ぴょんぴょんの「キチュリに救われた」

 年末年始でご馳走が続いたあとに、七草粥で一息つく風習は、理にかなっています。
 と言っても、店頭にならぶ七草は、畑で栽培されたものなので、昔のような薬草の効用は望めないと思います。
 食いしん坊の私が、自分で作ったレアチーズ・ケーキで胃腸がおかしくなった話です。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「キチュリに救われた」


レアチーズ・ケーキを作って食べたら


あ〜あ、えらい目に合っちゃったよ。

どうした?

久しぶりにレアチーズ・ケーキが食べたくなって。

opencage[CC BY-SA]


おめえ、クリームチーズは苦手じゃなかった?
前に、クリームチーズで体が痒くなったって言ってなかったっけ?

そうだったっけ?
だけど、レアチーズ・ケーキを作る動画(EMOJOIE CUISINE)
を見てたら、つい食べたくなっちゃって。

これだから、3種ってやつあ・・・見たら、すぐに食いたくなるんだから。

こないだはアメリカ産チーズで痒くなったから、今回は国産ので作ったんだけど。
クリームチーズはどれも、「増粘多糖類」が入ってるんだよ。

食品をネバネバさせる添加物だな。
最近ネコに大人気のおやつ、「・・ール」にも入ってる。うちのくろまるには、やらねえけど。



ほんとだ、「まぐろ、まぐろエキス、・・・増粘剤(加工でん粉)・・・増粘多糖類、調味料(アミノ酸等)・・・・・」。(きゃっちゅ)
なんか、添加物の塊みたい。

しかも増粘剤(加工でん粉)入ってるのに、さらに増粘多糖類ってヤバくね?

クリームチーズだって、もともとベタベタしてるのに、なぜ増粘多糖類入れるの?

加工でん粉が「デンプンに化学薬品を加えて、その特性を失わせたり、増強させたりと人為的に操作している」(たべるご)ヤバいヤツってのは知ってたが、増粘多糖類は、海草や植物でできてる(Business Journal)から、そんなに体に悪くないと思ってた。

それなら、ただの寒天入れてる方がよっぽど安心だよ。
せっかく作ったチーズケーキの食感も、なんかガムみたいで、ニチャクチャしておかしいなとは思ったんだけど。
案の定、食後に胃が重たくなって、夕飯も食べられないし、ムカムカして吐くかと思えば吐かないし、便意を催してトイレに座っても下痢じゃないし。
いったい体が何をしたいのか、わかんなくなってる感じ。

食中毒じゃ、ねえんだな。

買ってきたばかりの材料で、衛生的に作ったからそれはないよ。

前みたいに体は痒くなることは?

ない。おかしいのは胃だけ。

たぶん、胃を取り巻く消化器がダウンしたんだろな、膵臓とか、肝臓とか、胆嚢とか。

夜中も気持ち悪くて目が覚めるし、翌朝もお腹が空かない。
朝ごはんを抜いたら、少しお腹が空いたので、昼も夜もお粥にした。
それでも、夜中に目が覚めると胃が重たい。

増粘多糖類入り、レアチーズ・ケーキかあ〜。
「カファ」が粘りついて、べったり貼りついて取れないってイメージだなあ。

アーユルベーダのドーシャ、冷たくて重たい性質「カファ」のことだね。

たぶん、「アグニの火」を消すほどのカファだったのかもよ。


「精錬の火」、「アグニ」のことだね。(東洋医学セミナー・中級第19回)
この消化の火が弱ければ、食べ物が消化しきれずに体に毒素(アーマ)がネバネバ状態に腐敗し蓄積されます。」(アーユルベーダライフ)

カファがダブルになった、増粘多糖類入りチーズケーキ。
それが「アグニ」の火を消しちまったのかもよ。

「アグニの不調」は「アーマ(未消化物)」となり、それが「スロータス(経路)」を塞ぐ。
てことは、そのまま放っておいたら病気になっちゃうね。

ほとんどの人はそういうとき、消化薬を飲むけど。

ぼくは、そういうの飲まないね。
だって消化薬を飲むと、やせ馬にムチ打つことになるから。

それはカシコい。
胃や膵臓が疲れ果てて、消化できる状態じゃないのに、ムリヤリ腹を空かせるのが消化薬だ。
開店準備中なのに、図々しい客が入ってきて、追い出そうか、前の日の残りでも出そうかって、迷惑な話だ。
しかも食ったもんは、まともに消化されねえから、未消化物(アーマ)になって体に残る。

未消化物(アーマ)は生ゴミみたいに、体中の通路を詰まらせるしね。
消化薬を飲むと、病気の発症を手伝うことになっちゃう。

じゃあ、西洋薬じゃなくて、漢方薬の胃薬ならいいのか?

合えばいいけどね。合うのを選ぶのは漢方の名医でも難しいと思う。
合わない薬飲んで、もっと胃が悪くなるのはイヤだよ。
ぼくも漢方の胃薬をいろいろ試してみたけど、結局春ウコンが一番合ってたよ。

春ウコンて、インド人がカレーに入れて毎日食ってる、ターメリックのことだな。

pixabay[CC0]


ふだんなら、春ウコンを飲むと、胃がスッキリして食欲がでてくる。
でも今回は、それだけじゃ解決できなかったんだよ。

アグニの火を復活させるには、間に合わなかったと?


アーユルベーダの薬膳粥キチュリ


あれこれやっても改善しないので、考えた。
これまで胃が悪い時、どうしてたっけ? 
って、思い出したのがキチュリだったんだよ。

キチュリ? なんだそりゃ?

インド人が健康のために、週に1回は食べるという、アーユルベーダのお粥。

お粥かあ。でも、おめえもお粥は試してたろ?

ただのお粥じゃなくて、アーユルベーダの薬膳なんだよ。
とにかく作って、食べてみた。

それで、結果は?

一口で、「アグニさん、復活〜おめでとう!!!」って感じだったよ。
おわん1杯ペロッと食べて寝たけど、それまでの夜中の不快感も全くなくて、
ぐっすり眠れた
し、目覚めたらお腹が空いてて、残りのキチュリを温めなおして食べたよ。

むつかしい薬とか飲まなくても、ただのお粥で、アグニの火が復活したのか。

材料も、ターメリックとクミンシードを用意しとけば、あとはどこの台所にも、普通にあるものばかりだからね。

だから、インドは「キッチン・ファーマシー(台所薬局)」っていうんだな。

しかも、備蓄の古米を消費できるし。

おれもカレーの飯は、古米って決めてる。

インドじゃ、週に1日はキチュリを食べるとこが多いんだって。

年に1回の七草粥より、実践的だな。

それに、キチュリはおいしいし、食欲をそそるよ。

大事なアグニを週に1回、回復させる・・・・キチュリの作り方、教えてくれ。

いろんな作り方があるけど、香取薫著「はじめてのインド家庭料理」を参考にした。


キチュリは、この本の68ページに載ってるよ。


材料(2〜3人前)
A 白米  3分の2カップ
  水   4カップ
  ターメリック  小さじ2分の1
  油(バターでもオリーブ油でも)   大さじ1
B 油  大さじ1〜2
  クミンシード  小さじ2分の1
  にんにく  2〜3かけ
  生姜  1かけ
塩  小さじ1


ごめん! この写真の水、まちがえて5カップ入ってる。ホントは4カップ。
お粥が炊き上がって気づいたんだよ。あれ?今日はなんで、こんなに水っぽいの?って。

おめえらしいな。

なにしろ、初めての料理リポートだから、計算まちがいしちゃった。

作り方
① Aを、大きめの鍋に入れて30分置く。
② ①を火にかけて沸騰したら、弱火で20分煮る。
③ お米が炊けてる間に、生姜とにんにくを刻んでおく。すりおろしてもいい。
④ お米が炊きあがる、ちょっと前になったら、
小さい鍋(またはフライパン)に、油大さじ1〜2を入れて熱する。
クミンシードを2〜3粒落として、パチパチと音がしだしたら、残りのクミンシードを全部入れて、色が変わり、香りが出るまで炒める。
そこに、刻んだ生姜とにんにくを入れて、さらによく炒める。
⑤ 炊き上がり直前のお米に、④をジュッと入れる。
⑥ よくまぜて、塩で味を整える。

じゃ、写真入りで作り方を説明するね。
① Aを、大きめの鍋に入れて30分置く。


ずいぶんおっきな鍋だな

なんで大きめにするかと言うと、途中で必ず吹きこぼれるからなんだ。
ほんとは、文化鍋がいいんだけど、アルミ製なのがね・・・。


なるべく、アルミは使いたくねえしな。

アルミ以外の文化鍋って、探したけど見つからなくて。
ステンレスのがあったら、欲しいんだけどね。
② ①を火にかけて沸騰したら、弱火で20分煮る。



少し蓋をずらしてるな、こんなに鍋が大きくても吹きこぼれるのか。

そうなの、沸騰したら気をつけてね。
③ お米が炊けてる間に、生姜とにんにくを刻んでおく。すりおろしてもいい。


④ お米が炊きあがる、ちょっと前になったら、
小さい鍋(またはフライパン)に、油大さじ1〜2を入れて熱する。
クミンシードを2〜3粒落として、パチパチと音がしだしたら、


残りのクミンシードを全部入れて、色が変わり、香りが出るまで炒める。


そこに、刻んだ生姜とにんにくを入れて、


さらによく炒める。

ここらへんから、いい香りがしてくるよ。ちょっと煙が出るくらいがいいね。


⑤ 炊き上がり直前のお米に、④をジュッと入れる。


高温だから、ヤケドしないように気をつけてね。

中華料理で、白ネギに油をかけるヤツみてえだな。


このように、香辛料の風味が移った、アツアツ油をかけることを「タルカ」って言うんだよ。

香ばしくて、食欲が出る香りだな。

レシピによっては、先に香辛料油を作って、そこにお米と水を入れて炊く方法もあるけど、
ぼくは「タルカ」する方が好き。
少し焦げた、香ばしい香りを吸い込むと、ダメージを受けた胃腸が反応するんだ。

鼻は、胃の経絡につながってるからな。

最後に⑥ よくまぜて、塩で味を整える。
ぼくはヒマラヤの塩を入れたよ。レッド・ペッパーを少し入れてもいい。
はい、できあがり。


お、うまそうだ。

試したことないけど、炊飯器でお粥を炊いて、タルカしてもできると思う。

そいつは、楽かも。
吹きこぼれを気にして、火の前に貼りついてなくてもいいからな。

テキストには、緑マメが入ってるけど、入れなくても十分おいしい。
ただし病気が長びいて栄養補給が必要な人は、タンパク質補給に入れた方がいいそうだ。

ドーシャを考えると、マメはヴァータだから、カファやピッタの人には合うが、ヴァータの人は少なめがいいな。

ドーシャって言うのは、気の分類で、ヴァータ(太陽と月)、ピッタ、カファの4つある。
ヴァータは乾燥しやすくて、風みたいに軽いから、マメを食べすぎるとお腹が張るしね。

カファは水の性質で、クリームチーズみたいに重くて冷たいから、食べ過ぎると重くなる。
油はカファだから、ヴァータの人は多めに入れるといいし、カファの人は控えめにしたらいい。

ピッタは火の性質で、熱くて血の気の多いから、レッド・ペッパーや香辛料はとり過ぎない方がいいね。

逆に、カファや月のヴァータの人は、体を温めるために多めに入れるといい。

体質や、自分の状態に合わせて、さじ加減のできるアーユルベーダ。

すぐれもんだぜ!


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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