ロシアのプーチン大統領は22日、国際討論クラブ「ヴァルダイ」の第12回年次総会で演説し、世界に核兵器が誕生して以来、グローバルな紛争で勝者になることは不可能だ、との考えを表した。
プーチン大統領は、次のように語った-
「恐らく
結果はたった一つ。それは、保証された
相互の破滅だ。人間は、より破壊力のある兵器をつくろうとして、
大規模な戦争を無意味なものとした、ということだ。なお1950年代、60年代、70年代、さらには80年代の世界のリーダーたちは、実際に、軍事力の行使を例外的な措置として扱っていた。そして、この点において、彼らは責任ある行動を取っていた」。
さらにプーチン大統領は、次のように続けている-
「この四半世紀で、力の行使に至るハードルが明らかに低くなった。戦争の認識自体が変化した。テレビ視聴者にとって戦争は、見てたのしむメディア映像へと様変わりした。あたかも戦いで人々が死ぬことも、苦しむこともなく、町が破壊されることもないかのようだ」。
またプーチン大統領は、シリア情勢に大きな関心を払った。プーチン大統領は、「シリアにおけるロシア航空宇宙軍の作戦は完全に合法的であり、この作戦の唯一の目的は、シリアでの平和構築を促進することだ」と述べ、次のように続けた-
「シリアの公式政府から要請を受けた後、我々はシリアで軍事作戦を開始する決定を承認した。もう一度強調する。この軍事作戦は、完全に合法的なものであり、その目的は、平和の構築を促進することだ」。
プーチン大統領はまた、ロシア航空宇宙軍の活動が「情勢に肯定的な影響」を与え、「政治的な解決領域におけるその後の行動のための条件づくり」で、シリア公式政府の役に立つことに期待を表した。またプーチン大統領は、
シリアでテロリズムに勝利した後は、全ての健全な勢力が参加して政治的解決が続けられるべきである、との確信を示している。プーチン大統領は、次のように語っている‐
「(テロ組織の)戦闘員らに対する軍事的勝利そのものが、全ての問題を解決できるわけではない。しかしこの勝利は、重要なことである、全ての健全な勢力、シリア社会の愛国的気概を持った勢力が参加する政治的プロセスを始めるための条件をつくる」。
さらにプーチン大統領は、次のように強調している‐
「まさに
シリア国民が、外部からの圧力や最後通牒、脅し、脅威などの方法ではなく、もっぱら礼儀正しい、
国際社会の敬意に満ちた
支援のもとで、自分たちの運命を決めなければならない」。
なおプーチン大統領には、「シリア公式政府を崩壊させるためだけに、テロリストたちが動員されている」ように見えるという。大統領は、「今必要なのは、不安定化させることではなく、紛争ゾーンの国家制度を復活させ、強化することだ」と呼び掛けた。また
プーチン大統領は、シリアの今後についても触れ、
シリアは戦後の復興のために大規模な経済支援ならびに金融支援を必要としており、ドナー国や国際機関を誘致するためのフォーマットを決める必要がある、との考えを表した。
また
プーチン大統領は、テロとの戦いにおける欧米諸国の政策にも注目し、
複数の国は「ダブル・ゲーム」をしていると指摘、彼らはテロを恐れると同時に、自分たちの利益のために「中東という盤の上に駒を並べている」と述べた。プーチン大統領は、次のように語っている‐
「もちろん米国は、巨大で、世界で最も大きな軍事ポテンシャルを有している。ただ、『ダブル・ゲーム』をするのは常に難しい。(この
『ダブル・ゲーム』とは)、テロリストとの戦いを宣言すると同時に、自分たちの利益のために中東の盤の上に駒を並べるため、そのテロリストらの一部を利用しようとすることだ」。
プーチン大統領によると、テロリストの一部を「
(自分たちにとって)都合の悪い体制を転覆させるための突入部隊のように」利用しながらテロリズムに勝つのは不可能だ。プーチン大統領は、「その後、これらのテロリストからは、どこへも逃れることはできない」と語った。
ここで述べられるプーチンの言葉を冷静に読んでみると、冷戦終了以降、アメリカの一極支配のもとで、政治・軍事・経済・情報・思想のあらゆる面での大きな矛盾と危険性が増大しつつある状況を、歴史的な認識を踏まえて実に的確に指摘していることがよく分かる。
そしてそれが、現実にヨーロッパを襲いつつある重大な危機の根であり幹である点について、私は全く同意できる。またTPPや、ヨーロッパを襲うもう一つの災厄であるTTIP(環大西洋貿易投資連携協定:TPPの大西洋版) についても、非常に正しい指摘を行っている。
少なくとも、下劣で傲慢で浅薄極まりない「キャプテン・アメリカ」の諸発言に比べれば、はるかに正確で洗練された納得のいく内容といえるだろう。