竹下氏からの情報提供です。
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』刊行記念対談 矢部宏治・孫崎享
配信元)
YouTube:MidoriJournal 16/5/17
16:28
なんで日本だけがこんなことになっているのかというと、それは一言で言うと朝鮮戦争だったんです。
朝鮮戦争というのは、皆さん知識がない忘れられた戦争と言われているんですけど、これは本当に戦後世界の行末を決めた大戦争で、しかもアメリカは最初徹底的に負けるわけですね。徹底的に負けて、これは有名な話ですけど、釜山の一角に閉じ込められると。でもばんばん日本から補給が来てるから、負けずに盛り返していったということなんですけど、結局この時の朝鮮戦争における米軍に対する戦争支援ですね。それをするという法的な関係がそのまま継続されたと。そしてそれが未だに続いているという信じられないことなんですけど、これは全部条文なので疑いようのない事実です。
その時どういう戦争協議がされたかというと、大きく2つありまして。先生、その時海上保安庁が掃海艇を出して戦死者が出たという話はご存知でしょう。
この時にここまで追いつめられてマッカーサーが仁川上陸作戦というのをやるんですけど、この時に反対側の東岸から上陸して挟み撃ちにするという作戦があったんですね。
その時に日本の掃海艇を出してくれという話があって、出すわけです。そしたら機雷にひっかかって爆死するんですけど、戦争中において機雷の掃海をするというのは完全にこれはもう、参戦ですよね。完全に参戦して戦死者も出してるわけです。
もう一つは、先生の『戦後史の正体』でもあるように、その時に警察予備隊というのができるわけですけど、警察予備隊というのは何か。7万5千人できるわけですけど何かというと、要するに日本に居た米軍が全部朝鮮に行ってしまうわけですよね。そうすると基地を守る人間が誰もいないから、朝鮮に行った米軍の代わりに7万5千人の警察予備隊をそこに入れたわけです。ですからアメリカの軍隊の代わりになった。
この本はその時の海上保安庁の初代長官の大久保武雄さんという人が書いた、『海鳴りの日々』という本で、これは日本の警察予備隊、今の自衛隊を事実上作ったフランク・コワルスキーというアメリカの大佐が書いた『日本再軍備』という本で、非常に貴重な証言があるんですけど、この時に完全に憲法破壊が行われている。完全に参戦してるわけですね。
それと平行して日本の平和条約が結ばれるわけですけど、平和条約を結んだ後もそういう戦争協力は継続するという条約が結ばれるわけです。それが、吉田・アチソン交換公文という条文が結ばれるわけです。
先に言いますけど、今まで戦後再発見草書でいろいろやってきた。これは占領体制の継続だということで、ほぼそれは皆さんに認知していただいたと思うんですけど、実態はもっと悪いんです。
占領体制の継続ではなくて、占領下の戦時体制の継続なんです。ですからこの横田空域なんかも、何でこんなものがあるかというと、要するに米軍は日本にある基地にアクセスする絶対的な権利を持っているんです。軍事行動をするための。
ですからこれ(横田空域)は首都圏だけではなくて、軍事基地があるところには必ずこういうふうになっている。軍事行動作戦をするための法的権利を持っている。それは何故かというと、占領下の戦時体制の継続なんです。
ですから我々が思っているよりももっと状況は悪かったんです。その中で軍の指揮権を他国に取られたら疑いようもなく属国ですよね。基地を貸している場合は損得があって、駐留経費を払ってもし守ってもらってるんならいいじゃないかということもできますけど、軍の指揮権を持たれてるということは、これはどういう言い訳もできませんから、しかもそれが条文と協定の組み合わせとして明らかなことですから。
これはそのままでいいじゃないかということはできないと思います。この知識がだんだん広がっていけば。ですから今度指揮権という問題の歴史的経緯と構造を研究してかなり証明したと思っていますけど、そのことで今までのような出口のないような思いではなくて、これはいつかは日本人はこれを解決できるのではないかという気になりました。
もう少しそのことで説明いたしますと、要するに密約には今まで国内で議論されてきたのは、この「基地権」。基地の密約だったんですね。もう一つ非常に大きな指揮の密約というのがある。なんで今まで基地の方ばかり問題になってきたかというと、先程申し上げたように軍事行動は国内に限られていたからそれほど問題にはならなかったんです。
ところが今回、安倍政権で海外に出るということで調べてみると、基地権の密約というのは、日本の国土を自由に使うための密約の体系なんですけど、もう一つ大きなジャンル、もっとひどい一案として、日本の軍隊を自由に使うための密約というのがある。
どうしてそういうことが私に分かったかというと、それは『検証 法治国家崩壊』の共著者の新原昭治さんが研究した基地権密約の体系というのがあって、こっちは構造的に分析が進んでいるわけですね。
さっきお見せしたこれは指揮権密約の文書ですけれども、基地権密約の文書というのがあって、これがどういうことかと言うと、さっき言った指揮権の密約が条約だというのは、吉田・アチソン交換公文というのが結ばれているんです。
これは、こっそり結ばれたものではなくて、旧安保条約の7文書のうちの一つなんです。
旧安保条約 関連文書(全7件)
(平和条約について)
①平和条約 ②議定書 ③宣言
(旧安保条約について)
④旧安保条約 ⑤吉田・アチソン交換公文
(行政協定について)
⑥行政協定 ⑦ 岡崎・ラスク交換公文
(平和条約について)
①平和条約 ②議定書 ③宣言
(旧安保条約について)
④旧安保条約 ⑤吉田・アチソン交換公文
(行政協定について)
⑥行政協定 ⑦ 岡崎・ラスク交換公文
旧安保条約には、この②と③はそれほど重要ではないんですけど、平和条約、旧安保条約、そして吉田・アチソン交換公文、行政協定、岡崎・ラスク交換公文とあるんですけど、さっきの基地権の密約で言うと、平和条約、旧安保条約、行政協定、岡崎・ラスク交換公文で密約の法体系なんですね。この旧安保条約、行政協定は皆さんご存知ですけど、岡崎・ラスク交換公文は先生も書いていない。90日以内に米軍は平和条約を結んだ後撤退しないといけないけれども、協議が整わなければいていいという実質的にその条項を無化する協定なんですね。密約そのものですけど、そういうものがある。
その一方ここでちゃんと吉田・アチソン交換公文というのが結ばれているわけです。旧安保、平和条約で。そのことを誰も知らない。先生、なんとなくちらっと聞いたことないですか?
孫崎享氏:いやいや、そこは私勉強しなかったと思います。
矢部宏治氏:これは本当に誰も知らない。ですから『検証 法治国家崩壊』のもう一人の(著者)末浪靖司さんという人の上司だった吉岡吉典さんという、赤旗出身の共産党参議院議員の人がいて、その人がかなり研究をされている。それを末浪靖司さんが継いでいたので、それが分かったんですんね。
基地権密約・法体系
平和条約 → 旧安保条約 → 行政協定
→ 日米合同委員会での密約
指揮権密約・法体系
平和条約 → 吉田・アチソン交換公文 →
国連軍地位協定→ 日米合同委員会での密約→ 日米安全保障協議委員会での密約
平和条約 → 旧安保条約 → 行政協定
→ 日米合同委員会での密約
指揮権密約・法体系
平和条約 → 吉田・アチソン交換公文 →
国連軍地位協定→ 日米合同委員会での密約→ 日米安全保障協議委員会での密約
それがどういう法体系になっているかというのは、基地権密約は、平和条約、旧安保条約、行政協定、日米合同委員会での密約。これは完全に証明されているんですね、我々がやってきた通り。
それと相似形なんですね、指揮権密約・法体系というのがあって、これは平和条約、吉田・アチソン交換公文、それに国連軍地位協定というのがひとつ入っている。ここで指揮権の問題を抑えるんです。それと日米合同委員会の密約と、2+2(日米安全保障協議委員会)ですね。日米安全保障協議委員会での密約。
この2+2(日米安全保障協議委員会)というのは、指揮権密約をマネージするために作られた。今まさにそうなっていますよね。そこで全てのことが決められてる。
日米安全保障協議委員会のなかに設置された防衛協力小委員会(1976年)によって、その後、3度のガイドライン(「日米防衛協力のための指針」)がつくられていった。
もうひとつ、新原昭治さんの基地権密約の研究から非常に面白いことがわかるのが、密約の方程式というのがありまして、要するに、『都合の悪い取り決め=新しい取り決め+密約』という、こういう方程式があるんですね。
密約の方程式→
都合の悪い取り決め=新しい取り決め+密約
行政協定=地位協定+密約
旧安保条約=新安保条約+密約
都合の悪い取り決め=新しい取り決め+密約
行政協定=地位協定+密約
旧安保条約=新安保条約+密約
一番わかり易いのは、行政協定と地位協定の関係なんですけど、さっき言った密約文書で、どういう密約かというと、地位協定の文言の中に、行政協定の取り決めが全て含まれるという密約なんです。
ですから、「行政協定=地位協定+基地権密約」という方程式が成り立つんですけど、旧安保条約のかなりの部分は新安保条約の密約ということなんですけど。
旧安保条約アメリカ側原案=(新旧)安保条約+密約
最大にここで言わないといけないのは、旧安保条約のアメリカ側原案なんていうのがあって、今現実に起こっていることは、最初にアメリカ側が考えていた旧安保条約の原案にどんどん近づいている。それは新旧安保条約の条文プラス密約という形で近づいているんですけど、それがどういうことかと言うことをご説明いたします。
29:38
ジョン・フォスター・ダレス(平和条約と安保条約締結のアメリカ側責任者)1951年1月末から、東京で第一次日米交渉を行う
これは先生も書いておられたんですけど、ダレスが来た時に「日本中のどこにでも必要な期間、必要なだけの軍隊を置く権利を獲得する」って言いますよね。1951年の1月末に言いますけど。
実はこれはその前の1950年9月8日に、対日平和条約の基本方針、国家安全保障会議文書の60-1ということが決まりまして。対日平和条約を結ぶ大前提なんですね。ダレスは交渉する人間として来ているわけですけど、平和条約の大前提になっている。これは平和条約が結ばれる1951年9月8日のちょうど1年前。
対日平和条約の基本方針
(国家安全保障会議文書60/1 NSC60/1
1950年9月8日 大統領承認)
「軍事上の具体的な問題については、平和条約とは別の2カ国協定で決定する」
「その2カ国協定の条項については、国務省と国防省が共同で作成する」
(国家安全保障会議文書60/1 NSC60/1
1950年9月8日 大統領承認)
「軍事上の具体的な問題については、平和条約とは別の2カ国協定で決定する」
「その2カ国協定の条項については、国務省と国防省が共同で作成する」
その時にもう二つ…。いろいろあるんですけど、非常に重要なことが決められていまして、『軍事上の具体的な問題については、平和条約とは別の二カ国協定で決定する。』『その二カ国協定の条文については、国務省と国防省が協同で作成する。』と。
これは先生にお伺いしたいんですけど、結局、条文は外務省は作らないものですよね。国防省が協同で作成するという条項をわざわざ入れているということは、ここが拒否権を持っているわけです。
実質の条文を作っていく過程を見ると、米軍の方が作っているわけです。米軍が作って国務省がそれに対して意見を言うんですけど、それを取捨選択する権利は米軍の方が持ってる。
それを中心となって書いていたのが、このカーター・B・マグルーダー陸軍少尉。その後陸軍大将、在韓国連軍司令官という(経歴の)人物になるわけです。
マグルーダー(陸軍少将・国防省軍事占領問題担当)
ジョンソン (陸軍次官補)
バブコック (陸軍大佐・国防省対日平和条約担当)
ジョンソン (陸軍次官補)
バブコック (陸軍大佐・国防省対日平和条約担当)
我々が日米安保の交渉を見るときに、ダレスばっかりが中心に見えてますけど、交渉者の中でダレス国務省顧問、アリソン国務省担当官、マグルーダー、ジョンソン、バブコックとか、全部軍関係者です。軍人なんです。ですから、平和条約と日米旧安保条約が結ばれるわけですけど、旧安保条約というものはそもそも米軍が自分で書いていたということになっている。
どうしてそういうことになったかという問題がひとつあって、これは編集者が図を作ってくれたんで、また本を読んでいただきたいんですけど、元々朝鮮戦争が起こる前から軍部は平和条約、講和条約に反対してたんですね。冷戦が始まっていたんで、日本を独立させることは軍部も絶対に反対だと言っていたんです。マッカーサーとダレスはそれをなんとか軍部を説得しようとしてたんですけど、その状況の中で朝鮮戦争が起こるわけです。絶対無理なんですね、普通に考えて。なんですけど、その交渉過程を見ていくと、ダレスは朝鮮戦争を利用して日本に、これは日本の力を使わなければダメだと、日本に戦争協力を絶対させるという約束を軍部にして、それで軍部に平和条約締結を呑ませるわけですね。ですからその軍部が作っていた旧安保条約というのは無茶苦茶なものになっているわけですね。
結局米軍が作った旧安保条約の原案というのがありまして、これは1950年10月27日のさっきのマグルーダー少将が作ったマグルーダー原案というのがあるんですけど、まず基地権に関しては、全土基地方式。要するにどこでも基地にできるということです。
指揮権の方が今考えると、ああそうかということがいろいろ書かれているんですけど…
『①「この協定〔=旧安保条約〕が有効なあいだは、日本政府は陸軍・海軍・空軍は創設しない。ただし(略)、アメリカ政府の決定に、完全に従属する軍隊を創設する場合は例外とする」』
『②「戦争の脅威が生じたと米軍司令部が判断したときは、日本のすべての軍隊は、アメリカ政府によって任命された最高司令官の指揮のもとにおかれる」(→吉田の口頭密約)』
これがさっき言った吉田の口頭密約そのものです。
『③「日本軍が創設された場合(略)日本国外で戦闘行動をおこなうことはできない。ただし、前記の〔アメリカ政府が任命した〕最高司令官の指揮による場合はその例外とする」』
これが今まさに全て現実のものとなりつつあると。
66年前にアメリカの軍部が書いた、完全にアメリカに従属し、海外においても戦争が必要と米軍が判断したらその指揮下に入って戦う自衛隊、という悪夢が今まさに現実のものになろうとしている。
文字起こし:hiropan
米軍が自衛隊を自由に指揮できる指揮権密約は、条約や協定からも明らかのようです。旧安保条約の原案となったマグルーダー原案というものがあり、これが現実になりつつあり、指揮権に関して以下のように書かれています。
『②「戦争の脅威が生じたと米軍司令部が判断したときは、日本のすべての軍隊は、アメリカ政府によって任命された最高司令官の指揮のもとにおかれる」(→吉田の口頭密約)』
『③「日本軍が創設された場合(略)日本国外で戦闘行動をおこなうことはできない。ただし、前記の〔アメリカ政府が任命した〕最高司令官の指揮による場合はその例外とする」』
"アメリカ政府の決定に、完全に従属する軍隊"を"アメリカ政府によって任命された最高司令官"が指揮することになるようですが、この最高司令官になるために「日本国憲法を蹂躙し、せっせと国富を投げ売りする我が国のトップがいる」とカレイドスコープ様の記事では指摘されています。