第13回 調和純正律の分析(1)〜各音の間隔
はじめに 〜 調和純正律と純正律の違い
調和純正律は純正律を発展させた音律です。具体的には、
第4回で述べたとおり、純正律イ長調の主音階7音に、竹下氏が独自に発見した周波数比による5つの半音を加えたものとなっています。
基にしている純正律と大きく異なる特徴として、各音の周波数が固定されているという点があります。つまり、純正律のように曲の調性にあわせて調律をすることはできません。(もしこれを行うと、各音の周波数が、経脈に作用する周波数からズレてしまいます。)
よって
必然的に、調和純正律は、
ひとつの調律で様々な調性の曲を演奏することを前提とした音律であるといえます。
すると、
曲の調性によって、相性の良し悪しというものが出てきそうです。この
最終回までの2回では、
この点を判断するのに参考となる情報を提供したいと思っています。
古典音律2律
これまですでに、一般に知られる音律としては、十二平均律と純正律の2つを紹介してきました。
今回はさらにもう2つの音律を紹介します。
どちらも、J.S.バッハが生きた時代である、
バロック後期から用いられてきた有名な古典音律です。これらは、「
ウェル・テンペラメント(「良く調整された音律」に近い意味の言葉)」といわれる音律で、それまで広く使われていた
中全音律にかわって、
多くの調をうまく演奏できるように作られたものです。
ヴェルクマイスターⅠ(Ⅲ)調律法
ヴェルクマイスターⅠ(Ⅲ)調律法(
Wikipedia)は、
J.S.バッハの友人であったヴェルクマイスターの発明した音律です。当時バッハが用いていた調律法はこれに近かったのではないかという説が、割と各所で見られます。
キルンベルガー第3法
キルンベルガー第3法(
Wikipedia)は、
J.S.バッハの弟子であったキルンベルガーが発明した音律です。師のバッハの教え「
すべての長三度を純正より広くしなさい」に反して、1つだけ純正長三度を入れているのが面白いところです。
十二平均律との聴き比べ
上の
2つの音律と十二平均律を、J.S.バッハの
平均律クラヴィーア曲集第1巻より第17番
変イ長調(BWV862)・前奏曲で聴き比べてみましょう。(原曲は
こちら)
①ヴェルクマイスターⅠ(Ⅲ)調律法
②キルンベルガー第3法
③十二平均律
①・②の古典音律を聴いたあと、③の十二平均律を聴くと、少々味わいが乏しく聴こえないでしょうか。音程をすっぱりと均等に割ってしまった十二平均律と比べて、古典音律には和音の響きが美しくなるような工夫が凝らされています。
①・②のどちらの音律も、この変イ長調の曲に用いた場合は、主音からの完全五度(A♭-E♭)は
純正音程になり、良い響きが得られます。これらの音律の分析は、
ストレングスビヨンドさんのサイトが分かりやすいです。
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前回からは、調和純正律を、他の有名な音律と比較しながら分析しています。前回は各音律の12音間の音程を比較しました。
今回は、五度圏を用いて、主要な音程の協和度を分析します。音律ごとに、どの音の組み合わせが美しく聴こえ、どの音が不協和に聴こえるかが分かります。