ままぴよ日記 85 「日本の子どもの睡眠時間は世界一」

 まだ子ども達が小さかった頃、夕食後にテンションがあがって大騒ぎをしているのを怒りまくって眠らせたものの、涙の跡が付いた寝顔に懺悔する気持ちで始めた本の読み聞かせ。

 嬉しそうに一人一冊持ってくるので4冊の本を読むことになりました。子ども達は私の周りに川の字になって横になり、耳を傾けます。読んでいるうちに物語の世界に入って行きます。時には感情移入しすぎて泣くことも。でも最後は安心するお話を選んでいました。

 1人ずつ寝落ちして安らかな寝息が聞こえてくるときの幸せ感。「ああ、今日も一日終わった」と安堵したものです。

 今はそれが子ども達の子育てに伝承されています。

 今回は今どきの睡眠について書きます。
(かんなまま)
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朝の授業中が眠たくてたまらない


コロナが少し落ち着いてきたので、学校から電子メディアの規範授業の依頼が増えています。主に小学4・5・6年生。中学1・2・3年生です。

その中で、特に力を入れて話すのは、体を通して遊ぶ事(体験)と睡眠の大切さです。でも、日本の子ども達はどちらも世界一少ない状況かもしれません。

特に驚くのは、全ての学年で11時以降に寝る子が多いのです。何をしているのか聞くと、ほとんどがゲームや動画視聴です。


スクリーンを通してブルーライトを見続けているので生物時計と言われている視交叉上部と松果体が影響を受けて、寝るためのホルモンであるメラトニンの分泌が止まるのです。それで眠れなくなります。通常は朝起きたら太陽を浴びてセロトニンが分泌され、その15時間後にメラトニンが分泌されて眠たくなるものです。

その上、脳が強い刺激を受けて交感神経優位になっています。それで益々眠られなくなり、体内時計が後ろにずれて、朝起きられないのです。

これを睡眠障害と言いますが、コロナ前に比べて病院を受診する子ども達が2倍になっています。でも、専門病院が少ないので、適切な治療を受けないまま不登校になり、益々ゲーム漬け。結局はゲーム依存症になり日常生活が送れなくなります。

日本人の平均睡眠時間(15歳~64歳)は6時間半です(2015年厚生労働省)。ちなみにアメリカは7時間48分、カナダは7時間40分です。NHK国民生活時間調査(20歳~59歳2020年)では50年で1時間以上短くなっているそうです。日本の10歳児の平均就寝時間は22時05分。オーストラリアは20時42分です。



もう一つ問題は、休日と平日の睡眠が大きくずれている子どもが多く、ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)状態になっていると言われています。その差が2時間以上になると月曜と火曜日の朝が体調不良を起こしやすいのです。小中学生の1割がこの状態だそうです。学校に行き渋るのも当たり前です。特に朝の授業中が眠たくてたまらないとの事。

睡眠不足はイライラや鬱、不安、無気力につながります。特に抑うつは4,5倍高くなるそうです。子ども達が朝から何もする気が起きない・・なんて昔では考えられなかったけれど、今の現実です。

NHKの「おはよう日本」で、町をあげて眠育に取り組んでいる堺市の実態が放映されました。眠育アプリを使って睡眠時間を自己管理する方法も紹介されていました。


自分の生活リズムを知るという意味では、アプリを使うのは有効かもしれません。でも、今の時代は何でもアプリで管理してアドバイスをもらいます。子育てに関しては栄養管理アプリ、授乳管理アプリなどです。生身の自分や目の前の子どもを見ないでアプリに管理指導される生き方は怖いなと思います。やがては何の抵抗もなくAIに管理されて行く事でしょう。

本来は寝る前に「○○時に起きる」と自分に言い聞かせると自然に目が覚めるものです。逆にこの能力を眠らせてしまいます。


脳を育て、体を成長させてくれる大事な子どもの睡眠


さて、人生の3分の1は睡眠時間と言われています。特に子どもは成長期なので、質のいい睡眠が大切です。

例えば、睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠がありますが、先ず寝入りばなは脳を休ませて深い眠りになります。体は起きているので寝返りを打ったりします。それがノンレム睡眠です。寝入りばなの一番深いノンレム睡眠の時に子どもは成長ホルモンが出ると言われています。

交代でレム睡眠(Rapid Eye Movement急速眼球運動)がやってきます。今度は体を休ませるので身体は動きませんが脳が働いています。人は目が動いている時に夢を見ていると言われています。そして、その日体験したことを復習して記憶させるのです。子ども達は記憶に関係する海馬の働きが活発です。特に太陽の光を浴びて楽しく体を動かしていると海馬も大きくなるそうです。


余談ですが、胎児はレム睡眠が75%、新生児は50%だそうです。小さいほど睡眠時間も長いし、身体より脳が働いているという事でしょうか。2~3歳頃になったら20%がレム睡眠でノンレム睡眠の方が長くなるそうです。このように子どもの睡眠は脳を育て、体を成長させてくれる大事な時間なのです。

さて、授業で電子メディアを使い過ぎないように話して下さいと言われますが、好きなものを一方的に否定されると耳を塞ぎたくなるものです。親自身もスマホが手放せないので耳が痛いです。

少し問題の視点をずらして、睡眠の大切さを伝えたら電子メディアの時間を減らさなければいけないと思ってくれるのです。

でも、今はコロナで子ども達の行動が制限されています。それに伴い「友達と交流する機会がなくて寂しい」「生きづらい」と訴える子ども達が増えています。依存症は孤独の病でもあるのです。

まさに、ゲームの世界が現実を忘れさせてくれる。ゲームの話でネット上の友達と盛り上がる。SNSで皆と繋がる。TikTokでショートムービーを送って自分をアピールしたい等、子ども達にとっては唯一のコミュニケーションツールになのかもしれません。

子育てセミナーでも、ママ達が子どもと2人の時間を「音がないのが寂しいので一日中テレビをつけています」と言います。「試しに授乳中にテレビを消して赤ちゃんの様子を観察して」「授乳中にメールチェックしないで」と大人の宿題を出すと、「赤ちゃんが私を見ていました」「おっぱいを飲む音に気が付きました」と嬉しそうに話してくれます。

子育ては孤独だと思っているママ達。人恋しさ、情報恋しさでスマホを使ってしまいます。

本来、子育ては孤独ではないはずです。目の前に自分を必要としている赤ちゃんがいます。スマホを置いて「赤ちゃんと同じように匂いを感じて」「柔らかい肌を感じて」「耳を澄ませて赤ちゃんの声を聞いて」「心を澄ませて赤ちゃんの存在に集中して」と伝えたいです。

でも、人と関わるアンテナを外ばかりに向けていると、赤ちゃんのいる生活の豊かさに気が付きません。1人社会から取り残された気持ちになるのです。そして、社会とつながるためにテレビやスマホを見たくなるという悪循環に陥ります。やがて赤ちゃんも生活音に興味がなくなります。今の時代は赤ちゃんの時から電子メディア漬けなのです。


これはママだけが悪いのではありません。「子育て罰」(三富芳・桜井啓太著 光文社新書)という本に「社会のあらゆる場面で、まるで子育てすること自体に罰を与えるかのような日本の政治、制度、社会慣行、人びとの意識」「親子につめたい子育て罰大国・日本」と書かれています。まさに、子育て罰をなくすか?子どもを日本からなくすか?と問われているのです。

ある町は「子どもの育ちを一番に考える」と決めて、子どもを9時までに寝せるために塾も9時前に終わるように協力要請していると聞きました。目立たないけれど取り組んでいる所があると思うと勇気が出ます。社会でできる事、家でできる事はたくさんありそうな気がします。

子どもを日本から無くしたくありません。


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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