米国経済危機はカウントダウンに突入 中編

 元CIAのスティール氏の発言を受け、「なんで今年9月に米国経済崩壊なん?」と疑問に感じたところから深みにダダ嵌り中の中編です。前編では連邦準備制度のイエレンの一般大衆をおちょくっているとしか思えないような無責任な発言に始まり、シフ氏の詳しい解説によって公的な経済指数が色々と操作されているということを見ました。
 中編は、アメリカ国民の側から見た現状と、来たる経済崩壊がどの程度になるかという点です。アダムズ氏やロジャーズ氏、グリーン氏が次々に怖いことを話しています。蒸し暑くなって参りましたから、怪談話の代わりにどうぞお楽しみくださいませ。
(Yutika)
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米国経済危機はカウントダウンに突入 中編

pixabay[CC0]


各調査結果:アメリカ国民の懐具合は最悪


アメリカの状況が洒落にならんことはよく分かりました。因みに主要参考動画が更にトドメを刺してくれてます。そこで紹介された3つの記事を見ていきましょう。

①入ってくるお金よりも出ていくお金の方が多い! 
記事その①によると、アメリカ国民のほぼ二人に一人は収入と消費が同じか、消費額の方が上回っています。買い物のし過ぎ? いえいえ、収入は変わらないのに住宅と職場への交通費が上がっているんです。消費額が同じか上回ると答えた内の40%は、定期的な収入がありません。これは構造的な問題なのです。

②貯金なんて無理! 
また記事その②によると、GOBankingRatesが2016年9月に調査した69%が1,000ドル以下の貯金しかありませんでした(2015年9月は62%)。調査した34%は貯金ゼロです(2015年は28%)。ここでもクレジットカードで安易に借金できる危険性を指摘されています。

③最後はホームレス! 
記事その③によると、ロスアンゼルスのホームレスの数は昨年から23%増えて58,000人。この内、5,000人は退役兵です。編集長が貧困に関する興味深いTED動画を紹介していました。退役兵はPTSDや軍の人体実験など様々な困難も抱えています(※タイトルの1994年の箇所など)。

……確かに、なんでこないに悲惨な状況で株式市場が活況を呈しているんでしょう。訣ワカメじゃございませんか。



マイク・アダムズ:もうすぐ州も破綻する!





①メディケイド判決 
アメリカの夕張市、シカゴ近辺の話も入れときましょう。イリノイ州は只今、年間予算を確保出来ずに3年目の会計年度に突入することが確定(※米国の各州の会計年度は4州を除いて皆6月末で終わります)。

こちらの動画は、ワクチン分野でも有名な通称“ヘルス・レンジャー”(訳すと「健康面での警備隊員」でしょうか)ことマイク・アダムズ氏の発言を紹介しています。彼によると、今年6月末の時点でイリノイ州は実質的に破綻状態。州全体で学校教員・警察官・消防官、そして其の他の公務員の年金基金が崩壊すると警告しています。

アダムズ氏の予想では、年金支給額は7割削減(毎月1,000ドル受け取っていた人なら300ドルになる)。これ、恐ろしいことに法的には許されているんですね。州議会が決断に踏み切るのは時間の問題。既に年金を解約して、割安でも現ナマを受け取った人間はラッキーなんだとか。またアダムズ氏は、ニュージャージー州やカリフォルニア州も危ないと指摘しているそうです。

そして同じ動画ではその数日後、イリノイ州が更に悲惨な問題に直面したことを報告しています。既に150億ドルもの未払い債務を抱え、格付け会社には一時格付けを控えるように要請していた最中、シカゴの法廷でメディケイド(医療費扶助制度)として、現在の月々1億6千万ドルではなく5億9,300万ドルを州は支払って行け、という無茶ぶりの判決が出されたそうな。

末端の受給権者たちからの訴えなので、裁判官も無碍にも出来ませんよね。メディケイドって基本は民間の保険に入れない低所得者向けなので、州政府が助けてくれないと自分たちが路頭に迷いかねません。原告側の弁護士によると、メディケイド扶助はイリノイでは人口の25%もがお世話になっている重要な制度です。

おまけにメディケイドが滞り、患者から治療費を払ってもらえない危険が増しているので、もう医療機関が門戸を閉じ始めているのですよ。お医者さんもアメリカでは学生ローンの支払いで借金漬けだそうですから(※例えばこの記事この記事)、こちらも一方的に責める訣にはいかず。どこもかしこも八方ふさがりなのです。

イリノイ州の会計監督官(※この役職は一人だけで、要するに州会計のトップ)は、この判決によって「州の財政は過酷な状況から壊滅的な状況に陥る」とメールで発表。「州の年金基金や議員を含む公務員の給与、学校への補助金や地方自治体への支払いなどの一部は削減される可能性が高い」そうで、アダムズ氏の言う年金大幅カットはいよいよ現実化しています。


②宝くじ 
でねでね、これだけじゃないんですよイリノイ州。もう1つ別の記事も動画では紹介してくれていたんですが、なんと既に宝くじ(「パワーボール」も「メガ・ミリオンズ」も)販売がストップ。また当選者への支払いも滞っています。

これでは庶民は夢すら見れません。まぁ夢なんぞ見るなという御意見もございますが、気分的なもんですってば。こんな悲惨な現実やってらんねぇぜー、となった時の人畜無害(?)な憂さ晴らしが確実に一つ消えたのです。溜まった鬱屈はどこに行くのでしょう。


③殺人率の上昇 ……アメリカの州って、夕張市のような市区町村というよりも一国レベルです(※アメリカ合衆国は「国家」の集まり)。自己破産したら洒落にならんでしょうね。これまた動画の指摘ですが、シカゴと言えば殺人事件の多さでも有名。でも2016年度統計だとアメリカの主要都市中、住民10万人当たりの殺人発生率はまだまだ8位、2011年から五年間の平均だと12位なんですよね。

あと元記事によると、2016年は250,000人以上の都市(※イリノイだけでなく各州)の大半で殺人事件の発生が急増しているそうです。シカゴは前年度より59.4%アップしました。経済崩壊前に既にこれだとしたら、崩壊後はどんな無政府状態が待っているのでしょうか。そして、シカゴよりも殺人率の高い都市を抱える他州も財政危機が迫っています。


ジム・ロジャーズ:生涯で最悪の崩壊になる!





最後のトドメは世界三大投資家の一人、ロジャーズ氏。今年6月8日放送のインタビューの文字起こしがあったので翻訳しておきます。

トランプが当選したら急落すると言われていたのに、現在ナスダック市場は当時よりも20%上昇していますが、これからどうなりますか、との質問に対して、ロジャーズ氏は「バブルが膨れ上がって破裂するでしょうね」と答えました。

時期的には今年後半から来年。きっかけはどこでしょうか。面白いことにいつも皆が注視していないような所から始まって、スパイラル状に悪化するらしいです。2007年にはアイスランドが破綻しました。人々が「アイスランドって国なの? 株式市場なんてあるの?」と言っていたら、アイルランドが破綻し、ベア・スターンズが破綻し、リーマン・ブラザーズが破綻しました。つまり発端なんて後からしか分からないということです。では、どの程度でしょうか。

ロジャーズ私の生涯で最悪のものになります。【中略】例えばアメリカでは建国以来、金融問題【※要するに不況とか不景気ってことでしょうか】が4年から7年毎に起こってきました。ですが前回の【危機】からは8年以上も経過しています。これは史上最長か、史上二番目の最長期間を記録しています。【中略】

2008年に問題が起こったのは借金のせいでした。現在の借金は当時とは比べものになりません。2008年には中国はいざという時のために大量の資金を確保していました。いざという時が始まっています。もう資金は取り崩されているのです。中国ですら借金があり、しかもそれは膨れ上がっています。

【対して】連邦準備制度、つまりアメリカの中央銀行のバランスシートは2008年よりも5倍以上膨張しています(※貸借対照表の資産が増えている訣で、要するにその分紙幣をばんばん刷っては量的緩和していると指摘しているのですかね)。

これはあなたの生涯で最悪のものとなるでしょう。そして私の生涯においてもそうです。心配するべきです。

だから私はアジアに引っ越したのですよ。うちの子どもたちは将来に備えて中国語を学ばせています。

あちこちで政府が崩壊するのを目撃するでしょう。今回は国々が崩壊するでしょうね。【中略】政党も消滅します。長い間存続していた機関も――リーマン・ブラザーズは150年以上続いていました――無くなるでしょう。思い出すら残りません。美術館だろうが病院だろうが大学だろうが金融会社だろうが、次の【経済崩壊】では、もっと沢山の【悲劇】を目にします。



クリストファー・グリーン:現在の市場は異常!





おまけとしてもう一人。ジム・ロジャーズ氏のインタビューから数日後に「大いに賛同する」と発言していたのが、AMテレビのクリストファー・グリーン氏です。彼は2008年―2009年の金融危機の時代メリルリンチ証券で働いており、危機直前で資産を引き上げ、周りにもそうするように勧めて回っていたのだそう(当時は動画ではなく個人的に)。リーマン・ブラザーズやベア・スターンズなどが崩壊するから、と警告したのに、取り合ってもらえなかったとか。

さてその経験を踏まえて、アメリカ経済はいかに改善したのでしょうか。――全く何も。

連邦準備制度のバランスシートは5倍に膨れ上がり、オバマは借金を倍にしました。株式市場も不動産市場も伝統的なアセットクラス(資産の種類)もうなぎ上り。伝統的なアセットクラスは主要なものが全て急騰しているのです。そしてテクノロジー関連の株式はアマゾンやグーグルが1,000を突破。デジタル通貨ですらとんでもない上昇を続けています。ビットコインはここ一年かそこらで300%上がり、イーサリアムは年頭から5,000%という記録的上昇。とにかくこれまで体験したことのないようなバブルの中に我々はいます! 全てがバブルなのです、とのこと。

市場は異様な高騰を続けています。この動きが逆転したときには、反動がとてつもないものになりかねません。2008年や2009年の事態なんて「ディズニーランド並み【=子供だまし】」に見えるようになるのだとか。

しかもグリーン氏は、再び上昇方向に転換するにはかなりかかると見ています。例えば1930年代の大恐慌のときは恢復するのに10年以上かかりました。第二次世界大戦で大量の命が失われて、やっと元の状態にまで戻ったのです。

残されている時間は、運が良ければあと一年くらい。最長で二年。事が起こってからどうしたらいいのかネット検索しても間に合いません。今の内に何をすべきかを理解しておくように警告しています。そしてロジャーズ氏の言う通り、「我々は人生で最も悲惨な経済崩壊を体験するだろう」と結んでいます。


……ここまで色々調べて私も納得しました。こりゃー近々破綻するわ、アメリカ経済。


※翻訳部分の【 】内は訳者の解説です。
後編へ続きます。

文・Yutika

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