、それどころか、予想外の悪影響の可能性だけを残したということになりました。
論文に書かれた実験は、2013年から 2015年にかけて行われた実験で、本来なら、実験終了後には、放出された蚊の家系はすべて滅びているはずだったものが、実験終了後の 2年以内に、「繁殖状態は元に戻った」ことが調査で判明したことが記されています。
成虫になる前に死ぬように改変された遺伝子を持つ蚊たちは、数世代で、
「その遺伝子が持つ死の運命を自らで変えた」
ということになります。
生命というものは、人間による遺伝子改変で「種としての根本」がどうこうされるものではないということがよくわかる話であり、「生命とは強いなあ」と、つくづく思います。
ふと、「ジュラシックパークみたいだなあ」とも思いました。
(中略)
今回のブラジルの蚊も、遺伝子改変された後に、二世代、三世代、次の世代と「生きる道を見つけていった」のだと思われます。
皮肉な話ですが、今の地球では、「絶滅してほしくない昆虫がどんどん絶滅していって」おり、そして、この蚊たちのように、「人間が絶滅を試みている相手たちは、むしろ大繁殖していっている」という図式があります。
それと、問題としては、今回の「蚊の遺伝子に手を加えた」ことが、何か他の「反動」みたいなものと関係してこないだろうなあと思ったりします。
実際、今回ご紹介する記事でも、米イェール大学の科学者たちが、
> 蚊が以前よりも強くなる可能性
を警告しています。
そもそも、ブラジルでジカ熱とデング熱の大流行が始まったのも、オキシテック社が、ブラジルでの遺伝子操作した蚊の放出実験が終わった後からでしたからね。
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Genetically modified mosquitoes breed in Brazil
DW 2019/09/13
繁殖しないように遺伝子操作された蚊がブラジルで繁殖中
2013年から2015年までブラジルで行われた遺伝子組み換えを施した蚊の自然界への放出実験の後、それらの遺伝子組み換えされた蚊は繁殖を続けた。研究者たちの当初の想定では、放出されたすべての蚊と、その子孫はすべて死ぬはずだった。
"Genetically modified mosquitoes breed in Brazil" https://t.co/GEulGPfNrK #dengue #entomology #brazil #genetics #epidemiology
— Bruno P. Kinoshita (@kinow) 2019年9月15日
画像はシャンティ・フーラがツイートに差し替え
(中略)
ブラジルの生物学者、ホセ・マリア・ガスマン・フェラーズ (José Maria Gusman Ferraz) 博士は、遺伝子工学への批判をさらに一歩進め、次のように述べている。
「遺伝子改変された蚊の放出は、何も明らかにされずに急いで行われたのです」
遺伝子工学に批判的なドイツ・ミュンヘンに本拠を置くテストバイオテック (Testbiotech)研究所は、十分な研究のない状態で、遺伝子を改変した蚊を放出する野外実験を開始したオキシテック社を非難している。
遺伝子ドライブ技術は使われていない
ブラジルでの今回の屋外試験では、科学界の論争の的となっている遺伝子ドライブ技術は使用していない。遺伝子ドライブでは、蚊は、生殖中に常に支配的な非常に断定的な遺伝子を与えられる。
厳密に隔離された研究所で遺伝子ドライブを実験する研究者たちは、最終的にこの方法を使用して蚊の集団全体を永久に根絶することを望んでいる。
しかし、このような実験で、種を永久に根絶した場合、元に戻すことはできず、したがって、これまで屋外で実際に実施されたことはない。
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ここまでです。
記事に「遺伝子ドライブ」という言葉が出てきました。
これは、今年 1月に以下の記事でご紹介したことがある「ひとつの生物種全体を、この世から消滅させることが可能」と言われている技術です。
Wikipedia では、以下のように説明されます。
遺伝子ドライブ - Wikipedia
遺伝子ドライブとは、特定の遺伝子が偏って遺伝する現象である。この現象が発生すると、その個体群において特定の遺伝子の保有率が増大する。
人為的に遺伝子ドライブを発生させることにより、遺伝子を追加、破壊、または改変し、個体群、または生物種全体を改変することができると考えられている。
具体的な応用例として、病原体を運搬する昆虫(特にマラリア、デング熱、ジカ熱を媒介する蚊)の拡散防止、外来種の制御、除草剤や農薬抵抗性の除去がある。しかし、改変された生物を自然環境に放つ行為は、生命倫理上の懸念がある。
人為的に遺伝子ドライブを発生させることにより、遺伝子を追加、破壊、または改変し、個体群、または生物種全体を改変することができると考えられている。
具体的な応用例として、病原体を運搬する昆虫(特にマラリア、デング熱、ジカ熱を媒介する蚊)の拡散防止、外来種の制御、除草剤や農薬抵抗性の除去がある。しかし、改変された生物を自然環境に放つ行為は、生命倫理上の懸念がある。
この遺伝子ドライブで、本当に、ひとつの種を絶滅させられるかどうかは、実際にはわかりません。実際に行われたことはないわけですから。
しかし、今回の「蚊の復活劇」を見ていますと、そういうものさえ、少なくとも、蚊には通用するのかどうかという気にもなってきます。
なお、最初のほうにリンクしました記事で取りあげましたが、アメリカでも、ブラジルと同じような「遺伝子操作をした蚊を放出する」計画が進行しています。あるいは、もう実施されたかもしれません。
アメリカでも、今後、ブラジルと同じように、「遺伝子操作により、むしろ蚊のパワーが強化される」というようなことが起きないとも限らないかもしれません。
ちなみに、ずいぶん以前の記事で書いたことがありますが、 1億年以上前から、この地球にいて、そしてずっと、
「ウイルスと生物の仲介をし続け」
「生物と他の生物の血液の交換さえなしえている」
という「蚊」という生命が地球上にいる意味は、単なる感染症の媒介者というものを超えたものがあると、少なくとも私は考えています。
蚊が血液を介して生物から生物に媒介しているのは、病原菌だけではありますまい(古い言い回しかよ)。
死をもたらすものと、生をもたらすもの、どちらも蚊は媒介していると私は考えていたりします。
ミツバチが地球からいなくなったら人間は生きられないという説があると同様に、蚊という生命が地球からいなくなったら、多くの生命が生きられなくなるはずだとも考えています。
といいますか、地球の生命の成り立ちを考えれば、不要な生物なんてものが地球に存在するという考え自体がおかしいのでは? という話ではあるとは思うのですが。
蚊による感染症を防ぐ目的で、成虫になる前に死ぬように遺伝子を組み換えた蚊を大量にブラジルで放出したところ、なぜかその後、その地域で小頭症の赤ちゃんが生まれるジカ熱が大流行したという記事、蚊が成虫になる前に死んでしまう遺伝子操作を加えたり、蚊を故意にバクテリアに感染させるといった「蚊の滅亡プロジェクト」は本当に人類への恩恵なのかという記事などで、ヒトのためには「絶滅してもいい生物がいる」という考え方に疑問を呈し、浅はかな人為的操作によって取り返しのつかない環境の変化を生む危険性を示唆されていました。
そして今回は、そのブラジルで行われた遺伝子組み換え蚊のプロジェクトが失敗していたという記事です。
WHOも後押しした事業として、昆虫の駆除やコントロールをおこなうイギリスの企業オキシテック社は、遺伝子組み換えした蚊の最初の世代(F1)が死滅する設計をしました。実験当初は予想通り個体数が激減したものの、1年半後には元の個体数に戻り、しかも、操作した遺伝的改変は子孫の蚊に受け継がれていたそうです。InDeepさん曰く「ジュラシックパークみたい」とはまさに。人間の予想を超え、数世代のうちに自ら生存に向けて変化したのだそうです。しかも人為的な改変の反動で、蚊が以前とは違う強力な性質を持つ可能性があるとも警告されています。「蚊の撲滅プロジェクト」はさらに、一つの種を滅亡させる生物兵器「遺伝子ドライブ」技術へと進むようです。
反対や批判を押し切って進められるプロジェクトですが、ヒトへの感染症予防というのは表向き、実は陰惨な目的があってのことではないかと勘ぐりたくなります。
書いていてもおぞましい実験の数々ですが、はるか昔から「ウイルスと生物の仲介をし続け、血液の交換をしてきた」蚊の役割を尊重し、地球上に不要な生物が存在するという考え方自体がおかしいのでは?と結ばれたInDeepさんの見解にホッと息をついたのでした。