調和純正律で遊ぼう ~第13回 調和純正律の分析(1)〜各音の間隔

 竹下氏が開発した音律「調和純正律」に関する連載です。
 前回は、電子音楽で調和純正律を活用する際に重要と思われる、周波数の解析方法を解説しました。
 今回を含めた最終回までの2回は、電子音楽の枠から離れ、調和純正律の音律としての分析を、他の有名な音律と比較しながら行ってみたいと思います。
 なお、今回紹介した2つの古典音律や十二平均律を、調和純正律ピアノサウンドフォントと同じ音色で演奏できるサウンドフォントをダウンロードページに追加しました。第7回と同様の方法で、LMMSを使ってこれらの音律による演奏が可能です。ぜひ、調和純正律も含めて色々な音律の違いを楽しんでみてください。
(るぱぱ)
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第13回 調和純正律の分析(1)〜各音の間隔


はじめに 〜 調和純正律と純正律の違い


調和純正律は純正律を発展させた音律です。具体的には、第4回で述べたとおり、純正律イ長調の主音階7音に、竹下氏が独自に発見した周波数比による5つの半音を加えたものとなっています。

しかし、基にしている純正律と大きく異なる特徴として、各音の周波数が固定されているという点があります。つまり、純正律のように曲の調性にあわせて調律をすることはできません。(もしこれを行うと、各音の周波数が、経脈に作用する周波数からズレてしまいます。)

よって必然的に、調和純正律は、ひとつの調律で様々な調性の曲を演奏することを前提とした音律であるといえます。

すると、曲の調性によって、相性の良し悪しというものが出てきそうです。この最終回までの2回ではこの点を判断するのに参考となる情報を提供したいと思っています。


古典音律2律


これまですでに、一般に知られる音律としては、十二平均律と純正律の2つを紹介してきました。今回はさらにもう2つの音律を紹介します。

どちらも、J.S.バッハが生きた時代である、バロック後期から用いられてきた有名な古典音律です。これらは、「ウェル・テンペラメント(「良く調整された音律」に近い意味の言葉)」といわれる音律で、それまで広く使われていた中全音律にかわって、多くの調をうまく演奏できるように作られたものです。

J.S.バッハ(1685-1750)
Wikimedia_Commons[Public Domain]


ヴェルクマイスターⅠ(Ⅲ)調律法

ヴェルクマイスターⅠ(Ⅲ)調律法(Wikipedia)は、J.S.バッハの友人であったヴェルクマイスターの発明した音律です。当時バッハが用いていた調律法はこれに近かったのではないかという説が、割と各所で見られます。

キルンベルガー第3法

キルンベルガー第3法(Wikipedia)は、J.S.バッハの弟子であったキルンベルガーが発明した音律です。師のバッハの教え「すべての長三度を純正より広くしなさい」に反して、1つだけ純正長三度を入れているのが面白いところです。

十二平均律との聴き比べ

上の2つの音律と十二平均律を、J.S.バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻より第17番 変イ長調(BWV862)・前奏曲で聴き比べてみましょう。(原曲はこちら

①ヴェルクマイスターⅠ(Ⅲ)調律法

②キルンベルガー第3法

③十二平均律

①・②の古典音律を聴いたあと、③の十二平均律を聴くと、少々味わいが乏しく聴こえないでしょうか。音程をすっぱりと均等に割ってしまった十二平均律と比べて、古典音律には和音の響きが美しくなるような工夫が凝らされています。

①・②のどちらの音律も、この変イ長調の曲に用いた場合は、主音からの完全五度(A♭-E♭)は純正音程になり、良い響きが得られます。これらの音律の分析は、ストレングスビヨンドさんのサイトが分かりやすいです。


各音の間隔の比較


それでは、各音律を分析的に比較してみましょう。今回は、各音の間隔です。

音律ごとの12音の間隔(単位:セント)


Aの音を基準にして、音律ごとに各音の間隔を比較しました。一番上に音名、一番下にイ長調の音階名を付しています。

こうして見ますと、ヴェルクマイスター/キルンベルガー音律は、音の間隔がバランスよく、十二平均律に近くなっています。この点でも、様々な調での演奏に適しているわけです。

いっぽう調和純正律は、純正律の調律法群の一部に見られる小クローマ・大リンマと呼ばれる、極端な半音の間隔があらわれます。このあたり、バランスが崩れやすく、調性を選ぶところかもしれません


偶然の一致と竹下氏の周波数比の調べ方


さらに、面白い発見があります。純正律の半音の取り方の中に、マールプルグ(Marpurg,1718-1795)による調律法があるのですが、上の図ではこれを調和純正律の下に記載しました。このマールプルグの半音の取り方は、竹下氏が直観で導いた半音の周波数比群と一部共通点があります。

とりわけ、CとGの周波数比が偶然にも一致し、このため小クローマ(71セント)1つと大リンマ(133セント)1つが、まったく同じ箇所に登場することは驚きです。マールプルグは純正長3度を用いてこの2音の周波数比を求めたと思われますが、竹下氏は同じ数字を直観で選び取っています。

竹下氏の周波数比の調べ方が分かる部分を、東洋医学セミナーから抜粋します:

竹下雅敏東洋医学セミナー中級第2巻「サウンド・テラピー」 第6回「チャクラの音階」の一部の紹介


計算式はこの分数ですね、それに440を掛けていけばいいということになるわけですね。どうやってこういうの見つけるんですか、何でこの数字なんですかっていうことになるわけですよ。
これは非常に簡単でしてね。白い紙を持ってきて、これを書くんですね。440Hzでしょ、ドが。それに計算したこの結果 1430/3 Hzでしょ。これちゃんとHzって入れないとダメだよ、紙に 1430/3 Hzと書いてこれを触るんですよ。

ちゃんとムーラーダーラ(注)に作用する。このHzだってぱっとわかる。一発です。馬鹿みたいに簡単ですよ。それが他のHzに、1Hz変えてごらんなさい。このHzを 1430/3 から 1431/3 に書き換えた紙を持ってごらんなさい。効かない、ムーラーダーラ・チャクラに作用しない。1Hz変わると駄目。だから、ピッタリ 1430/3 だってわかるんですね、

注)「ムーラーダーラ」とはチャクラのひとつ。ここではチャクラに作用する周波数比を例にしているが、経脈に作用する調和純正律の半音階も調べ方は同じ。

でもね、何にもこういう計算式がなくて、今見た、前回のテキスト3ページの表(単純な分母・分子の羅列の表)がなくて、このHz出せますか? ムーラーダーラが、これだっていうのを最初から分母と分子ポンと出せます? こんなもの出せる方が天才だよね、できるわけないじゃないですか。で、その表の中でやったって、たったこんだけですよ。

「テキスト3ページの表」を見せているところ

この中で、ムーラーダーラならこの辺にあるだろうと、予測つくわね。あーあったって、一つ見つけりゃいいんですよ。調べてみて触ってみたら、これムーラーダーラだと。残りもあるだろうとパッパッパと予測して(表から数字を選び取って)いったら、あるんですよ。ピタッと。そういう形で出てきた。

だから、予測と、それから実際の実証ですね。紙で書いて実証をしてみるということで、すぐにできるわけですね。(中略) それで、紙の上でもこれ完璧なんですけど、実際にコンピュータで音を出して、効くかどうかやってみたら、ちゃんと効いた。ということですね。だから間違いがないということで。

非常に簡単に…僕の東洋医学セミナーの理論で一番簡単にできたもので、多分、これ何日でできたのかな。多分これは2時間はかかってないと思う。もう、一番簡単にできたもんですよ、音楽の理論は。あっという間でしたからね。一番単純で簡単だったんです。

だから、実際に皆さんもこれ実際こういうの紙に書いてみて、これ触れてみたら、ああムーラーダーラだとパッとわかります


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今回は、上の意外な発見があり長くなったので、最終稿を2回分の記事に分けることにしました。次の最終回は、五度圏を用いて調和純正律を分析します。

 
この記事は、シャンティ・フーラによる執筆記事です。音楽の分野に詳しい方におかれましては、もし間違いや説明上改善すべき点などがありましたら、ご指摘やご意見をいただければ幸甚です。ぜひ、こちらのコメント欄にフィードバックをお寄せください。



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