ぴょんぴょんの「和歌山カレー事件」 ～検察に作られたシナリオとマスコミに踊らされた私たち

冤罪らしい。

和歌山カレー事件だよ。

知らんのか？と言っても、あれから26年も経ってるからな。和歌山の70〜80人の人口の町で、夏祭りのカレーを食った63人がヒ素中毒になり、4人が亡くなったのよ。

当時、犯人に疑われたのが林眞須美というオバちゃん。報道陣に家を取り囲まれて、オバちゃんが報道陣にホースで水をかける様子が、何回も流れてた。

近所とのトラブルだとか言われてたが。林眞須美は当時、旦那と子ども4人の6人家族。旦那は過去にシロアリ駆除の会社をやっていて、家には駆除用のヒ素があった。

ウィキペディアには、「班長の立場にありながら、夏祭りの運営の仕事を断り、深夜までカラオケに出かけていた」「夕食としてレトルトのカレーを自身の子供たちに食べさせ、夏祭りカレーの無料引換券を住民Dに渡して処分した。」

それだけじゃない。林眞須美はカレー事件以前に、旦那や従業員にヒ素を飲ませて、入院させて保険金をせしめる、保険金詐欺を数十件やって、贅沢三昧だったらしい。

当時は、「毒婦」と呼ばれてたな。

眞須美は殺人容疑で、旦那は保険金詐欺に加担したとかで逮捕され、子ども4人は施設に預けられた。だが、ヒ素を飲ませたのは眞須美ということで、旦那は5年くらいで出所したが、2009年5月、眞須美は死刑判決を言い渡されている。

おれも、当時はそう思ってた。

信じられないだろうが、冤罪らしい。

保険金詐欺は、眞須美がヒ素を飲ませたんじゃなかった。みんな自分で飲んだのよ。

さっきも話した通り、眞須美の旦那は、シロアリ駆除の会社を経営していた。が、ギャンブルにのめり込み、カネに困っていた。そんな時、眞須美の母親が亡くなって、うん千万円の保険金を入ってきた。旦那はそのカネを競輪でスっちまった。眞須美に怒られた旦那は、「それなら、ワシが自分の体を張って保険金を取り返してやる」と言って、シロアリ駆除に使うヒ素を、耳かき3分の1くらい飲んで入院し、保険金を取り返したと言う。（FNNプライムオンライン）

これで味をしめた夫婦は、従業員も巻き込んで大々的にやりだした。数十件の保険金詐欺で入ったカネを山分けし、優雅な生活を送っていたそうだ。

よく言った！ そこなんだ！ いくら、更年期でカッとなったとしても、警察沙汰は避けたいはずだ。

この動画は、カレー事件の冤罪について数々の記事を書いているノンフィクションライター、片岡健氏のインタビューだ。片岡氏も言っている。「僕がそれまで林眞須美さんについて知っていたのは、何か、旦那さんとか周囲の人たちに保険を掛けて、ヒ素を飲ませて保険金詐欺を繰り返していた、というイメージだったんですね。そういうことをしていて、何となくカレー事件もやったんだろうと思っていたけど、仮にそういうことをやってたとすれば、保険金詐欺みたいなことを、かえってカレー事件みたいなことは、やらないんじゃないかなと。」（YouTube 4：46〜）

片岡氏がカレー事件に関心を持ったきっかけは、ロス疑惑の三浦和義だと言う。（YouTube 2：31〜）

そうか、おめえは知らねえんだな。三浦和義とは、1981年、ロサンゼルスで妻を殺害、保険金をだまし取ったとして逮捕されたヤツだ。一審では無期懲役になったが、直接証拠がないとして逆転無罪となった。

こいつも冤罪だったんだよ。三浦は「林眞須美さんの裁判はおかしい、冤罪じゃないか」と考えて、「林眞須美さんを支援する会」を立ち上げた。片岡氏は初め、三浦みたいな怪しい奴が、林眞須美みたいな怪しい奴を使って、商売するのかと思ったそうだ。（YouTube 2：54〜）

ところが、三浦について調べていくと、報道と違うことに気づいた。さらに実際に会ってみると説得力がある。妻を殺す動機もないし、カネにも困っていない。片岡氏「なんでこの人のことを、自分はクロだと思ったんだろうと、ふと、発想の逆転が起きた。それでパッと、林眞須美さんのことを思い出した、取材の席上で。」（YouTube 3：46〜）

そこで、片岡氏は三浦に聞いた。「（三浦は）林眞須美さんのことも支援してますけど、冤罪だと思っているんですか」と。すると三浦は、すごく自然な感じで「あれは冤罪だと思いますよ」と答えた。「なんでそう思うんですか」と聞くと、「だって、動機が無いですよね」「あの人、カレーにヒ素なんかを入れる動機が無いでしょ」と言われた。（YouTube 4：24〜）

もう一つ、片岡氏の目を覚まさせたのは、眞須美の旦那の一言だ。旦那はずっと「ヒ素は保険金を取るために、自分で飲んでた」と言う。だが片岡氏は、眞須美が死刑にならないように庇ってると思っていた。旦那に「なんで、自分がヒ素を飲んだことにしてまで、奥さんを庇うのか」と聞くと、旦那は「庇う訳ないじゃないですか」「なんで、嫁さんに殺されかけて、庇わないといけないんですか」「もし、眞須美がカレー事件をやっていたら、私はカレー事件が起きたせいで、私だって人生めちゃくちゃになったんです」と言われた。（YouTube 6：22〜）

そう。そして、事件の真相を知る上で、林眞須美の人物像も知る必要がある。片岡氏は2007年、初めて林眞須美本人と面会している。

だが、笑っちゃうのよ。大阪拘置所へ行った片岡氏、冤罪を信じつつも、実際、本人が真っクロだったらどうしよう？と、ビビってた。ところが面会室に入ると、林眞須美が「ゴメンな〜」と、笑いながら登場。湯上がりの真っ赤な顔で、頭のてっぺんにちょんまげを結っている。「ゴメンな〜、本当はもっと早く来れるんやけど、お風呂だったんやで。」片岡氏も脱力。「思ったのが、全然、人見知りしないんですよね、すごいなあと思った、ニコニコしながら。」（YouTube 7：32〜）

片岡氏「検察は、動機は近所の主婦とその場でちょっと気まずいことがあって、怒って（ヒ素を）入れたという主張をしていたんですけど、健治さん（旦那）は、眞須美は、もしそういうことがあれば、カレーにヒ素を入れるというセコいことはせずに、その場で殴りかかっていると、掴みかかっていると言っていた。」（YouTube 9：06〜）

また、長男の話では、「100の重大事件を振り返る」というテレビ番組で、1位が東日本大震災、2位が阪神淡路大震災、3位がオウム、そして4位がカレー事件で、5位がダイアナ妃の事件だった。「母に面会した時にそれを話したら、『私、ダイアナに勝ったの？』と言ってましたね。」（note）

悲しい辛いを話し合うような家族じゃなくて、ちょっとひょうきんな感じで、たまに笑い話したりするそうだ。長男「林家はひょうきんなんですよね。父のことも知っていると思いますけど。あんまりメソメソして会話しないというか。」（note）

眞須美は、死刑判決を受けた時の気持ちを語っている。「裁判官に勝手に決められた『私の犯行』を聞いていて、アホらしくなった」「判決の読み上げはバカバカしく聞いていた」と。（note）

ただ、長男が面会に行っても、強気なところしか見せなかった彼女が、旦那が行くと「死ぬのはコワい」と弱音を吐くそうだ。

事件当時10歳、現在36歳？ 「街録ch」にも、数回出演している。

もちろんだ。が、本人としては、一貫して無実を訴える母親を救いたいだけで、そっちにフォーカスされたくない。

林眞須美の一家は、いろいろ悪口を言われているが、長男によれば、仲のいいふつうの家族のようだ。兄弟姉妹バラバラに生活しているが、父親が出所してからは、みなで鍋を囲んだり、母親の面会にも行ったりしたそうだ。ただ、とても悲しい事件もあった。2021年6月、林眞須美の長女、つまり彼の姉さんが、前夫との娘を虐待で死なせてしまい、それを苦にして、幼稚園児の子どもといっしょに関空の連絡橋から飛び降りた。（現代ビジネス）

長男は、その時のことを淡々と語る。家族も子どもも持てない自分が、遺品として送られた幼稚園児のスモックを畳みながら、涙が流れたと。

幸せでなかった施設時代。学校で自分の素性を隠して、ウソをつき続ける毎日。ウソがバレて殴られた日。素性を正直に話したために、婚約が壊れた日。それでも、こいつは前を向いている。

就職してしばらくした頃、眞須美の死刑が決まった。そこから長男は、ネットで過去の資料を見始める。長男「僕が、『裁判所も間違えるんだ』と確信したのは、ハタチを超えて判決文を初めて読んだ時でした。判決文に書かれていることが、僕が見てきた事実と明らかに違うからです。」（note）

「たとえば、保険金詐欺は母だけではなく、父や家に出入りしていた大人たちが、みんなでやっていたことでした。僕は当時子供でしたが、父が『今回のアガリや』と居候の人にお金を渡したのを見ていたし、父が僕に『動けないふりしたら、何千万円入るんや』と話していたからわかるんです。ところが、判決文を見ると、母が父や居候の人に保険金目的でヒ素を飲ませていたことにされているんです」しかも、カレー事件の「殺意」と無理やり結びつけようとして、母親が「住人に対して激昂した」とまで書かれていたが、長男の記憶では、「そんな様子、一つもなかったけどな。」（note）

そして、取り調べのヒドさ。「僕も事件が起きた時は小5でしたが、取り調べを受けています。母がガレージで次女と一緒にいたのを見たと言うと、刑事から『なんで、嘘をつくんだ』と言われ、机をバンバン叩かれました。法廷にも立たされましたが、最後のほうは頷くしかなかったですね。」さらに、「半年前に何食べた？」「半年前のこの時間何していた？」と聞かれても、なかなか答えられないのが普通なのに、判決を見るとみなスラスラ答えて、合わせたように時間が合っている。読み進めるにつれ、どんどん母親を凶悪犯に仕立て上げようとしているのが伝わってきて、意地でも犯人にしたいように見えた。（note）

また、家族の発言は証拠として取り上げてもらえなかったことも。長男「僕は事件の日、家から外に遊びに行く時、カレーの鍋が置かれていた家のガレージで、母が次女と並んで座って、鍋の見張り番をしているのを見たんです。そして裁判でもそう証言しているんです。次女も当時から、『母がガレージにいた時には、私がずっと一緒にいた』と証言しています。でも結局、判決では、僕と次女の証言は母をかばっているということで採用されなくて、次女は母と一緒にガレージにいなかったことになっているんです」「裁判では、ガレージの向かいの家の人が、母がガレージに1人でいるところを見たと証言していて、僕らよりこの人の証言のほうが信用されています。」（note）

父親は検察官から、「眞須美にヒ素を飲まされ、殺されかかった、早く死刑にしてくれと裁判所で証言してほしい」と頼まれたそうだ。（弁護士ドットコムニュース）

また父親は、「きつい取り調べのあと、目の前に寿司とコーヒーを並べられ、『たばこも吸っていい』と言われた時には、『眞須美がやっているのを見ました』と言いそうになったそうです。『作り話ができない』と言ったら、『全部こっちが考えてやるから、サインだけしたらいい』と言ってきたとか。それでも、寿司には手をつけなかったそうです。」（note）

「父によると、ある日の取り調べで、検事が『カレー事件に関しては証拠がない』と言うので、『じゃあ、なんで捕まえるんな（ママ）』と言ったら、『マスコミがこれだけ騒いだら逮捕せんわけにはいかんだろう』と言っていたそうです。父はこの時、母の無実を確信したと言っていました。」（note）

家族の証言以外にも、冤罪を証明する別の事実がある。当時、「鑑定の結果、事件に使用されたヒ素（亜ヒ酸）が、林宅にあったヒ素と同一だった」として、最高裁判決で採用された、最も重要な物的証拠が怪しいと言うんだ。

事件で使われたヒ素は、カレー事件の前年（1997年）に完成した「スプリング８」という、最新鋭の大型放射光施設で分析された。その結果、事件に使われたヒ素と、林宅にあったヒ素が一致すると出た。だが、2021年に出版された「鑑定不正　カレーヒ素事件 (河合潤著／日本評論社)」によると、「スプリング８」の結果に基づく鑑定書には、鑑定ミスや捏造が数多くあって、「スプリング８」の鑑定データも捏造されていたことが、はっきりと証明されている。（集英社オンライン）

本の著者、河合教授は裁判所に言ったんだよ。ミスや捏造を新事実として裁判所に出したんだよ。なのに裁判官は、その間違いを認めた上で「鑑定は合理的であるという点はいささかも揺らぐことではない」としてはねつけたそうだ。（集英社オンライン）

なのに、「この証拠の存在を中井鑑定人はもちろん、和歌山県警、科警研、和歌山地裁も把握した上で隠蔽していたというのです。」（集英社オンライン）

「『不正鑑定』を著したこの河合教授は、この事件にかかわる前は、林眞須美さんを犯人だと思っていたといいます。しかし、事件の鑑定にかかわるようになってから虚偽や捏造ばかりを目の当たりにし、その結果として『カレーヒ素事件で林真須美は無実だ。冤罪だ。亜ヒ酸は別物だった』（『鑑定不正　カレーヒ素事件』 Ｐ205）と断言するようになったのです。」（集英社オンライン）

最後に、林眞須美の死刑判決に異を唱えるドキュメンタリー映画「マミー」が、去年公開され、けっこう反響を呼んでいるそうだ。

二村真宏監督は言う。「1000ページに及ぶ一審や、二審、最高裁の判決文、供述調書、林眞須美さんが提起した複数の民事訴訟の資料を読んで、それらに登場する人物にあたっていきました。作品では直接触れていませんが、その過程でおかしいと思ったのが、彼女がヒ素を入れた動機についてです」「最高裁を経ても動機は『未解明』という事実は、一般的にほとんど知られていないと思います。」（弁護士ドットコムニュース）

監督「検察は初公判の冒頭陳述で、林眞須美さんが事件当日、ガレージで調理していた主婦たちに激高して、カレーにヒ素を混入した『無差別殺人』だと主張しました。けれど、私が直接、話を聞いたその場にいた主婦は、そんな様子はまったくなかったと言います」「取材をしていると、いったいどういう捜査をしているのかと思うことが随所に見えたし、検討されるべきことが検討されていない。検察への不信感が膨らんでいきました」「再審請求の過程や、林眞須美さんや弁護団による民事訴訟でわかってきたことによれば、当時の科学鑑定の裁判での認定などに問題があったことは間違いありません。」（弁護士ドットコムニュース）

あそこらに住んでる人は、あえて知ってて言わないみたいだ。この動画の 27：42〜で、「林さんの中で真犯人のめどはついてるんですか？」と聞かれて、長男はこう答えている。「そうですね、最初から、『その人』ていうようなことで、保険金詐欺（の話）が出るまでは、町中がそう思ってたんです。で、母親が出だしてからは、『母親でいい』と変わっていっただけで、当時取材していた人たちも、まだ『その人』だと思っている。」

実は、あのあたりはあまり治安がよくなくて、犬やネコが青酸カリで殺されたり、新聞配達をしていた女子高生が殺されても、犯人は逮捕されていない。周囲はみなわかっているけど、言えないらしい。ライターの片岡氏も犯人像を語っている。「ヒ素が、あれほど危ない毒だと知らない人だと思いますね。誰もあんなことをする動機は無いと思いますね。（中略）...だから、何も知らずに入れたんじゃないかなと、衝動的に、（中略）...殺してやろうと思って入れたわけじゃないと思いますね。自ずと限られますよね、誰かと公言できるものはないですけど、少なくとも怪しまれずに近づける人だと思いますよね。だから、全く見ず知らずの人ではないと思いますね。」（YouTube 24：28〜）

とにかく、林眞須美が死刑になる前に、真実が明らかにされることを願う。