参院でデジタル改革関連法案審議入り 〜 国が個人情報を勝手に収集し、民間の利益のために提供し利活用を進める一方で、個人の保護はされない危険

 デジタル改革関連法案が参議院で審議入りしましたが、いきなり驚く事実が判明しました。防衛省が民間利活用を提案した個人情報ファイルの中に、横田基地夜間差し止め訴訟の原告弁護団の個人情報ファイルがありました。もちろん本人達は知らないことで直ちに訴訟外での個人情報の利用をやめるよう防衛大臣に申し入れたということです。「国に歯向かって訴訟を起こすとこんな目にあう」という国民の行動を規制することにもなりそうです。
 今回のデジタル改革関連法案がデジタル化の推進というよりも、国が収集した個人情報を民間に提供して利活用を進めたいという側面が強く打ち出されていることが国会での質疑を通して見えてきました。従来、個人情報の扱いに厳密だった自治体の条例も、今回の改正によって国レベルの緩い基準に置き換えられます。
 Choose Life Projectでの討論では、3/31の後藤祐一議員が総理に対し「国会議員や各省庁幹部の個人情報を違法に収集しているのではないか」と質問した経緯も含め、デジタル改革関連法案の3番目、個人情報保護法の問題点が語られました。メモを取りながら聞いていましたが、途中から想像以上に深刻な事態になっていることを知り、手を止めて聴き込んでしまいました。法案が可決したら恐ろしい事態になるのではなく、安倍政権下から着々と進行中の事態が法律によって後付けの総仕上げ、そのように感じました。
 民間事業者の利益のために国が国民の情報を好き放題に差し出すことを目指している日本ですが、GAFAなど巨大民間企業が個人情報を収集するアメリカ型、政府が治安対策でデジタル監視社会を率先して進めた中国型、そしてナチスが個人情報をユダヤ人迫害に利用した経験から個人情報利用に歯止めをかけるEU型が紹介され、果たして日本はどこに向かうのか、そうした議論が全くなされていないまま強引にデジタル庁が作られます。動画の主だったところを書き起こしました。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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基地原告情報も提供対象 参院デジタル法案審議で判明
引用元)
 デジタル庁創設などを盛り込んだ「デジタル改革関連法案」が14日、参院で審議入りした。法案には個人情報保護法改正も含まれる中、この日の審議では、国を相手取った訴訟の原告の情報を外部に提供しようとしていたことが判明。衆院に続き、個人情報のあり方を含む論戦が始まった。
(以下略)
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配信元)


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4/14「誰のためのデジタル化なのか? デジタル法案が変える個人情報保護のルール」#デジタル法案
配信元)


3:40
 今回のデジタル改革関連法案は束ね法案で、主だった6つの法案の3つ目「デジタル社会形成整備法案」の中に、個人情報保護法案も含まれている。民間、行政、地方公共団体それぞれの個人情報保護法がバラバラであったのを1つに統合する。
5つ目の「預貯金口座仮法案」では、預金保険機構がマイナンバーと紐づけられた個人の口座を管理することになる。
 「デジタル関連法案」というとデジタル化が進むイメージだが、デジタル庁が無いとできないことなど無い。むしろデジタル庁の設立を機に、政府や自治体の個人情報の収集と利活用のルールが大きく変わる

懸念として、これまで個人情報保護のグローバルスタンダードに忠実に沿っていた地方自治体が、今回の改正で国のゆるい基準に合わせることで、2つの原則がなくなる。
 ①「本人同意」に基づいて個人情報を直接集める
 ②センシティブ情報の収集禁止

なぜこのような改変が必要なのか議論が尽くされていない。

22:15
国の本音は収集した個人情報を民間に提供して利活用を進めたい。ここが怖いところだ。自分の知らないところで自分の情報がどう使われているのか、追うこともできない、知ることもできない、やめてくれということもできない。

33:40
給付金を効率的に配るための利活用がうたわれるが、そのために何かを犠牲にしてはいけない。
監視社会への不安や銀行口座への紐付けの反発はあるが、実は2018年以降すでに銀行や証券会社などはマイナンバーとの紐つけは義務つけられており、知らないところで個人情報の制度は進行している。一概に否定できないが、本人が自身の情報をどう利用させるかの議論が必要。

40:00
政府がコロナという非常時を口実にして、これまでなかなか進まなかったことを一気に進めようとしているのが、このデジタル改革関連法案だ。非常時にシステムを利用したいのではなく、日常的に個人的なデータを客観的に把握して、個人の税負担や社会保険の給付のバランスを掴み、給付をいかに抑制するかに利用したいという政治的な考え方からきている
特にマイナンバーカードは先行して健康保険証とすでに紐つけが済んでいる。経済財政諮問会議では保険証を廃止してカードに一体化という議論まで出ている。
顔認証、病院、治療歴、薬、電子カルテ情報など個人の医療情報が大量に集積され、ビッグデータ化した時に、ビジネスチャンスとなる。匿名加工した個人情報の「オプトアウト」という断らない限り利用されるという法改正もすでに行われている

44:00
すでに1億2千万人の医療情報は一元化されマイナンバーに紐付けされている
衆院での野党修正案に盛り込んだ「自己情報コントロール権」は憲法13条(個人の尊重)に保証された権利だが、採決では文言を消され明文化できなかった。先進的な自治体の条例がこれによって後退するかもしれない。

49:25
国は、官民でデータをどんどん使いましょうというスタンスで、個人情報の使い方を公募にかけている。
各省庁が非識別加工した個人情報ファイルを提供し、民間が自由に活用する方法を提案することまでされている。「住宅金融支援機構」が住宅ローンを貸し付けた118万人分のデータを住信銀行(SBI)に提供していた。住信ではAIによる貸付審査基準の構築に利用したが、一企業のために個人情報を使われ、国民の利便には適ったのか。また防衛省が訴訟原告団・弁護団の個人情報ファイルを公募にかけていた。訴訟への萎縮を生む

警察は被疑者の顔写真を無罪が確定しても破棄しない

56:40
どんなに非識別加工をしても、解析能力の飛躍的な向上によりかなりの確率で識別できる。リスクを認めつつ公益性をどこまで認めるか。今は事業者のニーズに応える方に傾いている。安倍政権以降、個人情報を経済成長戦略に組み込んできた。個人情報保護するためには、前提として情報開示と市民参加の発想が必要になる。行政の裁量に委ねると可視化されないので、説明責任や透明化が求められる。
本人のよくわからないところで何かをされているという不信感を生む。

1:15:20
知っておいて欲しいこととして、国民の知らないところで収集されたデータがある
通常、各省庁は個人情報ファイルを業務単位で持っている。ファイル簿を作る前には総務大臣に通知する仕組みがある。しかし実際は、犯罪捜査とか公安情報、防衛情報、外交関係などインテリジェンス分野はそもそもファイル簿を作る必要もないし、公表の必要もないし、総務大臣への通知の仕組みもない。これらの分野は何をやっているか誰も把握していない。内部管理用のファイルは作られているはずだが、改正法が通ってもこの分野を通知する仕組みがない。
全否定する必要はないが、民主的にどうやってコントロールするか、特に人権に関わる部分をどうやって守るか、国民的な議論になったことがない

日本の国民がどうしたいのか、行政が違法なことをやっていないか立法府側のチェックする仕組みが必要。

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