[長周新聞] 日本にも広がり始めた「給食を有機食材にする」活動 〜 様々な分野が緩やかに繋がりあう

 韓国の学校給食がオーガニックという話題は度々取り上げましたが、わが日本でもついに学校給食に光が射し始めたようです。去る9/25に、給食を有機食材にするための全国集会が行われ、各地で地道な活動をされている方々の報告や意見交換が行われたという記事がありました。集会のチラシには元農水大臣の山田正彦氏を始め、錚々たる方々の講演や報告が告知されて、とても面白そうです。そもそもオーガニックの農地は、日本の農地の0.5%しかないそうです。学校給食を有機食材に変えていく動きは、それだけにとどまらず地域の自然を守り、日本の食糧生産を守り、農家さんの経営を保障し、人々の命と健康を守る未来をつくる動きにも広がっていきます。日本にもこのような活動が着実に始まっていたことに大きな希望を感じます。転載許可をいただいている長周新聞の記事を少しずつ、ご紹介したいと思います。
 これまで各地で有機農業、自然農法に取り組んできた生産者、すでに有機栽培米の学校給食を実現させている自治体関係者、食の安全を求めて運動している母親たちなどバラバラに取り組まれていた活動を「緩やかにつなぎ、志を共有しながら全国に広げていくスタート」となるのが今回の集会でした。コロナ対策で手腕を発揮された世田谷区の保坂展人区長は、給食の無償化に続き、有機食材も積極的に取り組むという意欲を語られました。すでに実現している自治体では、首長の強い意志と哲学があると報告されていて、世田谷の有機食材化は近いな、と思えました。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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配信元)
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世界中に広がるオーガニックの波 子どもたちの給食を有機食材にする全国集会
転載元)
 「世界中に広がるオーガニックの波 子どもたちの給食を有機食材にする全国集会 世田谷から考えよう学校給食」が25日、東京都港区の八芳園を会場に開かれた。世田谷区の学校給食を有機無農薬食材にする会と、子どもたちの給食を有機食材にする全国協議会準備委員会の共催で開かれ、オンラインでも公開され全国各地で多数の人が視聴した。

オーガニック農法(有機農業)とは農薬や化学肥料、除草剤を使わずに自然本来の力を活かしながら作物を育てる農法のことで、現在、日本の農地の有機農地の割合は0・5%だといわれる。そのなかで今各地の自治体が地域の自然を守り、食料生産を守り、生産者の経営を保障し、子どもたちや市民の命と健康を守るという長期的戦略と未来への展望を持って、学校給食を有機食材にする動きが徐々に広がっている

全国集会は7時間におよび、全国各地で有機農業や自然農法にとりくむ生産者、有機食材を学校給食にとり入れている自治体関係者、また食の安全、安心を求めて地域で運動する市民や母親たちが集い、互いの思いや活動を共有すると同時に、これまでバラバラにとりくまれてきた運動を緩やかにつなぎ、志を共有しながらこの運動を全国に広げていくスタートとなった。共催団体の世田谷区の学校給食を有機無農薬食材にする会は、昨年、女性たちを中心に結成され、現在、学校給食を有機食材にするための条例制定を求める署名運動を始めており、今回集会の司会運営などをおこなった。

 集会のはじめに元農林水産大臣の山田正彦氏が「世界に広がるオーガニックの波」と題して講演した。昨年、学校給食に有機食材を使用している韓国を訪問し、国をあげて給食の無償化とオーガニック化を進めていることを紹介した。そしてオーガニックの波が韓国だけでなくタイやブラジルなど世界に広がっているとのべ、これを契機に日本でも安全安心の有機食材を子どもたちの学校給食に届ける運動を全国に広げていこうと呼びかけた【別掲】。

 続いて世田谷区の保坂展人区長がオンラインで挨拶した。世田谷区では昨年10月から4人家族で年収760万円以下の世帯収入の区民に対して給食の無償化を実現したこと、今、区民のなかから学校給食のなかに有機食材をとり入れていく仕組みができないだろうかという声が湧き上がりつつあることをのべ、世田谷区全体で公立だけで4万9000人の小・中学校、90校の学校があるが、具体的に課題を乗りこえながらこの問題にとりくんでいきたいとのべた。

 その後、ジャーナリストの堤未果氏が「アメリカ発の給食ビジネスと狙われる日本の子供たち」と題して講演した【別掲】。続いて、学校給食のコメの100%地元有機米を実現して全国的に注目されている千葉県いすみ市のとりくみについて、同市農林課職員の鮫田晋氏が報告した【別掲】。



 さらにいすみ市の有機米生産を軌道にのせるために技術や知識を伝授してきた稲葉光國氏(民間稲作研究所理事長)は、「こうすれば出来る! 持続可能な有機食材の供給」をテーマに語った。農薬や化学肥料などを使わず自然本来の力を活かす有機農業は難しいというイメージがあるが、稲葉氏は長年の経験と研究を経て確立してきた具体的な方法や技術、ノウハウについてのべた。

日本の子どもたちの尿検査をすると出てくる農薬成分はグリホサートだけでなく、ネオニコチノイド、レトロニルが検出される。この二つの農薬はあまり人体に影響がないとして一般的に使われているものだが、長期残留、細胞浸透がすぐれており、実は安全な農薬ではない」と指摘。「全国で約1割の子どもたちが発達障害に悩んでいる危機的状況にある。国産農産物というだけでなく農薬を使わないことに踏み切らないと日本の子どもの安全は保てない。そのうえでも学校給食の有機化を進めるべきだ」とのべた。

 またすでに学校給食に有機食材をとり入れはじめている自治体を見ると、首長による強い意志と哲学が貫かれていることに触れ、自然との共生を進める有機農業は国際的にも意義があることであり、国が支えていくべきだとし、この運動を新しい時代をつくるスタートにしてほしいと語った。

 その他の報告として澤登早苗氏(恵泉女学園大学教授)が『人を育てる有機園芸』と題して、授業の一環として学生たちが種から作物を育てる有機農業をおこなっている様子を報告した。土や虫に触れ、汗を流して農作業をする経験が、生きること、食べることと真剣に向き合い、人間関係の構築や働くことの意味について身をもって学ぶ場になっている様子を教育的視点も踏まえてのべた。

環境や食は生命の源 全国のとりくみ報告

 一部の後半では『こどもたちの食の未来を見つけよう』をテーマにしたパネルディスカッションがおこなわれた。料理研究家の枝元なほみ氏をファシリテーターにして澤登早苗(恵泉女園大学教授)、横地洋(農林水産省職員)、前島由美(ゆめの森こども園代表)、中島恵理(環境省職員)、高木完治(一般財団法人・武蔵野市給食食育振興財団食育係長)の五氏がパネリストで登壇し、それぞれの立場から子どもの健康や食の安全安心を守るために何が必要なのかを語り合い深めた。

 第二部は「子どもたちの給食を有機食材にする全国意見交流会」がおこなわれた。長野県松川町からのビデオメッセージをはじめ、愛知県東郷町の学校給食センター長や石川県JAはくい職員・粟木政明氏、熊本県山都町の有機農産物の流通を販売を請け負う「(株)肥後やまと」の春木秀一氏(山都町有機農業協議会の給食部会長)らがオンラインで有機農業や自然農法のとりくみの現状を報告した。地域によって自治体を主体にした動き、またJAが呼びかけた動きなどきっかけはさまざまだが、安心安全な食材を子どもたちに提供するために、美しい自然環境を未来に残していくために、地元の人々の意識を変え、経済的な課題なども乗りこえながら進めてきた実践的とりくみを発表した。

 さらに、全国各地で学校給食を安全なものにかえるために立ち上げた団体を代表して、熊本の「くまもとのタネと食を守る会」の國本聡子氏と広島のフーズフォーチルドレン広島代表の若林千鶴氏が報告した。國本氏は、学校給食に外国産小麦を使うことを止めるプロジェクトを立ち上げた運動を報告。幼い子どもを育てる母親でもある若林氏は、学校給食を有機食材にしたいと思い当初一人で署名運動を始めると、次々と仲間が増えていき思いもよらないスピードで署名が広がった経験をのべ、「声を上げていなければ知り合っていなかった人々と出会った。思いだけで始めた行動が、今はより効果的に多くの声を届けて実現させていく運動へと進化している。環境や食は生命の源であり、専門家しか声を上げてはいけない問題ではない。誰もが関係することであり、母の愛と笑顔の活動を持ってこれからも頑張りたい」と報告した。

 最後に日本の種子(たね)を守る会アドバイザーの印鑰智哉氏が「全国協議会設立の呼びかけ」として、「今日のこの日は出発点だ。日本の子どもたちの健康は非常事態宣言というべき状況がある。子どもだけではない。あと30年後にはハチがいなくなり、土壌もダメになるといわれている。それに気づいて世界で有機農業、自然栽培、生態系や健康を守る動きが広がっている。今すぐ行動すればシナリオは大きく変わる。今日出会った人たちが連絡を取り合い、互いを励まし合い、地域の多様なとりくみを参考にしながら、国や農水省、文科省、厚労省を変えていくために力を合わせて緩やかに繋がりあいましょう。今後も続けましょう」と訴えた

 最後に山田正彦氏が登壇し「今日は日本の学校給食を有機食材にしていく始まりの記念すべき日。学校給食の有機食材化とともに学校給食の無償化もすでに始めている自治体がある。今日をもってみなさんが情報をとり合いながら新しくスタートしたい」とのべ閉会した。

(以下略)

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