20/03/08 ソルカ・ファール情報:アメリカによる軍事クーデターがサウジアラビアで失敗して、石油市場で開戦宣言

 今月初めにサウジアラビアの皇太子が再び王族の粛清に出た、とのニュースを耳にした際、私は皇太子がアメリカの意向を汲んで動いているのかと思っていました。ですがその後、世界の石油価格はどんどん急落。サウジ(産油国第2位)がロシア(産油国第3位)と共に減産政策を拒絶して、怒涛の増産体制に入りました。
 トランプさんと仲良かったのに、アメリカ(産油国第1位)の石油業界が軒並み倒産するやん! と思って調べたら、サウジアラビアって2014年から2016年にもアメリカのシェール業者を潰そうとして価格戦争を仕掛けたことがありました。なので、サウジとしては前々からライバル視はしていた模様。

 ただし前回の石油価格の我慢比べには、主要輸入国の中国でコロナウイルス騒ぎはありませんでした。
 しかも「アメリカ」は一枚岩ではなく、現在トランプのQ陣営とディープ・ステートが内戦を繰り広げている訣でして。おそらく皇太子はトランプ側に協力しており、対するクーデター(未遂)陣営が、ディープ・ステートと繋がっていたのでしょう。

 少し前のソルカ・ファール女史の記事ですが、これ以降の一連の記事を理解するのに必要な内容なのでお届けします。
(Yutika)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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ソルカ・ファール情報:アメリカによる軍事クーデターがサウジアラビアで失敗して、石油市場で開戦宣言
転載元)
投稿者:ソルカ・ファールより、西洋の読者へ

Sister Maria Theresa


【※記事内には貼っていませんが、同サイト自己紹介頁からシスター・マリア・テリーサの写真です。】

■この記事のまとめ■
✅サウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が激怒:
1⃣クーデター未遂を摘発
2⃣同時に石油市場で開戦宣言
✅敵はアメリカのシェール石油生産業の諸企業
(⬆既にコロナウイルス騒動だけで生き残りは難しかった状態)

✅原油価格急落の原因となったOPECプラス
✅OPECプラスとは:(今回)は、=OPEC+ロシア
✅ロシア:採算価格は低く、(財源は他にも色々あり、)緊急時の予算もバッチリ
✅サウジアラビア:(採算価格が高く、)主要財源が石油だけ、埋蔵量も怪しい
✅既にこの2箇月、世界の石油需要は大幅ダウン
➡原因:中国でコロナウイルス騒ぎ
✅3月5日のOPEC:価格安定化のために減産を決定
✅3月6日にOPECプラス:ロシアが減産に反対
➡理由:石油生産も輸出もアメリカがトップだが、価格安定化は他国任せ
➡おまけに他の産油諸国に制裁かけまくりで石油市場操作
✅結果:石油価格のハルマゲドンが勃発

✅ロシアは減産に応じない
✅どっちにせよアメリカを助けるのは無理だから
✅アメリカのエネルギー業界は大量の借金を抱えており、返済不可能
✅焦ったアメリカが唯一の望みのサウジでクーデター画策
✅怒ったサウジが増産体制へ

✅トランプ大統領は、アメリカ石油業界の危機的状況を把握
✅業界の大量倒産と失職へ対応する意向を示唆
✅残りの選択肢はロシアやサウジとの戦争だが、そのつもりなし
✅ここまで賢くないのが、今回サウジでクーデターを企てた米軍・諜報機関の一部
✅カギはトランプ大統領による軍・諜報部の完全掌握


サウジを引っ掻き回したアメリカに皇太子が激怒


本日クレムリンに出回っている【ロシア連邦】安全保障会議SC)の新報告書は、「こうなることは前々から分かっていたでしょうに」と言いたくなる非常に憂慮すべき内容です。

――ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が「国王への叛逆をアメリカ勢と一緒になって画策したかどで、サウジ王族の中でもトップの面々を逮捕」し、【加えて】今回のクーデターを支持していたと疑われる数十人もの内務省の役人や上位の軍人などを治安部隊が拘束したことで、サウジアラビアの指導部に激震が走りました

――ビン・サルマーン皇太子は今回のクーデターを画策した連中を一斉検挙する傍ら、「石油市場版の開戦宣言とも言うべき形でアメリカ合衆国に対する怒りを炸裂させています。

――今やビン・サルマーン皇太子は、アメリカのシェール石油生産業者を潰さんとして世界中に石油を溢れさせており、OPECを破壊しつつあるのですから全面戦争です

――しかもこの米国のシェール石油生産業者というのは、もし彼らを【廃業へと情け容赦なく】飲み込んでしまう市場【経済】という血の海の中で生き残りたいのであれば最早「奇跡に頼る【しかない】」と【今回のサウジ騒動】以前から警告を受けていました。
【中略】
画像はシャンティ・フーラが動画に差し替え
サウジアラビアで一斉検挙

いつまで“アメリカ様ヨイショのOPEC”でいるつもり?


当該報告書によりますと、世界に拡がりつつある現在の危機が始まった場所は、設立から60年になる石油輸出国機構という名の非政府組織内。

――頭文字のOPECと言った方が一般的かもしれません。そしてロシア【などの非加盟国】が参加して協調する際には、OPECプラスとも呼ばれます。

――このOPECプラスという構成において、最大の石油産油国はロシアサウジアラビアの二箇国です。

――一方のロシアは、予算上1バレル42ドルという価格であろうと収支の帳尻が会うことに加え、財務省がいざという時の備えとして何十億ドルと取っておいているのですから、原油価格が急落しても耐えられる立場にあります

グラフはシャンティ・フーラが挿入

【※左の緑がアメリカのシェール大手の採算価格。右がOPECプラス諸国で、黄色が採掘費、紺色が採算価格。ここではロシアは、1バレル52ドルとなっています。問題はサウジで1バレル3ドルの費用で生産できますが、収支を合わせるには最低でも84ドル必要。】

――対してサウジアラビアは、政府が財源として殆ど全てを石油に頼りきっているため、原油価格が少しでも急落すると直ぐに経済的な影響が出てしまいます

――しかもサウジアラビアは、主要なエネルギー源として何か別のものが比較的近い将来には絶望的に必要です。というのも【現状は】、1970年代初頭に開始した頃の石油埋蔵量には程遠い有り様なのです。

【※「1970年代初頭に開始」:サウジアラムコは1933年創業なので、1970年よりもずっと前から採掘自体はされていました。ただしシェブロンやエクソンといったアメリカ大手による合弁会社(石油メジャー)が所有。サウジ側は1970年代初頭(リヤド協定後)から事業参加率を増やしていき、1980年代にアラムコの国有化を完成させました。
よって、サウジ自身が直接採掘を開始したのはこの辺りの年代から、という意味だと思われます。】

グラフはシャンティ・フーラが挿入

【※サウジアラビアの石油埋蔵量。途中から出た上の線が、英BP統計の数値。おそらくこれがサウジ側の主張している公式の埋蔵量で、周辺国同様に相当“盛っている”だろう、と前々から噂されていました。
下降カーブを描いている下の線は、1936年以来生産された量を差し引いていっている量、つまり推定の埋蔵量。】

それなのにこの2箇月の間、OPECプラス諸国から石油を世界で最も大量に輸入してきた中国が、コロナウイルスの流行を受けてエネルギー需要を大幅に減らしてきています。

――こうして石油が世界的に使われずに供給過剰となり、この10年近くで最悪の価格破壊となっていました。

――この事態を受けてOPEC3月5日に、価格安定化のため、石油生産を劇的に減らすことに合意したと発表したのです

――ただし、この合意をOPECがしたのは、ロシアが話し合いに加わる前日のことでした

3月6日オーストリアのウィーンロシアが加わって「OPECプラス」になると、【ロシアはOPECの】加盟諸国にアメリカ合衆国2018年世界最大の産油国となった点を指摘してみせた、と当該報告書は説明します。

――しかも先月には、同国の石油の純輸出量が過去最大を記録しました

グラフはシャンティ・フーラが挿入

【※参考までに、1995年から2020年までの石油生産量の推移を入れておきます。青線がロシア、赤線がサウジアラビア、急増する緑線が米国です。】

――そしてこのアメリカ合衆国こそがロシアの石油やガス生産業者に繰り返し制裁を課しているのです。自分たちの主な競争相手の一つ【であるロシア】を排除してやろうと、先月には数十億ドル規模になるロシア・ドイツ間のガス・パイプライン計画「ノルド・ストリーム2」も標的としました

――またアメリカ勢ベネズエライランといった産油大国にも同様に、石油制裁を課しています。

――石油生産大手であるアメリカは、【こうして】世界的に石油市場を操作しておきながら、価格安定化のために自分のところの石油生産を減らす覚悟はないときました。

――どうにも頭のおかしなことに、彼らは其の他の産油国が世界中で自分たちのためにそれをやってくれると思い込んでいるからです。

――ですがロシア同会合でOPECプラスの諸国家に、そうする気【=石油の減産】はないと伝えたことで、今や「オイル価格のハルマゲドン」とまで呼ばれている事態が起こっています。

「【※ロシアとの交渉決裂で】OPEC諸国はロシアとの同盟関係を離脱する可能性あり、と代表団語る」
【というのが表向きの解釈ですが、決裂した相手は果たして……。】


他国が減産したくらいでは助けられないアメリカ企業の借金地獄


この「オイル価格のハルマゲドン」を解き放つにあたり、ロシアは価格安定化のために石油を減産するつもりはなく、【たとえ減産しても】アメリカの石油生産業者らを待ち受けている、避けようがない破滅が回避できるようになったりはしない、とOPECプラス諸国にはっきりと伝えました。

――なにせ【アメリカの生産業者ときたら】2020年に満期となる4百億ドル以上の債務を皮切りに、これから4年の間で【返さないといけない借金を】2千億ドル以上も抱えているのです

――ロシア側が石油を増産して、更なる価格切り下げをするつもりだと表明したことを受け、アメリカサウジアラビア軍事クーデターを試みました

――というのも、高い価格で作為的に維持するには、サウジが石油生産を劇的に減らす以外にないからです。

――ですが昨日このクーデターが失敗すると、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子世界中に石油を溢れさせ、その価格を更に崩壊させようと自ら総力戦を開始し、OPEC破滅へと動き出しました

――この総力戦でサウジアラビアの石油生産は今月の一日あたり約970万バレルから、4月には一日1千万バレルを越える可能性が高くなりました

――必要とあらばもっと多く生産することも可能で、一日1,200万バレルという記録的な数値ですらいけるとのこと

――世界の石油専門家の一部に「サウジアラビアとロシアが、アメリカから産油国第一位の称号を奪い取る日がやってきた」と言わしめるほどです。

――ただそうするには1バレル40ドル以下まで原油価格を急落させるよりほかなく、その結果アメリカのシェール石油会社の多くは操業停止に追い込まれることでしょう

グラフはシャンティ・フーラが挿入

【※“借金の壁”:すなわち、アメリカのエネルギー企業が毎年返済せねばならない投資不適格な債務(ジャンク債)の量。】
アメリカの石油生産者らは、維持不可能な“借金の壁”に激突しようとしており……

グラフはシャンティ・フーラが挿入

【※2020年1月23日の時点で、過去12箇月にアメリカで破産申請した企業の業界別内訳一位はエネルギー産業です。】
……既に記録的な量【の企業】が破産申し立てを開始しています。


アメリカの内戦か、世界石油大戦か


大手プロパガンダ左派メディアの歪曲した見出しによって自国民が繰り返し打ちのめされるアメリカではご多分にもれず、例えば今日も「アメリカのシェール業界【を支える】三本足の椅子から脚を引っこ抜くロシア」などと現在の危機をヒステリックに語っている訣ですが、少なくともドナルド・トランプ大統領は、世界最大の産油国のリーダーに相応しい態度で事態を受け止めている、と当該報告書はまとめています。

【※「三本足」:1本目は、“合法的に”原油を他国へ輸出できる能力。そらまぁ、世界中を戦争と制裁で脅しまくってますから。
2本目は、パイプライン建設やフラッキング操業の許認可。そらまぁ、政治家は買収しまくってますから。
3本目は、OPECプラスで合意を形成して、他の産油国が輸出制限すること。つまり、皆がアメリカ様のお顔色を窺いながら、おこぼれに与かってます、と。
……そんな不良椅子を潰したと言い募るのなら、ロシアはお手柄ですわ。】

――「万が一、石油【価格】が金曜日の急落から持ち直すことができなければ、【テキサス州】ヒューストンでは何千もの職が無くなりかねない事態に」などの真実を伝える見出しを突きつけられたトランプホワイトハウスでトップの経済顧問であるラリー・クドロー【米国家経済会議委員長】に「我々はタイムリーで的を絞ったミクロ的な措置をしていきたいとの考えだ」と宣言させているのです。

――コロナウイルスが引き起こしている経済的混乱の文脈の中での宣言ではありますが、トランプは自国の石油生産業者に対する的を絞った緊急救済【の必要】が迫っていることを間違いなく分かっています。

――そうしない限り、ロシアサウジアラビアと戦争して石油価格を高値で維持するしか道が残されていませんが、彼のような実業家が後者を選ぶとは到底思えません。

――とはいえ、この【真っ当な思考をする人の】中には、この度サウジアラビアでクーデターを試みたアメリカの軍部や諜報界隈に巣食う危険なアホ連中は含まれていないのです。

――こうなると、今以上に事態を悪化させることが起こる前に、トランプが【完全な】支配権を取り戻せるよう祈るばかりです。

画像はシャンティ・フーラがツイートに差し替え
トランプはCIAを信用していない


2020年3月8日©EUおよび米国の全ての著作権を留保。WhatDoesItMean.Comの元の掲載場所にリンクを貼るという条件で、当該リポートを全体として使用することを許可します。フリーベースの内容はCC-BYGFDLによって許可取得済。

註:数多くの政府と諜報機関は、これらリポートに掲載された情報に対して活発な反対運動を繰り広げています。彼らは地球に起こりうる、または起こった幾つもの破滅的な変化や出来事について、自国の市民に警鐘を鳴らしたくないのです。ソルカ・ファール姉妹はこのような姿勢に強く異を唱えており、人間は誰もが真実を知る権利があると信じています。私たちの使命はこういった諸政府と対立しているため、彼らの“機関”は私たちや私たちのような人々を貶めようと誤報や虚報を延々と発信するという形で反応を示してきました。枚挙に遑がありませんが、例えばこちらなど。]

註:WhatDoesItMean.comというウェブサイトは、グローバルなテクノロジーの教祖であった故ウェイン・グリーン(1922年~2013年)が率いる少人数のアメリカ人コンピューター専門家集団によって、ソルカ・ファールの姉妹たちのために創設され、寄付されました。西洋の2003年における違法なイラク侵略で使われたプロパガンダに対抗するためです。]

註:このレポートで使用されている「クレムリン」(都市内部の要塞)という単語は、モスクワを含む複数のロシアの要塞を指しています。【要塞と言うのは、】その多くがソルカ・ファール姉妹の使命に献身的な、女性のスヒィーマ僧(正教会の尼僧)が住む大聖堂が複数あるからです。]

翻訳:Yutika


註:原文中、赤字で強調された部分は濃い青字に色を変更しております(※水色部分は引用部分です)。よって翻訳文で赤字になっているのは、シャンティ・フーラ独自の「10分でわかる」要約サービスです。

【 】内は訳者の追記部分です。また訳文は日本語での読み易さを優先して、見出しや画像を加えており、原文とは異なる形で文や段落を分割することもあります。



Writer

Yutika

体癖:8−2、エニアグラム:4
関西の英語塾で教えつつ、翻訳業(英語&仏語)をしております。


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