[古賀茂明氏]圧力をかける方は“圧力”と言わない。メディアは権力側と闘ってほしい。 〜外国特派員協会での質疑応答(英語カット)〜

竹下氏からの情報提供です。
 前回の冒頭会見の続きで質疑応答の部分です。
 古賀氏が言っていることは、単なる安倍批判ではなく、物凄くフェアだと思います。政権側が巧妙に、あるいはあからさまに圧力をかけ、言論の自由が脅かされているので、フェアな議論ができるように声を上げているのだと思います。
 普通ならそれに同調すべき日本のメディアが“メンタリティとして庶民の側に立って権力の側を監視するというよりも権力の側にいる”というは、今回の記者会見後の日本メディアによる囲み取材の様子(情報提供:NAVERまとめ)を見ても良く分かります。古賀氏がテレビ局の正社員に対して“非常にいい給料をもらって年金ももらえるという人ぐらいは闘ってほしい”とおっしゃっていますが、そのつもりはまったくないようで、政権側に立って質問攻めにしています。現政権と運命を共にすることで、あるいは現状を維持することで安泰だとおもっているのかもしれませんが、世界を見渡せば、そんな状況は、もう終わりに近づいているように思えます。
 文字起こしは、動画の内容を要約しています。全文はこちらです。
(編集長)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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[英語カット版]古賀茂明氏 外国特派員協会での質疑応答 (2015年4月16日)
転載元)

※古賀茂明氏の冒頭会見はこちら 

タイムズ誌右傾化しているのは政府内だけでしょうか。それとも日本社会全体も草の根レベルで右傾化というのが見られるのでしょうか。

古賀氏:一般市民の間でも、安倍さんに近いとか、古くからある市民的なリベラルな思想とは違う、タカ派的な考え方が出てきているというのは事実だと思うんですね。

それは、中国の台頭とか、国際環境の変化に対応して安倍さん達がよく言うような国際環境の変化に応じて、やはり日本の外交政策も変わらなければならないというような問題意識っていうのは確実に出てきているとは思います。

ただし、そう言う議論が出てきているのと同時にですね、それに応じる形で今度は逆にその平和を志向するという議論も強くなっているということで、私は両方の議論が強くなっているんだと言う風に理解しています。

ただ問題は、その時に本当に自由な議論ができる環境があるかという事が問題で、そういう大きな方針の転換をするか、しないかという議論を行なっているときに報道の自由とかですね、あるいは表現の自由というのが権力側から脅かされるというような事があるということが非常に大きな問題だと考えています。


ガーディアン誌:政府や政党という権力側が個人のジャーナリストや雑誌、報道局に圧力をかけたという具体的な例を出してもらますか?

古賀:一番知られているのは、例えばこないだの選挙の前に自民党が、「一般論です」といいながら在京のキー局、大手テレビ局に選挙にあたっての報道について注意事項というのを書いて「要請」という形で文章を出しました。

「これは圧力ではない」という風にとることも論理的には排除できませんが、この文書がどういう扱いを受けたか。各テレビ局の中で。

もしこれが「圧力ではない」と考えられているのであれば、この文書というのはもらっても、どこかに破いて捨ててもいいですし、本来であれば、「こんなもの来ました。ひどいですね」というのを放送すべきだと思いますが、それはどこもしませんでした。

じゃあこれを破いて捨てたかというと、私はいくつかの放送局に聴きましたけれども、むしろ、これを関係するところに配布をしている。もちろん文章として「こういうのが来ているのでみんな委縮しましょう」と書いてあるわけではないですが、こういうものが来ましたよと。一応伝えていると。これは「圧力」だと受け止めて、問題を起こさないようにということで考えざるを得ません。

これはずっと報道されなくて、結局ネットのニュースで「ノーボーダー」というところが最初に報じたのですが、それを受けてもテレビ局は放送しなかったですね、ニュースで。むしろ隠しておきたいというような感じになったのですが、それは何故かというと、それを出したら自民党に何をされるかわからないという恐怖感があるのだと思います。

それからもう一つ、最近また「ノーボーダー」がスクープで出していましたけれど、自民党から「報道ステーション」のプロデューサー宛に特定の日付の番組の内容について抗議をして、それは要するにアベノミクスのおかげでお金持ちがすごくもうかっていますというビデオを流したのですが、それがけしからんという内容の抗議文章、抗議といっても言葉はもちろん「ちゃんとやってくださいね」というお願いなんですけれども、そういうものも出ている。そして、それも隠されているというようなことが、具体的に目に見える形で感じられる一つです。


質問:明日、自民党に放送局の人たちが呼ばれているというが?

古賀:明日自民党の情報通信課、放送を扱う部会があるらしく、そこにテレビ朝日の私の放送の問題、3月27日私があそこで発言したこと。それからNHKの「クローズアップ現代」という番組、ここでヤラセが起きたんですね。その2つの問題を取り上げるのだろうということで、二つのテレビ局の責任者を呼び出しているという状況です。

そもそも政権与党が番組の編集について、口を挟むということ自体が実は放送法違反なんですね。よく放送法4条で「公平・公正」といったようなことを自民党は言うのですが、その前に3条という条文がありまして、この3条では「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」という条文があるのですが、明らかにこれに違反している。

私は是非ですね、テレビ朝日にもNHKにも自民党のこの呼び出しは断ってほしいと思うんですね。もし本当に自民党がどうしても話したいというのであれば、「どうぞ我が社にお越しください」と。「それを生で放送しながら議論しましょう」ということをやってほしいと思います。


ドイツの〜元官僚の方ということで、政府から年金をいただいていらっしゃると思うんですが、このように政府批判を続けますと、その年金がカットされるということか、何かされるという恐れは無いのでしょうか?

古賀氏私は、もちろん年金をもらえるのでそう言う意味で、(年金をもらっていない)普通の人に比べるとはるかに恵まれているので、本当に慎ましやかな生活が出来ればいいやと思えば、別にそんなに政権に擦り寄る必要もないし自粛する必要も無いので、だからこそ私は普通に自分の思った事を言い続けられるんですね。

その点でいうとテレビ局では、正社員はですね、非常に恵まれています。もちろん公務員よりはるかに高い給料がもらえますし、今会社に守られているんですが、実は日本のテレビ局では、物凄く多くの非正規の職員が働いています。まあ、派遣労働が多いんですけども、この人たちは、報道ステーションとかで話しをしてみたら、半年契約なんです。それで給料は物凄く安いです。テレビ局の人とまったく同じ仕事をしていても2分の1以下というのが普通です。

そういう人が当たり前です。ですからもちろんあまり蓄えもないと言う中で、例えば原発の報道をしていて政府から圧力がかかったというときにですね、そう言う報道を自分が続けたいと思ってですね、問題が起きるかも知れないけども、思い切ったビデオを作ろうとことをやっているとですね、半年後に仕事がなくなるかもしれない、しかも無くなったらペンション(年金)なんか無いんですから、非常にその日から困ると、私はこの四月で仕事がなくなっちゃったという人を何人も知っていますけども、非常に劣悪な環境で働かされている人もいる、そういう人達が圧力に屈するというのは、僕は生活を捨ててまで闘えというのは、なかなかちょっと言えないなと思うんですけども、少なくとも正社員は、非常にいい給料をもらって年金ももらえるという人ぐらいは闘ってほしいなというふうに思います。


―質問菅官房長官が会見で、今回の件が質問が出て「まったく政府側は圧力をかけていない」と言っているが、それをどう考えるか?

古賀:日本のメディアでしたら“官房長官様”のおっしゃることはそのまま伝えるということだと思いますが、これをそのまま受け取っているジャーナリストというのは非常に少ないだろうなと思います。

さっき言った通り、その人自身が変えられてしまったという人は、「あぁなるほど」と思うかもしれませんが、私は権力の座にある人が発する言葉というのは、普通の一般市民が発する言葉とはまったく質が違うと思うんですね。

明日の会議は正式には何の強制力もないのですが、「俺たちは政権与党だぞ」という背景を口には出さないけれど、相手が充分認識しているという前提で、呼び出すと。そして、番組の個別の放送について議論をします。これは「議論だから圧力じゃない。単なる質問過ぎない」というんですけれども、その背景には放送法の免許というのがあって、聞く人が政権与党の人だと。

圧力というのはかけた方は圧力とは言わないんです。いじめと同じで、いじめた人はいじめじゃないというのと同じ。相手がどういう風に受け取るのかというのをよく考えた上で、自分たちの大きな力というものを充分に認識したうえで、間違った形でそういう「表現の自由」とか「言論の自由」に負の影響を与えないようにと配慮して、謙抑的にものを言うべきだと思うのですが、そういう姿勢が全く感じられない。そういうことだと思います。


神保氏(ビデオニュース):放送の場合はですね、放送法の問題。放送免許が日本では政府から直接付与されるようになっているということがですね、政府が明らかに放送局に対して影響力・権力を行使しやすくなっていることは自明のことだと思います。アメリカのFCCやイギリスのオフコムのような形をとっていないと。そこで質問なんですが、ここまで明らかに放送局が介入されやすいような制度がなぜまったく変わらないのか、古賀さんの考えがあれば教えてください。

古賀氏日本の大手メディアというのはですね、既得権側なんですね、非常に大きな既得権を持っているんです。放送局はもちろん寡占状態で限られた電波の割当をですね、政府からもらって、ですから政府に対しては弱い立場なんですが、逆に他の競合するメディアの関係では非常に強い立場にいるわけです。独占しているという意味でですね。

それから新聞記者も大手の場合は、記者クラブというのがあって、これはみなさんよくご存知の通りだと思いますが、外国の記者が入れないとかですね、あるいは日本のメディアであっても記者クラブに入れてもらえるのはごく一部の大きなところだけであると、そこに入っている事で何もしなくても自動的に政府与党の情報がもらえてですね、そしてフリーにいろんなところにアクセスできるという特権を与えられているわけですね。

ですから、なんとなくメンタリティとして庶民の側に立って権力の側を監視するというよりも半分以上、権力の側にいるんじゃないかなという感覚を非常に持っています。ですから、もしもこの放送免許について、政府から権限を奪って独立の委員会にするとかですね、そういうような改革を主張することは、政府から見ると非常に大きな痛手になるわけですから、それが政府の逆鱗に触れる可能性があるということで、そういう議論を持ち出す事が出来ないということになっているんじゃないかなと思います。

文字起こしの出典: http://blogos.com/article/110230/?p=2
※出典の欠落している質疑応答を書き加えています。

文字起こし:編集長
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