————————————————————————
ユダヤ問題のポイント(日本 平成編) ― 第12話 ― 民主党の変質
裏切りの菅内閣
2010年(平成22年)6月、沈没した鳩山内閣と交代で首相となったのが菅直人氏でした。民主党が躍進した体制は、小沢一郎氏、鳩山由紀夫氏、菅直人氏によるいわゆるトロイカ体制でした。このため、鳩山首相に代わり菅直人氏が民主党の代表として首相に就任したのは、一見は自然に見えるものでした。
首相官邸 [CC BY]
しかしそうではなく、これは明らかに民主党内クーデターによるものでした。同じ民主党政権であっても菅内閣は、それまで鳩山内閣が示していた指向性と全く逆の方針を掲げ、実行していくのでした。鳩山内閣が日本国民の生命と生活を大切にする方針を示していたのに対し、菅内閣は、(無国籍)大企業など既得権益勢力に与する政治姿勢を示したのです。
まず2010年6月、成立した菅内閣は直ちに消費税増税の方針を打ち出したのです。このまま同年7月11日の参議院選挙に突入します。当たり前のように民主党は参議院選に負けて、自民党が参議院を制します。これで再びのねじれ国会となります。
次いで、(これについては後に取り上げますが、)同年9月14日に民主党代表選が、菅直人氏と小沢一郎氏の一騎打ちで行われます。結果だけを言うと、菅直人氏が勝利しました。
また、その前の9月7日には尖閣諸島近海で、海上保安庁の巡視艇と中国の漁船が衝突する事件が発生しています。
結果だけを言うと、この尖閣事件によって日本と中国の関係は最悪の関係となっていきます。鳩山内閣が掲げた「東アジア共同体」など雲散霧消となりました。この尖閣事件の発生が誰の利益に叶うものだったのかは明らかでしょう。
そして…TPPです。2010年10月27日 の『長周新聞』は以下のように報じています。
「TPP=環太平洋戦略的経済連携協定」という、聞き慣れない貿易交渉への参加検討を、菅首相が10月1日の所信表明演説で突然表明した。それも11月中旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までの短期間に結論を出すというのである。100%の関税撤廃を原則とするTPP参加は、日本の農漁業を壊滅させ、国をつぶす重大問題として、全国の農漁業者の猛烈な反発が起こっている。それは製造業の海外移転と逆輸入を有利にさせ、一部の大資本のみが外国に逃げて生き延び、国内は空洞化し雇用はなくなるというもので、度はずれた売国・亡国政治にほかならない。
9月に小沢一郎氏との民主党代表選を制した菅直人首相は、10月1日、その改造内閣の所信表明で突如として「TPP=環太平洋戦略的経済連携協定」への参加検討を発表したのです。それも早期決定事項として。
TPPとは、ロックフェラー一族の部下であるシカゴ学派が進めてきた新自由主義・市場原理主義の決定版です。日本市場の全ての明け渡し=日本構造改革の究極版と言っても良いでしょう。『長周新聞』が指摘するように、日本のTPP参加とは「度はずれた売国・亡国政治にほかならない。」でもあります。菅直人氏が誰に取り込まれていたか? 菅内閣が誰のための政治を行ったか?は明白でしょう。
再び敗戦に向かう日本
前回に触れたように、「リチャード・アーミテージとジョセフ・ナイのいわゆるジャパン・ハンドラーは、鳩山首相の東アジア共同体構想に反対に動いていたこと」と2010年9月の尖閣事件が無関係であったとは思えません。北方領土問題が日本とロシアの紛争の種としてアメリカが設置していたと同様に、日本と中国の領土に関する紛争の種として、尖閣諸島はアメリカによって設置されていたものでした。日本と中国が歩み寄りを見せれば、この尖閣諸島問題をアメリカの戦争屋グループが発動させるのは自然なことなのです。ともあれこの尖閣事件以降、日本と中国の関係は大変に悪化しそのまま現在まで続いています。
そしてTPPについてですが、これもアメリカが参加することになった時点で、TPPはアメリカ側による中国包囲網戦略の部分も色濃くあったものです。中国を包囲し抑え込み、あわよくば中国解体までもっていく構想とともにTPP参加国の富も収奪する、これがTPPの構想だったわけです。菅内閣は、先述したリチャード・アーミテージやジョセフ・ナイなどの米国戦争屋に属するジャパン・ハンドラーや、CSISのマイケル・グリーンなどに言われるがままにTPPへの参加意向を示したもののはずで、菅内閣自体がTPP参加の意味をどこまで把握していたのかは不明ではあります。
ただし、TPPに参加することの日本への影響・意味という限りに置いては、菅首相は2011年(平成23年)1月の所信表明で改めてTPP参加を「平成の開国」「第3の開国」と表現し、その本質をいみじくも表していました。
ここで言う日本の「第1の開国」とは一般にいう幕末におけるペリーの来航からの「日米修好通商条約」です。本質は日米条約よりも日英条約にあるのですが、要はイギリス東インド会社という強奪企業に、日本が脅しによって結ばされた不平等条約が「第1の開国」です。
「第2の開国」は太平洋戦争で日本が敗北し、無条件降伏で国を明け渡したことを意味します。日本を支配したGHQの背後には軍産複合体などと呼ばれるイギリス東インド会社の流れを汲む強奪企業群がありました。
そして、菅首相は日本のTPP参加を「平成の開国」「第3の開国」と言ったのです。TPP参加によって平成期に日本は再び敗北し、強奪企業群に改めて日本を明け渡して好き放題にしてもらう、これが「平成の開国」「第3の開国」の意味です。どの時点で菅直人氏が取り込まれていたかは不明ですが、ジャパン・ハンドラーなどにとっては菅直人氏は非常に使い勝手のいい人物だったはずです。
Wikimedia Commons [Public Domain]
そして菅内閣のTPP参加発言以前にも、その後の日本への深い影響を与える大事件を菅直人氏サイドは引き起こしています。2010年9月14日に実施された民主党代表選がそれです。この選挙でムサシシステムが初めて?発動したのです。
民主主義根幹の崩壊へ
2010年6月、菅内閣はそれまでの民主党マニュフェストに反する消費税増税を発表、民主党支持者を裏切り、7月の参議院選に突入し惨敗していました。普通であればこの責任をとって菅直人氏は代表を辞任すべきところです。しかし彼は居座り同年9月14日の民主党代表選にのぞみ、小沢氏との一騎打ちとなったのでした。
状況としては小沢氏は陸山会事件で検察とメディアからの総攻撃を受けていました。しかし種々の工作でも、検察は小沢氏本人の起訴はできませんでした。ただし、検察は9月14日の民主党代表選に合わせてウソの捜査報告書をねつ造して、検察審査会が小沢一郎氏を強制起訴するための工作を展開していました。しかしそのような状況でも、民主党支持者の菅直人氏への裏切りに対する不信感や怒りは強く、代表戦で菅氏が選出される雰囲気は全くありませんでした。
ところがメディアの発表では、党員・サポーターでの支持は菅氏サイドにありとのものでした。明らかにおかしな報道でしたが、どうなるか見守りました。
その代表戦の様子は以下の「植草一秀の『知られざる真実』」2013年12月1日記事を見てください。
民主党代表選の流れを決めたのは、党員・サポーター投票における菅直人氏の圧勝(編集者註:画像へのリンクはシャンティ・フーラによるもの)だが、この選挙集計が改ざんされたものであるとの疑いが濃厚に存在する。
民主党代表選を一括受注したのは、株式会社ムサシである。
筑波学園都市にある株式会社ムサシの電算センターが党員・サポーター投票の集計を行ったが、この集計に巨大な不正があった疑いが消えていないのである。
民主党支持者の大半が小沢一郎支持者であり、小沢一郎氏の優位は揺るぎようがなかったが、NHKを中心とするマスメディアが、小沢一郎氏を攻撃する報道姿勢を貫いた。
この謀略工作によって、日本の歴史は改ざんされてしまったのだ。国会議員の票は小沢氏に集中していました。しかし党員・サポーター票は菅氏に流れ、菅氏が表向きは代表戦に勝利したのです。
しかしこの選挙は不正選挙の疑いが極めて濃いものでした。何しろ、確か一週間前からの党員・サポーターの事前投票の票を管理していたのは、つくば学園都市の株式会社ムサシの倉庫でした。そして当日の票の管理と集計も全てが株式会社ムサシが取り仕切ったのです。こうなれば、いくらでも意図的な票の集計改竄は可能です。
このこと自体が異様なのですが、それが通ってしまったのが9月14日の民主党代表選だったのです。選挙は民主主義の根幹です。その根幹の崩壊の始まりでした。
2007年7月末に行われた参議院選挙で勝利し、参議院第1党となった頃の小沢一郎代表の民主党は、小沢一郎氏、鳩山由紀夫氏、菅直人氏の3名によるトロイカ体制とされていました。3名の仲間です。その民主党が鳩山代表時に政権を握りましたが、それから1年足らずの2010年6月に沈没し、菅直人氏が民主党代表の首相へと交代しました。
しかしこの時すでに菅直人氏は、鳩山氏と小沢氏が敵としていた勢力に完全に取り込まれていたのでした。消費税増税を停止し、「年次改革要求書」を破棄して日本の構造改革にストップをかけ、東アジア共同体を掲げ、日本の自主独立を方針に掲げた鳩山民主党でしたが、菅民主党は消費税増税へ、日本構造改革の決定版へ、中国との関係悪化へ、そして民主主義破壊へと日本の舵を切っていくのでした。現在の貧困日本と直結しています。
それではその菅直人氏が日本破壊への悪意に満ちていたか?というとそうでもなく、彼は単純に日本国総理への野心が強かっただけだと思います。その菅氏の野心がつけ込まれたのです。そして野心につけこみ菅氏を取り入れ、民主党を内部から完全変質させた連中も野心の奴隷だったでしょう。
結局は野心が野心を呼び込む、突き詰めれば本当の最大の敵とは、一人ひとり私達の内部にある野心ということにはなるのでしょう。