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第8回 調和純正律で曲を演奏する(2)〜曲の演奏
前回「調和純正律で曲を演奏する」方法には、次の2つがあると説明しました。
1. 自分で鍵盤を弾いて演奏する
2. ネット上にある曲データを、編曲ソフトに読み込ませて演奏する
このうち、手順が簡単な1.の方を先に説明します。キーボードを持っていない方は、次の1.の章は読み飛ばしてください。
1. 自分で鍵盤を弾いて演奏する方法
まずはキーボードをパソコンに接続します。お使いのキーボードによって、次の2つのいずれかの方法で接続します。
そして、LMMSで前回保存したプロジェクトを開く手順を行ってください。
次に、MIDIキーボードを使用するための設定を行います。「ソングエディター」ウィンドウの Phula-SteinwayD274-HPI (次の画像の1.)をクリックしてください。下に鍵盤の付いた「インストゥルメント・エディタ」(次の画像の2.)が開きます。
上のキーボードのアイコンをクリックしてください。
次の「MIDIタブ」が開きます。
「MIDI入力を有効にする」の左のスイッチをクリックして、緑点灯状態(ON)にしてください。次に、その下の鍵盤のボタンをクリックし、表示される一覧から、キーボードの名前をクリックしてください。
もしお使いのキーボード名が表示されない場合、パソコンとキーボードが正しく接続できていません。接続を再確認してください。あるいは、パソコンの再起動を試してみてください。
次に、「チャンネル」の「 - - 」を、"ダブル"クリックしてください。数字の入力を求められますので、1を入力してOKをクリックしてください。
次に、キーボード側の「MIDI CH.」の設定が「1」になるようにしてください。お使いのキーボードによって操作方法は異なります。この「MIDIチャンネル」という数字を、LMMSとキーボードとで合わせないと、正しく音が鳴りません。
これですべての準備が完了です。鍵盤を押したら、音が鳴ることを確認しましょう。
この状態でプロジェクトを保存しておいてください。次回から、プロジェクトを開くだけで、すぐにキーボードによる演奏が可能です。
2. ネット上にある曲データを、編曲ソフトに読み込ませて演奏する
次は、ネット上にある曲データを、LMMSに読み込ませて演奏する方法です。多くの方はこちらの方法を選ぶと思います。
「MIDIファイル」について
この曲データは、正しくは「MIDIファイル」と呼ばれます。MIDIファイルは、誤解を恐れず簡略にいえば「この楽器をこのように鳴らす」という情報が入っているファイルであり、曲の全てのパートが入った楽譜(総譜という)のようなものです。
このデータを、LMMSのような、「シーケンサー」とよばれる機能を持ったソフトに読み込ませ、サウンドフォントを使って演奏させると、音楽を奏でることができます。これまで登場してきた用語は、次のように比喩的に対応付けると、わかりやすいと思います。
電子音楽の用語 | 比喩 |
---|---|
シーケンサー | 奏者 |
サウンドフォント※ | 楽器 |
MIDIファイル | 楽譜 |
※正確には、楽器に対応するものは「シンセサイザー」といいます。サウンドフォントとは、あくまでこのシンセサイザーが用いる音データです。
「MIDIファイル」が無料で手に入るサイト
ありがたいことにインターネットでは、さまざまな曲のMIDIファイルを無料で手に入れることができます。今回使用する「調和純正律サウンドフォント」はピアノのみですので、ピアノソロ曲のMIDIファイルが入手できる、いくつかのサイトを挙げます。
Category:MIDI files about music - Wikimedia Commons
クラシックMIDI ラインムジーク
Piano Forte
Gallery Oto
② 「MIDIのみダウンロードされたい方ページ」をクリック
⑤ 楽譜の「DL」をクリック
これでMIDIファイルがダウンロードできます。
Free-scores.com [英語サイト]
Wikipediaに用いられている画像・音楽等の作品を集めた "Wikimedia Commons" の中の、MIDIファイルのコーナーです。ピアノソロ曲は基本的に "MIDI files of piano music" の中にありますが、 "MIDI files of classical music" など他のカテゴリの中にもあります。
クラシックMIDI ラインムジーク
個人でピアノ中心のクラシックMIDIファイルを提供されているサイトです。
Piano Forte
同じく個人で運営されていると思われるMIDIファイル提供サイト。J.S.バッハ、F.ショパン、F.リストのMIDIファイルがダウンロードできます。ダウンロード方法がわかりづらいので、そこだけ説明を加えます。曲名をクリックした後、左下のフレームに Download というリンクが現れますのでそれをクリックしてください。
Gallery Oto
同じく個人で運営されていると思われるMIDIファイル提供サイト。サイトのTOPからMIDIファイルにたどり着きづらいのが難点ですので、少し案内します。
① 左の Stream Midi をクリック ② 「MIDIのみダウンロードされたい方ページ」をクリック
③ 右の方に「Classic中心DL曲」などと表記されたジャンル名をクリック
④ 上のメニューから曲を選択 ⑤ 楽譜の「DL」をクリック
これでMIDIファイルがダウンロードできます。
Free-scores.com [英語サイト]
ここは様々なクラシック曲の無料の楽譜を手に入れることができるサイトですが、一部の楽譜にはMIDIファイルが添付されています。Advanced Nagivationのページで、左下の "with MIDI" を選んで、曲名を入力して検索すると、望みの曲のMIDIファイルが手に入ります。また、調和純正律サウンドフォントはピアノですので、 INSTRUMENT は PIANO 、 INSTRUMENTATION は Piano Solo を選ぶといいでしょう。
◇
その他、検索で、"フリー MIDI ピアノ"や"Free Piano MIDI Download"で検索していただくと、色々なサイトが見つかると思います。良いサイトを見つけた方は、ぜひTwitterでハッシュタグ #調和純正律で遊ぼう を付けて紹介してください。
MIDIファイルをダウンロードする
まずは、MIDIファイルをダウンロードしてみましょう。今回はサンプルとして、有名なピアノ曲であるモーツァルトの「きらきら星変奏曲」を用います。
実は、入手できるMIDIファイルによっては、LMMSでうまく演奏できるものもあれば、違和感のある演奏になるものも出てきます。この曲のMIDIファイルは、たまたまLMMSと調和純正律サウンドフォントを用いて演奏するのに適していたので、サンプルとして選びました。
まず、こちらのWikimedia Commonsのページを訪れ、 K265_(Ah_vous_dirai-je,_Maman).mid というリンクのファイルをダウンロードしてください。
LMMSの起動と設定
次に、LMMSを起動してください。
ここで、MIDIファイルを取り込む上で便利なある設定を行います。上の「編集」メニューから「設定」をクリックしてください。
設定ウィンドウが開きますので、左のフォルダのマークのアイコンをクリックしてください。
次のように表示されるので、「デフォルトのサウンドフォントファイル」の右のフォルダアイコンをクリックしてください。
サウンドフォントのファイルを選択する画面が出てきます。ここでフォルダを、「ドキュメント」> lmms > samples > soundfonts と順に開き、その中にある Phula-SteinwayD274-HPI.sf2 ファイルを選択して、「開く」をクリックしてください。
次の画面に戻りますので、右下の「OK」をクリックしてください。この後、前回同様に警告ダイアログが出てきますが、同様にOKをクリックしてください。
これでMIDIファイルを取り込む上での設定は完了です。この設定は初回に一度行えば、次回からは必要ありません。
MIDIファイルを取り込む
次はMIDIファイルをLMMSに取り込みます。前回同様に「ファイル」メニュー>「テンプレートから新規プロジェクト作成」>「 Empty 」をクリックしてください。
次に、「ファイル」メニューから「インポート」をクリックしてください。
MIDIファイルを選択する画面があらわれます。左の Downloads をクリックし、先ほどダウンロードした K265_(Ah_vous_dirai-je,_Maman).mid を選択し、「開く」をクリックしてください。
次のように、MIDIファイルの中身が取り込まれます。「ソング エディター」の左上の再生ボタンをクリックしてください。
次のように曲が再生されれば成功です。停止するには、一時停止マークに変わった再生ボタンを再度クリックしてください。
おめでとうございます! 調和純正律で「きらきら星変奏曲」を奏でることができました!
ちなみに上の動画では原曲より1オクターヴ高く聞こえますが、これは経脈に作用する音を増やすためにオクターヴを上げる操作を行ったものです。さらにオクターヴを高くすれば、リラックス時に向いている「月の十二経脈」に作用する曲を奏でることもできます。このような方法は、改めて後の回で紹介したいと思います。
曲を音声ファイルに保存する
曲を楽しむたびに、いちいちLMMSを起動して再生させるのも面倒です。曲を一般に普及している「MP3形式」という音声ファイルに保存しましょう。パソコンの音楽プレーヤー、スマートフォン、カーナビなどさまざまな端末ですぐに楽しむことができます。その方法を紹介します。
「ファイル」メニューから「エクスポート」をクリックしてください。
次のように、ファイルの保存ダイアログが出てきます。まず、下の「ファイルの種類」は Compressed MP3-File (*.mp3) を選択してください。次に、「ファイル名」に適当なファイル名を入力し、最後に右の「保存」ボタンをクリックしてください。
次のダイアログが出てきますが、そのまま右下の「開始」をクリックしてください。音声ファイルの書き出し処理が始まります。
処理が完了すると、パソコンの「ドキュメント」 > lmms > projects の中に音声ファイルが保存されます。その音声ファイルを次のようにパソコンのプレイヤーで開けば、調和純正律のピアノ曲を楽しむことができます。
◇
今回ようやく、この連載の当初の目的であった、『竹下氏の開発した「調和純正律」という音律を使って、無料のソフトで音楽を演奏させる』ことができました。ぜひ調和純正律による音楽を色々楽しんでみてください。
次回以降は、オクターヴの変え方などの補足、調和純正律で曲を演奏する上での理屈の説明、調和純正律サウンドフォントの作り方、といった細々とした補足的な内容を扱っていきたいと思います。
この記事は、シャンティ・フーラによる執筆記事です。音楽の分野に詳しい方におかれましては、もし間違いや説明上改善すべき点などがありましたら、ご指摘やご意見をいただければ幸甚です。ぜひ、こちらのコメント欄にフィードバックをお寄せください。
前回は、LMMSという編曲ソフトとサウンドフォントの導入を行いました。今回はこれらを用いて曲を演奏する方法です。