<澤藤統一郎(さわふじとういちろう):弁護士>
読売と言えば、正力松太郎以来戦後の保守陣営を支えてきた
政権御用達メディアと言って差し支えなかろう。政治的な対決テーマでは、常に政権の側に立って保守与党の側を支持し、野党を批判し続けてきた。いち早く、「読売新聞社・憲法改正試案」を発表して改憲世論をリードしてきた改憲勢力の一角でもある。
その読売の12月2日朝刊社説が話題を呼んでいる。「カジノ法案審議 人の不幸を踏み台にするのか」というタイトル。話題を呼んでいる理由は、政権与党の応援団であるはずの読売が、議員立法とはいえ、明らかに政権と与党が推進する法案に、
鋭く反対論を展開したからだ。おざなりの反対論ではない。
ボルテージの高い反対論として立派な内容となっている。しかも、本文中では、法案の名称を「IR法案」とも「カジノ法案」ともいわず、「
カジノ解禁法案」と明示していることにも注目せざるを得ない。
カジノの合法化は、多くの重大な副作用が指摘されている。十分な審議もせずに採決するのは、国会の責任放棄だ。
自民党や日本維新の会が今国会で法案を成立させるため、2日の委員会採決を求めていることには驚かされる。審議入りからわずか2日であり、公明、民進両党は慎重な審議を主張している。
この社説の掲載は、12月2日朝のこと。総務委員会の「審議入り即審議打切り採決強行」がささやかれる中で、「もし、そんなことをしたら、国会の責任放棄だ」
と警告を発したのだ。
自・維は、この読売の警告を無視して、その日の内に「国会の責任放棄」をやってのけたのだ。
読売は、審議入りしたばかりでの、問題点に目をつぶった採決強行だけを問題にしたのではない。
読売社説は次のように法案の問題点を指摘している。
自民党は、観光や地域経済の振興といったカジノ解禁の効用を強調している。しかし、海外でも、カジノが一時的なブームに終わったり、周辺の商業が衰退したりするなど、地域振興策としては失敗した例が少なくない。
そもそもカジノは、賭博客の負け分が収益の柱となる。ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの“散財”に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全である。
さらに問題なのは、自民党などがカジノの様々な「負の側面」に目をつぶり、その具体的な対策を政府に丸投げしていることだ。
公明党は国会審議で、様々な問題点を列挙した。ギャンブル依存症の増加や、マネーロンダリング(資金洗浄)の恐れ、暴力団の関与、地域の風俗環境・治安の悪化、青少年への悪影響などだ。いずれも深刻な課題であり、多角的な検討が求められよう。
だが、法案は、日本人の入場制限などについて「必要な措置を講ずる」と記述しているだけだ。提案者の自民党議員も、依存症問題について「総合的に対策を講じるべきだ」と答弁するにとどめた。あまりに安易な対応である。
カジノは、競馬など公営ギャンブルより賭け金が高額になりがちとされる。客が借金を負って犯罪に走り、家族が崩壊するといった悲惨な例も生もう。こうした社会的コストは軽視できない。
与野党がカジノの弊害について正面から議論すれば、法案を慎重に審議せざるを得ないだろう。
さらに、本日
(12月5日)の読売は、「カジノ解禁に『反対』57%…読売新聞世論調査」(2~4日の全国世論調査)という記事を掲載している。この記事は「自民党は、カジノなどの統合型リゾート(IR)を推進するための法案(カジノ解禁法案)について、6日に衆院を通過させる考えだが、国民の間では依然として慎重論が多い」とまとめられている。
読売はカジノ解禁法案反対の姿勢を崩していないのだ。
読売のこの姿勢は、「カジノ解禁強行は、政権に対するレッドカードとなりうる」という保守の側かららの深刻な警告と見るべきではないか。読売にしてなお、政権のこの傲慢なやり口を看過し得ないのだ。
このままでは、「驕れるアベも久しからず。ただ春の夜の夢のごとし」に終わるという危機感の反映がこの社説というべきだ。野党にも、市民運動の言い分にも、そして保守メディアの警告にも耳を貸さないこの政権。読売は、このままでは危ういと見ているのだ。
カジノ解禁に関して、各紙の社説の中で舌鋒の鋭さで目を惹くのが本日(12月5日)の琉球新報である。<社説>「カジノ解禁法案 国民不在の成立認めない」という標題。
唐突かつどさくさ紛れに、国民生活に悪影響を与えかねない重要法案を数の力で成立させるのか。
刑法が禁じる賭博にほかならないカジノを地域振興などに活用することを狙う、統合型リゾート施設(IR)整備促進法案(カジノ解禁法案)がわずか2日間の審議で衆院内閣委員会を通過した。
自民党と日本維新の会などの賛成多数で可決された。参考人質疑や公聴会は一切ない。国民不在そのものである。
年金制度改革法案や環太平洋連携協定(TPP)関連法案の成立をにらみ国会会期を延長したはずなのに、安倍政権と自民党が先に強行突破を図ったのはカジノ法案だった。詐欺的行為にさえ映る。
数の力に頼った強引な国会運営は1強のおごりである。自民党は国会を「言論の府」と標榜することをやめた方がいい。慎重姿勢を貫いていた公明党は自主投票にした。腰砕けではないか。法案成立は断じて認められない。(以下略)
この社説の指摘を深刻に受けとめざるを得ない。まさしく、議会制民主主義の形骸化の事態が進行しているのだ。私たちの国の民主主義はどこに行ったのか。いったいどこの国と価値観を同じくしようというのだ。
3分20秒から4分16秒の所では、西尾氏が自民党の不誠実な態度に苦言を呈しています。“かつて自民党は、「嘘はつかない! TPP断固反対!」って言っていました…これは嘘としか言いようがない。倫理的・道義的な問題はどうなっているんでしょう…このように息を吐くように嘘をつかれたら、やってられません!国民は”と言っています。
4分16秒から5分30秒では、国を動かしているグローバル企業の利益を取る為に、貿易の仕組みを変えて利益を取ろうというのがTPPだと指摘しています。
5分30秒から7分16秒では、TPPによって医療も完全に金儲けの道具になり、例えば米韓FTAの締結によって、韓国の医療費は2年間で2倍になった。日本は韓国の医療規模の4倍くらいあるので、あっという間に医療費が高騰すると指摘しています。
8分15秒から9分25秒では、西尾氏が医者になった頃の1ヶ月の抗がん剤は数千円だったのに対し、 90年代では数万円、 21世紀になって数十万円、そして3年前の免疫チェックポイント阻害剤が出たら数百万円になったと言っています。これでTPPが締結されれば、アメリカの製薬会社のほとんど言いなりの値段になりかねない。実質的に皆保険も崩壊すると指摘しています。
9分25秒から11分1秒では、新技術が保健診療の対象にならず、術式(外科手術の方式)まで特許料を取るというような事態になると言っています。医療費が高騰して、医療保険に入らざるを得ない社会になると警告しています。
11分1秒から12分17秒では、TPPの本質を“グローバル企業が一般国民を犠牲にした金儲け”であるとし、産業革命以来の富の源泉が労働力であったのが、今はロボットや人工知能が使えるため、科学技術によって、社会にとんでもない格差ができるという指摘しています。政治家の仕事というのは、それを“どういう風に公平性を保って再分配するか”だと言っています。
12分17秒から14分20秒では、例えばこの40年間、ホルモン依存性のがんが5倍になっていると指摘。エストロゲン(女性ホルモン)入りの餌を与えられた牛の肉を食べることが原因だと言うのです。さらに、今1番使われているネオニコチノイドン系の農薬が自閉症の原因であることが突き止められており、認知症にもうつ病にも関係しているという報告が出ているとのこと。
14分20秒から15分28秒では、遺伝子組み換え食品を日本人が1番食べており、遺伝子組み換えの影響を1番受けるのは日本人であると指摘しています。具体的には、日本人は納豆で大豆を食べ、味噌や醤油の原材料に遺伝子組み換え大豆が使われています。昔は60歳以上でがんになっていたのが、今は40代がざらで、若年化していると言っています。TPPに入った場合、日本は農薬を規制したり遺伝子組み換え表示をしたりすることが出来なくなります。
15分28秒から16分24秒では、例えば子宮頸がんワクチンの場合、これまでとは異なり、遺伝子組み換え技術で作られ、さらに効果を高めるために、アルミニウムのようなアジュバント(補助剤)を加えて作っているため、予期しない問題が起こると指摘しています。
16分24秒以降では、福島から出ている放射性物質に触れ、こういう物と農薬を含めた化学物質が人間の体に入って、相乗的に発がんすることが動物実験でわかっていると言っています。このような多重複合汚染の社会になってきている現在、“自分たちの国できちんと法律で、ある程度規制できるような体制を作るためには、決してTPPに加入すべきではない”と締めくくっています。