『公害PFOA』のおさらい

ちわ〜!

よく来たな、今日の昼めしは特製チャーハンだ。

やったー!

どや! プロの味だろ?

おいしい! パラッパラ炒飯!

PFOA(ピーフォア)の話を聞いてから、すぐにテフロンを捨てて、
鉄のフライパンで、ようやくここまでできるようになったぞ。

モグモグ・・。

ところで、
例のPFOA公害、あれからどうなった?

う〜ん、相変わらず、責任のなすり合いと言うか。
日本の縮図が見えると言うか。

ほお、どうゆうことか、くわしく聞かせてくれ。

それならまずは、「『公害PFOA』ここまでのおさらい」の
〈前編〉と
〈後編〉を参考に、復習してみようか。

食後だから、眠くならないようにたのむ。

じゃ、クイズ形式なんてどう?
では第1問、
《 PFOAとは、1930年代に開発された「ペルフルオロオクタン酸」の略で、有機フッ素化合物の一種です。「水や油をよく弾き、分解されにくい」というPFOAの性質を利用して、世界中で大ヒットした製品とは何でしょう?》
テフロン加工の「焦げ付かないフライパン」。
アルミ製フッ素加工のフライパン

ピンポ〜ン!!

こんなんまちがえたら、おれ、認知症だぞ。
さっき、話してたばっかだろ。

第2問、
《 PFOAは、フライパン以外にどんな生活用品に使われているでしょうか?》

う〜ん、くっつくと困る、だな。
炊飯器の内釜、ハンバーガーの包み紙、防水スプレーもそうだな。

カンペキ!!
第3問、《日本には、PFOA製造の世界8大メーカーの一つがあります。
なんという企業でしょう?》

そら、あんた、今話題の「ダイキン」でしょうが!

当たり〜!!
第4問、
《1960年代、アメリカではPFOAの有害性がわかってきました。
PFOAの特徴とは、なんですか?》

これは、難しいぞ。
たしか、PFOAの別名は「フォレバー・ケミカル」って言ってたな。
つうことは、永遠に残る、分解されねえからヤバイんだよなあ。

ピンポンピンポンピンポ〜ン!!
「人間を含め、あらゆる生物が分解できない、環境的にも壊れない、永遠に残る化学物質」です。
では、第5問、
《アメリカで確認されたPFOAの副作用には、どんなのがありますか?》

えっとお・・
たしか、PFOA生産の全盛時代、大阪市で生まれた子供が低体重とか言いよらんかった?
あと、がんもあったような?

正解!!
低出生体重児、妊娠高血圧症候群、肝・腎障害、精巣がん。
他に、奇形児の出産もあったんだよ。
「
ダーク・ウォーターズ」って映画、知ってる?
1981年、デュポンのPFOA工場で働いていた女性従業員7人中2人から、顔面奇形の子どもが生まれた。この問題で、デュポンと戦った弁護士の話なんだって。
映画に登場する奇形の子は、実際にその当人なんだって。

へえ! そいつは、衝撃的だ。

つぎ、第6問、
《 2020年、環境省は、日本全国の地下水や河川のPFOA濃度を調査しました。日本でもっともPFOA濃度が高かったところは、どこでしょう?》

大阪、摂津市の地下水。
たしか、ブッチギリの第1位だったよな。

そうです!!
ダイキン淀川製作所のある摂津市。
なんと、環境省が定めた目標値の36倍でした!
翌年の調査でも、第1位はダイキンの近所で、目標値の110倍でした!

PFOAばらまいた犯人は誰か? 火を見るより明らかだわ。

つぎ、行くよ。

ま、一息、茶でも、飲めよ。
2019年PFOAが最も危険なランクの化学物質に分類、廃絶が決まった

サンキュー。
ここまで明らかなのに、ダイキンはシラを切り続けているんだよ。
実はあれから、
中川記者はダイキンの「社外秘文書」を入手した。
そこには、2002年度に、ダイキンがPFOAをどこにどれだけ捨てたかが書かれてあった。

ほうほう、そいつはスクープだ。
ダイキンは、2002年度の1年間に、なんと12トンのPFOA排水を外に捨てていた。
それも、工場近くの用水路にそのまんま流してたんだよ!

ええええ!?
用水路の水って、農作物にまく水だろ?
PFOA水を? 12トンも?
そりゃ、そこで育てた野菜を食って、高濃度のPFOAが検出されるわな。

大阪府による直近の調査でも、この用水路のPFOA値は格段に高かった。

おいおい、いったいそれが何年続いたんだ?

ダイキンがPFOAを製造していたのは、1960年代後半から2015年。
少なくとも55年間。(
Tansa)

ええええ!?
住人が利用する用水路に、50年以上もPFOAが垂れ流されていたのか?

たとえそれが原因で亡くなっていても、PFOAが原因とは思わないよね。

ダイキンが、知ってて流していたとしたら大罪だな。

ダイキンがPFOAの毒性に気づいたのはいつなのか?
中川記者がダイキンの担当者に聞いた。
ダイキン「危険性を認識したのは2006年」
中川 「その時点で摂津の住民に、多量のPFOAを用水路に流していた過去を伝えたのか」
ダイキン「知らせてないです」
中川 「なぜ知らせないのか」
ダイキン「危険な物質とは認識できてなかったから」
中川 「2006年に認識されたって、おっしゃったじゃないですか、今」
ダイキン「それはあの〜、何年に危険性を認識したかっていうのは、あの〜、それはわからないです」
中川 「なんでわからないんですか。わかる人、連れてきてくださいよ」
ダイキン「(PFOAは)危険なんですか? 」

おっと!!

これには、中川記者も驚いた。
「PFOAが危険かどうか、ダイキンから聞かれるとは思ってもいなかった。」
(
Tansa)
さあ、ここで第7問です。

またクイズ?

カッコの中を埋めなさい。
《日本も批准する国際条約『・・・・・』では、2019年にPFOAが最も危険なランクの化学物質に分類され、廃絶が決まった。》(
Tansa)

う〜ん、日本も批准する? 「批准」ってなんだ?
ストックホルム条約締約国(緑色)

そんなん、聞いたこともねえよ。

第8問、
《てことで、ようやっと2021年10月、日本の経産省もPFOAを禁止しました。PFOAの何を禁止したのでしょうか?》

PFOAの存在!

惜しい〜
PFOAの「製造と輸入」を禁止しました。

そりゃ、世界に足並みを合わせてやったんだろ。
けど、未だにテフロンフライパンや、テフロン加工の炊飯器を使ってるヤツもいるぞ。
そもそもPFOAの危険性さえ、知らねえヤツ多いぞ。

PFOAがヤバイこと、まったく宣伝しないよね。

それも、ダイキンをかばうためだとしたら、おれたちは永遠に知らされないままか?
市民よりもダイキンが心配な摂津市長

かもね。
つぎはダイキンに関するクイズだよ。
第9問、《ダイキン淀川製作所が現在の場所にやってきたのは1941年。
当初は、何を作る工場だったでしょう?》

軍需工場だったんだろ?
砲弾や飛行機の部品かな?

ピンポン!
第10問、《戦後は、何を作る工場だったでしょう?》

エアコン。

それも作ってたけど、本業はフロンの製造だったんだ。
ダイキンはフロンで大きくなった会社なんだよ。
フッ素技術で世界のトップだったデュポンに、追いつき追い越せで大きくなった。
だけど、1955年以来、工場周囲でフッ素ガスによる農作物や畜産への被害が見られ、周囲に多大な迷惑をかけるようになった。
第11問、《それに対して、ダイキンは何をしたでしょうか?》

何をした? わかった、住民のごきげんを取った。

ま、そんなとこだね。
摂津市民のための盆踊り大会やバスツアーを毎年開催して、住民を招待しました。
多くの地域住民を雇用し、行政にも税収で恩恵をもたらしました。

そうやって、「ダイキン城下町」ができ上がった。
そして誰も、ダイキンに刃向かえなくなりました。
おしまい!

いや、最後に第12問、
《ダイキンによるPFOA汚染は、摂津市が初めてじゃありません。実はアメリカでもやらかしていたんです。
2005年、アラバマ州テネシー川でPFOAが検出されました。
それは、上流のダイキンを含む3社のPFOA工場が原因でした。
2013年、3社は水道局と住民に訴えられ、
2018年、原告とダイキンの和解が成立しました。
さて、
この時、ダイキンはいくら支払ったでしょうか?》

ええ? そんなのわかんねえよ。

答は、
400万ドル ( 約4億4000万円 ) でした。
このおカネは、PFOA除去のために使われたそうです。

4億円!
アメリカじゃ、ずいぶん、あっさり支払ったんだな。
それなら、日本でも支払うよな。

だといいけど、日本じゃ、一筋縄には行かないみたいだよ。
2022年3月29日、摂津市議会はダイキンに対して、情報公開、汚染対策を要請すると決めた。
そこから1年、テレビでもPFOAが話題に上るようになった。
ただ、中川記者はこう言う。
「ようやく新聞やテレビが重い腰を上げた。
ところが、報道内容を見た私は呆れた。
汚染源である『ダイキン』の名前を出さずに報じているのだ。
1月31日の朝日新聞朝刊一面も、「工場などが汚染源になっていると指摘される」と書くだけで、ダイキンの名前は出さなかった。(
Tansa)

よっぽど、CMを降りられたら困るんだろうな〜。
中川記者は、ダイキンの「社外秘文書」以外に、もう一つの重要書類を見つけている。
それは、
1977年にダイキンと摂津市の間で取り交わされた「環境保全協定書」。
そこには「ダイキンが地域住民に被害を及ぼした場合、ダイキンが補償する内容」が書かれてある。

ワオ!
これで、補償してもらえるんじゃねえの?

たしかに、この「環境保全協定書」を、
ダイキン幹部に突きつけたところ、彼らは「摂津市から要請があれば協議は始めたい」と言った。
中川「摂津市がダイキンに要請すれば協議が始まるということですか」
ダイキン「摂津市から要請があれば、協議は始めたいと思います」。(
Tansa)

摂津市がやれと言えば、ダイキンは動くんだな。

ところが、
ところが、肝心の摂津市が及び腰なのよ。
市は、PFOAは「環境保全協定書」の補償に当てはまらないと言う。
摂津市の森山市長も、「環境保全協定」に基づきダイキンに協議を要請することは「今のところない」と言う。(
Tansa)
摂津市の森山市長

外国じゃ、PFOA=有害が常識になっているんだぞ。

デュポンのPFOA工場の周辺住民7万人の調査結果で、PFOAと健康被害の因果関係が証明されたと言っても、
「今のところ、具体的に、日本ではそういうことは認められていないのは事実です」
「(将来的な健康被害の)おそれがあるんですか? 」と言う。(
Tansa)

カンペキにボケとるな。
「今のところ問題ない」「ただちに影響はない」じゃダメなんだよ。

中川「協定書に関しては、及び腰になる必要はない。ダイキンが協議に応じると言っているからだ。それにもかかわらず、摂津市はチャンスを棒に振っている。」(
Tansa)

う〜ん。これは、もしかして?

そう、ついに本音が出たよ。
森山市長「事業所だって困る。こんなんいつまでもやってたら」。(
Tansa)

「事業所だって困る」!
市長は、市民よりもダイキンが心配なんや!

中川「森山の本音を見た思いだった。この期に及んで、ダイキンの心配をしているのである。
協定は森山にとって市民を守る『チャンス』ではなく、むしろダイキンの責任を追及することになる『ピンチ』だったのだ。」(
Tansa)

はあ〜 ダイキンの支援で市長になってたら、言いたいこと言えねえよなあ。

そんな、あきれた市長を尻目に、市民たちはがんばっている。
去る2月24日、摂津市民からなる「PFOA汚染問題を考える会」は、大阪府の吉村知事宛に2万3788人分の署名を提出し、大阪府は、汚染源であるダイキン工業に対策を求めることを明言した。

おお! 大阪府は動きそうだな。

3月8日に、環境省にも同じ署名を提出したが、こっちは重い。
中川記者はメルマガにこう書いている。
「環境省はダイキンに対して対策を取るよう求めるのかを尋ねました。答えはノーでした。市民たちの『不安の声を認識した』としても、環境省は汚染源に対して行動はとらないのです。市民の切実な声を煙に巻こうとする官僚のずるさをみた気がしました。
」

官僚のずるさ・・。

中川記者は訴える。
「私がこの1年半の取材で直面したのは、本来は市民の味方である自治体やマスコミの『傍観』だった。」
市民は署名活動を立ち上げ、地元議会は全会一致で国への意見書を可決した。
国会でも審議された。だが、新聞やテレビは報じない。
国も責任があるのに、環境省、経産省、農水省は「傍観者」の域を出ていない。(
Tansa)

必死に訴えても、のれんに腕押し、馬の耳に念仏。

ジャーナリストとしての
中川記者は言う。
「結局、誰を向いて仕事をするのかということだと思う。
私は、ダイキンでも上司でもなく、被害者の方を向く。
自分の血液から非汚染地域の数十倍ものPFOAが検出された人や、地域の子どもたちのことを心配してダイキンに対策を求める署名に奔走した人たちを置き去りにするわけにはいかない。」(
Tansa)

カッけええ!!

こういう熱い人、応援したくなるよね。
Writer
ぴょんぴょん
1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)
「フォレバー・ケミカル」のその後はどうなったのか?
PFOAを世間に知らしめた、Tansaの中川七海記者の記事を元にまとめてみました。